TOP特許意匠商標
特許ウォッチ Twitter
公開番号2025134314
公報種別公開特許公報(A)
公開日2025-09-17
出願番号2024032146
出願日2024-03-04
発明の名称二酸化炭素還元触媒の製造方法
出願人国立大学法人山口大学
代理人個人,個人,個人,個人,個人,個人,個人,個人
主分類B01J 27/24 20060101AFI20250909BHJP(物理的または化学的方法または装置一般)
要約【課題】本発明の課題は、二酸化炭素還元に対する光触媒活性を有する二酸化炭素還元触媒を提供することである。さらには、二酸化炭素還元によりC2化合物を生成できる二酸化炭素還元触媒を提供することである。
【解決手段】窒素ドープアモルファスシリコンカーバイトを水プラズマ処理又はアンモニアプラズマ処理することにより、二酸化炭素還元触媒を得る二酸化炭素還元触媒の製造方法。
【選択図】図10
特許請求の範囲【請求項1】
窒素ドープアモルファスシリコンカーバイトを水プラズマ処理又はアンモニアプラズマ処理することにより、二酸化炭素還元触媒を得る二酸化炭素還元触媒の製造方法。
続きを表示(約 620 文字)【請求項2】
二酸化炭素還元触媒が光触媒であることを特徴とする請求項1記載の二酸化炭素還元触媒の製造方法。
【請求項3】
基材上に窒素ドープアモルファスシリコンカーバイト層を形成し、形成された前記窒素ドープアモルファスシリコンカーバイト層を水プラズマ処理又はアンモニアプラズマ処理することにより、二酸化炭素還元触媒電極を得る二酸化炭素還元触媒電極の製造方法。
【請求項4】
窒素ドープアモルファスシリコンカーバイトに二酸化炭素還元活性を付与する方法であって、前記窒素ドープアモルファスシリコンカーバイト表面の酸素原子及び窒素原子の割合を増加させて、前記窒素ドープアモルファスシリコンカーバイト表面のC=O結合、アミノ基のC-N結合、並びにC=N結合及び/又はO=C-N結合を増加させることにより、前記窒素ドープアモルファスカーボンに二酸化炭素還元活性を付与する方法。
【請求項5】
表面に窒素原子及び酸素原子、並びにアミノ基のC-N結合、C=O結合及びSi-O結合を有し、表面における前記窒素原子の量が0.7atom%以上かつ前記アミノ基のC-N結合における窒素原子の量が0.2atom%以上であり、表面における前記酸素原子の量が40atom%以上かつ前記C=O結合及びSi-O結合における酸素原子の量が15atom%以上である窒素ドープアモルファスカーボン二酸化炭素還元触媒。

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、窒素ドープアモルファスシリコンカーバイトを利用した二酸化炭素還元触媒の製造方法、及び前記二酸化炭素還元触媒を使用した二酸化炭素還元触媒電極、並びに窒素ドープアモルファスシリコンカーバイトに二酸化炭素還元活性を付与する又は窒素ドープアモルファスシリコンカーバイトの二酸化炭素還元活性を向上させる方法に関する。
続きを表示(約 5,200 文字)【背景技術】
【0002】
地球温暖化抑制のためのCO

排出量の削減とエネルギー消費量の増加と化石燃料の欠乏、原子力エネルギーの失速にともなうエネルギー不足は世界の直面する2つの大きな問題である。現在、人工的な光合成でCO

を取り込み、燃料(アルコール)を合成する研究が活発化している。CO

の還元生成物としては、オレフィンや燃料などへの転換技術が確立されている一酸化炭素(CO)や、ポリエステルの原料となりカーボンリサイクルを実現できるシュウ酸((COOH)

)、水素エネルギーキャリアである蟻酸(HCOOH)が望ましい。CO

から燃料(アルコール)を合成する研究開発(CO

の固定化)は、環境と資源・エネルギーの問題を同時に解決可能となる技術である。しかし、CO

から一酸化炭素(CO)、蟻酸(HCOOH)、シュウ酸((COOH)

)への還元反応は、標準電位が-0.52V、-0.61V、-0.89V(vs.NHE)であり、H

生成反応の標準電位0V(vs.NHE)より卑電位側であるため、水溶液中でH

生成反応の阻害を受けずにCO

を光触媒により還元することは困難である。
【0003】
CO

還元光触媒の研究開発においては、CO

還元活性を示す材料が少ないことから、バンドギャップの広い半導体に助触媒を担持する手法が一般的に用いられている。例として、バンドギャップ3.9eVのBaLa

Ti


15
にAg助触媒を担持した系や、バンドギャップ4.1eVのアルカリ金属をドーピングしたNaTaO

:M(M=Ca、Ba、Sr)に、Ag助触媒を担持した系などがある。助触媒にCuを用いるとアルカン、アルケンやアルコールが、AuやAgではCOが、PbやHgではHCOOHが選択的に生成される。これらの系は、紫外光照射下でしか駆動せず、AgやCuなどの助触媒は、表面の腐食や生成物の付着により活性が低下し、耐久性が低いという問題点がある。さらに、光励起により生成した電子とホールは大部分が再結合によって消滅し、CO

還元反応に消費される電子やホールは1%に満たないため、光エネルギー変換効率が非常に悪く、実用化に必要なエネルギー効率15%にはるかに及ばない。また、太陽電池+電気化学的CO

還元系よりも量子効率が極めて低い。したがって、高活性(H

生成とCO

還元の分離)と高耐久性を併せ持ち、高効率なCO

還元光触媒の具現化に至っていない。光触媒で用いる助触媒の問題としては、Cu電極は電極表面の腐食や生成物の付着により活性が低下する。したがって、耐久性が高く長期間利用可能な光電極材料は実現できていない。特許文献1では、窒素若しくはホウ素ドープアモルファスカーボンをアンモニアプラズマ処理する、又は窒素ドープアモルファスカーボンを水プラズマ処理することにより二酸化炭素還元触媒を得る二酸化炭素還元触媒の製造方法が開示されているが、光触媒活性を有するものではなかった。また、現状、C2化合物であるシュウ酸を生成させるCO

還元光触媒は開発されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
特開2023-53820号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、二酸化炭素還元に対する光触媒活性を有する二酸化炭素還元触媒を提供することである。さらには、二酸化炭素還元によりC2化合物を生成できる二酸化炭素還元触媒を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するためにアモルファスシリコンカーバイトの利用を検討した。検討を進めるなかで、本発明者は、窒素を導入したアモルファスシリコンカーバイトを作製し、さらにこれを水プラズマ処理又はアンモニアプラズマ処理することにより、CO

還元においてH

生成過電圧が高く、CO

を効率よく還元できる触媒が得られることを見いだした。こうして得られた窒素ドープアモルファスシリコンカーバイト触媒は、電解によるCO

還元触媒としてだけでなく、光によるCO

還元触媒として作用するものであり、従来なかったCO

還元光触媒として使用できるものであった。さらに、この触媒は、シュウ酸((COOH)

)、グリコール酸(HOCH

COOH)、酢酸(CH

COOH)等のC2化合物(炭素数が2個の化合物)を生成できるものであった。また、この触媒は、Cu等の助触媒を使用したものに比べて、安定性が高く活性の低下を抑えることができ、長期作動が可能となるものであった。本発明は、こうして完成されたものである。
【0007】
すなわち、本発明は以下に示す事項により特定されるものである。
(1)窒素ドープアモルファスシリコンカーバイトを水プラズマ処理又はアンモニアプラズマ処理することにより、二酸化炭素還元触媒を得る二酸化炭素還元触媒の製造方法。
(2)二酸化炭素還元触媒が光触媒であることを特徴とする上記(1)の二酸化炭素還元触媒の製造方法。
(3)基材上に窒素ドープアモルファスシリコンカーバイト層を形成し、形成された前記窒素ドープアモルファスシリコンカーバイト層を水プラズマ処理又はアンモニアプラズマ処理することにより、二酸化炭素還元触媒電極を得る二酸化炭素還元触媒電極の製造方法。
(4)窒素ドープアモルファスシリコンカーバイトに二酸化炭素還元活性を付与する方法であって、前記窒素ドープアモルファスシリコンカーバイト表面の酸素原子及び窒素原子の割合を増加させて、前記窒素ドープアモルファスシリコンカーバイト表面のC=O結合、アミノ基のC-N結合、並びにC=N結合及び/又はO=C-N結合を増加させることにより、前記窒素ドープアモルファスカーボンに二酸化炭素還元活性を付与する方法。
(5)表面に窒素原子及び酸素原子、並びにアミノ基のC-N結合、C=O結合及びSi-O結合を有し、表面における前記窒素原子の量が0.7atom%以上かつ前記アミノ基のC-N結合における窒素原子の量が0.2atom%以上であり、表面における前記酸素原子の量が40atom%以上かつ前記C=O結合及びSi-O結合における酸素原子の量が15atom%以上である窒素ドープアモルファスカーボン二酸化炭素還元触媒。
【発明の効果】
【0008】
本発明の製造方法により、二酸化炭素還元に対する光触媒活性を有する二酸化炭素還元触媒を製造することができる。本発明の二酸化炭素還元触媒は、二酸化炭素還元に対する光触媒活性を有し、C2化合物を生成することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1は、比較例1のサイクリックボルタモグラムを示す図である。
図2は、実施例1のサイクリックボルタモグラムを示す図である。
図3は、実施例2のサイクリックボルタモグラムを示す図である。
図4は、比較例1の定電位電解による電極触媒活性評価結果を示す図である。
図5は、実施例1の定電位電解による電極触媒活性評価結果を示す図である。
図6は、実施例2の定電位電解による電極触媒活性評価結果を示す図である。
図7は、光触媒活性評価に用いた光反応セルの構成を示す図である。
図8は、比較例1(実施例1未処理)の光触媒活性評価結果を示す図である。
図9は、実施例1(水プラズマ処理)の光触媒活性評価結果を示す図である。
図10は、実施例2(アンモニアプラズマ処理)の光触媒活性評価結果を示す図である。
図11は、実施例2、3及び4(いずれもアンモニアプラズマ処理)の光触媒活性評価結果を示す図であり、上段が実施例3、中段が実施例2、下段が実施例4の結果を示す。
図12(a)~(c)は、比較例1(実施例1未処理)のXPSスペクトルを示す図である。(a)はC1s、(b)はN1s、(c)はO1sの結果を表す。
図13(a)~(c)は、実施例1(水プラズマ処理)のXPSスペクトルを示す図である。(a)はC1s、(b)はN1s、(c)はO1sの結果を表す。
図14(a)~(c)は、実施例2(アンモニアプラズマ処理)のXPSスペクトルを示す図である。(a)はC1s、(b)はN1s、(c)はO1sの結果を表す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の二酸化炭素還元触媒の製造方法は、窒素ドープアモルファスシリコンカーバイトを水プラズマ処理又はアンモニアプラズマ処理することにより、二酸化炭素還元触媒を得る二酸化炭素還元触媒の製造方法である。窒素ドープアモルファスシリコンカーバイトとは、任意の組成比のケイ素原子と炭素原子により構成される非晶質材料であるアモルファスシリコンカーバイドに、n型不純物として微量の窒素原子を添加した材料である。本発明において、水プラズマ又はアンモニアプラズマで処理する前の窒素ドープアモルファスシリコンカーバイトにおける窒素原子の含有量は、炭素原子とケイ素原子の合計に対して1~5atom%が好ましく、1~2%atom%がより好ましい。また、本発明において、水プラズマ又はアンモニアプラズマで処理する前の窒素ドープアモルファスシリコンカーバイトにおけるケイ素原子の含有量は、炭素原子とケイ素原子の合計に対して25~50atom%が好ましく、40~50atom%がより好ましい。本発明において、水プラズマ又はアンモニアプラズマで処理する前の窒素ドープアモルファスシリコンカーバイトの光学ギャップは2.8eV以上が好ましく、水プラズマ又はアンモニアプラズマ処理によりシュウ酸の生成だけでなく、シュウ酸を再還元(さらには逐次還元)してグリコール酸又は酢酸を得る観点からは光学ギャップ3.0eVであることが好ましい。窒素ドープアモルファスシリコンカーバイトの光学ギャップは、水プラズマ又はアンモニアプラズマ処理後もほぼ変わらない。水プラズマ又はアンモニアプラズマで処理する前の本発明に使用される窒素ドープアモルファスシリコンカーバイトの製造方法は、特に制限されるものではない。例えば、炭素原子、ケイ素原子及び窒素原子を含む原料ガスをプラズマ化して成膜を行い製造することができる。原料ガスとしては、炭素原子、ケイ素原子及び窒素原子の少なくとも1種の原子を含む化合物を気化させたものを単独又は混合して、炭素原子、ケイ素原子及び窒素原子を含む原料ガスを作製することができる。原料ガスに使用する化合物としては、例えば、炭素原子とケイ素原子を含むものとしてテトラメチルシラン、トリエチルシラン、テトラフェニルシラン等のシラン化合物、ヘキサメチルジシロキサンなどを挙げることができ、炭素原子と窒素原子を含むものとしてシアン化水素、アセトニトリル、エタンシアニド、プロパンシアニド、ホルムアミド、アセトアミド、メチルアミン、エチルアミン等を挙げることができ、炭素原子とケイ素原子と窒素原子を含むものとして、ヘキサメチルジシラザン、トリエチルシラザン、ヘキサエチルジシラザン、ビス(トリメチルシリル)アミン等を挙げることができる。本発明における水プラズマ又はアンモニアプラズマで処理する前の窒素ドープアモルファスシリコンカーバイトは、例えば、これらの化合物の1種又は2種以上を気化させた原料ガスに反応調整ガスとしてアルゴンガスを混在させて、プラズマ化して成膜を行い製造することができる。
(【0011】以降は省略されています)

この特許をJ-PlatPat(特許庁公式サイト)で参照する

関連特許

国立大学法人山口大学
含硫黄ポリマー
1か月前
国立大学法人山口大学
地下水流向流速計
6か月前
国立大学法人山口大学
植物の成長を調節する方法
6か月前
国立大学法人山口大学
核酸の導入方法、核酸導入装置
3か月前
国立大学法人山口大学
二酸化炭素還元触媒の製造方法
24日前
有限会社ひわだや
画像生成方法
7か月前
国立大学法人山口大学
正極活物質の製造方法及び正極活物質
8か月前
東洋鋼鈑株式会社
遺伝子変異評価用キット
3か月前
NTT株式会社
通信システム、及び通信方法
1か月前
国立大学法人山口大学
気管支喘息発作の治療剤、鋳型気管支炎の予防剤
6か月前
国立大学法人山口大学
アポトーシスの阻害剤、及び神経変性疾患治療剤
1か月前
国立大学法人山口大学
包接構造を有するネットワークポリマーゲルの製造方法
6か月前
岩谷産業株式会社
銅触媒による立体特異的シアノ化反応
24日前
株式会社竹中工務店
振動検出装置及び振動検出プログラム
6か月前
国立大学法人山口大学
ニッケル系金属板一体型セラミックス基板およびその製造方法
4か月前
国立大学法人山口大学
自発的水中分散可能な脂溶性集合体を含む多孔質粒子、及びその製造方法
7か月前
澁谷工業株式会社
線維化を伴う肝疾患を予防又は治療するための医薬組成物
4か月前
丸菱油化工業株式会社
リン含有重合体を含む繊維用難燃剤及び難燃性繊維製品
2日前
中外製薬株式会社
抗体改変部位認識キメラ受容体
7か月前
ハカルプラス株式会社
硝酸態窒素濃度の計測方法及び計測装置
2か月前
日本電信電話株式会社
連携無線通信装置、無線通信システム、空間多重無線伝送方法及びプログラム
6か月前
国立大学法人山口大学
ベンゼン系芳香族炭化水素基が置換したペルフルオロ環状スルホニルイミド化合物を環縮小した化合物、及びその製造方法
1か月前
国立大学法人山口大学
フルオロウラシル、イリノテカン、及びオキサリプラチンの併用療法による膵がん治療における副作用発生リスク又は治療効果の予測マーカー
7か月前
国立大学法人山口大学
アリル基を有するフルオロアルキルスルホンアミド及びその製造方法、並びにフルオロアルキルスルホンイミド塩化合物、その重合体及び製造方法
1か月前
国立大学法人山口大学
同環内に2つ以上のトリフルオロメチル基を有するフェノール化合物の製造方法及び同環内に2つ以上のトリフルオロメチル基を有するフェノール化合物
1か月前
ユニチカ株式会社
複合中空糸膜
9日前
東レ株式会社
中空糸膜モジュール
8日前
株式会社ニクニ
液体処理装置
22日前
日本化薬株式会社
メタノール改質触媒
23日前
株式会社大善
濃縮脱水機
1か月前
株式会社MRT
微細バブル発生装置
12日前
株式会社カネカ
製造システム
1か月前
テルモ株式会社
ろ過デバイス
1か月前
個人
攪拌装置
12日前
東京理化器械株式会社
クリップ
16日前
日本ソリッド株式会社
水中懸濁物質付着素材
1か月前
続きを見る