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公開番号2025123648
公報種別公開特許公報(A)
公開日2025-08-25
出願番号2024019223
出願日2024-02-13
発明の名称芽胞形成菌を用いたストロンチウム除去方法、及び除去装置
出願人フタバイオ株式会社
代理人個人
主分類G21F 9/18 20060101AFI20250818BHJP(核物理;核工学)
要約【課題】放射線管理区域内での作業時間を短縮し、作業による被ばくのリスクを最小限にとどめることができる汚染水処理装置を開発することを課題とする。
【解決手段】放射線管理区域外で芽胞形成を誘導し、芽胞形成過程の細菌を製造・保存し、放射線管理区域内に搬入し、芽胞形成細菌が生存できる環境に汚染水を調節した槽に芽胞形成菌を投入し、芽胞を形成させることによって、ストロンチウムを除去する方法を開発した。従来に比べ、放射線管理区域内での作業が短時間となるため、作業による被ばくのリスクを最小限にとどめることができるだけではなく、芽胞形成菌の状態をコントロールしやすく、安定して芽胞形成能を有する菌を供給し、汚染処理効率を高く維持することができる。
【選択図】図5
特許請求の範囲【請求項1】
放射線に汚染された汚染水処理方法であって、
芽胞形成細菌が生存できる環境に汚染水を調節する調節工程と、
予め芽胞形成が誘導された芽胞形成過程の細菌を、調節された汚染水に投入し、ストロンチウムを吸収させる吸収工程と、
ストロンチウム浄化水と、ストロンチウムを含有する固体とに分離する固液分離工程を備えている汚染水処理方法。
続きを表示(約 610 文字)【請求項2】
前記芽胞形成過程の細菌は、放射線管理区域外で培養し芽胞形成能が誘導され、
芽胞形成能を有する状態で洗浄、濃縮を行い、
保管することを特徴とする請求項1記載の汚染水処理方法。
【請求項3】
芽胞形成過程の菌の保管は4℃以下の温度条件で行うことを特徴とする請求項2記載の汚染水処理方法。
【請求項4】
芽胞形成過程の菌の保管は、凍結温度で行うことを特徴とする請求項3記載の汚染水処理方法。
【請求項5】
芽胞形成細菌を用いた水処理装置であって、
芽胞形成細菌が生存できる環境に汚染水を調節する汚染水調節槽と、
芽胞形成過程の菌を投入し、ストロンチウムを吸収させる吸収槽と、
Sr浄化水と、Srが濃縮された固体を分離する固液分離槽を備えていることを特徴とする水処理装置。
【請求項6】
汚染水調節槽は、微生物が生育できるように水質を調節する槽であり、
pH調節装置、及び/又は希釈装置を備え、
吸収槽は、芽胞形成過程の菌が芽胞形成を効率良く行うために散気装置、加温冷却装置、撹拌機の少なくともいずれか1つを備えていることを特徴とする請求項5記載の水処理装置。
【請求項7】
固液分離槽には分離膜を備え、固液分離を行うことを特徴とする請求項5、又は6記載の水処理装置。

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
放射性物質、特にストロンチウムを含む汚染水を芽胞形成菌により処理する安全な方法、及び処理装置に関する。
続きを表示(約 2,800 文字)【背景技術】
【0002】
東日本大震災から12年以上が経過しているが、福島第一原子力発電所では、依然として廃炉への取り組みが続けられている。事故当初から問題となっていた汚染水についても、多核種除去設備(ALPS)で処理した処理水の海洋放出が2023年から開始されているが、汚染水の処理が終わっているわけではない。東京電力によれば、原子炉建屋への地下水・雨水の流入は、地下水のくみ上げや凍土壁の造設によって、対策前の約540m

/日(2014年5月)から低減しているものの、約140m

/日(2020年平均)の汚染水が発生している。そのため日々発生する汚染水の処理は未だに大きな問題となっている。
【0003】
汚染水は、発生する量が多いだけではなく、ストロンチウム、セシウムなど63種の放射性物質を含んでいることが処理を困難にしている。汚染水の処理方法としては、大きく分けて薬品や吸着剤を使用する方法と、微生物を利用する方法の2通りがある。現在福島第一原子力発電所で実施されている汚染水処理は、薬品や吸着剤を使用する方法が取られ、トリチウムを除く62種の放射性物質が除去されている。この方法の主な問題点としては除去率が低いこと、吸着する性能が低いこと、容易に除去しにくい核種が存在すること、カラムの段数が多いこと、吸収材の耐用期間が短いこと、吸収材が高価であり運転コストが高額になること、廃棄物として高レベル放射性物質を吸着した吸収材が大量に生じ、その処理と保管が必要になることなどがある。
【0004】
汚染水の処理方法として、薬品や吸着剤を使用する方法の他に、微生物を用いて汚染水や廃水から水溶性金属イオンを除去する方法が知られている(非特許文献1、特許文献1~5)。非特許文献1には、飲水に工場廃水から混入したストロンチウムを好熱性細菌(Bacillus属)によって除去する方法が開示されている。特許文献1には、原子力施設等で発生する有機物と放射性物質が含まれる放射性排水を微生物によって処理する装置、及び方法が開示されている。特許文献2には、微生物が形成する生物膜にセシウムを中心とした放射性物質を吸収、吸着させ、汚染水を浄化する方法が開示されている。特許文献3には、脱窒菌、セシウム蓄積菌(Rhodococcus属)によってセシウムを吸着させ、Hebeloma属に属する微生物の菌糸にストロンチウムを吸着させることによって、廃液からセシウム、ストロンチウムを除去する方法が開示されている。本願発明者も芽胞形成菌を用いて、ストロンチウムを含む汚染水を処理する方法を開示している(特許文献4、5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
特開2007-064732号公報
特開2013-104765号公報
特開2007-271306号公報
特許第6280661号公報
特開2019-128187号公報
【非特許文献】
【0006】
Chaalal, O., et al., 2015, J. Indust. Eng. Chem. Vol.21, p.822-827.
Foerster, H. F. & Foster, J. W., 1966, J. Bacteriol. Vol.91,p.1333-1345.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
非特許文献1に記載の方法は飲料水に適したレベルまでストロンチウムを除去する方法であるが、原子力発電所の事故で発生した汚染水とは、想定している汚染水の量やストロンチウム濃度が異なること、種々の汚染物質が含まれていることからそのまま応用できるものとは考えられない。また、特許文献1に記載の発明は、原子力施設等で、放射性物質が付着した衣類等を洗濯したときに発生する洗浄排水の処理を行う方法であり、想定している汚染水の量や濃度が低く、原子力発電所の事故で発生した汚染水にそのまま適用することはできない。特許文献2に記載の発明は、汚泥に含まれる微生物が形成する生物膜に、特許文献3に記載の発明は、脱窒菌が含まれる活性汚泥によりセシウムを吸着させ除去する発明である。生物膜や活性汚泥を構成する微生物によって、処理能力が変わると思われるが、活性汚泥に含まれる微生物の量や種類をコントロールする機構がなく処理能力を調整することが難しい。特許文献4に記載の発明は、芽胞形成菌によりストロンチウム除去を、特許文献5は、バチルス属菌、ロドコッカス属菌を用いてストロンチウム、及びセシウムを除去する方法である。
【0008】
しかし、特許文献2~4の微生物を用いる方法は、処理装置内の微生物の培養条件の確認等のため、放射線管理区域内での作業が一定時間必要となる。放射線量の高い管理区域内での作業は、被ばくによるリスクがあるため、できるたけ短時間であることが望ましい。本発明は、放射線量の高い区域に立ち入る時間をなるべく短くし、安全性に配慮しつつ、多量の汚染水を迅速に効率よく、かつ、処理後に生じる産業廃棄物が少ない装置及び方法を提供することを課題とする。特に、処理対象水に多く含まれており、生物に対する影響も大きいストロンチウムやセシウムの濃度を効率良く、かつ安価に下げる方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、金属イオンを含む汚染水、特に放射性ストロンチウムを含有する水を安全に処理する方法、及びこれに用いる処理装置に関する。
(1)放射線に汚染された汚染水処理方法であって、芽胞形成細菌が生存できる環境に汚染水を調節する調節工程と、予め芽胞形成が誘導された芽胞形成過程の細菌を、調節された汚染水に投入し、ストロンチウムを吸収させる吸収工程と、ストロンチウム浄化水と、ストロンチウムを含有する固体とに分離する固液分離工程を備えている汚染水処理方法。
予め芽胞形成が誘導された芽胞形成過程の細菌を汚染水に投入し、ストロンチウムを吸収させることから、安定して効率よくストロンチウムを吸収することができる。
【0010】
(2)前記芽胞形成過程の細菌は、放射線管理区域外で培養し芽胞形成能が誘導され、芽胞形成能を有する状態で洗浄、濃縮を行い、保管することを特徴とする(1)記載の汚染水処理方法。
芽胞形成菌の芽胞形成能を誘導する工程は放射線管理区域外で行うため、管理区域内で作業を行う時間を減らすことが可能となり、被ばくのリスクを最小限にとどめることができる。
(【0011】以降は省略されています)

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