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公開番号2025107310
公報種別公開特許公報(A)
公開日2025-07-17
出願番号2025075403,2023039794
出願日2025-04-30,2019-03-26
発明の名称細胞の有する二本鎖DNAの標的部位を改変する方法
出願人国立大学法人神戸大学
代理人個人,個人,個人
主分類C12N 15/09 20060101AFI20250710BHJP(生化学;ビール;酒精;ぶどう酒;酢;微生物学;酵素学;突然変異または遺伝子工学)
要約【課題】細胞の有する二本鎖DNAの標的部位を改変する方法の提供。
【解決手段】本発明は、細胞の有する二本鎖DNAの標的部位を改変する方法であって、選択された二本鎖DNA中の標的ヌクレオチド配列と特異的に結合する核酸配列認識モジュールと、核酸塩基変換酵素又はDNAグリコシラーゼとが結合した複合体、及び挿入配列を含むドナーDNAを該二本鎖DNAと接触させ、該標的部位において該二本鎖DNAの少なくとも一方の鎖を切断することなく、該標的部位を該挿入配列に置換する、又は該標的部位に該挿入配列を挿入する工程を含む、方法を提供する。
【選択図】なし
特許請求の範囲【請求項1】
細胞の有する二本鎖DNAの標的部位を改変する方法において使用される選択された二本鎖DNA中の標的ヌクレオチド配列と特異的に結合する核酸配列認識モジュールと、核酸塩基変換酵素又はDNAグリコシラーゼとが結合した複合体であって、該方法は該複合体及び挿入配列を含むドナーDNAを該二本鎖DNAと接触させ、該標的部位において該二本鎖DNAの少なくとも一方の鎖を切断することなく、該標的部位を該挿入配列に置換する、又は該標的部位に該挿入配列を挿入する工程を含む、複合体。
続きを表示(約 720 文字)【請求項2】
前記ドナーDNAが、標的部位の隣接領域に相同な配列を含む、請求項1に記載の複合体。
【請求項3】
前記核酸配列認識モジュールが、Casエフェクタータンパク質の少なくとも1つのDNA切断能が失活したCRISPR-Casシステム、ジンクフィンガーモチーフ、TALエフェクター及びPPRモチーフからなる群より選択される、請求項1又は2に記載の複合体。
【請求項4】
前記核酸配列認識モジュールが、Casエフェクタータンパク質の2つのDNA切断能のうちの一方のみのDNA切断能が失活したCRISPR-Casシステムである、請求項1~3のいずれか1項に記載の複合体。
【請求項5】
前記核酸配列認識モジュールが、Casエフェクタータンパク質の両方のDNA切断能が失活したCRISPR-Casシステムである、請求項1~3のいずれか1項に記載の複合体。
【請求項6】
前記核酸塩基変換酵素がデアミナーゼである、請求項1~5のいずれか1項に記載の複合体。
【請求項7】
前記デアミナーゼがシチジンデアミナーゼである、請求項6に記載の複合体。
【請求項8】
前記シチジンデアミナーゼがPmCDA1である、請求項7に記載の複合体。
【請求項9】
二本鎖DNAと複合体との接触が、該細胞への、該複合体をコードする核酸の導入により行われる、請求項1~8のいずれか1項に記載の複合体。
【請求項10】
前記細胞が原核生物細胞である、請求項1~9のいずれか1項に記載の複合体。
(【請求項11】以降は省略されています)

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、DNAの二重鎖切断を伴わず(無切断もしくは一本鎖切断で)、相同組換えを
用いて細胞の有する二本鎖DNAの特定領域内の標的部位の改変を可能とする、二本鎖DNAの改変方法に関する。
続きを表示(約 3,800 文字)【背景技術】
【0002】
CRISPR(clustered regularly interspaced short palindromic repeats)及びCRISPR
関連(CRISPR-associated; Cas)タンパク質は、単一のガイドRNA(sgRNA)及びプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)に依存的な様式で標的DNAを切断することで、細菌の適応免疫系として働くことが知られている。ストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)由来のCas9ヌクレアーゼは、DNA二重鎖切断(DSB)の修復経路を有する真核生物において、強力なゲノム編集ツールとして広く使用されている(例えば、非特許文献1
、2)。非相同末端結合(NHEJ)経路によるDSBの修復中に、標的DNAに小さな挿入及び/又は欠失(indels)が導入され、部位特異的な変異又は遺伝子破壊が生じる。効率は宿主細胞に依存するものの、より正確な編集のために、標的領域に対するホモロジーアームを含むドナーDNAを提供することにより、相同組換え修復(HDR)を促進することができる。しかしながら、上記従来の方法では、二本鎖DNAの切断に伴い、想定外のゲノム改変を伴う
ため、強い細胞毒性や染色体の転位などの副作用があり、遺伝子治療における信頼性を損なったり、ヌクレオチド改変による生存細胞数が極めて少ないなどといった共通の課題がある。また、Cas9ニッカーゼ(nCas9)を用いた相同組換えも報告されているが(非特許文
献1、2)、組換え誘導効率はCas9ヌクレアーゼと比較して非常に低い場合も多い(非特許文献3)。また、本発明者が知る限り、両方のヌクレアーゼ活性が不活化したCas9(dCas9)を用いた相同組換えは報告されていない。
【0003】
最近、標的領域に対するホモロジーアームを含むドナーDNAを使用せずに、標的遺伝子
座でヌクレオチドを直接編集する、デアミナーゼに媒介される標的塩基編集が実証されている(例えば、特許文献1、非特許文献4~6)。この技術は、ヌクレアーゼに媒介されるDNA切断の代わりに、DNA脱アミノ化を利用するため、細胞に対する毒性が低く、またピンポイントに変異を導入することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
国際公開第2015/133554号
【非特許文献】
【0005】
Mali, P. et al., Science 339:823-827 (2013)
Cong, L. et al., Science 339:819-823 (2013)
Ran, F.A. et al., Nat Protoc, 8:2281-2308 (2013)
Komor, A. C. et al., Nature 61:5985-91 (2016)
Nishida, K. et al., Science 102:553-563 (2016)
Ma, Y. et al., Nat. Methods 1-9 (2016) doi:10.1038/nmeth.4027
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、この技術は、デアミナーゼを用いることから、導入できる変異のタイプや変異部位に制約が生じ、また、遺伝子の向きや組み合わせをスイッチさせたり、遺伝子
断片をノックインさせることなどは不可能であった。従って、本発明の課題は、導入できる変異のタイプや変異部位に制約されずに、遺伝子の向きや組み合わせをスイッチさせたり、遺伝子断片をノックインさせることが可能な、デアミナーゼなどの核酸塩基変換酵素又はDNAグリコシラーゼを用いた新規なDNA改変技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
分裂する細胞にとって、特に重大なDNA損傷の様式は、DNA二本鎖の両方の鎖が切断されてしまう障害であり、この障害を修復する機構として、相同組換え及び非相同末端再結合が知られている。一方で、DNA二本鎖の片方の鎖の損傷の場合には、主に、アルキル化や
脱アミノ化による損傷を修復する機構である塩基除去修復や、数十塩基対に及ぶ比較的大規模な、二重鎖を歪ませるような損傷に対し行われる修復機構であるヌクレオチド除去修復 (nucleotide excision repair: NER)により修復が行われる。割合等は検証されていないものの、DNA二本鎖の片方の鎖が損傷した場合にも、相補鎖修復を誘導することも知ら
れている。
【0008】
しかしながら、塩基除去修復に対する相補鎖修復の活性の度合いは十分に検証されておらず、塩基除去修復を利用した、相同組換えによるDNAの編集は積極的に行われてこなか
った。本発明者の知る限り、このようなDNA編集の報告はない。そのような状況の下、本
発明者は、核酸塩基変換酵素を用いて細胞内のDNAに脱アミノ化や脱塩基を引き起こすこ
とで、相補鎖修復を誘導することができ、この際にドナーDNAを該DNAと接触させることで、相同組換えを用いたDNAの組換を行えるのではないかとの着想を得た。その着想に基づ
き研究を進めた結果、核酸配列認識モジュールと、核酸塩基変換酵素とが結合した複合体、及び挿入配列を含むドナーDNAを標的のDNAに接触させることで、細胞への毒性を抑制しつつDNAの相同組換えが可能であること、しかも好ましい実施態様において、驚くべきこ
とに、標的部位において100%に近い相同組換え活性が生じることを見出した。本発明者は、これらの知見に基づいてさらに研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は以下の通りである。
[1] 細胞の有する二本鎖DNAの標的部位を改変する方法であって、選択された二本鎖DNA中の標的ヌクレオチド配列と特異的に結合する核酸配列認識モジュールと、核酸塩基変換酵素又はDNAグリコシラーゼとが結合した複合体、及び挿入配列を含むドナーDNAを該二本鎖DNAと接触させ、該標的部位において該二本鎖DNAの少なくとも一方の鎖を切断することなく、該標的部位を該挿入配列に置換する、又は該標的部位に該挿入配列を挿入する工程を含む、方法。
[2] 前記ドナーDNAが、標的部位の隣接領域に相同な配列を含む、[1]に記載の方
法。
[3] 前記核酸配列認識モジュールが、Casエフェクタータンパク質の少なくとも1つ
のDNA切断能が失活したCRISPR-Casシステム、ジンクフィンガーモチーフ、TALエフェクター及びPPRモチーフからなる群より選択される、[1]又は[2]に記載の方法。
[4] 前記核酸配列認識モジュールが、Casエフェクタータンパク質の2つのDNA切断能のうちの一方のみのDNA切断能が失活したCRISPR-Casシステムである、[1]~[3]の
いずれかに記載の方法。
[5] 前記核酸配列認識モジュールが、Casエフェクタータンパク質の両方のDNA切断能が失活したCRISPR-Casシステムである、[1]~[3]のいずれかに記載の方法。
[6] 前記核酸塩基変換酵素がデアミナーゼである、[1]~[5]のいずれかに記載の方法。
[7] 前記デアミナーゼがシチジンデアミナーゼである、[6]に記載の方法。
[8] 前記シチジンデアミナーゼがPmCDA1である、[7]に記載の方法。
[9] 二本鎖DNAと複合体との接触が、該細胞への、該複合体をコードする核酸の導入
により行われる、[1]~[8]のいずれかに記載の方法。
[10] 前記細胞が原核生物細胞又は真核生物細胞である、[1]~[9]のいずれかに記載の方法。
[11] 前記細胞が微生物細胞である、[10]に記載の方法。
[12] 前記細胞が植物細胞、昆虫細胞又は動物細胞である、[10]に記載の方法。[13] 前記動物細胞が脊椎動物細胞である、[12]に記載の方法。
[14] 前記脊椎動物細胞が哺乳類動物細胞である、[13]に記載の方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、導入できる変異のタイプや変異部位に制約されずに、遺伝子の向きや組み合わせをスイッチさせたり、遺伝子断片をノックインさせたりすることが可能な、デアミナーゼなどの核酸塩基変換酵素又はDNAグリコシラーゼを用いた新規なDNA改変技術が提供される。本発明のDNA改変技術は、二本鎖DNAを切断することなく標的部位を改変できるため、切断に伴う想定外の再編成や毒性が低く抑えられ、しかも従来の手法と比べて、はるかに効率良く標的部位を改変し得る。
【図面の簡単な説明】
(【0011】以降は省略されています)

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