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公開番号2025084220
公報種別公開特許公報(A)
公開日2025-06-03
出願番号2023197956
出願日2023-11-22
発明の名称インクジェット印刷用水系インク
出願人花王株式会社
代理人弁理士法人池内アンドパートナーズ
主分類C09D 11/322 20140101AFI20250527BHJP(染料;ペイント;つや出し剤;天然樹脂;接着剤;他に分類されない組成物;他に分類されない材料の応用)
要約【課題】保存安定性に優れ、かつ、低吸液性印刷基材への印刷に用いる際に、得られる印刷物のインク塗膜の基材密着性(耐テープ剥離性及び耐擦過性)に優れる、インクジェット印刷用水系インク及び該水系インクを用いるインクジェット印刷方法を提供する。
【解決手段】低吸液性印刷基材へのインクジェット印刷用水系インクであって、
該水系インクが、顔料、顔料分散剤、定着用樹脂、水溶性有機溶剤、及び水を含有し、
該定着用樹脂が、分子内に環状エーテル構造を有する環状エーテルアルキルアクリレート(a-1)由来の構成単位と、アクリル酸及びメタクリル酸からなる群から選ばれる1種以上のカルボキシ基含有モノマー(a-2)由来の構成単位とを含むビニル系樹脂である、インクジェット印刷用水系インク、及び該水系インクを用いるインクジェット印刷方法である。
【選択図】なし
特許請求の範囲【請求項1】
低吸液性印刷基材へのインクジェット印刷用水系インクであって、
該水系インクが、顔料、顔料分散剤、定着用樹脂、水溶性有機溶剤、及び水を含有し、
該定着用樹脂が、分子内に環状エーテル構造を有する環状エーテルアルキルアクリレート(a-1)由来の構成単位と、アクリル酸及びメタクリル酸からなる群から選ばれる1種以上のカルボキシ基含有モノマー(a-2)由来の構成単位とを含むビニル系樹脂である、インクジェット印刷用水系インク。
続きを表示(約 980 文字)【請求項2】
前記環状エーテルアルキルアクリレート(a-1)が、テトラヒドロフルフリルアクリレート、(3-エチル-3-オキセタニル)メチルアクリレート、(2-メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチルアクリレート、及び環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレートからなる群から選ばれる1種以上である、請求項1に記載のインクジェット印刷用水系インク。
【請求項3】
前記ビニル系樹脂の全構成単位中の前記環状エーテルアルキルアクリレート(a-1)由来の構成単位の含有量が25質量%以上96質量%以下である、請求項1又は2に記載のインクジェット印刷用水系インク。
【請求項4】
前記ビニル系樹脂の酸価が15mgKOH/g以上200mgKOH/g以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載のインクジェット印刷用水系インク。
【請求項5】
前記ビニル系樹脂のガラス転移温度Tgが-30℃以上45℃以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載のインクジェット印刷用水系インク。
【請求項6】
前記ビニル系樹脂のカルボキシ基の少なくとも一部がアルカリ金属の水酸化物及び有機アミンからなる群から選ばれる1種以上で中和されてなる、請求項1~5のいずれか1項に記載のインクジェット印刷用水系インク。
【請求項7】
前記顔料の形態が、前記顔料分散剤として顔料分散樹脂で分散されてなる形態である、請求項1~6のいずれか1項に記載のインクジェット印刷用水系インク。
【請求項8】
前記顔料分散樹脂及び前記定着用樹脂の合計含有量に対する該定着用樹脂の含有量の質量比[定着用樹脂/(顔料分散樹脂+定着用樹脂)]が0.50以上0.90以下である、請求項7に記載のインクジェット印刷用水系インク。
【請求項9】
前記水溶性有機溶剤がアルキレングリコールアルキルエーテルを含む、請求項1~8のいずれか1項に記載のインクジェット印刷用水系インク。
【請求項10】
前記低吸液性印刷基材が合成樹脂の印刷基材である印刷に用いられる、請求項1~9のいずれか1項に記載のインクジェット印刷用水系インク。
(【請求項11】以降は省略されています)

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット印刷用水系インク、及び該水系インクを用いるインクジェット印刷方法に関する。
続きを表示(約 4,500 文字)【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方式を用いる印刷方法は、微細なノズルからインク液滴を吐出し、直接印刷基材に付着させて、文字や画像が記録された印刷物等を得る方法である。この印刷方法は、フルカラー化が容易でかつ安価であり、普通紙やラベル紙、樹脂フィルム等の様々な印刷基材が使用可能であり、印刷基材に対して非接触である等、数多くの利点があるため普及が著しい。特に印刷物の耐候性や耐水性の観点から、着色剤に顔料を用いたインクが主流となってきている。
【0003】
例えば、特許文献1には、密着性、耐摩擦性、及び耐ブロッキング性に優れた画像等の乾燥皮膜を形成しうる、環境に配慮されたバインダー成分及びエマルジョンの提供を目的として、ポリマー鎖A2及びポリマー鎖B2を含むA-Bブロックコポリマーであり、ポリマー鎖A2が、生物材料由来のメタクリレートに由来する構成単位を含むポリマーブロックであり、ポリマー鎖B2が、メタクリル酸に由来する構成単位及び生物材料由来のメタクリレートに由来する構成単位を含み、カルボキシ基の少なくとも一部がアルカリで中和されているポリマーブロックであるバインダー成分及び該バインダー成分で形成されたバインダー粒子を含有するエマルジョンが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
特開2022-134083号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、広告看板等への印刷を行うサイングラフィックス印刷市場においては、屋内及び屋外掲示による印刷物の耐久性の観点から、印刷基材として主に合成樹脂が用いられている。一方で、印刷基材として合成樹脂を用いる特有の課題として、得られる印刷物に対するインク塗膜の基材密着性、特に耐テープ剥離性及び耐擦過性の向上が求められる。インク塗膜の耐テープ剥離性及び耐擦過性が不足する場合、広告看板等を掲示している際に、インク塗膜が合成樹脂から剥がれ、印刷物の美粧性の低下や不正確な情報の掲示を招く恐れがある。そのため、印刷基材として合成樹脂へ印刷する際は、印刷物に対するインク塗膜の基材密着性の向上が強く求められている。特に水系インクを用いて合成樹脂へ印刷する場合、水系インクにより形成されるインク塗膜が合成樹脂に十分に密着する必要がある。
また、合成樹脂は、紙の印刷基材とは異なり、その表面が疎水的かつ低吸液性の印刷基材であるため、合成樹脂表面に対するインクの濡れ性が劣る。そのため、インクの濡れ性を向上させるため、疎水的な有機溶剤がインクに配合されることがある。しかしながら、このような疎水的な有機溶剤が配合されたインクの場合には、インク保存時にインク中の固形分(顔料及びポリマー)の凝集によりインクの保存安定性が低下し、微細なインクジェットノズルからのインク液滴の吐出が困難となる場合がある。そのため、インクの保存安定性の向上が求められる。
しかしながら、特許文献1のバインダー成分を水系インクに配合して、低吸液性の印刷基材として合成樹脂へのインクジェット印刷に用いた際に、水系インクの保存安定性が十分でなく、また、得られる印刷物のインク塗膜の基材密着性(特に耐テープ剥離性)に改善の余地があることが判明した。
本発明は、保存安定性に優れ、かつ、低吸液性印刷基材への印刷に用いる際に、得られる印刷物のインク塗膜の基材密着性(耐テープ剥離性及び耐擦過性)に優れる、インクジェット印刷用水系インク及び該水系インクを用いるインクジェット印刷方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、低吸液性印刷基材として広く用いられるポリ塩化ビニル樹脂を用いる態様をモデルケースとして、Hansen溶解度パラメータ(HSP値)を用いて(メタ)アクリル系モノマーのスクリーニングを実施したところ、「ポリ塩化ビニル樹脂の相互作用半径R
0
に対するポリ塩化ビニル樹脂とモノマーとの溶解度パラメータ(HSP値)の差R
a
の比として算出される相対的エネルギー差(RED)が1以下である」条件を満たすアクリル系モノマー由来の構成単位を含むポリマーがポリ塩化ビニル樹脂に対して高い耐擦過性を示すことを見出し、この条件を満たすアクリル系モノマーはいずれも分子内に環状エーテル構造を有することに着目し、顔料、顔料分散剤、定着用樹脂、及び水を含有するインクジェット印刷用水系インクであって、該定着用樹脂が、分子内に環状エーテル構造を有する環状エーテルアルキルアクリレート由来の構成単位と、アクリル酸及びメタクリル酸からなる群から選ばれる1種以上のカルボキシ基含有モノマー由来の構成単位とを含むビニル系樹脂であることにより、上記課題を解決しうることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は、以下の[1]及び[2]を提供する。
[1]低吸液性印刷基材へのインクジェット印刷用水系インクであって、
該水系インクが、顔料、顔料分散剤、定着用樹脂、水溶性有機溶剤、及び水を含有し、
該定着用樹脂が、分子内に環状エーテル構造を有する環状エーテルアルキルアクリレート(a-1)由来の構成単位と、アクリル酸及びメタクリル酸からなる群から選ばれる1種以上のカルボキシ基含有モノマー(a-2)由来の構成単位とを含むビニル系樹脂である、インクジェット印刷用水系インク。
[2]前記[1]に記載の水系インクを用いて、低吸液性印刷基材に印刷する、インクジェット印刷方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、保存安定性に優れ、かつ、低吸液性印刷基材への印刷に用いる際に、得られる印刷物のインク塗膜の基材密着性(耐テープ剥離性及び耐擦過性)に優れる、インクジェット印刷用水系インク及び該水系インクを用いるインクジェット印刷方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[インクジェット印刷用水系インク]
本発明のインクジェット印刷用水系インク(以下、単に「水系インク」又は「インク」ともいう)は、低吸液性印刷基材へのインクジェット印刷用水系インクであって、該水系インクが、顔料、顔料分散剤、定着用樹脂、水溶性有機溶剤、及び水を含有し、該定着用樹脂が、分子内に環状エーテル構造を有する環状エーテルアルキルアクリレート(a-1)由来の構成単位と、アクリル酸及びメタクリル酸からなる群から選ばれる1種以上のカルボキシ基含有モノマー(a-2)由来の構成単位とを含むビニル系樹脂である。
本発明において、「水系」とは、媒体中で、水が質量基準で最大割合を占めていることを意味する。
また、本発明において、「水溶性有機溶剤」とは、有機溶剤を25℃の水100mLに溶解させたときに、その溶解量が5mL以上である有機溶剤をいう。
また、本明細書において、低吸液性印刷基材の「低吸液性」とは、低吸液性及び非吸液性を含む概念であり、印刷基材と純水との接触時間100m秒における該印刷基材の吸水量が0g/m
2
以上10g/m
2
以下であることを意味する。前記吸水量は、該吸水量は、自動走査吸液計(例えば、熊谷理機工業(株)製「KM500win」)を用いて、23℃、相対湿度50%の条件下で、純水の接触時間100m秒における転移量として測定できる。また、「印刷」とは、文字や画像を記録する印刷、印字を含む概念であり、「印刷物」とは、文字や画像が記録された印刷物、印字物を含む概念である。
【0010】
本発明によれば、保存安定性に優れ、かつ、低吸液性印刷基材への印刷に用いる際に、得られる印刷物のインク塗膜の基材密着性(耐テープ剥離性及び耐擦過性)に優れる。その理由は定かではないが、以下のように考えられる。
本発明の水系インクは、定着用樹脂として、分子内に環状エーテル構造を有する環状エーテルアルキルアクリレート由来の構成単位と、アクリル酸及びメタクリル酸からなる群から選ばれる1種以上のカルボキシ基含有モノマー由来の構成単位とを含むビニル系樹脂を含有する。この環状エーテルアルキルアクリレート由来の構成単位の環状エーテル構造部位は、低吸液性印刷基材として用いる合成樹脂表面に存在する極性官能基と相互作用し易いため、低吸液性印刷基材として用いられる合成樹脂に対する濡れ性が向上し、インク塗膜の基材密着性が向上すると考えられる。さらに、印刷基材を構成する合成樹脂の種類によっては、合成樹脂表面に存在する極性官能基と環状エーテルアルキルアクリレート由来の構成単位の環状エーテル構造部位との間で双極子-双極子相互作用や水素結合の相互作用を発現し、また、合成樹脂の疎水性部位と環状エーテルアルキルアクリレート由来の構成単位を含むビニル系樹脂の主鎖との間にファンデルワールス相互作用を効率的に発現することができるため、低吸液性印刷基材として用いられる合成樹脂に対するインク塗膜の基材密着性が更に向上すると考えられる。
また、ビニル系樹脂は、ガラス転移温度が低い環状エーテルアルキルアクリレート由来の構成単位を含むことで、低吸液性印刷基材として合成樹脂に付与した水系インクが乾燥する際の運動性が向上し、該ビニル系樹脂に含まれる環状エーテルアルキルアクリレート由来の構成単位が合成樹脂との相互作用を強く発現できるよう該環状エーテルアルキルアクリレート由来の構成単位の配座の自由度を高めることに寄与し、強い相互作用を効率的に発現させることでき、また、印刷基材からインク塗膜が剥離する際の応力を緩和させる作用も有するため、低吸液性印刷基材として用いられる合成樹脂に対するインク塗膜の基材密着性を更に向上させることができると考えられる。
さらに、ビニル系樹脂は、静電反発力を効率的に発現することができるアクリル酸及びメタクリル酸からなる群から選ばれる1種以上のカルボキシ基含有モノマー由来の構成単位に加えて、環状エーテルアルキルアクリレート由来の構成単位を更に含むことが、環状エーテルアルキルメタクリレート由来の構成単位を含む場合と異なり、意外にも安定な分散系となり、水系インクの保存安定性を向上させる効果を奏すると考えられる。
以下、水系インクの保存安定性を単に「インクの保存安定性」と称し、低吸液性印刷基材への印刷に用いる際に得られる印刷物の、インク塗膜の耐テープ剥離性及び耐擦過性をそれぞれ単に「耐テープ剥離性」及び「耐擦過性」と称する。
(【0011】以降は省略されています)

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