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公開番号2025066571
公報種別公開特許公報(A)
公開日2025-04-23
出願番号2023176271
出願日2023-10-11
発明の名称紙及びその製造方法並びに紙用改質剤及びその製造方法
出願人国立大学法人 筑波大学
代理人弁理士法人太陽国際特許事務所
主分類D21H 13/28 20060101AFI20250416BHJP(製紙;セルロースの製造)
要約【課題】木材資源によらない新たな紙パルプの原料として糸状藻類を用いた紙及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】紙は、糸状藻類由来の繊維を含有し、前記繊維のアスペクト比が、10~130であるものである。紙の製造方法は、糸状藻類由来の繊維からデンプン及びタンパク質成分を除去することと、デンプン及びタンパク質成分が除去された前記糸状藻類由来の繊維を漂白することと、漂白された前記糸状藻類由来の繊維を中和処理することと、中和処理された前記糸状藻類由来の繊維を用いて抄紙することと、を含む。
【選択図】なし
特許請求の範囲【請求項1】
糸状藻類由来の繊維を含有し、
前記繊維のアスペクト比が、10~130である紙。
続きを表示(約 830 文字)【請求項2】
前記糸状藻類が、Oedogonium borisianum(サヤミドロ)、Cladophora fracta(シオグサ)及びCladophora pusilla(コシオグサ)からなる群より選択される少なくとも1種を含む請求項1に記載の紙。
【請求項3】
木材由来のパルプをさらに含む請求項1に記載の紙。
【請求項4】
糸状藻類由来の繊維を含有し、
前記繊維のアスペクト比が、10~130である紙用改質剤。
【請求項5】
糸状藻類由来の繊維からデンプン及びタンパク質成分を除去することと、
デンプン及びタンパク質成分が除去された前記糸状藻類由来の繊維を漂白することと、
漂白された前記糸状藻類由来の繊維を中和処理することと、
中和処理された前記糸状藻類由来の繊維を用いて抄紙することと、を含む紙の製造方法。
【請求項6】
前記デンプン及びタンパク質成分を除去することが、前記糸状藻類由来の繊維をアルカリ水溶液に浸漬することを含む請求項5に記載の紙の製造方法。
【請求項7】
前記漂白に用いられる漂白剤が、次亜塩素酸塩及び過酸化水素の少なくとも一方を含む請求項5に記載の紙の製造方法。
【請求項8】
前記漂白に用いられる漂白剤の量が、前記糸状藻類由来の繊維100gに対して1g以下である請求項5に記載の紙の製造方法。
【請求項9】
前記漂白が、前記糸状藻類由来の繊維の濃度を15質量%以上とした状態で行われる請求項8に記載の紙の製造方法。
【請求項10】
中和処理された前記糸状藻類由来の繊維を叩解することをさらに含み、
前記抄紙に用いられる前記糸状藻類由来の繊維のアスペクト比が、10~130である請求項5に記載の紙の製造方法。
(【請求項11】以降は省略されています)

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本開示は、紙及びその製造方法並びに紙用改質剤及びその製造方法に関する。
続きを表示(約 3,500 文字)【背景技術】
【0002】
世界中で1年間に生産される紙パルプは約1.8億トンであり、紙パルプのうちの約90%が木材由来とされる。古くから、森林資源の計画的な利用について研究が進められており、生分解性を有する紙が、プラスチックの代替として期待されている。
森林資源の加工には、強アルカリ性且つ高温での蒸解操作が必要とされ、環境負荷が大きい。そのため、木材資源によらない新たな紙パルプの原料が、必要とされる。
新たな紙パルプの原料の一例として、藻材料が挙げられる(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、海藻から紙を製造する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
特許第3165282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、藻材料を500μm以下の径の粒子となるまで粉砕することをその特徴の一つとする。しかしながら、粒子状の粉砕物を用いた紙では必要な強度が発現せず、通常紙の原料として用いることは難しい。
本開示は、上記従来の事情に鑑みてなされたものであり、本開示の一形態は、木材資源によらない新たな紙パルプの原料として糸状藻類を用いた紙及びその製造方法を提供することを目的とする。また、本開示の他の一形態は、糸状藻類を用いた紙用改質剤及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を達成するための具体的手段は以下の通りである。
<1> 糸状藻類由来の繊維を含有し、
前記繊維のアスペクト比が、10~130である紙。
<2> 前記糸状藻類が、Oedogonium borisianum(サヤミドロ)、Cladophora fracta(シオグサ)及びCladophora pusilla(コシオグサ)からなる群より選択される少なくとも1種を含む<1>に記載の紙。
<3> 木材由来のパルプをさらに含む<1>又は<2>に記載の紙。
<4> 糸状藻類由来の繊維を含有し、
前記繊維のアスペクト比が、10~130である紙用改質剤。
<5> 糸状藻類由来の繊維からデンプン及びタンパク質成分を除去することと、
デンプン及びタンパク質成分が除去された前記糸状藻類由来の繊維を漂白することと、
漂白された前記糸状藻類由来の繊維を中和処理することと、
中和処理された前記糸状藻類由来の繊維を用いて抄紙することと、を含む紙の製造方法。
<6> 前記デンプン及びタンパク質成分を除去することが、前記糸状藻類由来の繊維をアルカリ水溶液に浸漬することを含む<5>に記載の紙の製造方法。
<7> 前記漂白に用いられる漂白剤が、次亜塩素酸塩及び過酸化水素の少なくとも一方を含む<5>又は<6>に記載の紙の製造方法。
<8> 前記漂白に用いられる漂白剤の量が、前記糸状藻類由来の繊維100gに対して1g以下である<5>~<7>のいずれか1項に記載の紙の製造方法。
<9> 前記漂白が、前記糸状藻類由来の繊維の濃度を15質量%以上とした状態で行われる<8>に記載の紙の製造方法。
<10> 中和処理された前記糸状藻類由来の繊維を叩解することをさらに含み、
前記抄紙に用いられる前記糸状藻類由来の繊維のアスペクト比が、10~130である<5>~<9>のいずれか1項に記載の紙の製造方法。
<11> 糸状藻類由来の繊維からデンプン及びタンパク質成分を除去することと、
デンプン及びタンパク質成分が除去された前記糸状藻類由来の繊維を漂白することと、
漂白された前記糸状藻類由来の繊維を中和処理することと、を含む紙用改質剤の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本開示の一形態によれば、木材資源によらない新たな紙パルプの原料として糸状藻類を用いた紙及びその製造方法を提供することができる。また、本開示の他の一形態によれば、糸状藻類を用いた紙用改質剤及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
実施例1で得られた紙の表面の電子顕微鏡写真である。
実施例2で得られた紙の表面の電子顕微鏡写真である。
比較例1で得られた紙の表面の電子顕微鏡写真である。
実施例1で得られた紙の破断面についての光学顕微鏡写真である。
比較例1で得られた紙の破断面についての光学顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の実施形態について詳細に説明する。但し、本開示は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合を除き、必須ではない。数値及びその範囲についても同様であり、本開示を制限するものではない。
【0009】
本開示において「工程」との語には、他の工程から独立した工程に加え、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の目的が達成されれば、当該工程も含まれる。
本開示において「~」を用いて示された数値範囲には、「~」の前後に記載される数値がそれぞれ最小値及び最大値として含まれる。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において、各成分には、該当する物質が複数種含まれていてもよい。組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、各成分の含有率又は含有量は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計の含有率又は含有量を意味する。
【0010】
<紙及びその製造方法>
本開示の紙は、糸状藻類由来の繊維を含有し、繊維のアスペクト比が10~130とされたものである。
本開示の紙は、木材資源によらない新たな紙パルプの原料として糸状藻類由来の繊維を使用する。糸状藻類由来の繊維のアスペクト比が10~130であることから、藻材料由来の粒子状の粉砕物を用いて抄紙された紙に比較して、高強度の紙を得ることが可能となる。
また、糸状藻類は海水圏、淡水圏問わず小規模河川や農業用水路、浅瀬の海などに比較的温暖な春から夏にかけて自生し、1週間で4倍ほどに成長して年に25t/ha、乾燥重量で1kg/m

に達することもある。近年では糸状藻類を用いた浄水システムも提案されており、この浄水システムを稼働させることで多くの糸状藻類を得ることができる。糸状藻類は、その繁殖力ゆえに農業用水路を詰まらせたり、アユ等の水生動物の成長を阻害したりすることがある。そのため、糸状藻類の除去に労力を要する。さらには、除去された糸状藻類を処分する必要がある。
これら糸状藻類を製紙原料として利用できれば、原料供給量及び原料価格の面からも優位と考えられる。
また、糸状藻類はリグニンを含まないため、セルロース繊維原料としての収率が、木材並に高い。木材のように強アルカリ性且つ高温での蒸解操作を経ることなく紙パルプ化が可能なため、糸状藻類の紙パルプ化のコストは木材の半分以下と見積もられる。リグニンが存在しない糸状藻類を用いることで、糸状藻類が木材と同等以上に利用される可能性がある。その結果、森林資源の消費を抑制することで森林の枯渇が抑制され、環境問題の解決に貢献可能となる。糸状藻類は水圏で生産されるため陸上作物と競合せず、ブルーカーボンの利用につながる。
また、糸状藻類由来の繊維の繊維長は、機械的処理などで調節が可能である。
さらには、糸状藻類由来の繊維は木材繊維に比較して細胞壁が薄いため柔軟性が高く、糸状藻類由来の繊維を乾燥する際に繊維間の結合を形成しやすく弾性率が向上しやすい他、透明性を付与しやすい。
このように、糸状藻類由来の繊維を含有する紙は、木材資源由来の繊維を含有する紙に比較して、種々の利点がある。
(【0011】以降は省略されています)

この特許をJ-PlatPat(特許庁公式サイト)で参照する

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