公開番号2025036403 公報種別公開特許公報(A) 公開日2025-03-14 出願番号2024152341 出願日2024-09-04 発明の名称鉄酸化物薄膜およびその製造方法 出願人公益財団法人電磁材料研究所 代理人デロイトトーマツ弁理士法人 主分類C23C 14/08 20060101AFI20250307BHJP(金属質材料への被覆;金属質材料による材料への被覆;化学的表面処理;金属質材料の拡散処理;真空蒸着,スパッタリング,イオン注入法,または化学蒸着による被覆一般;金属質材料の防食または鉱皮の抑制一般) 要約【課題】磁化の向上が図られている鉄酸化物薄膜およびその製造方法を提供する。 【解決手段】本発明の鉄酸化物薄膜は、組成式Fe1-a-bLaOb(但し、LはSi、ZrおよびMnの群からなる少なくとも1つの元素)で表わされ、かつ、マグネタイト結晶相により構成される。 【選択図】図3B 特許請求の範囲【請求項1】 組成式Fe 1-a-b Si a O b (但し、0<a≦0.1、0.48≦b≦0.61、かつ、0.32≦1-(a+b)≦0.43である。)で表わされ、かつ、マグネタイト結晶相により構成される鉄酸化物薄膜。 続きを表示(約 1,000 文字)【請求項2】 組成式Fe 1-a-b Zr a O b (但し、0<a≦0.1、0.48≦b≦0.61、かつ、0.32≦1-(a+b)≦0.43である。)で表わされ、かつ、マグネタイト結晶相により構成される鉄酸化物薄膜。 【請求項3】 組成式Fe 1-a-b Mn a O b (但し、0<a≦0.22、0.48≦b≦0.61、かつ、0.32≦1-(a+b)≦0.43である。)で表わされ、かつ、マグネタイト結晶相により構成される鉄酸化物薄膜。 【請求項4】 ターゲット材料としてFe 3 O 4 ターゲット上にSiのチップを配置した複合ターゲットを用いて高周波スパッタリング法により、組成式Fe 1-a-b Si a O b (但し、0<a≦0.1、0.48≦b≦0.61、かつ、0.32≦1-(a+b)≦0.43である。)で表わされ、かつ、マグネタイト結晶相により構成される鉄酸化物薄膜を作製する工程を含んでいる鉄酸化物薄膜の製造方法。 【請求項5】 ターゲット材料としてFe 3 O 4 ターゲット上にZrのチップを配置した複合ターゲットを用いて高周波スパッタリング法により、組成式Fe 1-a-b Zr a O b (但し、0<a≦0.1、0.48≦b≦0.61、かつ、0.32≦1-(a+b)≦0.43である。)で表わされ、かつ、マグネタイト結晶相により構成される鉄酸化物薄膜を作製する工程を含んでいる鉄酸化物薄膜の製造方法。 【請求項6】 ターゲット材料としてFe 3 O 4 ターゲット上にMnのチップを配置した複合ターゲットを用いて高周波スパッタリング法により、組成式Fe 1-a-b Mn a O b (但し、0<a≦0.22、0.48≦b≦0.61、かつ、0.32≦1-(a+b)≦0.43である。)で表わされ、かつ、マグネタイト結晶相により構成される鉄酸化物薄膜を作製する工程を含んでいる鉄酸化物薄膜の製造方法。
発明の詳細な説明【技術分野】 【0001】 本発明は、鉄酸化物薄膜およびその製造方法に関する。 続きを表示(約 4,600 文字)【背景技術】 【0002】 酸化鉄は、酸化するにつれてウスタイト(Fe 1-x O)からマグネタイト(Fe 3 O 4 )、マグヘマイト(γ-Fe 2 O 3 )、そして最終的にはヘマタイト(α-Fe 2 O 3 )へと相転移するため、半金属、フェリ磁性および半導体特性を示す。Fe 3 O 4 は、八面体BサイトにおけるFe 2+ と、四面体Aサイトおよび八面体Bサイトの両方におけるFe 3+ と、を有する逆スピネル構造を形成する。この状況は、120Kを超える温度で電子がFe 2+ とFe 3+ との間を移動するため(フェルベー転移)電気抵抗率が比較的低く(例えば、非特許文献1参照)、かつ、そのフェリ磁性挙動は850Kまで存在する(例えば、非特許文献2参照)。これらの特性は、スピントロニクスデバイス(例えば、非特許文献3参照)、ガスセンサ(例えば、非特許文献4参照)、抵抗変化型ランダムアクセスメモリ(例えば、非特許文献5参照)などへの適用可能性がある。 【0003】 Fe 3 O 4 を含有するデバイスまたは素子の性能を維持し、他のアプリケーションでの使用を拡大するためには、Fe 3 O 4 の転移温度を上昇させる必要がある。粉末Fe 3 O 4 の相転移は、熱処理温度および結晶サイズに依存し(例えば、非特許文献6~17参照)、温度が493Kを超えると、300nm以下のサイズの結晶がγ-Fe 2 O 3 に変化する(例えば、非特許文献11参照)。これは、粒径が小さくなるにつれて、相転移の活性化エネルギーが減少するために起こる(例えば、非特許文献14参照)。Mn、Co、Ni、Zn、Cu、Al、Vおよびのうち少なくとも一種が添加された場合、転移温度は773Kから923Kまで上昇する。Fe 3 O 4 コアを酸化から保護するため、SnO 2 (例えば、非特許文献18参照)およびリン酸炭素材料(例えば、非特許文献19参照)のシェルを有するコア-シェル構造を形成することなど、鉄酸化物のナノ粒子に関する代替技術が提案されている。薄膜として形成された場合、573K~603Kの温度で空気中において無添加Fe 3 O 4 がγ-Fe 2 O 3 に相転移するが(例えば、非特許文献20参照)、金属添加Fe 3 O 4 薄膜に耐酸化性をもたせる方法は不明である。 【0004】 Fe 3 O 4 ターゲット上に金属チップをセットした高周波(RF)スパッタリングを用いて製造された単相Fe 3 O 4 膜の製造方法のほか、金属チップを含まないセラミックFe 3 O 4 ターゲットがFe 3 O 4 およびα-Fe 2 O 3 相混合物が生成されることが報告されている(例えば、特許文献1および非特許文献21、22参照)。さらに、Fe 3 O 4 薄膜の磁化は、比較的低い金属濃度で最大化することが確認された。 【0005】 また、本発明者は、耐酸化性の向上が図られている複合鉄酸化物薄膜およびその製造方法をとして、複合鉄酸化物薄膜を開示している。該複合鉄酸化物薄膜は、Mo、W、およびMgからなる群から選ばれる一種以上の元素がマグヘマイト結晶相に添加される、または、Geがマグネタイト結晶相に添加されているので、耐酸化性を有する磁性体が提供される(特許文献2)。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0006】 特許第5389370号公報 特許第7153555号公報 【非特許文献】 【0007】 E, J. Verwey, P. W. Haayman, and F. C. Romeijn, J. Chem. Phys. 15 (1947) 181. G. A. Samara, A. A. Giardini, Phys. Rev. 186 (1969)578. K. I. Aoshima and S. X. Wang, J. Appl. Phys. 93 (2003) 7954. M. Aronniemi, J. Saino and J. Lahtinen, Thin Solid Films 516 (2008) 6110. K. Kinoshita, T.Tamura, M. Aoki, Y. Sugiyama and H. Tanaka, Appl.Phys. Lett. 89 (2006) 103509. M. S. Cresser and N. T. Livesev, Analyst 109 (1984) 219. B. Gillot, A. Rouset and G. Dupre, J. Solid State Chem. 25 (1978) 263. C. E. Mvllins, J. SoilSci. 28 (1977) 223. R. Ven'ch and E. Schmiobauer, J. Mag. Mag. Mat. 37 (1983) 63. S. Nasrazadani and A . Raman, Corrosion Science 34 (1993) 1355. K. J. Gallagher, W. Feitknecht, and U. Mannweiler, Nature (London) 217 (1968) 1118. P. S. Sidhu, Clays Clay Miner. 36 (1988) 31-38. J. Lai, K. V. P. M. Shafi, K. Loos, A. Ulman, Y. Lee, T. Vogt, and C. Estournes, J. Am. Chem. Soc. 125 (2003) 11470. G. Gnanaprakash, S. Ayyappan, T. Jayakumar, J. Philip and B. Raj, Nanotechnology 17 (2006) 5851. S. S. Pati, S. Gopinath, G. Panneerselvam, M. P. Antony, and J. Philip, J. Appl. Phys. 112 (202) 054320. S. S. Pati and J. Philip, J. Appl. Phys. 113 (2013) 044314. A. Jafari, S. FarjamiShayesteh, M. Salouti, K. Boustani, J. Mag. And Mag. Mat. 379 (2015) 305. X. Xu, M. Ge, C. Wang, and J. Z. Jiang, Appl. Phys. Lett. 95 (2009) 183112. T. Muthukumaran and J. Philip, J. Appl. Phys. 115 (2014) 224304. S. Hattori, Y. Ishii, M. Shinohara and T. Nakagawa, IEEE Transactions on Magnetics, MAG-15 (1979) 1549-1552. S. Abe, D. H. Ping, M. Ohnuma and S. Ohnuma, Jpn. J. Appl. Phys. 50 (2010) 063002. S. Abe and S. Ohnuma, Appl. Phys. Express 1 (2008) 111304 E. Takayama, N. Kimizuka, K. Kato, H. Yamamura, and H. Haneda, J. Solid State Chemistry 38 (1981) 82. J. B. Nelson, D. P. Riley, Proc. Phys. Soc. 57 (1945) 160. M. Watanabe and S. Abe, J. Nanosci. Nanotech. 16 (2016) 2509-2516. H. S. C. O’Neil and A. Navrotsky, Am. Min. 69, (1984) 733. M. Seki, H. Tabata, H. Ohta, K. Inaba, and S. Kobayashi, Appl. Phys. Lett. 99 (2011) 242504. B. Gillot and M. El Guendouzi, Reactivity of Solids 1 (1986) 139-152. P. Tailhades, B. Gillot and A. Rousset, J. Phys. IV France 7 (1997) C1-249. 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0008】 特許文献1および特許文献2に開示する鉄酸化物は、磁化を向上させる一方で、マグネタイトに熱処理を施すため、煩雑な処理が多く、経済的および時間的な制約からコストが上昇するという課題がある。本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、本発明は、煩雑な処理なくとも、磁化の向上が図られた鉄酸化物薄膜およびその製造方法を提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0009】 上記課題を解決するために、本発明の鉄酸化物薄膜および鉄酸化物薄膜の製造方法は、以下の発明特定事項を有することを特徴とする。 【0010】 本発明の鉄酸化物薄膜は、 組成式Fe 1-a-b Si a O b (但し、0<a≦0.1、0.48≦b≦0.61、かつ、0.32≦1-(a+b)≦0.43である。)で表わされ、かつ、マグネタイト結晶相により構成される。 (【0011】以降は省略されています) この特許をJ-PlatPatで参照する