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公開番号
2025010935
公報種別
公開特許公報(A)
公開日
2025-01-23
出願番号
2023113250
出願日
2023-07-10
発明の名称
活性炭注入制御システム、活性炭注入制御方法及び水処理システム
出願人
水ing株式会社
代理人
アクシス国際弁理士法人
主分類
C02F
1/28 20230101AFI20250116BHJP(水,廃水,下水または汚泥の処理)
要約
【課題】処理水から発生するカビ臭を安価で且つ迅速に把握でき、活性炭注入率を過不足なく決定することが可能で、これにより処理水から発生するカビ臭を長期間安定して抑制することが可能な活性炭注入制御システム、活性炭注入制御方法及び水処理システムを提供する。
【解決手段】原水の水質データと気象データを用いた機械学習により原水中のピコプランクトン数を予測するピコプランクトン数予測手段201と、水質データ、気象データ、ピコプランクトン数の予測値を格納する格納手段103と、ピコプランクトン数の予測値と水質データとを用いた機械学習により原水中のカビ臭物質濃度を予測するカビ臭物質濃度予測手段202と、カビ臭物質濃度の予測結果に基づいて決定された活性炭注入率に基づいて、原水に注入する活性炭の活性炭注入率を制御する活性炭注入制御手段204とを備える活性炭注入制御システムである。
【選択図】図1
特許請求の範囲
【請求項1】
原水の水質データと気象データを用いた機械学習により前記原水中のピコプランクトン数を予測するピコプランクトン数予測手段と、
前記水質データ、前記気象データ、前記ピコプランクトン数の予測値を格納する格納手段と、
前記ピコプランクトン数の予測値と前記水質データとを用いた機械学習により前記原水中のカビ臭物質濃度を予測するカビ臭物質濃度予測手段と、
前記カビ臭物質濃度の予測結果に基づいて決定された活性炭注入率に基づいて、前記原水に注入する活性炭の前記活性炭注入率を制御する活性炭注入制御手段と
を備えることを特徴とする活性炭注入制御システム。
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【請求項2】
前記ピコプランクトン数予測手段が、
前記原水のpH、導電率、濁度、M-アルカリ度の情報を少なくとも含む前記水質データと、日射量の情報を少なくとも含む前記気象データとを説明変数とし、前記ピコプランクトン数を目的変数とする機械学習アルゴリズムにより構築された機械学習モデルを用いて、前記ピコプランクトン数の予測値を演算することを含む請求項1に記載の活性炭注入制御システム。
【請求項3】
前記カビ臭物質濃度予測手段が、
前記ピコプランクトン数の予測値、前記原水の導電率、濁度、M-アルカリ度の情報を少なくとも含む前記水質データとを説明変数とし、前記カビ臭物質濃度を目的変数とする機械学習アルゴリズムにより構築された機械学習モデルを用いて、前記カビ臭物質濃度の予測値を演算することを含む請求項1に記載の活性炭注入制御システム。
【請求項4】
前記カビ臭物質濃度の予測値と、前記原水の水温を含む水質データと、前記カビ臭物質濃度と関連づけられた前記活性炭注入率の設定値を説明変数とし、前記活性炭注入率の予測値を目的変数とする機械学習アルゴリズムにより構築された機械学習モデルを用いて、前記活性炭注入率の予測値を演算する活性炭注入率予測手段を備えることを含む請求項1に記載の活性炭注入制御システム。
【請求項5】
前記水質データが、前記原水が貯留される貯留槽の水位、前記貯留槽への前記原水の流入水量、前記原水の水温のデータを更に含むことを特徴とする請求項2~4のいずれか1項に記載の活性炭注入制御システム。
【請求項6】
前記気象データが、外気温、日照時間、降雨量のデータを更に含むことを特徴とする請求項2~4のいずれか1項に記載の活性炭注入制御システム。
【請求項7】
原水の過去の水質データと過去の気象データとを含む学習データを使用した機械学習によって構築された機械学習モデルに、原水の水質データ及び気象データの測定値を入力し、前記原水中の将来のピコプランクトン数の予測値を出力させ、
前記ピコプランクトン数の過去の予測値と過去の前記水質データとを用いた機械学習によって構築された機械学習モデルに、前記将来のピコプランクトン数の予測値と前記水質データの測定値を入力し、前記原水中の将来のカビ臭物質濃度の予測値を出力させ、
前記カビ臭物質濃度の将来の予測結果に基づいて決定された活性炭注入率に基づいて、前記原水へ注入する活性炭の活性炭注入率を制御すること
を有することを特徴とする活性炭注入制御方法。
【請求項8】
原水の水質データと気象データを用いた機械学習により前記原水中のピコプランクトン数を予測するピコプランクトン数予測手段と、
前記ピコプランクトン数の予測値と前記水質データとを用いた機械学習により前記原水中のカビ臭物質濃度を予測するカビ臭物質濃度予測手段と、
前記原水に活性炭を注入する活性炭注入手段と、
前記カビ臭物質濃度の予測結果に基づいて決定された活性炭注入率に基づいて、前記活性炭注入手段が注入する活性炭の前記活性炭注入率を制御する活性炭注入制御手段と
を備えることを特徴とする水処理システム。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性炭注入制御システム、活性炭注入制御方法及び水処理システムに関し、例えば、河川水、ダム湖、地下水等の原水中の臭気物質を活性炭に吸着除去させる活性炭処理に好適な活性炭注入制御システム、活性炭注入制御方法及び水処理システムに関する。
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【背景技術】
【0002】
河川水や地下水等の原水の水処理では、凝集沈殿処理や砂ろ過処理などの固液分離技術によって不溶解性成分である濁度成分や藻類等を除去する処理が行われている。原水を凝集ろ過するプロセスでは種々の要因によって凝集阻害を起こす場合があるが、その一因としてピコプランクトンの存在が近年問題になっている。ピコプランクトンは、0.2~2.0μmの大きさを持つプランクトンであり、ろ過水の濁度を上昇させる要因となることが報告されている(非特許文献1参照)。
【0003】
ピコプランクトンは、栄養摂取の仕組みから2つのグループに分類される。1つは、有機物を分解して栄養源とする細菌が主体の従属栄養ピコプランクトンであり、もう1つは、光合成を行う植物ピコプランクトンである。ピコプランクトンは、クロロフィルなどの色素を持ち、蛍光顕微鏡にて観察が可能であり、浄水処理の原水または処理水中に存在していることが確認されている。
【0004】
近年、厚生労働省は、水道水を介して発生したクリプトスポリジウムによる感染症への対応としてろ過水濁度0.1度以下での管理を指導してきている(非特許文献2参照)。そのため、各地の水道事業者は、ろ過水濁度を常時0.1度以下に管理することが最も重要な水質管理項目の一つであると位置づけている。
【0005】
しかしながら、最近の全国各地の水道水源では、富栄養化に起因するピコプランクトンの大発生が頻発してきている。ピコプランクトンは、大きさが0.2~2.0μmと微小であるため、ろ過池より漏出し、ろ過水濁度を0.1度以上に上昇させる原因となる。水道事業体ではその処理対策に苦慮しているところである。また、ピコプランクトンには臭気物質を発生するものがあり、水道水における異臭味の原因になっている。こうした問題を未然に防ぐために、水中に存在するピコプランクトンの量を連続的に監視し、監視結果に応じて凝集剤や塩素等の薬品の注入量を制御する技術が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0006】
多くの浄水場では、原水中の臭気物質や溶解性有機物を除去するために粉末活性炭を注入し、濁質を除去するために凝集剤を注入している。この種の水処理システムでは、原水の水質に応じて粉末活性炭の注入率を決定する必要がある。
【0007】
粉末活性炭の注入率を決定する方法としては、ジャーテスト(以下、「ビーカーテスト」とも称する)が用いられることが多い。ジャーテストは、原水を複数のビーカーに採水し、採水した複数の原水にそれぞれ異なる量の粉末活性炭を注入して、臭気物質や溶解性有機物の除去率を評価し、処理後の臭気濃度および溶解性有機物が目標濃度以下まで低減するために必要な最低限の粉末活性炭注入率を求める方法である。
【0008】
しかしながら、ジャーテストによって粉末活性炭の注入率を決定する方法では、原水の水質の変化に追随した粉末活性炭の注入が非常に難しく、注入率の過不足が生じる恐れがある。また、ジャーテストは、粉末活性炭の最適な注入率を求めるのに時間を要するため、粉末活性炭の最適な注入率が得られたときには、既に原水の水質が変化している可能性もある。実際に、投入する粉末活性炭の注入率を決定する際は、ジャーテストによって得られた注入率よりも安全側で注入率を決定するため、過剰注入となってしまう。
【0009】
粉末活性炭は、凝集剤、硫酸、次亜塩素酸ナトリウム等の他の薬品に比べて単価が非常に高い。そのため、粉末活性炭の過剰注入は薬品コストの急騰を招くおそれがある。経済的な観点からも、粉末活性炭の過剰注入を抑制し、原水の水質の変化に応じた粉末活性炭の最適な活性炭注入率を制御する方法が望まれている。
【0010】
活性炭注入率を制御する方法として、例えば、臭気センサにより粉末活性炭処理槽内の原水中の臭気物質濃度を検出すると同時に、粉末活性炭処理槽内の原水の紫外線吸光度、蛍光強度、および溶解性有機炭素濃度のうち少なくも何れかならびに凝集剤注入率とに基づいて、原水中の臭気物質の除去に必要な粉末活性炭の注入率を算出し、この粉末活性炭注入率に基づいて、粉末活性炭を制御する方法が知られている(例えば、特許文献2参照)。
(【0011】以降は省略されています)
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