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公開番号
2025006528
公報種別
公開特許公報(A)
公開日
2025-01-17
出願番号
2023107375
出願日
2023-06-29
発明の名称
吹付けコンクリートの等価弾性係数の近似式の設定方法と、山岳トンネルの支保工の設計方法
出願人
大成建設株式会社
代理人
個人
,
個人
主分類
G01N
33/38 20060101AFI20250109BHJP(測定;試験)
要約
【課題】実現象が反映された高精度な吹付けコンクリートの等価弾性係数を特定できる、吹付けコンクリートの等価弾性係数の近似式の設定方法と山岳トンネルの支保工の設計方法を提供する。
【解決手段】吹付けコンクリートの等価弾性係数の近似式の設定方法は、吹付けコンクリートの供試体に対して多段階応力緩和試験を行うA工程、応力-時間関係を再現する再現解析を実施するB工程、トンネルの逐次掘削解析を実施するC工程、トンネルの逐次掘削解析により求められた吹付けコンクリートモデルの応力-ひずみ関係から等価弾性係数を設定するD工程を有し、C工程とD工程では、トンネル径、地山の弾性係数、サイクルタイム、及び吹付けコンクリートの強度からなるパラメータの少なくとも1つに対してパラメトリックスタディによるトンネルの逐次掘削解析を実施し、解析結果に基づいてパラメータのうちの少なくとも1つの関数である等価弾性係数の近似式を作成する。
【選択図】図1
特許請求の範囲
【請求項1】
トンネルの壁面に施工される、吹付けコンクリートの時間経過に応じた剛性を考慮した、吹付けコンクリートの等価弾性係数の近似式の設定方法であって、
前記吹付けコンクリートの供試体に対して、該供試体の材齢に応じた経過時間ごとに段階的に変化する変位を載荷する、多段階応力緩和試験を行い、前記供試体の応力-時間関係を特定する、A工程と、
前記応力-時間関係を再現する再現解析を実施し、前記供試体の材齢に応じた力学特性を特定する、B工程と、
前記材齢に応じた力学特性を有する吹付けコンクリートモデルと、その周辺の地盤モデルを含む解析モデルを用いて、トンネルの逐次掘削解析を実施する、C工程と、
前記トンネルの逐次掘削解析により求められた該吹付けコンクリートモデルの応力-ひずみ関係から、前記等価弾性係数を設定する、D工程とを有し、
前記C工程と前記D工程では、
トンネル径、地山の弾性係数、サイクルタイム、及び吹付けコンクリートの強度からなるパラメータの少なくとも1つに対してパラメトリックスタディによるトンネルの逐次掘削解析を実施し、
前記パラメトリックスタディによる前記トンネルの逐次掘削解析の結果に基づき、前記パラメータのうちの少なくとも1つの関数である等価弾性係数の近似式を作成することを特徴とする、吹付けコンクリートの等価弾性係数の近似式の設定方法。
続きを表示(約 1,000 文字)
【請求項2】
前記サイクルタイムを関数としたゴンペルツ曲線を仮定して、前記近似式を作成することを特徴とする、請求項1に記載の吹付けコンクリートの等価弾性係数の近似式の設定方法。
【請求項3】
以下の近似式(A)を作成することを特徴とする、請求項2に記載の吹付けコンクリートの等価弾性係数の近似式の設定方法。
TIFF
2025006528000004.tif
100
169
【請求項4】
前記B工程における前記力学特性が粘弾性特性であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の吹付けコンクリートの等価弾性係数の近似式の設定方法。
【請求項5】
前記B工程における前記再現解析では、前記応力-時間関係を表現する粘弾性モデルを力学モデルとして使用し、
前記粘弾性モデルは、弾性挙動を表現するばね要素と、粘性挙動を表現するダッシュポット要素とにより構成し、
前記B工程では、前記ダッシュポット要素の粘性係数を調整することにより、前記力学特性を前記供試体の応力-時間関係にフィッティングさせることを特徴とする、請求項1又は2に記載の吹付けコンクリートの等価弾性係数の近似式の設定方法。
【請求項6】
前記供試体に対して圧縮強度試験を行う、E工程をさらに有し、
前記圧縮強度試験により特定された、前記供試体の材齢ごとの弾性係数を前記B工程における前記ばね要素に適用することを特徴とする、請求項5に記載の吹付けコンクリートの等価弾性係数の近似式の設定方法。
【請求項7】
前記A工程における前記多段階応力緩和試験では、一定の経過時間の間は一定の変位を保持し、経過時間に応じて該一定の変位を変化させることとし、
前記変位の変化を瞬時に行うことを特徴とする、請求項1又は2に記載の吹付けコンクリートの等価弾性係数の近似式の設定方法。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の吹付けコンクリートの等価弾性係数の近似式の設定方法により、該吹付けコンクリートの等価弾性係数を設定する、F工程と、
前記吹付けコンクリートの等価弾性係数を山岳トンネルモデルに適用して数値解析を実施し、山岳トンネルの所定の支保工を設計する、G工程とを有することを特徴とする、山岳トンネルの支保工の設計方法。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、吹付けコンクリートの等価弾性係数の近似式の設定方法と、山岳トンネルの支保工の設計方法に関する。
続きを表示(約 3,400 文字)
【背景技術】
【0002】
山岳トンネルは、掘削する地山そのものがアーチ構造で空間を支える構造物であり、掘削直後に、地山の安定性や安全性の確保を目的に支保工が施工されることになるが、この支保工には主に、吹付けコンクリートと鋼製支保工、及びロックボルトがある。
このうち、吹付けコンクリートは、薄肉柔構造で地山を支える支保部材であり、その特徴としては、トンネル壁面に対して型枠を必要とせずに吹付けて面的に地山に密着できること、急結剤によって早期に強度を発現でき、材齢1日で5乃至10N/mm
2
程度の強度発現が見込めることなどが挙げられる。
吹付けコンクリートの機能としては、軸圧縮抵抗機能とせん断抵抗機能、曲げ抵抗機能の他、これらの各種抵抗機能で受け止めた荷重を地山に分散させる支保機能などがある。ここで、軸圧縮抵抗機能とは、地山のアーチに作用する内空方向の外力や変形に起因する軸力に抵抗する機能であり、せん断抵抗機能とは、地山の局所的な抜落ちに起因するせん断力やせん断変位に抵抗する機能であり、曲げ抵抗機能とは、地山の局所的な抜落ちに起因する曲げモーメントに抵抗する機能である。
吹付けコンクリートによる効果としては、肌落ち防止効果や小岩塊保持効果、地山への内圧付与効果(特に変形の大きな地山や土砂地山)、弱層補強と形状保持効果、応力分布の平滑化効果、及び被覆効果や地山の劣化防止効果(例えば空気や湧水による劣化防止)などがある。
【0003】
吹付けコンクリートの設計においては、施工性を考慮し、地山条件に対して適切な施工時期や厚さ、強度、配合等が決定され、吹付けコンクリートの設計手法には、地山分類に基づく経験的手法と類似条件に基づく手法、及び解析的手法がある。
このうち、解析的手法を用いた吹付けコンクリートの設計では、主にFEM(Finite Element Method:有限要素法)やFDM(Finite Difference Method:有限差分法)等の数値解析により設計仕様を決定し、周辺地山の応力や変位、支保部材に作用する荷重等を求め、支保工の妥当性等を評価する。中でも、吹付けコンクリートは、強度や弾性係数の変化が大きな若材齢時に、掘削に伴って生じる地山の変形の大部分を受ける特殊な条件下で使用される支保工であり、吹付けコンクリートの変形は、弾性変形とクリープ変形、及び乾燥収縮変形を加算した変形になることから、粘弾性の考慮が必要になる。
そのため、数値解析においても、粘弾性を考慮した等価弾性係数(みかけの弾性係数)が用いられているが、この等価弾性係数は解析結果に大きく影響することから、その設定は極めて重要であり、地山の弾性係数が小さいケース(従って、吹付けコンクリートの弾性係数が地山の弾性係数に対して相対的に大きくなるケース)において、吹付けコンクリートの弾性係数(等価弾性係数)の設定はより一層重要になる。
【0004】
ここで、従来の吹付けコンクリートの弾性係数の設定方法としては、各発注者団体から設計用の弾性係数:Eが次のように示されており、一例を挙げると、鉄道トンネルにはE=3.4kN/mm
2
((独)鉄道建設・運輸施設整備支援機構:山岳トンネル設計施工標準・同解説)が示され、道路トンネルにはE=4.0kN/mm
2
(日本道路公団試験研究所トンネル研究室:トンネル数値解析マニュアル)が示されており、これらの弾性係数はいずれも、旧国鉄の土屋が行った実験結果に基づいて設定されている。
この土屋による実験は、吹付けコンクリートの数値解析用の弾性係数を決定することを目的として行われ、実験方法は、トンネル側壁に吹付けコンクリートを施工し、材齢12時間でコア抜き(φ100mmの円形断面で高さ200mmの円柱コア)を行い、コアに対して圧縮強度の1/3となる荷重をかけたクリープ試験を実施し、材齢2日、3日、及び7日で載荷を開始する3ケースを試験ケースとし、載荷開始から28日後の等価弾性係数(弾性変形、クリープ及び乾燥収縮変形を考慮した弾性係数)を求めたものである。
試験の結果、載荷開始のタイミングが若材齢であるほど、クリープ変形と乾燥収縮変形が大きく、載荷後28日での等価弾性係数は3乃至4kN/mm
2
程度となることが特定されている。
【0005】
従来の吹付けコンクリートの等価弾性係数の設定においては、上記する土屋の実験に基づく弾性係数が一般に用いられてきたが、このような従来の等価弾性係数の設定方法には様々な課題が内在している。
1つ目の課題は、荷重制御のクリープ試験によって弾性係数を求めている点である。実際の吹付けコンクリートは、掘削による地山の変形を拘束しようとした際の反力として変位載荷的に荷重を受けることから、荷重制御のクリープ試験では実現象が反映されているとは言い難い。
2つ目の課題は、極若材齢(例えば24時間未満)のクリープと乾燥収縮変形が考慮されていない点である。最も影響の大きな材齢は24時間未満(1日未満)であると考えられるが、この挙動が評価に反映されていない。
3つ目の課題は、掘削に伴う地山の挙動が考慮されていない点である。実現象としては、トンネル掘削に伴う段階的な変位を吹付けコンクリートが受けることになるが、荷重一定のクリープ試験ではこの地山挙動は模擬されていない。
【0006】
以上のことから、解析的手法を用いた吹付けコンクリートの設計に際して、吹付けコンクリートが変位載荷的に荷重を受け、さらにはトンネル掘削に伴う段階的な変位を受けるといった実現象が反映され、極若材齢のクリープと乾燥収縮変形が考慮された、吹付けコンクリートの等価弾性係数の設定方法が望まれる。
【0007】
ここで、特許文献1には、一軸圧縮試験のためのコアを採取できないような若材齢の吹付けコンクリートの静弾性係数の推定方法が提案されている。この推定方法は、(a)コアを採取不能な若材齢吹付けコンクリートからなる試料に対して予備試験としてプルアウト試験または針貫入試験を実施して、材齢と換算圧縮強度との関係を求める予備試験工程、(b)コアが採取可能となった吹付けコンクリートからコアを採取して本試験としての一軸圧縮試験を実施して、材齢と一軸圧縮強度との関係および材齢と静弾性係数との関係を求める本試験工程、(c)試料の換算圧縮強度と静弾性係数との関係を近似する近似曲線を設定する近似曲線設定工程、(d)近似曲線に基づいて試料の換算圧縮強度からその静弾性係数を推定する静弾性係数推定工程を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
特開2013-72738号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に記載の若材齢の吹付けコンクリートの静弾性係数の推定方法によっても、上記する従来の吹付けコンクリートの等価弾性係数の設定方法に内在する種々の課題を解消することはできない。
【0010】
また、山岳トンネルの支保工の設計においては、現場ごとの山岳トンネルをコンピュータ内でモデル化し、吹付けコンクリートの材料特性を忠実に再現したトンネルの三次元逐次掘削解析を行い、地山の挙動や支保工応力等の精度向上を図っている。しかしながら、現場ごとに山岳トンネルをモデル化し、三次元逐次掘削解析を行う方法では、モデルの作成から解析の実行、さらに解析結果を解釈するまでの過程で多くの労力と時間を要する。
このことから、現場ごとに山岳トンネルをモデル化し、吹付けコンクリートの材料特性を忠実に再現したトンネルの三次元逐次掘削解析を行うことを不要にして、現場に応じた条件が反映され、効率的かつ好適な山岳トンネルの支保工を設計することのできる支保工の設計方法が望まれる。
(【0011】以降は省略されています)
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