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公開番号2024176239
公報種別公開特許公報(A)
公開日2024-12-19
出願番号2023094651
出願日2023-06-08
発明の名称シール付玉軸受及び軸受装置
出願人NTN株式会社
代理人個人,個人,個人,個人
主分類F16C 19/06 20060101AFI20241212BHJP(機械要素または単位;機械または装置の効果的機能を生じ維持するための一般的手段)
要約【課題】軸受内部空間への異物の侵入を阻止しつつ保持器の変形を抑制する。
【解決手段】dmn値が70万以上の環境下で使用される玉軸受において、流体潤滑状態にすることが可能なシール部材20を備え、保持器10はエンジニアプラスチックを含む冠形保持器であって、玉5の直径φx、ポケット11のポケット中心Cを通り且つ軸受の軸心Oを含む断面におけるポケット11の径方向内周面Dの半径Ry、ポケット中心Cを通る軸受半径方向直線にポケット中心Cで直交する断面におけるポケット11の周方向内周面Eの半径Rzの寸法関係がφx<2Ry<2Rzであり、周方向内周面Eは、基部12側の第1内周面E1と先端側の第2内周面E2とを備え、第2内周面E2の中心C2は第1内周面E1の中心C1よりも基部12側へ偏心しているシール付玉軸受とした。
【選択図】図4
特許請求の範囲【請求項1】
内輪(3)及び外輪(4)と、前記内輪(3)及び前記外輪(4)との間に配置される玉(5)と、前記玉(5)を周方向に沿って保持するポケット(11)を有する保持器(10)と、前記内輪(3)及び外輪(4)の間に形成される軸受内部空間(A)の軸方向端部の開口を閉じるシール部材(20)とを備え、
dmn={(D+d)/2}×n
D:ベアリング外径(mm)
d:ベアリング内径(mm)
n:回転速度(min
-1

で規定されるdmn値が70万以上の環境下で使用される玉軸受において、
前記シール部材(20)は、前記内輪(3)及び外輪(4)の一方に固定されるとともに他方に設定されたシール摺動面(B)に摺接するシールリップ(21)を備え、前記シールリップ(21)は、周方向に並んだ複数の突起(27)を有し、前記複数の突起(27)は、周方向に隣り合う前記突起(27)同士の間に隙間(28)を生じさせ、且つ、軸受回転に伴って前記隙間(28)から前記突起(27)と前記シール摺動面(B)間に引き摺り込まれる潤滑油の油膜によって前記シールリップ(21)及び前記シール摺動面(B)間を流体潤滑状態にすることが可能な態様で形成されており、
前記保持器(10)は、環状の基部(12)と前記基部(12)から一方向に突出する柱部(13)を複数備えるとともにエンジニアプラスチックを含む冠形保持器であり、前記玉(5)の直径φx、前記ポケット(11)のポケット中心(C)を通り且つ軸受の軸心(O)を含む断面における前記ポケット(11)の径方向内周面(D)の半径Ry、前記ポケット中心(C)を通る軸受半径方向直線に前記ポケット中心(C)で直交する断面における前記ポケット(11)の周方向内周面(E)の半径Rzの寸法関係がφx<2Ry<2Rzであり、
前記周方向内周面(E)は、前記基部(12)側の第1内周面(E

)と、前記第1内周面(E

)よりも前記柱部(13)の先端側の第2内周面(E

)とを備え、前記第2内周面(E

)の中心(C

)は、前記第1内周面(E

)の中心(C

)よりも前記基部(12)側へ偏心しているシール付玉軸受。
続きを表示(約 520 文字)【請求項2】
前記周方向内周面(E)の半径Rzは、前記第1内周面(E

)の半径Rz

と前記第2内周面(E

)の半径Rz

とが等しく設定されている請求項1に記載のシール付玉軸受。
【請求項3】
前記第1内周面(E

)と前記第2内周面(E

)との間に油溜まりとして凹部(H)が設けられている請求項1に記載のシール付玉軸受。
【請求項4】
前記シールリップ(21)に、ニトリルゴム、アクリルゴム、フッ素ゴムの中から選択される単一の又は複数の素材を用いている請求項1に記載のシール付玉軸受。
【請求項5】
前記軸受内部空間への潤滑剤の供給が、軸方向一端側から軸方向他端側への一方向である場合に、前記シール部材(20)を軸方向一端側の開口にのみ設けている請求項1に記載のシール付玉軸受。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一つに記載のシール付玉軸受を用い、電動輸送機器用の駆動モータ、減速機又は増速機が備える回転軸を前記シール付玉軸受で支持している軸受装置。

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
この発明は、シール付玉軸受及び軸受装置に関する。
続きを表示(約 2,300 文字)【背景技術】
【0002】
例えば、自動車、建設用機械等の各種車両、その他、各種産業用機械等において、駆動モータを備えた変速機(増減速機)等のモータ軸には、多数の軸受が用いられている。これらの機器類に用いられる軸受は、一般的な機器類で軸支持に使用される軸受と比べて、高速条件で使用されることが一般的である。これらの機器類で使用される潤滑油中には、ギアの摩耗粉等の異物が混在する。このため、軸受の端部にシール部材を備えることで、軸受内部への異物の侵入を防止することで軸受寿命の低下を抑制するとともに、潤滑油侵入量を抑制することでその攪拌抵抗を減らしている。
【0003】
例えば、特許文献1では、シール部材に設けられたシールリップに突起を備えさせ、軸受内部と外部とを連通する油通路を生じさせることで、シールリップとシール摺動面との間を流体潤滑状態にしている。これにより、ギアの摩耗紛等による軸受寿命の低下を抑制しつつ、シール部の流体潤滑を実現してシールトルクの低減を図っている。
【0004】
また、特許文献2には、円環状の基部と、その基部から突出する柱部とを備えた冠形保持器において、その冠形保持器の径方向への肉厚が、基部から柱部の先端に亘って徐々に薄くなるようにし、且つ、基部の外周面と外輪の肩部の内周面との間の径方向隙間が、基部の内周面と内輪の肩部の外周面との間の径方向隙間よりも大きくなるようにした技術が開示されている。
【0005】
特許文献2によれば、高速回転時に遠心力により潤滑剤が飛散した場合でも、基部の外周面と外輪の肩部の内周面との間に潤滑剤が貯留されるので、外輪の軌道面への潤滑剤の流入を抑制する。これにより、攪拌抵抗が低減され、低トルク化と発熱の低減が可能となるとともに、高速回転時の遠心力による保持器変形を抑制できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
国際公開第2016/143786号公報
特開2021-195973号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1では、軸受寿命の低下を抑制することが可能である。しかし、駆動モータのモータ軸を支持するような高速条件下で使用される軸受では、想定を超えるような過酷な使用条件の下では、保持器との干渉による軌道輪の発熱や保持器の破損が懸念される。
【0008】
また、特許文献2では、高速条件下での保持器の破損対策がなされているが、この軸受では、軸受の軸方向両端にシール部材を備えているとはいえ、そのシール部材は非接触シールであるため、軸受寿命に影響を与える大きさの異物侵入を防止することはできない。このため、この軸受が、例えば、変速機や増減速機等といった装置で使用される場合に、軸受内部への異物侵入による軸受寿命低下が懸念される。また、近年では駆動モータ、インバータ、ギヤ(変速機等)を一体化した装置が広く普及しつつある。このような装置ではオイル潤滑が主流であり、駆動モータのモータ軸を支持する軸受も、変速機等内と共通のオイルで潤滑される傾向にある。このため、軸受内部への異物侵入をさらに確実に防止したいという要請がある。
【0009】
そこで、この発明の課題は、軸受内部空間への異物の侵入を阻止しつつ、高速条件下での保持器の変形を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、この発明は、内輪及び外輪と、前記内輪及び前記外輪との間に配置される玉と、前記玉を周方向に沿って保持するポケットを有する保持器と、前記内輪及び外輪の間に形成される軸受内部空間の軸方向端部の開口を閉じるシール部材とを備え、
dmn={(D+d)/2}×n
D:ベアリング外径(mm)
d:ベアリング内径(mm)
n:回転速度(min
-1

で規定されるdmn値が70万以上の環境下で使用される玉軸受において、
前記シール部材は、前記内輪及び外輪の一方に固定されるとともに他方に設定されたシール摺動面に摺接するシールリップを備え、前記シールリップは、周方向に並んだ複数の突起を有し、前記複数の突起は、周方向に隣り合う前記突起同士の間に隙間を生じさせ、且つ、軸受回転に伴って前記隙間から前記突起と前記シール摺動面間に引き摺り込まれる潤滑油の油膜によって前記シールリップ及び前記シール摺動面間を流体潤滑状態にすることが可能な態様で形成されており、
前記保持器は、環状の基部と前記基部から一方向に突出する柱部を複数備えるとともにエンジニアプラスチックを含む冠形保持器であり、前記玉の直径φx、前記ポケットのポケット中心を通り且つ軸受の軸心を含む断面における前記ポケットの径方向内周面の半径Ry、前記ポケット中心を通る軸受半径方向直線に前記ポケット中心で直交する断面における前記ポケットの周方向内周面の半径Rzの寸法関係がφx<2Ry<2Rzであり、
前記周方向内周面は、前記基部側の第1内周面と、前記第1内周面よりも前記柱部の先端側の第2内周面とを備え、前記第2内周面の中心は、前記第1内周面の中心よりも前記基部側へ偏心しているシール付玉軸受を採用した(構成1)。
(【0011】以降は省略されています)

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