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公開番号2024148748
公報種別公開特許公報(A)
公開日2024-10-18
出願番号2023062136
出願日2023-04-06
発明の名称実機環境腐食性評価方法および試験装置
出願人株式会社東芝,東芝エネルギーシステムズ株式会社
代理人弁理士法人東京国際特許事務所
主分類G01N 17/04 20060101AFI20241010BHJP(測定;試験)
要約【課題】実機の内部の部材が晒される環境における腐食の程度を部材に過大な負担を与えずに把握する。
【解決手段】実機環境腐食性評価方法は、評価の対象となる実機の内部の任意の箇所に設置される1つ以上の試験部20と、試験部20を設置した状態で実機の形状の変化に追従して変形可能な1つ以上の変形部11と、を備える試験装置10を用いて行う方法であり、実機を構成する1つ以上の部材1の表面に接触または近接する位置であり、かつ部材1の表面に生じる腐食環境を部材1と試験部20とで共有する共有位置に、試験部20を設置し、試験部20を設置してから評価の対象となる期間が経過した後に、試験部20を取り外し、取り外した試験部20の表面の腐食を解析した結果に基づいて、部材1の表面に生じる腐食性の評価を行う。
【選択図】図1
特許請求の範囲【請求項1】
評価の対象となる実機の内部の任意の箇所に設置される1つ以上の試験部と、
前記試験部を設置した状態で前記実機の形状の変化に追従して変形可能な1つ以上の変形部と、
を備える、
試験装置を用いて行う方法であり、
前記実機を構成する1つ以上の部材の表面に接触または近接する位置であり、かつ前記部材の表面に生じる腐食環境を前記部材と前記試験部とで共有する共有位置に、前記試験部を設置し、
前記試験部を設置してから評価の対象となる期間が経過した後に、前記試験部を取り外し、
取り外した前記試験部の表面の腐食を解析した結果に基づいて、前記部材の表面に生じる腐食性の評価を行う、
実機環境腐食性評価方法。
続きを表示(約 1,400 文字)【請求項2】
前記共有位置は、前記部材の表面に生じる腐食成分を含む水膜を共有する位置、前記部材の表面に生じる流体の流れを共有する位置、または、前記部材の表面に付着する腐食生成物、付着物もしくは湿分を共有する位置の少なくともいずれかである、
請求項1に記載の実機環境腐食性評価方法。
【請求項3】
前記試験部が板状を成す1つ以上の板状試験片であり、
前記変形部がコイルバネ状を成して前記板状試験片を前記共有位置に設置する1つ以上の治具であり、
前記試験装置は、前記板状試験片を前記治具に対して相対的に可動する状態で接続する1つ以上の接続具を備え、
前記板状試験片が前記接続具により前記実機の形状の変化に追従し、前記共有位置に維持される、
請求項1または請求項2に記載の実機環境腐食性評価方法。
【請求項4】
前記変形部がコイルバネ状を成す1つ以上の治具であり、この治具の少なくとも一部が前記試験部である、
請求項1または請求項2に記載の実機環境腐食性評価方法。
【請求項5】
前記試験部は、前記部材の一部と同一または類似の形状を成す1つ以上の模擬試験片であり、
前記変形部がコイルバネ状を成して前記模擬試験片を前記共有位置に設置する1つ以上の治具である、
請求項1または請求項2に記載の実機環境腐食性評価方法。
【請求項6】
前記試験部は、1つ以上の第1形態部と1つ以上の第2形態部とを含み、
板状を成す1つ以上の板状試験片が前記第1形態部であり、
前記変形部がコイルバネ状を成して前記板状試験片を前記共有位置に設置する1つ以上の治具であり、この治具の少なくとも一部が前記第2形態部である、
請求項1または請求項2に記載の実機環境腐食性評価方法。
【請求項7】
前記試験部は、1つ以上の第1種部と1つ以上の第2種部とを含み、
前記第1種部と前記第2種部は、形状、材質、物性、表面の状態の少なくとも1つが互いに異なる、
請求項1または請求項2に記載の実機環境腐食性評価方法。
【請求項8】
前記変形部がコイルバネ状を成す1つ以上の治具であり、この治具の少なくとも一部が前記試験部であり、
前記実機が有する少なくとも2つの前記部材の間の狭隘部を前記治具が通過するときに、前記治具の幅が前記狭隘部よりも狭くなるように変形させる、
請求項1または請求項2に記載の実機環境腐食性評価方法。
【請求項9】
前記変形部がコイルバネ状を成す1つ以上の治具であり、この治具の少なくとも一部が前記試験部であり、
前記実機が有する少なくとも2つの前記部材の間に前記治具が設けられ、少なくとも2つの前記試験部のそれぞれを一方と他方の前記部材の前記共有位置に設置する、
請求項1または請求項2に記載の実機環境腐食性評価方法。
【請求項10】
前記試験部の設置前と取り外し後に、前記試験部の重量、厚み、表面粗さ、表面付着成分の少なくとも1つを測定し、測定値の変化量に基づいて、前記部材の表面に生じる腐食性の評価を行う、
請求項1または請求項2に記載の実機環境腐食性評価方法。
(【請求項11】以降は省略されています)

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、実機環境腐食性評価技術に関する。
続きを表示(約 2,700 文字)【背景技術】
【0002】
エネルギーの脱炭素化を主軸とした、サステイナブルな社会の実現に向けて、様々な取り組みがなされている。再生可能エネルギー、いわゆる再エネと呼ばれる、太陽光発電、風力発電、水力発電などは、その重要性を増している。しかし、各種再エネ方式は、そのエネルギー供給の安定性に、一朝一夕では達成し得ない複数の課題を有し、電力の安定供給の実現と維持に向けた研究と開発が数多く進められている。現状のエネルギー供給の主力であり、エネルギー供給の安定性から、今後再生エネルギーを支える柱のひとつに、コンバインドサイクル発電方式がある。コンバインドサイクル発電方式のプラントは、ガスタービンを燃焼ガスによって駆動し、このガスタービンから排気される排ガスを排熱回収ボイラ(Heat Recovery Steam Generator:HRSG)に送る。この排熱回収ボイラは、その主たる部分が、伝熱管と呼ばれるフィン付きの配管で構成されており、伝熱管の外面に排ガスを流通させ、伝熱管内を流通する熱水または蒸気により、排ガスの余熱を移送する。このコンバインドサイクル発電方式は、排ガスの余熱を利用して蒸気を生成し、得られた蒸気を蒸気タービンに導いて発電機を駆動している。これにより、従来の各種発電方式以上の高効率の発電が実現される。
【0003】
排熱回収ボイラは、コンバインドサイクル発電方式に不可欠な機器である。しかし、その機器の性質上、伝熱面に腐食環境が形成され易い機器でもある。排熱回収ボイラは、運転時は高温となり、停止時は外気温度と同等の温度となることから、その機器内部に高湿度の環境が形成され易く、特に停止時にリスクが高まる。機器内部の高湿度化は、例えば、機器のマンホール解放時などに生じ、降雨または外部の多湿などによる外部環境の湿度の影響を受ける。また、熱交換器の伝熱管またはスタブなどの部材が、腐食発生のリスクを有する。また、排熱回収対象である排ガスに含まれる成分には、腐食成分が含まれるケースもあり、より腐食し易い環境が形成されてしまうことも想定される。また、腐食成分は、排ガスに由来するのみならず、機器の立地にも大きく影響する。例えば、沿岸部または工業地域に設置された排熱回収ボイラは、その周辺環境からの飛来成分などもその腐食リスクを高める原因となる。
【0004】
排熱回収ボイラは、数階建ての規模を有する大型機器であり、伝熱管の本数は、数百から数千本にもなる。伝熱管の腐食により錆層が形成される場合、伝熱管の主たる要求性能である熱伝達は、錆層により阻害され、この錆層部分で熱伝達効率が低下し、機器自体の熱伝達効率が低下する深刻な問題となる。また、腐食により機器の損傷が生じた場合、部材の減肉または局部腐食による薄肉化が生じ、機器としての耐久性が低下する。薄肉化が甚大な場合には、熱水または蒸気の漏洩を誘発させる。また、伝熱管の外面に腐食が発生し、粗錆層が形成されると、プラントの起動時に、ガスタービンから排熱回収ボイラに送り込まれる排ガスの気流によって剥離が生じる。この剥離した錆は、煙突などを通って排熱回収ボイラから外部環境へと排出されるおそれがある。加えて、腐食の進行と錆層の剥離が繰り返されると、伝熱管自体の減肉と薄肉化を加速する要因となり得る。そのため、排熱回収ボイラに腐食が発生しないよう、排熱回収ボイラに設置前に、その部材に対して、防錆対策として塗装または溶射を行うことが検討されている。
【0005】
排熱回収ボイラの構成は、高い熱回収効率を得るために最適化されており、多くの場合、伝熱管が密集して配置されている。従って、排熱回収ボイラをプラントに設置した後に、伝熱管またはスタブなどの部材に対し、塗装または溶射による防錆対策を施すことは、実質的に不可能であるとされている。特に、塗装または溶射は、防錆対象表面を適切に被覆する必要がある。また、不充分な塗膜または溶射層の形成は、機能発現を阻害して有効な効果を得られないリスクを有する。また、排熱回収ボイラの設置後に発生し、進行した錆については、排熱回収ボイラを起動させる前に、錆の除去を行う気吹掃除などのメンテナンスが行われる。しかし、排熱回収ボイラの内部は、伝熱管などが密集し、入り組んでいるため、腐食対策、錆の飛散対策の作業が困難である。
【0006】
これら背景に加え、プラントにおける伝熱管の腐食対策の難しさの一因として、プラント毎の腐食性の差が挙げられる。国内のプラントにおいても、その実機環境が有する腐食性、例えば、伝熱管を腐食させる程度は、排ガスが含有する成分の種類、その濃度、周辺環境、運転状況により大きく異なる。さらに、燃料ガスの変更、燃料ガスに付随する付臭剤の変更、周辺施設の変遷などの腐食の原因となる成分が付着する要因が多数あり、伝熱管の腐食程度の予測が非常に困難である。
【0007】
この様な背景を受け、実機の表面における、硫酸による腐食を検知する手段として、実機に直接腐食センサを設置する技術が知られている。例えば、低圧節炭器近傍に、硫酸による腐食電流を測定するための腐食センサが設置され、この腐食センサが硫酸による腐食電流を検知する。この手法では、腐食センサを張り付けた箇所において生じる硫酸起因の腐食程度を測定することができる。一方、排熱回収ボイラの伝熱管の形状は、非常に複雑で、通液のための母管部分と無数の伝熱フィンからなり、腐食センサを安定して設置可能な箇所が限られる。また、腐食要因がひとつでないプラントにおいては、別要因の影響を含めて腐食速度を算出することが難しい。
【0008】
また、材料側の組成制御により、伝熱管の伸びと腐食性の制御を実現している技術が知られている。しかし、既設機の腐食性を把握することは難しく、代替材料が提案される。材料の変更の適切性は、環境の腐食性を適切に把握して適切な判断が可能となるため、相補技術が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
特許第6137772号公報
特開平8-28297号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、実機の内部の部材が晒される環境における腐食の程度を部材に過大な負担を与えずに把握することである。
【課題を解決するための手段】
(【0011】以降は省略されています)

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