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公開番号2024147691
公報種別公開特許公報(A)
公開日2024-10-16
出願番号2024113467,2020572358
出願日2024-07-16,2020-02-17
発明の名称静止期肝星細胞の調製方法と活性化評価モデル
出願人国立大学法人 東京大学
代理人個人,個人,個人,個人,個人,個人
主分類C12N 5/077 20100101AFI20241008BHJP(生化学;ビール;酒精;ぶどう酒;酢;微生物学;酵素学;突然変異または遺伝子工学)
要約【課題】本発明は、多能性幹細胞を分化誘導して静止期肝星細胞を調製する方法、及び静止期肝星細胞の活性化に関与する薬剤のスクリーニング法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明によれば、iPS細胞を分化誘導して、NGFR陽性の表現型を指標として静止期肝星細胞を分取する工程を含む、静止期肝星細胞を調製する方法が提供される。また、該静止期肝星細胞にレポーター遺伝子を導入することにより、活性化された肝星細胞において特異的に発現する遺伝子マーカーの発現量に基づく、線維化を伴う肝疾患症を治療又は予防するための薬剤に使用される候補物質として選択するスクリーニング法が提供される。
【選択図】図1
特許請求の範囲【請求項1】
多能性幹細胞を分化誘導して静止期肝星細胞を調製する方法であって、
(a)多能性幹細胞にレポーター遺伝子を組み込む工程;ならびに
(b)該レポーター遺伝子が組み込まれた多能性幹細胞を下記の各誘導期間に対応する培地:
(i)0~1日目:BMP4及びRock阻害剤を添加した培地、
(ii)1~4日目:ActivinA、bFGF、及びBMP4を添加した培地、及び
(iii)4~8日目:VEGF、TGF-β阻害剤、BMP阻害剤、及びRock阻害剤を添加した培地
において三次元培養する工程
を含み、
ここで、上記期間のうち0~6日目では約4%O2の存在下で多能性幹細胞を培養し、続いて6~8日目では20%酸素濃度環境下で多能性幹細胞を培養して、NGFRを発現する静止期肝星細胞を得ることによって特徴付けられる、上記調製方法。
続きを表示(約 1,100 文字)【請求項2】
多能性幹細胞を分化誘導して静止期肝星細胞を調製する方法であって、
(a)多能性幹細胞を下記の各誘導期間に対応する培地:
(i)0~1日目:BMP4及びRock阻害剤を添加した培地、
(ii)1~4日目:ActivinA、bFGF、及びBMP4を添加した培地、及び
(iii)4~8日目:VEGF、TGF-β阻害剤、BMP阻害剤、及びRock阻害剤を添加した培地
において三次元培養する工程;ならびに
(b)(a)の工程中又はその後にレポーター遺伝子を前記多能性幹細胞に組み込む工程
を含み、
ここで、上記期間のうち0~6日目では約4%O2の存在下で多能性幹細胞を培養し、続いて6~8日目では20%酸素濃度環境下で多能性幹細胞を培養して、NGFRを発現する静止期肝星細胞を得ることによって特徴付けられる、上記調製方法。
【請求項3】
Rock阻害剤がY27632であり、TGF-β阻害剤がSB431542であり、及び/又はBMP阻害剤がDorsomorphinである、請求項1又は2に記載の調製方法。
【請求項4】
三次元培養が、スフェロイド培養、浮遊培養又はゲル培養である、請求項1~3のいずれか1項に記載の調製方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の方法で調製された静止期肝星細胞。
【請求項6】
請求項5に記載の静止期肝星細胞を含む細胞懸濁液。
【請求項7】
肝星細胞の活性化を抑制する被験物質を、線維化を伴う肝疾患症を治療又は予防するための薬剤に使用される候補物質として選択するスクリーニング法であって、
(a)請求項1~4のいずれか1項に記載の方法で調製された、レポーター遺伝子が導入された静止期肝星細胞を培養し;
(b)前記静止期肝星細胞の培養系に静止期肝星細胞を活性化する薬物を添加するか、又は前記静止期肝星細胞を回収及び再播種して二次元培養することによって、静止期肝星細胞を活性化して、活性化肝星細胞を得て;
(c)活性化肝星細胞の培養系に被験物質を添加し;
(d)レポーター遺伝子の発現量を被験物質の添加前後で比較し;及び
(e)被験物質の添加後にレポーター遺伝子の発現量が減少している場合に、肝疾患症を治療又は予防するための薬剤に使用される候補物質として選択する
ことを含むスクリーニング法。
【請求項8】
請求項7に記載のスクリーニング法に使用するためのキットであって、請求項5に記載の静止期肝星細胞又は請求項6に記載の細胞懸濁液を含むキット。

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、多能性幹細胞を分化誘導して静止期肝星細胞を調製する方法、該調製方法によって得られた静止期肝星細胞及びそれを含む細胞懸濁液、ならびに静止期肝星細胞の活性化に関与する薬剤のスクリーニング法に関する。
続きを表示(約 2,500 文字)【背景技術】
【0002】
肝臓の結合組織の増生及び蓄積は、肝臓の循環傷害を引き起こし、さらに肝実質細胞障害の原因となり、さらなる結合組織の増生及び蓄積がおこり、肝硬変や肝線維化を伴う肝疾患症の原因になると考えられている。肝臓は、肝実質細胞と非実質細胞(肝星細胞、クッパー細胞、類洞内皮細胞、Pit細胞)からなり、肝臓の結合組織は細胞外基質(コラーゲンなど)とそこに局在する細胞から構成されている。結合組織中の基質産生担当細胞である肝星細胞(Hepatic Stellate Cell:HSC)が活性化され、形質転換することにより、結合組織の増生及び蓄積が促進される。正常肝臓の肝星細胞(以下、「静止期肝星細胞」と呼ぶ)は、細胞外基質の生産量が少なく、活性化に伴い筋線維芽様細胞に形態を変化させ、細胞の増加とともに多量の細胞外基質を合成することが知られている。
【0003】
したがって、肝硬変などの肝線維化を伴う肝疾患患者の肝星細胞の活性化を抑制し、結合組織の増生及び蓄積を軽減する治療法及び予防法が必要とされ、肝星細胞の活性化を抑制させる薬剤のスクリーニングは重要であると言える。このような必要性があるにも関わらず、肝星細胞の活性化を抑制する薬物の効率的なスクリーニング法は知られていない。
【0004】
本発明者らは、これまでに多能性幹細胞から肝星細胞への分化誘導系の樹立に成功している(特許文献1;非特許文献1)。しかしながら、誘導した肝星細胞は、現在市販され、入手可能な初代培養肝星細胞と同様に、すでに活性化しているか又は培養直後から活性化してしまうことが明らかとなっているため、線維症治療薬などの創薬の研究及び開発の有用ツールにはなっていない。そこで、肝星細胞の活性化過程を培養系で反映する創薬スクリーニング系の開発が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
国際公開第2016/148216号
【非特許文献】
【0006】
Koui, Y., et al., Stem. Cell. Rep., 2017, 9, 490-498
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の通り、市販の初代培養星細胞は既に活性化しており、そもそもヒト生体から創薬スクリーニング系の構築に十分な静止期肝星細胞を多量に得ることは不可能である。したがって、本発明は、多能性幹細胞(例えば、iPS細胞)から静止期肝星細胞への分化誘導系の樹立と、その活性化制御系の開発を目的する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、従来のiPS細胞を分化誘導して肝星細胞を得る方法を改良することにより、iPS細胞から静止期を安定に保持した肝星細胞を得ることに成功し、本発明を完成することに成功した。
【0009】
すなわち本発明は、以下の態様を有する。
[1]多能性幹細胞を分化誘導して静止期肝星細胞を調製する方法であって、多能性幹細胞を三次元培養する工程、及び/又は低酸素濃度で培養する工程を含む調製方法。
[2]
培養0~6日目まで約4%O

の存在下で多能性幹細胞を培養する、上記[1]に記載の調製方法。
[3]
培養6日目以降、O

濃度を大気中と同一にして培養を行う、上記[2]に記載の調製方法。
[4]
三次元培養が、スフェロイド培養、浮遊培養又はゲル培養である、上記[1]~[3]のいずれか1つに記載の調製方法。
[5]
Rock阻害剤を添加する工程を含む、上記[1]~[4]のいずれか1つに記載の調製方法。
[6]
分化誘導前に多能性幹細胞にレポーター遺伝子を組み込む工程をさらに含む、上記[1]~[5]のいずれか1つに記載の調製方法。
[7]
分化誘導過程又は分化誘導後にレポーター遺伝子を静止期肝星細胞に組み込む工程をさらに含む、上記[1]~[5]のいずれか1つに記載の調製方法。
[8]
上記[1]~[7]のいずれか1つに記載の方法で調製された静止期肝星細胞。
[9]
上記[8]に記載の静止期肝星細胞を含む細胞懸濁液。
[10]
肝星細胞の活性化を抑制する被験物質を、線維化を伴う肝疾患症を治療又は予防するための薬剤に使用される候補物質として選択するスクリーニング法であって、
(a)上記[6]又は[7]に記載の方法で調製された、レポーター遺伝子が導入された静止期肝星細胞を培養し;
(b)上記静止期肝星細胞の培養系に静止期肝星細胞を活性化する薬物を添加するか、又は上記静止期肝星細胞を回収及び再播種して二次元培養することによって、静止期肝星細胞を活性化して、活性化肝星細胞を得て;
(c)活性化肝星細胞の培養系に被験物質を添加し;
(d)レポーター遺伝子の発現量を被験物質の添加前後で比較し;及び
(e)被験物質の添加後にレポーター遺伝子の発現量が減少している場合に、肝疾患症を治療又は予防するための薬剤に使用される候補物質として選択する
ことを含むスクリーニング法。
[11]
上記[10]に記載のスクリーニング法に使用するためのキットであって、上記[8]に記載の静止期肝星細胞又は上記[9]に記載の細胞懸濁液を含むキット。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、iPS細胞から、活性化されていない静止期にある肝星細胞を調製することが可能である。得られた肝硬変などの肝線維化を伴う肝疾患治療用の創薬をスクリーニングし、治療薬を評価する系に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
(【0011】以降は省略されています)

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