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公開番号
2024147841
公報種別
公開特許公報(A)
公開日
2024-10-17
出願番号
2021140886
出願日
2021-08-31
発明の名称
多系統萎縮症治療用の医薬組成物
出願人
国立大学法人 東京大学
代理人
個人
主分類
A61K
31/122 20060101AFI20241009BHJP(医学または獣医学;衛生学)
要約
【課題】多系統萎縮症の進行を抑制することによって、多系統萎縮症による各種の症状の緩和及び進行を抑制し、多系統萎縮症を治療可能な医薬組成物を提供すること。
【解決手段】ユビキノールを含む医薬組成物であって、1日あたりのユビキノール用量を1500~1800mgとし、7日間以上反復経口投与する、多系統萎縮症治療用の医薬組成物。
【選択図】なし
特許請求の範囲
【請求項1】
ユビキノールを含む医薬組成物であって、1日あたりのユビキノール用量を1500~1800mgとし、7日間以上反復経口投与する、多系統萎縮症治療用の医薬組成物。
続きを表示(約 590 文字)
【請求項2】
1日あたりのユビキノール用量を1500~1800mgの範囲で増減する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
1日あたりのユビキノール用量を1500mgとする、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
14日間以上反復経口投与する、請求項1~3のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
投与開始7日目以降に、ユビキノールの最高血漿中濃度が10μg/mL以上となる請求項1~4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
投与開始7日目以降に、ユビキノールの最高血漿中濃度15μg/mL程度となる請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
多系統萎縮症がC型(MSA-C)である、請求項1~6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
多系統萎縮症による、パーキンソニズム、小脳失調症、自律神経不全、及び錐体路徴候のうち一以上の症状を抑制又は軽減するための請求項1~7のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
ユビキノールの最高血漿中濃度を10μg/mL以上とすることによる多系統萎縮症の治療剤。
【請求項10】
ユビキノールの最高血漿中濃度を15μg/mL程度とすることによる、請求項9に記載の治療剤。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、高用量ユビキノールの反復経口投与による多系統萎縮症治療用の医薬組成物に関する。
続きを表示(約 2,600 文字)
【背景技術】
【0002】
多系統萎縮症(Multiple System Atrophy;MSA)は、進行性で予後不良な難治性の神経変性疾患の一つである。MSAの平均発症年齢は57.5±7.2歳で、臨床症候は、小脳性運動失調、パーキンソニズム、自律神経症候、錐体路徴候が様々な組み合わせで出現する。これらのうち、小脳性運動失調が主要症候であるMSA-Cと、パーキンソニズムが主要症候であるMSA-Pの2つの臨床病型が代表的であり、MSA-Cはオリーブ橋小脳萎縮症に対応し、MSA-Pは線条体黒質変性症に対応する。この他に、自律神経障害が主要症候であるShy-Drager症候群がある。日本人ではMSA-PよりMSA-Cの頻度が高く、MSA患者数12000人に対して、MSA-Cが8000人、MSA-Pが4000人の頻度である。これに対して欧米人ではMSA-Pの頻度がより高い。実際には、MSA-PとMSA-Cの症状がオーバーラップして両方の症状を呈する患者がおり、単純には分類できない場合もある。
【0003】
コエンザイムQ
10
(CoQ
10
)には酸化型のユビキノンと還元型のユビキノールが存在するが、生体内で薬理作用を示すのは還元型のユビキノールである(非特許文献1)。還元型のユビキノールは空気中で酸化されやすく、不安定な物質である。そのため、これまでは酸化型のユビキノンについて各種神経疾患治療への応用が試みられてきた。酸化型のユビキノンは、細胞質に存在する還元酵素:NADPH-dependent CoQ reductase、DT diaphorase、lipoamide dehydrogenase、thioredoxin reductase等によって還元型のユビキノールに変換される(非特許文献2)。従って、ユビキノン(酸化型)をラットに静脈内及びヒトに経口投与した場合でも、血漿中の95%以上はユビキノール(還元型)として存在する(非特許文献3、4)。
【0004】
家族性及び孤発性MSA患者の組織において、CoQ10量が低下していることを確認し、CoQ10投与によるMSAの治療効果が論理的に強く示唆されること、そして家族性MSAを発症し、COQ2遺伝子のR337X/V343A複合ヘテロ接合性変異を有する患者に、ユビキノールを反復投与して臨床試験を行った例が報告されている(特許文献1)。同文献では、ユビキノールを胃瘻チューブから1日一回600mgを2週間、つづいて840mgを2週間、さらに1200mgを2週間反復投与した際の臨床評価スケール(図9)について記載があるものの、0085段落には、「軽微な変動はあったが、統計的に有意と判断できる変化は認められなかった」との記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
特許6358962号
【非特許文献】
【0006】
Raizner, et al. Coenzyme Q10. Methodist Debakey Cardiovasc J. 2019;15(3):185-191
Turunen, et al. Metabolism and function of coenzyme Q. Biochim Biophys Acta. 2004 28;1660(1-2):171-199)
Watanabe,et al. PET imaging of 11C-labeled coenzyme Q10: Comparison of biodistribution between [11C]ubiquinol-10 and [11C]ubiquinon-10. Biochem Biophys Res Commun. 2019 May 7;512(3):611-615
Langsjoen, et al. Comparison study of plasma coenzyme Q10 levels in healthy subjects supplemented with ubiquinol versus ubiquinone. Clin Pharmacol Drug Dev. 2014;3(1):13-17
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
MSA発症の原因は不明であり、現在までに症状進行を抑制する有効な治療法は存在しなかった。特許文献1に記載された、COQ2遺伝子に極めてまれな複合ヘテロ接合性変異を有する家族性MSA患者1名に対する臨床試験では、従来の投与量を超える量のユビキノールを一定期間以上投与することで、ゼロではないが極めて微小な多系統萎縮症治療効果の兆しが認められていたともいえる。これは、今まで治療法が皆無であったことを考えれば、貴重な結果ではあるものの、同文献に「軽微な変動はあったが、統計的に有意と判断できる変化は認められなかった」と記載されているように、患者のQOLの向上の観点や、医薬品として実用化する観点からは到底満足できるものではない。また、極めてまれな複合ヘテロ接合性変異を有する家族性MSA患者に対する試験であり、一般の孤発性多系統萎縮症患者に対する試験でないことから,孤発性多系統萎縮症患者に対する治療効果は未知であり、有効な治療法や治療薬の開発が望まれていた。
【0008】
この様な背景の下、本発明者らは鋭意研究を行い、従来想定し得なかった程の大量のユビキノールを、従来想定し得なかった長期間投与することにより、予想外に血漿中ユビキノール濃度を上げられること、そしてその結果、多系統萎縮症の諸症状を、今まで経験のないレベルで改善できることを見出して本発明に到達した。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、多系統萎縮症の進行を抑制することによって、多系統萎縮症による各種の症状の緩和、または進行を抑制し、多系統萎縮症を治療可能な医薬組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち本発明は、以下の実施態様を提供するものである。
(【0011】以降は省略されています)
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