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公開番号2025094115
公報種別公開特許公報(A)
公開日2025-06-24
出願番号2025044691,2022530615
出願日2025-03-19,2021-06-10
発明の名称核酸脂質粒子ワクチン
出願人第一三共株式会社,国立大学法人 東京大学
代理人個人,個人
主分類C12N 15/88 20060101AFI20250617BHJP(生化学;ビール;酒精;ぶどう酒;酢;微生物学;酵素学;突然変異または遺伝子工学)
要約【課題】新型コロナウイルスによる感染を予防及び/又は治療するためのワクチンを提供する。
【解決手段】新型コロナウイルスのS蛋白質及び/又はその断片を発現させることができる核酸を封入した脂質粒子であって、ペプチドがS蛋白質のシグナル配列及びS蛋白質の受容体結合ドメインのアミノ酸配列に変異が導入されている配列からなる変異受容体結合ドメインからなり、脂質粒子がカチオン性脂質、両親媒性脂質、ステロール類、及びPEG脂質を含み、カチオン性脂質が下記の構造式:
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で表されるカチオン性脂質であり、両親媒性脂質がジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)であり、ステロール類がコレステロールであり、PEG脂質が1、2-ジミリストイル-sn-グリセロールメトキシポリエチレングリコールである前記粒子。
【選択図】なし
特許請求の範囲【請求項1】
新型コロナウイルス(severe acute respiratory syndrome coronavirus 2:SARS-CoV-2)のS蛋白質の断片のアミノ酸配列に変異が導入されている配列からなるペプチドを発現させることができる核酸を封入した脂質粒子であって、
ペプチドがS蛋白質のシグナル配列及びS蛋白質の受容体結合ドメインのアミノ酸配列に変異が導入されている配列からなる変異受容体結合ドメインからなり、
脂質粒子がカチオン性脂質、両親媒性脂質、ステロール類、及びPEG脂質を含み、
カチオン性脂質が下記の構造式:
JPEG
2025094115000016.jpg
38
95
で表されるカチオン性脂質、又はその薬学的に許容される塩であり、
両親媒性脂質がジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)であり、
ステロール類がコレステロールであり、
PEG脂質が1、2-ジミリストイル-sn-グリセロール メトキシポリエチレン グリコールである前記粒子。
続きを表示(約 1,100 文字)【請求項2】
S蛋白質の受容体結合ドメインのアミノ酸配列中の1個以上かつ10個以下のアミノ酸が置換、欠失、挿入及び/又は付加している請求項1に記載の粒子。
【請求項3】
S蛋白質の受容体結合ドメインのアミノ酸配列中の少なくとも1個のシステインがセリンに置換している請求項1又は2に記載の粒子。
【請求項4】
両親媒性脂質、ステロール類、カチオン性脂質、及びPEG脂質の脂質組成が、モル量にて、両親媒性脂質が15%以下、ステロール類が20~55%、カチオン性脂質が40~65%、PEG脂質が1~5%であり、核酸重量に対する総脂質重量の比率が、15~30である請求項1~3のいずれかに記載の粒子。
【請求項5】
両親媒性脂質、ステロール類、カチオン性脂質、及びPEG脂質の脂質組成が、モル量にて、両親媒性脂質が10~15%、ステロール類が35~45%、カチオン性脂質が40~50%、PEG脂質が1~2%であり、核酸重量に対する総脂質重量の比率が、17.5~22.5である請求項4記載の粒子。
【請求項6】
新型コロナウイルス(severe acute respiratory syndrome coronavirus 2:SARS-CoV-2)のS蛋白質の断片のアミノ酸配列に変異が導入されている配列からなるペプチドを発現させることができる核酸が、キャップ構造(Cap)、5’非翻訳領域(5’-UTR)、リーダー配列(leader sequence)、S蛋白質の受容体結合ドメインのアミノ酸配列に変異が導入されている配列の翻訳領域、3’非翻訳領域(3’-UTR)及びポリA尾部(polyA)を含むmRNAである請求項1~5のいずれかに記載の粒子。
【請求項7】
5’非翻訳領域(5’-UTR)、及び3’非翻訳領域(3’-UTR)がそれぞれhumanβ-globinの5’-UTR配列、及びhumanβ-globinの3’-UTR配列である請求項6記載の粒子。
【請求項8】
核酸が少なくとも1個の修飾ヌクレオチドを含む請求項1~7のいずれかに記載の粒子。
【請求項9】
修飾ヌクレオチドが、5-メチルシチジン、5-メトキシウリジン、5-メチルウリジン、シュードウリジン、及び1-アルキルシュードウリジンからなる群から選ばれる少なくとも1個である請求項8記載の粒子。
【請求項10】
粒子の平均粒子径が30nm~300nmである請求項1~9のいずれかに記載の粒子。
(【請求項11】以降は省略されています)

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、SARS-CoV-2 mRNAを封入した核酸脂質粒子ワクチンに関する。
続きを表示(約 4,200 文字)【背景技術】
【0002】
新型コロナウイルス感染症(coronavirus disease 2019:COVID-19)は新型コロナウイルス(severe acute respiratory syndrome coronavirus 2:SARS-CoV-2)に起因した感染症で、呼吸器での急性炎症を主体とした病態を呈し、特にハイリスク者における侵襲性肺炎及び急性呼吸窮迫症候群などの下気道での炎症を主体とする病態が疾病負担となっている(非特許文献1)。ヒトに感染して主に呼吸器症状を呈するcoronavirus(CoV)は6種類以上知られている。SARS-CoV-2はbetacoronavirus属に分類され、過去にアウトブレイクを引き起こしたSARS-CoVやMiddle East respiratory syndrome coronavirus(MERS-CoV)とウイルス学的に類似している。
【0003】
SARS-CoV-2のウイルス粒子表面に発現するspike protein(S)は、初期感染機序に重要な役割を果たしている。Sは、2つのサブユニットS1とS2から構成されるI型膜蛋白質で3量体を形成する(約500 kDa、約20 nm)。S1に存在するreceptor-binding domain(RBD)が宿主細胞表面に発現するangiotensin-converting enzyme 2(ACE2)と相互作用する。SARS-CoVのSと比較して、SARS-CoV-2のSは、ACE2に対する親和性が10-20倍高いこと及び熱力学的安定性が高いことが示唆されており、SARS-CoV-2の高い伝播性に関与していることが示唆されている(非特許文献2、3)。
【0004】
SARS患者の回復期血清中には、少なくとも3年以上RBDに対するIgGが存続し、血清をRBD蛋白質で処理して抗RBD抗体を吸着させた後には、中和活性が50%以下に減弱することから、抗RBD抗体が主要中和活性を担っていることが示唆されている(非特許文献4、5)。実際に、分離された抗SARS-CoV-2 RBDモノクローナル抗体は、SARS-CoV-2に対する中和活性を有することが報告されている(非特許文献6、7)。
【0005】
無症状となった後3週間程度経過したCOVID-19患者回復期末梢血を用いた解析から、SARS-CoV-2の感染防御には、特異的CD4+及びCD8+ T細胞の誘導が重要だと考えられている(非特許文献8)。具体的には、10-20例のCOVID-19患者血液検体を解析した結果、すべての症例で、血中抗SARS-CoV-2 RBD抗体応答及びSARS-CoV-2特異的CD4+ T細胞応答が確認され、約70%の症例で、SARS-CoV-2特異的CD8+ T細胞応答が確認されている。また、血中抗SARS-CoV-2 RBD IgG価とS特異的CD4+ T細胞頻度が相関する(R = 0.8109)ことから、SにT細胞エピトープが存在し、抗体応答の誘導にS特異的CD4+ T細胞が重要な役割を果たしている可能性が示唆された(非特許文献8)。更に、血中抗SARS-CoV-2 中和活性と血中抗SARS-CoV-2 S IgG価が相関する(R = 0.9279)ことが示されている(非特許文献9)。
【0006】
COVID-19症状が重症化する「immune enhancement」の機序として、cellular immunopathologyとantibody-dependent enhancement(ADE)が関与している可能性が想定されている(非特許文献10)。SARSの場合には、軽症で回復した患者と比較して、致死患者は、血中サイトカインプロファイルがTヘルパー(Th)2型優位になっていることが示唆されている(非特許文献11)。マウスSARS-CoV感染モデルにおいて、Sに対するTh2優位の免疫応答は、好酸球を主体とした炎症応答を伴う肺のimmunopathologyを誘発することが示唆されている(非特許文献12)。一方、ADEに関しては、デング熱ウイルス、呼吸器合胞体ウイルスなど他のウイルスに関して報告されているが、SARS患者において、SARS-CoVに対する特異的抗体がADEを誘発する報告はない。SARS-CoVに対するワクチン抗原候補について、S全長ではなくRBDのみの抗原でも、肺障害リスクを回避できる可能性を示唆するデータが報告されている(非特許文献13)。SARS-CoV-2に関しても、Sに対する抗体がADEに関与している直接的な臨床エビデンスはないが、リスク回避のためには、適切な細胞性免疫応答を誘導することが必要であることが指摘されている(非特許文献14)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
Viruses 12:372 2020
Science 367:1260 2020
Viruses 12:428 2020
Virol J 7:299 2010
Virology 334:74 2005
Nat Commun 11:2251 2020
Nature 583:290 2020
Cell 181:1 2020
Nat Med 26:1033 2020
Nat Rev Immunol 20:347 2020
J Immunol 181:5490 2008
PLoS One 7:e35421 2012
Vaccine 25:2832 2007
PNAS 117:8218 2020
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、新型コロナウイルス(severe acute respiratory syndrome coronavirus 2:SARS-CoV-2)による感染を予防及び/又は治療するためのワクチンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、マウスにSARS-CoV-2のRBDをコードするmRNAを封入した脂質粒子を投与したところ、血中SARS-CoV-2 S蛋白質IgGの誘導が観察され、またその免疫応答がTh1型優位になることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
本発明の要旨は以下の通りである。
(1)新型コロナウイルス(severe acute respiratory syndrome coronavirus 2:SARS-CoV-2)のS蛋白質及び/又はその断片を発現させることができる核酸を封入した脂質粒子であって、脂質が一般式(Ia)で表されるカチオン性脂質、又はその薬学的に許容される塩を含む前記粒子。
JPEG
2025094115000001.jpg
37
110
式中、


及びR

は、独立して、C

-C

アルキル基を示し;


は、C

-C

アルカノイルオキシ基を1若しくは複数個有していてもよいC
17
-C
19
アルケニル基を示し;


は、C

-C

アルカノイルオキシ基を1若しくは複数個有していてもよいC
10
-C
19
アルキル基、又はC

-C

アルカノイルオキシ基を1若しくは複数個有していてもよいC
10
-C
19
アルケニル基を示し;
pは、3、又は4である。
(2)一般式(Ia)中のR

及びR

が、共にメチル基である、(1)に記載の粒子。
(3)一般式(Ia)中のpが、3である(1)又は(2)に記載の粒子。
(4)一般式(Ia)中のL

が、アセトキシ基を1若しくは複数個有していてもよいC
17
-C
19
アルケニル基である、(1)~(3)のいずれかに記載の粒子。
(5)一般式(Ia)中のL

が、アセトキシ基を1若しくは複数個有していてもよいC
10
-C
12
アルキル基、又はアセトキシ基を1若しくは複数個有していてもよいC
10
-C
19
アルケニル基である、(1)~(4)のいずれかに記載の粒子。
(6)一般式(Ia)中のL

が、アセトキシ基を1若しくは複数個有していてもよいC
10
-C
12
アルキル基、又はアセトキシ基を1若しくは複数個有していてもよいC
17
-C
19
アルケニル基である、(1)~(4)のいずれかに記載の粒子。
(7)一般式(Ia)中のL

が、(R)-11-アセチルオキシ-cis-8-ヘプタデセニル基、cis-8-ヘプタデセニル基、又は(8Z,11Z)-ヘプタデカジエニル基である(1)~(6)のいずれか1項に記載の粒子。
(8)一般式(Ia)中のL

が、デシル基、cis-7-デセニル基、ドデシル基、又は(R)-11-アセチルオキシ-cis-8-ヘプタデセニル基である、(1)~(7)のいずれかに記載の粒子。
(9)カチオン性脂質が下記の構造式:
【発明の効果】
(【0011】以降は省略されています)

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