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公開番号
2024150423
公報種別
公開特許公報(A)
公開日
2024-10-23
出願番号
2024062517
出願日
2024-04-09
発明の名称
外来性遺伝子発現組換えイネ
出願人
株式会社HanaVax
,
国立大学法人 東京大学
代理人
個人
,
個人
主分類
A01H
6/46 20180101AFI20241016BHJP(農業;林業;畜産;狩猟;捕獲;漁業)
要約
【課題】本発明は、、コレラトキシンB鎖(CTB)などの外来性遺伝子(例えば、病原性微生物由来の抗原性タンパク質をコードする遺伝子)を安定的に保持し、赤色光を含む光照明下においても、発育することができるイネ植物およびその種子の提供を課題とする。
【解決手段】本発明は、病原性微生物由来の抗原性タンパク質をコードするDNAが発現可能に染色体DNAに組み込まれた遺伝子導入イネであって、当該DNAが組み込まれた染色体が1番染色体であることを特徴とする遺伝子導入イネおよび当該イネから採取した種子である。当該遺伝子導入イネとして、受託番号FERM BP-22475で寄託された種子から生育したイネなどが例示される。
【選択図】なし
特許請求の範囲
【請求項1】
病原性微生物由来の抗原性タンパク質をコードするDNAが発現可能に染色体DNAに組み込まれた遺伝子導入イネであって、当該DNAが組み込まれた染色体が1番染色体であることを特徴とする、前記遺伝子導入イネ。
続きを表示(約 690 文字)
【請求項2】
前記DNA構築物が組み込まれたイネ1番染色体の位置が、イネ1番染色体DNAの29,910,245位置から上流に向かって約500 bpの位置と29,910,245位置から下流に向かって約17,342 bpの間の位置である、請求項1に記載の遺伝子導入イネ。
【請求項3】
染色体に組み込まれた抗原性タンパク質をコードするDNAのコピー数が1であることを特徴とする、請求項2に記載の遺伝子導入イネ。
【請求項4】
前記抗原性タンパク質がコレラトキシンB鎖(CTB)である、請求項3に記載の遺伝子導入イネ。
【請求項5】
受託番号FERM BP-22475で寄託された種子から生育したことを特徴とする、請求項4に記載の遺伝子導入イネ。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の遺伝子導入イネから採取された種子。
【請求項7】
受託番号FERM BP-22475で寄託されたことを特徴とする請求項6に記載の種子。
【請求項8】
請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の遺伝子導入イネから採取されたコメ、または抗原性タンパク質を含有するコメ加工物。
【請求項9】
請求項8に記載のコメ、または抗原性タンパク質を含有するコメ加工物を有効成分として含有するワクチン組成物。
【請求項10】
請求項7に記載の種子から製造されたコメ、または抗原性タンパク質を含有するコメ加工物。
(【請求項11】以降は省略されています)
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、コレラトキシンB鎖などの外来性遺伝子を発現する組換えイネ、該組換えイネから採取される種子またはコメ、該種子またはコメを利用したワクチンに関する。
続きを表示(約 3,300 文字)
【背景技術】
【0002】
従来、種々の感染症に対するワクチンは、注射により投与する注射型が多かった。しかし、注射によるワクチン投与では、全身免疫の誘導は可能であるが、粘膜免疫の誘導が十分ではない。これに対し、粘膜ワクチンは、全身及び粘膜の両方の免疫応答を誘導することができ、防御免疫系を成立させる上で、有効な手段である。
また、注射ワクチンなど従来型のワクチン製剤は、温度に対して不安定であるため、その保存には、低温状態に保つ必要があり、世界規模の広い地域においてワクチンを供給する上で、常温での保存が可能であるワクチン製剤が嘱望されていた。
【0003】
上記問題点を克服するための粘膜ワクチンとして、本出願の発明者らは、コメ型ワクチンであるMucoRice(登録商標)を開発した(特許文献1)。具体的には、発明者らは、無毒なコレラ毒素B鎖(CTB)遺伝子を、アグロバクテリウム法でイネの胚乳細胞特異的発現プロモーターの制御下で発現させたコメ型経口ワクチン(MucoRice-CTB)を開発した。この発現プロモーターを持つT-DNAをイネゲノムに導入することで、ワクチン抗原であるCTB分子をイネ種子であるコメの胚乳細胞内の蛋白貯蔵体に特異的に発現させることができる。それにより、コメ型ワクチンMucoRice-CTBは経口で投与されたときでも胃での消化分解を免れて腸管に到達する。MucoRice-CTBを経口免疫したマウスは、コレラ毒素で攻撃された場合でも下痢を発症しなったが,CTBを発現していない米を投与されたマウス群は下痢を発症した(非特許文献1)。すなわち、MucoRice-CTBは、コレラ毒素による攻撃に対して有効な防御効果を示すワクチンとして機能することが確認された。また、MucoRice-CTBを室温(30℃)条件下において乾燥状態で保存して、定期的にその含有量および抗原特異的粘膜IgAの誘導能を調べたところ、室温24カ月保存しても含有量およびIgA抗体誘導能とも,低温保存群に比較してまったく遜色ないことが確認されている(非特許文献2)。
【0004】
粘膜ワクチンとして期待されていたMucoRice-CTBであるが、ある問題を抱えていた。特定の遺伝子が組み込まれた細胞をスクリーニングする場合、膨大な量の非形質転換体から特定遺伝子で形質転換された形質転換体を選択するためには、薬剤耐性の選択マーカー(例えば、ハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子など)の利用が必須とも言える。MucoRice-CTBの作製においても、CTBによって形質転換された細胞の選択に薬剤耐性マーカーを使用しており、その結果、薬剤耐性遺伝子が最終的に得られたワクチン中に残存したままの状態であった。
薬剤耐性の選択マーカーが、遺伝子導入細胞に保持されたままだと、その遺伝子導入細胞が遺伝子導入作物に分化生育していく能力が抑制されたり、あるいは、遺伝子導入作物を栽培する過程において、薬剤耐性遺伝子が雑草や野草に取り込まれたりする危険が存在する。また、遺伝子導入されたワクチン製剤を経口投与した場合、腸バクテリアが抗生物質耐性遺伝子を保有するに至るなどの可能性が、懸念される。
【0005】
そこで、本願の発明者らは、選択マーカー遺伝子であるハイグロマイシン耐性遺伝子を含まない、選択マーカーフリーのMucoRice-CTBの作製を行い、MucoRice-CTB 51A株を得た(非特許文献3)。MucoRice-CTB 51A株は、3番染色体にタンデムに2コピーのCTB遺伝子、および12番染色体に1コピーのCTB遺伝子が導入されていた。MucoRice-CTB 51Aは、CTBの発現が高くワクチンとしての利用に適していると考えられたが、この種子から発芽したイネは、太陽光、特に赤色光下での発育ができず、量産には向かないことが明らかとなった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
特許4769977号
【非特許文献】
【0007】
Nochiら, Proc. Natl. Aca. Sci. USA. 104:10986-10991 2007.
Tokuhara et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA., 107, 8794-8799 2010
Mejimaら, Plant Cell Tiss. Org. Cut. 120:35-48 2015.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記事情に鑑み、本発明は、コレラトキシンB鎖(CTB)などの外来性遺伝子(例えば、病原性微生物由来の抗原性タンパク質をコードする遺伝子)を安定的に保持し、赤色光を含む光照明下においても、発育することができるイネ植物およびその種子の提供を課題とする。さらに、該イネ植物由来のコメから製造したワクチン製剤の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために、種々のCTB導入イネの解析を行ったところ、CTB遺伝子がイネ1番染色体(具体的には、29,910,245の位置)に1コピーだけ導入された株は、太陽光下における稔実率が良好であることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下の(1)~(11)である。
(1)病原性微生物由来の抗原性タンパク質をコードするDNAが発現可能に染色体DNAに組み込まれた遺伝子導入イネであって、当該DNAが組み込まれた染色体が1番染色体であることを特徴とする、前記遺伝子導入イネ。
(2)前記DNA構築物が組み込まれたイネ1番染色体の位置が、イネ1番染色体DNAの29,910,245位置から上流に向かって約500 bpの位置と29,910,245位置から下流に向かって約17,342 bpの間の位置である、上記(1)に記載の遺伝子導入イネ。
(3)染色体に組み込まれた抗原性タンパク質をコードするDNAのコピー数が1であることを特徴とする、上記(2)に記載の遺伝子導入イネ。
(4)前記抗原性タンパク質がコレラトキシンB鎖(CTB)である、上記(3)に記載の遺伝子導入イネ。
(5)受託番号FERM BP-22475で寄託された種子から生育したことを特徴とする、上記(4)に記載の遺伝子導入イネ。
(6)上記(1)から(5)までのいずれかに記載の遺伝子導入イネから採取された種子。
(7)受託番号FERM BP-22475で寄託されたことを特徴とする上記(6)に記載の種子。
(8)上記(1)から(5)までのいずれかに記載の遺伝子導入イネから採取されたコメ、または抗原性タンパク質を含有するコメ加工物。
(9)上記(8)に記載のコメ、または抗原性タンパク質を含有するコメ加工物を有効成分として含有するワクチン組成物。
(10)上記(7)に記載の種子から製造されたコメ、または抗原性タンパク質を含有するコメ加工物。
(11)上記(10)に記載のコメ、または抗原性タンパク質を含有するコメ加工物を有効成分として含有するワクチン組成物。
なお、本明細書において「~」の符号は、その左右の値を含む数値範囲を示す。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、CTB遺伝子など外来性遺伝子を保持するイネ植物を、赤色光を含む光(例えば、太陽光、LED照明光)などの下で良好に生育させることが可能となる。その結果、ワクチン抗原を含有するコメの量産が可能となる。
【図面の簡単な説明】
(【0011】以降は省略されています)
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