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公開番号2024144363
公報種別公開特許公報(A)
公開日2024-10-11
出願番号2024052725
出願日2024-03-28
発明の名称VHH抗体とストレプトアビジン変異体との融合タンパク質
出願人国立大学法人 東京大学,サヴィッド・セラピューティックス株式会社,国立大学法人東北大学
代理人弁理士法人特許事務所サイクス
主分類C12N 15/62 20060101AFI20241003BHJP(生化学;ビール;酒精;ぶどう酒;酢;微生物学;酵素学;突然変異または遺伝子工学)
要約【課題】がんの治療又は診断において使用するための、がん細胞などを認識する分子とストレプトアビジン変異体との融合タンパク質を提供すること。
【解決手段】特定のアミノ酸配列の、N末端側及び/又はC末端側に、リンカー配列を介して、VHH抗体が結合している、融合タンパク質。
【選択図】なし
特許請求の範囲【請求項1】
配列番号1に記載のアミノ酸配列(但し、C末端のPro-Ser-Ala-Ala-Ser-His-His-His-His-His-Hisからなるアミノ酸配列は一部又は全部が欠失していてもよい)の、N末端側及び/又はC末端側に、リンカー配列を介して、VHH抗体が結合している、融合タンパク質。
続きを表示(約 920 文字)【請求項2】
N末端側からC末端側に、VHH抗体と、リンカー配列と、配列番号1に記載のアミノ酸配列(但し、C末端のPro-Ser-Ala-Ala-Ser-His-His-His-His-His-Hisからなるアミノ酸配列は一部又は全部が欠失していてもよい)とをこの順に有する、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項3】
VHH抗体が、がん細胞に発現している抗原に結合する抗体である、請求項1又は2に記載の融合タンパク質。
【請求項4】
VHH抗体が、Her2に結合する抗体である、請求項1から3の何れか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項5】
VHH抗体が、配列番号2に記載のアミノ酸配列を有する、請求項1から4の何れか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項6】
リンカー配列が、グリシン残基及びセリン残基からなり、アミノ酸残基の数が5から25個である、請求項1から5の何れか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項7】
リンカー配列が、[(Gly)

-Ser]

(式中、mは1~10の整数を示し、nは1~5の整数を示す)で示されるアミノ酸配列である、請求項1から6の何れか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項8】
配列番号3に記載のアミノ酸配列(但し、C末端のPro-Ser-Ala-Ala-Ser-His-His-His-His-His-Hisからなるアミノ酸配列は一部又は全部が欠失していてもよい)を有する、請求項1から7の何れか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項9】
配列番号3に記載のアミノ酸配列(但し、C末端のPro-Ser-Ala-Ala-Ser-His-His-His-His-His-Hisからなるアミノ酸配列は一部又は全部が欠失していてもよい)を有する融合タンパク質をコードする核酸。
【請求項10】
請求項1から8の何れか1項に記載の融合タンパク質を含む、がん治療剤またはがん診断剤。
(【請求項11】以降は省略されています)

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、VHH抗体とストレプトアビジン変異体との融合タンパク質、並びにその利用に関する。
続きを表示(約 4,500 文字)【背景技術】
【0002】
アビジンとビオチン、あるいはストレプトアビジンとビオチンの間の親和性は非常に高く(Kd=10
-15
から10
-14
M)、生体二分子間の相互作用としては、最も強い相互作用の一つである。現在、アビジン/ストレプトアビジン-ビオチン相互作用は、生化学、分子生物学、あるいは医学の分野で広く応用されている。アビジン/ストレプトアビジンとビオチンの高い結合能と抗体分子とを組み合わせたドラッグデリバリーの方法およびプレターゲティング法が考案されている。これらの研究に関連し、特許文献1には、天然ビオチンに対する親和性を低減させたストレプトアビジン変異体、並びにこの天然ビオチンに対する低親和性のストレプトアビジン変異体に対して高い親和性を有するビオチン改変二量体が報告されている。
【0003】
また、特許文献2には、ストレプトアビジン変異体のN末端側及び/又はC末端側に、リンカー配列を介して、分子量20,000以下の抗原結合分子が結合している、融合タンパク質が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
国際公開WO2015/125820
国際公開WO2022/203000
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、がんの治療又は診断において使用するための、がん細胞などを認識する分子とストレプトアビジン変異体との融合タンパク質を提供することを解決すべき課題とした。さらに本発明は、上記した融合タンパク質を用いた、がんの治療手段又はがんの診断手段を提供することを解決すべき課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は上記課題を解決するために鋭意検討した結果、がん細胞を認識する分子としてVHH抗体を選択し、上記VHH抗体と、ストレプトアビジン変異体との融合タンパク質を調製した。そして、上記の融合タンパク質と、ビオチン改変二量体と光増感剤とのコンジュゲートとを用いた光免疫療法により、細胞の増殖を抑制できることを見出した。さらに上記の融合タンパク質と、ビオチン改変二量体と抗がん剤とのコンジュゲートとを投与することにより、細胞の増殖を抑制でき、インビボにおいても腫瘍増殖を抑制できることを見出した。本発明は上記の知見に基づいて完成したものである。
【0007】
即ち、本発明によれば、以下の発明が提供される。
<1> 配列番号1に記載のアミノ酸配列(但し、C末端のPro-Ser-Ala-Ala-Ser-His-His-His-His-His-Hisからなるアミノ酸配列は一部又は全部が欠失していてもよい)の、N末端側及び/又はC末端側に、リンカー配列を介して、VHH抗体が結合している、融合タンパク質。
<2> N末端側からC末端側に、VHH抗体と、リンカー配列と、配列番号1に記載のアミノ酸配列(但し、C末端のPro-Ser-Ala-Ala-Ser-His-His-His-His-His-Hisからなるアミノ酸配列は一部又は全部が欠失していてもよい)とをこの順に有する、<1>に記載の融合タンパク質。
<3> VHH抗体が、がん細胞に発現している抗原に結合する抗体である、<1>又は<2>に記載の融合タンパク質。
<4> VHH抗体が、Her2に結合する抗体である、<1>から<3>の何れか一に記載の融合タンパク質。
<5> VHH抗体が、配列番号2に記載のアミノ酸配列を有する、<1>から<4>の何れか一に記載の融合タンパク質。
<6> リンカー配列が、グリシン残基及びセリン残基からなり、アミノ酸残基の数が5から25個である、<1>から<5>の何れか一に記載の融合タンパク質。
<7> リンカー配列が、[(Gly)

-Ser]

(式中、mは1~10の整数を示し、nは1~5の整数を示す)で示されるアミノ酸配列である、<1>から<6>の何れか一に記載の融合タンパク質。
<8> 配列番号3に記載のアミノ酸配列(但し、C末端のPro-Ser-Ala-Ala-Ser-His-His-His-His-His-Hisからなるアミノ酸配列は一部又は全部が欠失していてもよい)を有する、<1>から<7>の何れか一に記載の融合タンパク質。
<9> 配列番号3に記載のアミノ酸配列(但し、C末端のPro-Ser-Ala-Ala-Ser-His-His-His-His-His-Hisからなるアミノ酸配列は一部又は全部が欠失していてもよい)を有する融合タンパク質をコードする核酸。
<10> <1>から<8>の何れか一に記載の融合タンパク質を含む、がん治療剤またはがん診断剤。
<11> (1)<1>から<8>の何れか一に記載の融合タンパク質、及び(2)下記式(1)で示される化合物又はその塩と、診断用物質又は治療用物質とのコンジュゲートを含む、がんの治療または診断キット。
JPEG
2024144363000001.jpg
49
170
(式中、
X1a、X1b、X2a及びX2bはそれぞれ独立にO又はNHを示し、


及びY

はそれぞれ独立にC又はSを示し、


及びZ

はそれぞれ独立にO、S又はNHを示し、


及びV

はそれぞれ独立にS又はS

-O

を示し、n1及びn2はそれぞれ独立に0又は1の整数を示し、


及びL

はそれぞれ独立に、2価の連結基を示し、


は、診断用物質又は治療用物質と結合できる官能基を末端に含む基であり、


は、3価の連結基を示す。)
<12> 診断用物質又は治療用物質が、フタロシアニン染料または抗がん剤である、<11>に記載のキット。
<13> <1>から<8>の何れか一に記載の融合タンパク質をコードする核酸を宿主で発現させる工程を含む、<1>から<8>の何れか一に記載の融合タンパク質の製造方法。
<14> 前記融合タンパク質を、細菌の封入体において発現させて回収する、<13>に記載の方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によるVHH抗体とストレプトアビジン変異体との融合タンパク質を用いることにより、例えば、がん細胞の増殖を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1は、Anti-HER2 VHH-Cupidの製造に使用した発現ベクターのマップ(図1A)および発現物の確認の結果(図1B)を示す。
図2は、Anti-HER2 VHH-Cupidと光増感剤Psycheを用いた細胞傷害活性の確認結果を示す。
図3は、Anti-HER2 VHH-Cupidと制がん剤Psyche(Psyche-Duocarmycin)を用いた細胞傷害活性の確認の結果を示す。
図4は、Anti-HER2 VHH-CupidとPsyche-Duocarmycinを用いたXenograft model mouse による in vivo 試験の結果を示す。
図5は、Anti-HER2 VHH-CupidとPsyche-Duocarmycinを用いたXenograft model mouse による in vivo 試験の結果を示す。
図6は、Anti-HER2 VHH-Cupidの発現物の確認の結果を示す。
図7は、Anti-HER2 VHH-Cupidのテトラマー形成に最適な透析用緩衝液のpH条件検討の結果を示す。
図8は、Anti-HER2 VHH-Cupidのサイズ排除クロマトグラフィーの結果のクロマトグラム(図8A)、保持時間ごとの試料画分の電気泳動図(図8B)および精製テトラマーの確認の結果(図8C)を示す。
図9は、Anti-HER2 VHH-Cupidと Psyche-Duocarmycinとの相互作用の確認の結果を示す。
図10は、Anti-HER2 VHH-CupidとHER2 細胞外ドメイン(HER2 ECD)との相互作用の確認の結果を示す。
図11は、Anti-HER2 VHH-Cupidと蛍光色素Psyche(Psyche-FITC)の細胞内在化活性の確認の結果を示す。
図12は、Anti-HER2 VHH-CupidとPsyche-Duocarmycinを用いた細胞傷害活性の確認の結果を示す。
図13は、Anti-HER2 VHH-CupidとPsyche-Duocarmycinを用いたXenograft model mouse における反復投与間隔と腫瘍増大抑制効果の in vivo 試験の結果を示し、図13Aは長期間隔群の、図13Bは短期間隔群の、図13Cはコントロール群の結果を示す。
図14は、Anti-HER2 VHH-CupidとPsyche-Duocarmycinを用いたXenograft model mouseにおける反復投与間隔と腫瘍増大抑制効果の in vivo 試験後の病理学的解析の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について更に詳細に説明する。
<VHH抗体とストレプトアビジン変異体との融合タンパク質>
本発明の融合タンパク質は、配列番号1に記載のアミノ酸配列(但し、C末端のPro-Ser-Ala-Ala-Ser-His-His-His-His-His-Hisからなるアミノ酸配列は一部又は全部が欠失していてもよい)の、N末端側及び/又はC末端側に、リンカー配列を介して、VHH抗体が結合している、融合タンパク質である。配列番号1に記載のアミノ酸配列(但し、C末端のPro-Ser-Ala-Ala-Ser-His-His-His-His-His-Hisからなるアミノ酸配列は一部又は全部が欠失していてもよい)の、N末端側及びC末端側に両方に、リンカー配列を介して、VHH抗体が結合している場合、当該VHH抗体は同一でも異なるものでもよい。
(【0011】以降は省略されています)

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