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公開番号2024133923
公報種別公開特許公報(A)
公開日2024-10-03
出願番号2023043948
出願日2023-03-20
発明の名称防食システム、防食モニタリングシステム及びその構築方法
出願人横河電機株式会社,株式会社中部プラントサービス,国立大学法人九州大学
代理人弁理士法人平木国際特許事務所
主分類C23F 13/06 20060101AFI20240926BHJP(金属質材料への被覆;金属質材料による材料への被覆;化学的表面処理;金属質材料の拡散処理;真空蒸着,スパッタリング,イオン注入法,または化学蒸着による被覆一般;金属質材料の防食または鉱皮の抑制一般)
要約【課題】複雑形状の被防食材である鋼構造物であっても、容易に防食効果のある鋼構造物にするシステムを提供する。
【解決手段】本発明は、鋼材、鋼材よりも自然電位が低い卑金属、並びに平均繊維幅が1nm以上1000nm以下の微細セルロース繊維及び電解質を含む含水流体を含み、鋼材と卑金属とが電気的に導通する形で接合され、含水流体が鋼材表面及び卑金属表面に接しており且つ卑金属表面から生じる卑金属イオンを鋼材表面に供給する、鋼材の防食システムに関する。
【選択図】図2
特許請求の範囲【請求項1】
鋼材、鋼材よりも自然電位が低い卑金属、並びに平均繊維幅が1nm以上1000nm以下の微細セルロース繊維及び電解質を含む含水流体を含み、鋼材と卑金属とが電気的に導通する形で接合され、含水流体が鋼材表面及び卑金属表面に接しており且つ卑金属表面から生じる卑金属イオンを鋼材表面に供給する、鋼材の防食システム。
続きを表示(約 990 文字)【請求項2】
含水流体中の微細セルロース繊維の含有量が、含水流体の総質量に対して、1質量%以上である、請求項1に記載の鋼材の防食システム。
【請求項3】
鋼材表面が、鋼材同士の隙間部における鋼材表面である、請求項1又は2に記載の鋼材の防食システム。
【請求項4】
微細セルロース繊維が、含水流体における固形分の総質量に対して、0.1質量%以上50質量%以下のアニオン変性微細セルロース繊維を含み、前記アニオン変性微細セルロース繊維の平均繊維幅が、1nm以上1000nm以下であり、前記アニオン変性微細セルロース繊維のアニオン変性基導入量が、0.3mmol/g以上4.0mmol/g以下である、請求項1又は2に記載の鋼材の防食システム。
【請求項5】
含水流体が、含水流体における固形分の総質量に対して、1.0質量%以上の1種以上の電解質を含む、請求項1又は2に記載の鋼材の防食システム。
【請求項6】
電解質のうちの少なくとも1種が、還元剤としての機能を有する、請求項5に記載の鋼材の防食システム。
【請求項7】
アニオン変性微細セルロース繊維が、式(1)に記載の置換基を有する硫酸エステル化微細セルロース繊維である、請求項4に記載の鋼材の防食システム。
TIFF
2024133923000005.tif
22
73
(式中、nは1~3の整数であり、M
n+
はn価の陽イオンであり、波線は他の原子への結合部位である。)
【請求項8】
含水流体が、5μm以上300μm以下の繊維径を有する繊維をさらに含む、請求項1又は2に記載の鋼材の防食システム。
【請求項9】
卑金属及び含水流体を覆うように鋼材表面に張設された外装材をさらに含む、請求項1又は2に記載の鋼材の防食システム。
【請求項10】
請求項1に記載の鋼材の防食システムと、タンパー機能を有するRFIDタグとを含み、RFIDタグが前記鋼材の防食システムにおける鋼材及び卑金属の両者に電気的に導通されており、卑金属の減耗及び剥離がRFIDリーダにより読み取られる、防食モニタリングシステム。
(【請求項11】以降は省略されています)

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、防食システム、防食モニタリングシステム及びその構築方法に関する。
続きを表示(約 2,900 文字)【背景技術】
【0002】
橋梁をはじめとした鋼構造物は、その多くが1970年代の高度成長期に建設され、その寿命である50年の節目を迎えつつある。特に橋梁においては、70万橋に及ぶ橋梁の内、2023年には43%、2033年には67%の橋梁が50年以上の経過年数となり、寿命に伴う全数建て替えは輸送を中心としたライフラインに対する影響・費やす予算の面から不可能といってよい。
【0003】
その対応として、国交省では従来の対応策である事後保全ではなく、定期的な点検を行い、その結果に基づいた予防保全を中心としたアセットマネジメントを推奨しており、建て替えに伴う混乱を回避する努力を行っている。他にも、沿岸部に設置されることが多いプラント設備など、腐食が生じやすい構造物も同様に予防保全を中心としたアセットマネジメントが推奨されている。特に、鋼構造物の場合、腐食による劣化防止が予防保全対策の中心となり、その方法として塗装が主として採用されている。
【0004】
例えば、特許文献1では、被塗面に、エポキシ樹脂系結合剤及び亜鉛末を主成分とするジンクリッチ塗料(I)を塗装した後、アクリル樹脂(A)、1分子中に少なくとも2つのエポキシ基を有するエポキシ樹脂(B)、及びアミノシランを含み得るアミン硬化剤(C)を含有する塗料組成物(III)を塗装することを特徴とする塗装方法が開示されている。
【0005】
特許文献2では、鋼構造物の表面をチタン箔で被覆して防食する防食方法であって、前記鋼構造物を構成する鋼材の表面上に塗料を塗布して塗料層を形成する塗布工程と、前記塗料層の表面上であって、前記鋼材が有する溶接ビード部の上以外の部分に、前記チタン箔を被覆する被覆工程と、前記塗料層の表面上であって、前記チタン箔が被覆されていない部分に、チタンテープを貼り付ける貼付工程とを具備する防食方法が開示されている。
【0006】
さらに、鋼構造物の複雑な形状部の防食の中には、隙間部防食がある。隙間部防食は、防食塗料を用いる方法では根本的に解決することは難しい。隙間部防食を根本的に解決する方法としては、犠牲防食技術が考えられる。犠牲防食技術の中でも犠牲陽極方式は海水中や水分を含んだ土中でなければその機能を発揮することができないため、近年ではその対応策として大気中での犠牲防食技術が考案され運用されてきている。
【0007】
例えば、特許文献3では、表面が酸化されて腐食層が形成された被防食部材に対して、絶縁体からなると共に外部の水分を吸収する吸水シートと、前記被防食部材に対して卑な材料からなると共に外部から前記吸水シートまで連通する複数の連通孔が形成された犠牲陽極材とを、前記腐食層と前記犠牲陽極材との間に前記吸水シートを挟むように配置すると共に、前記被防食部材と前記犠牲陽極材にそれぞれ配置された一対の端子の間を電気的に接続し、前記複数の連通孔を介して外部の水分を前記吸水シートに供給し、前記吸水シートに吸収された水分が腐食回路を形成し、前記腐食回路を前記犠牲陽極材から前記被防食部材に伝導する電子により前記腐食層を還元して腐食に対して安定な転換層に転換する防食方法が開示されている。
【0008】
特許文献4では、鉄筋コンクリート構造物のコンクリート表面に設けられた保水層と、該保水層に接触して設けられた流電陽極とを有し、該流電陽極と該鉄筋コンクリート構造物の鉄筋とが導通可能に接続され、該流電陽極から該保水層を介して該鉄筋に防食電流が流れるようになされている、鉄筋コンクリート構造物の電気防食構造であって、前記保水層は、親水性繊維を含んで構成される吸水体に、潮解性塩を含む電解質水溶液を保持させてなる、鉄筋コンクリート構造物の電気防食構造が開示されている。
【0009】
特許文献5では、鋼構築物を構成する鉄鋼材と、この鉄鋼材の表面に塗布する導電性接着剤と、この導電性接着剤を間に置いて前記鉄鋼材に固定的に取り付けたマグネシウム板と、このマグネシウム板を覆い且つこのマグネシウム板の表面積よりも広い範囲に亘り配置するガーゼ状の網目構造を有するポリエステル製繊維の平織布帛と、この布帛にビチューメン系のカバーをさらに重ねて備えた前記鉄鋼材のための防食構造において、前記導電性接着剤と前記マグネシウム板とを挟み且つ前記表面の上に配置した可撓性のある前記布帛、及び、前記カバーが前記鉄鋼材に固定してあり、前記布帛が前記マグネシウム板に由来して生成されたマグネシウムイオンを担持しており、そして、前記担持した前記布帛が前記鉄鋼材の前記表面に重畳されており、前記マグネシウム板の表面積よりも広く且つ前記重畳された範囲に亘って前記鉄鋼材の前記表面を不動態化して防食することを特徴とする防食構造が開示されている。
【0010】
特許文献6では、鋼構築物の防食構造であって、鋼構築物を構成する鉄鋼材と、この鉄鋼材の表面の少なくとも一部に塗布する導電性接着剤と、この導電性接着剤を間に挟んで前記鉄鋼材に固定的に取り付けた単独もしくは複数のマグネシウム板と、可撓性のあるポリエステル製の繊維状基体と、ビチューメン系のカバーとを備えた前記鉄鋼材のための防食構造において、前記単独の場合、前記繊維状基体はマグネシウム板を覆い且つこのマグネシウム板の表面積よりも広い範囲に亘り前記表面の上に配置してあり、また、前記複数の場合、前記繊維状基体は複数のマグネシウム板の間を接続して前記表面を覆い且つこれらのマグネシウム板及び前記接続する部分全体の表面積よりも広い範囲に亘り前記表面の上に配置してあり、前記単独の場合の繊維状基体あるいは前記複数の場合の繊維状基体に前記カバーをさらに重ねて配置してあり、前記単独のマグネシウム板あるいは前記複数のマグネシウム板と前記導電性接着剤とを間に挟んで前記表面の上に設けた前記単独の場合の繊維状基体あるいは前記複数の場合の繊維状基体と、前記カバーとが前記鉄鋼材に固定してあり、前記単独の場合の繊維状基体あるいは前記複数の場合の繊維状基体が前記マグネシウム板に由来して生成されたマグネシウムイオンとイオン化に伴う電子を担持且つ供給しており、そして、前記担持且つ供給する前記繊維状基体が前記鉄鋼材の前記表面の少なくとも一部に重畳されており、前記単独の場合の前記繊維状基体あるいは前記複数の場合の前記繊維状基体によって前記重畳された前記表面の範囲に亘って前記鉄鋼材の自然電位を防食電位に維持して、温度あるいは外力により変形する前記鋼構築物の箇所、前記鋼構築物を接合する隙間部分の箇所、前記表面のうち前記マグネシウム板を配置できない特異形状表面の箇所のうち、少なくとも1つの箇所を防食することを特徴とする防食構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
(【0011】以降は省略されています)

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