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公開番号2024058472
公報種別公開特許公報(A)
公開日2024-04-25
出願番号2022165868
出願日2022-10-14
発明の名称抗線維化剤、線維症治療用医薬組成物、抗線維化剤の製造方法および抗線維化方法
出願人国立大学法人九州大学,ソマール株式会社
代理人個人,個人,個人,個人
主分類A61K 35/12 20150101AFI20240418BHJP(医学または獣医学;衛生学)
要約【課題】筋線維芽細胞や活性化星細胞、さらには線維化組織に効率的に治療剤を届け、しかも筋線維芽細胞や活性化星細胞を不活性化することにより線維化の悪化を抑制し、かつ正常な線維芽細胞に復帰させることが可能な抗線維化剤、線維症治療用医薬組成物、抗線維化成分の製造方法および抗線維化方法を提供する。
【解決手段】ネクローシスさせた哺乳動物由来細胞より抽出された抗線維化成分を含有する抗線維化剤であって、前記抗線維化成分は、O-結合型β-N-アセチルグルコサミン修飾タンパク質を含む、抗線維化剤、線維症治療用医薬組成物、抗線維化剤の製造方法および抗線維化方法である。
【選択図】図1
特許請求の範囲【請求項1】
ネクローシスさせた哺乳動物由来細胞より抽出された抗線維化成分を含有する抗線維化剤であって、
前記抗線維化成分は、O-結合型β-N-アセチルグルコサミン修飾タンパク質を含む、抗線維化剤。
続きを表示(約 740 文字)【請求項2】
前記抗線維化成分は、前記ネクローシスさせた哺乳動物由来細胞を、低張溶液で懸濁し、前記懸濁した哺乳動物由来細胞を粉砕して得られたものである、請求項1に記載の抗線維化剤。
【請求項3】
前記哺乳動物由来細胞がHeLa細胞である、請求項1または2に記載の抗線維化剤。
【請求項4】
請求項1または2に記載の抗線維化剤を有効成分として含有する、線維症治療用医薬組成物。
【請求項5】
哺乳動物由来細胞をネクローシスさせる工程と、
前記ネクローシスさせた哺乳動物由来細胞から、O-結合型β-N-アセチルグルコサミン修飾タンパク質を含む抗線維化成分を抽出する工程と、
を含み、前記抗線維化成分を含有する抗線維化剤を製造する、抗線維化剤の製造方法。
【請求項6】
哺乳動物由来細胞をネクローシスさせる工程と、
前記ネクローシスさせた哺乳動物由来細胞から、O-結合型β-N-アセチルグルコサミン修飾タンパク質を含む抗線維化成分を抽出する工程と、
前記抗線維化成分を、筋線維芽細胞又は活性化した星細胞に結合させて、α-平滑筋アクチン及びコラーゲンの産生を抑制する工程を含む、抗線維化方法。
【請求項7】
前記抗線維化成分を抽出する工程は、前記ネクローシスさせた哺乳動物由来細胞を、低張溶液で懸濁し、前記懸濁した哺乳動物由来細胞を粉砕して、O-結合型β-N-アセチルグルコサミン修飾タンパク質を含む抗線維化成分を抽出する、請求項6に記載の抗線維化方法。
【請求項8】
前記哺乳動物由来細胞がHeLa細胞である、請求項6または7に記載の抗線維化方法。

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本開示は、抗線維化剤および抗線維化の方法に関する。詳細には、肺線維症や肝線維症等各種線維症に対する治療薬または予防薬等に用いる抗線維化剤、それを含む線維症治療用医薬組成物、抗線維化剤の製造方法および抗線維化方法に関する。
続きを表示(約 2,300 文字)【背景技術】
【0002】
一般に生体内において組織の線維化は、繰り返される傷害に伴う慢性炎症によって引き起こされる。慢性炎症は、線維芽細胞や星状細胞を変化させ、組織を筋線維芽細胞に維持し、星状細胞を活性化させる。この活性化により、これらの細胞の増強とコラーゲンなどの細胞外マトリックスの豊富な産生が促進される。このようにして生じた組織線維化、癌、自己免疫などの慢性炎症性疾患は、断続的かつ反復的な組織傷害による継続的な炎症によって引き起こされる。
【0003】
繰り返される組織傷害によって引き起こされる重篤な組織傷害は、死にゆく細胞から放出される大量の細胞片の発生をもたらす。損傷細胞や死滅細胞から放出される細胞残屑に含まれる細胞内分子の中には、炎症細胞に組織の損傷を認識させる役割を果たすものがあり、損傷関連分子パターン(DAMPs)と呼ばれている(非特許文献1)。
DAMPsは、危険信号として、組織の損傷や感染などの有害な状況から宿主組織を守るために炎症反応を誘導する。High-mobility group box 1(HMGB1)、熱ショックタンパク質(HSP)、アデノシン三リン酸(ATP)などは、細胞内で明確に定義された機能を有しているが、これらの分子はまた、死にかけた細胞から漏れ出た後、細胞外空間でDAMPsとしても作用する。
【0004】
重度の組織損傷後の豊富なDAMPsの存在は、炎症性サイトカインおよび線維形成促進サイトカインを分泌する免疫細胞のリクルートと活性化を誘発する(非特許文献2)。
最終的に、これらのサイトカインは、星状細胞や線維芽細胞の活性化星状細胞や筋線維芽細胞へのトランス分化を誘導し、組織のリモデリングの際に過形成や線維化を促進する(非特許文献3)。このように組織の線維化は、繰り返される傷害に伴う慢性炎症によって引き起こされる。慢性炎症に伴う組織線維化などによる、豊富なコラーゲンの沈着とともに実質細胞が排出されることで、最終的に線維化した組織の機能不全が引き起こされる。
【0005】
生物組織が、線維化の状態から回復するためには、筋線維芽細胞や活性化星状細胞を選択的に標的とし、各細胞の活性化を抑制する必要がある。
こうした作用を用いて、線維化の進行を阻害する手段として、例えば、SERPINE2に暴露されたヒト肺線維芽細胞におけるコラーゲン1A1及び/またはα-平滑筋アクチンの発現レベルを阻害するために、ヒト肺線維芽細胞にSERPINE2のアンタゴニストを投与する方法(特許文献1)が知られている。
また、慢性炎症や線維化部位を標的とする治療方法、治療薬として、例えば、特手のアミノ配列からなるポリペプチド、又は特定のアミノ酸配列と85%以上の同一性を示すアミノ酸配列からなり、COL1A1、COL1A2、及びαSMAからなる群より選択される少なくとも1種を含有する、線維症治療薬(特許文献2)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
特表2012-509941号公報
特開2022-66026号公報
【非特許文献】
【0007】
Bianchi ME. DAMPs, PAMPs and alarmins: all we need to know about danger. J Leukoc Biol. 81(1), 1-5 (2007)
Bolourani, S., Brenner, M. & Wang, P. The interplay of DAMPs, TLR4, and proinflammatory cytokines in pulmonary fibrosis. J. Mol. Med. (Berl). 99, 1373-1384 (2021).
An, P. et al. Hepatocyte mitochondria-derived danger signals directly activate hepatic stellate cells and drive progression of liver fibrosis. Nat. Commun. 11, 2362 (2020).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述のような知見はあるものの、線維化に関連する細胞群により効率的に治療剤を届け、さらに、筋線維芽細胞や活性化星細胞のような重度の線維化にかかわる細胞を特異的に標的とし、有効に線維化を抑制する手段については、さらに強く望まれている。
【0009】
本発明は上記のような事情を鑑みてなされたものであり、筋線維芽細胞や活性化星細胞、さらには線維化組織に効率的に治療剤を届け、しかも筋線維芽細胞や活性化星細胞を不活性化することにより線維化の悪化を抑制し、かつ正常な線維芽細胞に復帰させることが可能な抗線維化剤、線維症治療用医薬組成物、抗線維化剤の製造方法および抗線維化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、鋭意研究の結果、特定のN-アセチルグルコサミンを構成単位とする共重合体が筋線維芽細胞や活性化星状細胞を標的とし、これらの細胞の活性化を抑制することを見出し、本発明を完成するにいたった。
(【0011】以降は省略されています)

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