公開番号2024051970 公報種別公開特許公報(A) 公開日2024-04-11 出願番号2022158382 出願日2022-09-30 発明の名称小細胞肺がんの治療 出願人国立大学法人九州大学 代理人個人,個人,個人 主分類A61K 45/00 20060101AFI20240404BHJP(医学または獣医学;衛生学) 要約【課題】本発明は、小細胞肺がんを処置および/または予防するための治療を目的とする。 【解決手段】本発明は、HPRT1の阻害物質、具体的には6-メルカプトプリン、HPRT1の阻害物質および葉酸合成阻害物質、またはHPRT1の阻害物質、葉酸合成阻害物質およびグルタミン合成酵素の阻害物質を含有する、小細胞肺がんを処置および/または予防するための医を予防または処置するための医薬組成物に関する。 【選択図】なし 特許請求の範囲【請求項1】 ヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ1 (HPRT1) の阻害物質を含有する、小細胞肺がんを処置および/または予防するための医薬組成物。 続きを表示(約 770 文字)【請求項2】 HPRT1の阻害物質が、6-メルカプトプリンである、請求項1記載の医薬組成物。 【請求項3】 HPRT1の阻害物質が、HPRT1発現の阻害物質である、請求項1記載の医薬組成物。 【請求項4】 HPRT1発現の阻害物質が、以下の(a)または(b)のいずれかに示される核酸配列の発現を阻害する物質である、請求項3記載の医薬組成物: (a)配列表の配列番号1に示されるHPRT1の核酸配列、または (b)配列表の配列番号1に示されるHPRT1の核酸配列において1個若しくは数個の塩基が欠失、置換または付加されている塩基配列を含む核酸配列。 【請求項5】 HPRT1発現の阻害物質が、配列表の配列番号1に示されるHPRT1の核酸配列と相補的な塩基配列とストリンジェントな条件でハイブリダイズする核酸配列である、請求項4記載の医薬組成物。 【請求項6】 HPRT1発現の阻害物質が、siRNA、アンチセンスおよびリボザイムからなる群から選ばれる請求項4記載の医薬組成物。 【請求項7】 小細胞肺がんが、シスプラチン耐性である、請求項1から6までのいずれか記載の医薬組成物。 【請求項8】 HPRT1の阻害物質および葉酸合成阻害物質を含有する、小細胞肺がんを処置および/または予防するための医薬組成物。 【請求項9】 HPRT1の阻害物質が、6-メルカプトプリンである、請求項8記載の医薬組成物。 【請求項10】 葉酸合成阻害物質が、メトトレキサート、プララトレキサート、ペメトレキセド、およびラルチトレキセドの中から選ばれる、請求項9記載の医薬組成物。 (【請求項11】以降は省略されています) 発明の詳細な説明【技術分野】 【0001】 本発明は、がん、特に小細胞肺がんの治療の分野に属す。詳細には、本発明は、HPRT1の阻害物質、またはHPRT1の阻害物質および葉酸合成阻害物質を含有する、小細胞肺がんを処置および/または予防するための医薬組成物、およびHPRT1の阻害物質、葉酸合成阻害物質およびグルタミン合成酵素の阻害物質を含有する、がんを処置および/または予防するための医薬組成物に関する。 続きを表示(約 7,000 文字)【背景技術】 【0002】 小細胞肺がん (SCLC) は、急速な増殖と高い転移性を特徴とする最も悪性度の高いがんの一つである。小細胞肺がんの第一選択薬としてシスプラチンが使用されてきたが、ほとんどの患者は最終的にこの薬剤に対して耐性を獲得し、5年生存率は約7%と非常に低い「治療不可能ながん」と定義されている(非特許文献1、2、3)。シスプラチンは小細胞肺がんの第一選択薬として1984年に承認されたが、それから約40年近くが経過した近年に至るまで、未だ特異的かつ効果的な治療法は開発されていない。小細胞肺がんの臨床試験にて様々な化学療法コンビネーションが実施されたにもかかわらず、小細胞肺がん患者の生存期間の延伸が実現できていない絶望的な状況である(非特許文献3、4)。 【0003】 直近、免疫チェックポイント療法が進展型小細胞肺がんの全生存期間に一定の効果を示したが、小細胞肺がんは免疫チェックポイント療法に感受性が高い非小細胞肺がんなどと比較し治療抵抗性が高いこととも明らかになり、小細胞肺がんに対する免疫チェックポイント療法の効果の限界が露呈している。このような背景から、小細胞肺がんにおける更なる効果的かつ新規な治療法の樹立が待望されている(非特許文献5、6、7)。小細胞肺がん患者の予後を改善させるためには、小細胞肺がんの悪性性の根源を分子生物学的解析で明確にする必要がある(非特許文献3、8)。近年、小細胞肺がんに包括的な遺伝子プロファイルが明らかになってきたが、その悪性性の詳細は未解明のままである。 【0004】 多くのがん種でデノボ (de novo) 核酸合成経路への依存度が高まっており、特に小細胞肺がんで顕著であることが明らかになってきた(非特許文献9-15)。材料の再利用でなく新たにプリンおよびピリミジンを合成するde novoプリンおよびピリミジン合成は、主に宿主から供給されるグルタミンを窒素として必要とする(非特許文献16)。経口摂取されたグルタミンの大部分は腸管内皮で異化を受け、血流に直接入るグルタミンはごく少量である(非特許文献17、18)。むしろ、血清中のグルタミンは、グルタミン酸とアンモニアからグルタミンを合成するグルタミン合成酵素 (GS) が高度に発現している肺や骨格筋などの臓器から供給される(非特許文献16)。グルタミンは細胞内に取り込まれた後、de novoプリン合成の律速酵素であるホスホリボシル・ピロホスフェート・アミドトランスフェラーゼ (phosphoribosyl pyrophosphate amidotransferase (PPAT)) によって代謝され、グルタミン由来の窒素をプリン前駆体に移行させる。本発明者らはこれまでの研究で、PPATの発現量が小細胞肺がん患者の予後と大きく関係していること、PPATの阻害が小細胞肺がん細胞の増殖抑制に効果的であることを明らかにした(非特許文献20)。プリン核酸は、de novo経路に加え、ヒポキサンチンホスホリボシル二リン酸(PRPP)とヒポキサンチンがヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ1(HPRT1)により代謝されるサルベージ経路でも合成される。しかし、ヒポキサンチンの血漿濃度が1μM程度と低いことから、がんの増殖を支える核酸の需要に対するサルベージ経路の貢献度は不明であった(非特許文献19)。 【先行技術文献】 【非特許文献】 【0005】 George, J. et al. Comprehensive genomic profiles of small cell lung cancer. Nature 524, 47-53, 14664 (2015). Gazdar, A. F., Bunn, P. A. & Minna, J. D. Small-cell lung cancer: what we know, what we need to know and the path forward. Nat. Rev. Cancer 17, 725-737, 87 (2017). Zhang, W. et al. Small cell lung cancer tumors and preclinical models display heterogeneity of neuroendocrine phenotypes. Transl Lung Cancer Res 7, 32-49, 02.02 (2018). Koinis, F., Kotsakis, A. & Georgoulias, V. Small cell lung cancer (SCLC): no treatment advances in recent years. Transl. Lung Cancer Res. 5, 39-50, (2016). Horn, L. et al. First-Line Atezolizumab plus Chemotherapy in Extensive-Stage Small-Cell Lung Cancer. N. Engl. J. Med. 379, 2220-2229, (2018). Sabari, J. K., Lok, B. H., Laird, J. H., Poirier, J. T. & Rudin, C. M. Unravelling the biology of SCLC: implications for therapy. Nat. Rev. Clin. Oncol. 14, 549-561, (2017). Remon, J. et al. Small cell lung cancer: a slightly less orphan disease after immunotherapy. Ann. 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Identification of DHODH as a therapeutic target in small cell lung cancer. Sci. Transl. Med. 11, (2019). Morita, M. et al. PKM1 Confers Metabolic Advantages and Promotes Cell-Autonomous Tumor Cell Growth. Cancer Cell 33, 355-367 e357, (2018). Ruano-Ravina, A., Provencio-Pulla, M. & Perez-Rios, M. Small Cell Lung Cancer-A Neglected Disease With More Data Needed. JAMA Netw Open 5, e224837, (2022). Lee, J. S. et al. Urea Cycle Dysregulation Generates Clinically Relevant Genomic and Biochemical Signatures. Cell 174, 1559-1570 e1522, (2018). Windmueller, H. G. & Spaeth, A. E. Uptake and metabolism of plasma glutamine by the small intestine. J. Biol. Chem. 249, 5070-5079 (1974). Hensley, C. T., Wasti, A. T. & DeBerardinis, R. J. Glutamine and cancer: cell biology, physiology, and clinical opportunities. J. Clin. Invest. 123, 3678-3684, (2013). Luengo, A., Gui, D. Y. & Vander Heiden, M. G. Targeting Metabolism for Cancer Therapy. Cell Chem Biol 24, 1161-1180, (2017). Kodama, M. et al. A shift in glutamine nitrogen metabolism contributes to the malignant progression of cancer. Nat. Commun. 11, 1320 (2020). 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0006】 小細胞肺がんは5年生存率が約7%と非常に予後の悪いがんの一つであり、全肺がんの約15%を占める。その播種的性質により、がんの発見時には多数の転移巣があって既に手術適応がないケースが多い。上記の通り、現在、シスプラチン(cDDP)を中心とした化学療法が行われているが、その奏功率は低く、大きな医学的問題となっており、小細胞肺がんを根本的に治療できる薬物療法は常に求められている。 【課題を解決するための手段】 【0007】 本発明者らは、小細胞肺がんの患者検体を独自に開発したiMPAQTシステムにより解析し、小細胞肺がんの増殖が核酸合成経路に強く依存していることを突き止めた。特に核酸合成経路の主経路(de novo経路)と副経路(サルベージ経路)を、メトトレキサート(MTX)と6-メルカプトプリン(6-MP)を用いて同時に阻害することで、小細胞肺がん細胞株に対して強い増殖抑制効果をもたらすことできることを見出し、本発明を完成した。 【0008】 したがって、本発明は、以下の態様を含む。 <HPRT1の阻害物質を含有する医薬組成物> [1] ヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ1 (HPRT1) の阻害物質を含有する、小細胞肺がんを処置および/または予防するための医薬組成物。 [2] HPRT1の阻害物質が、6-メルカプトプリンである、[1]記載の医薬組成物。 [3] HPRT1の阻害物質が、HPRT1発現の阻害物質である、[1]記載の医薬組成物。 [4] HPRT1発現の阻害物質が、以下の(a)または(b)のいずれかに示される核酸配列の発現を阻害する物質である、[3]記載の医薬組成物: (a)配列表の配列番号1に示されるHPRT1の核酸配列、または (b)配列表の配列番号1に示されるHPRT1の核酸配列において1個若しくは数個の塩基が欠失、置換または付加されている塩基配列を含む核酸配列。 [5] HPRT1発現の阻害物質が、配列表の配列番号1に示されるHPRT1の核酸配列と相補的な塩基配列とストリンジェントな条件でハイブリダイズする核酸配列である、[4]記載の医薬組成物。 [6] HPRT1発現の阻害物質が、siRNA、アンチセンスおよびリボザイムからなる群から選ばれる[4]記載の医薬組成物。 [7] 小細胞肺がんが、シスプラチン耐性である、[1]から[6]までのいずれか記載の医薬組成物。 【0009】 <HPRT1の阻害物質および葉酸合成阻害物質を含有する医薬組成物> [8] HPRT1の阻害物質および葉酸合成阻害物質を含有する、小細胞肺がんを処置および/または予防するための医薬組成物。 [9] HPRT1の阻害物質が、6-メルカプトプリンである、[8]記載の医薬組成物。 [10] 葉酸合成阻害物質が、メトトレキサート、プララトレキサート、ペメトレキセド、およびラルチトレキセドの中から選ばれる、[9]記載の医薬組成物。 [11] 小細胞肺がんが、シスプラチン耐性である、[8]から[11]までのいずれか記載の医薬組成物。 【0010】 <HPRT1の阻害物質、葉酸合成阻害物質およびグルタミン合成酵素の阻害物質を含有する医薬組成物> [12] HPRT1の阻害物質、葉酸合成阻害物質、およびグルタミン合成酵素 (GS) の阻害物質を含有する、がんを処置および/または予防するための医薬組成物。 [13] GSの阻害物質が、メチオニンスルホキシミンである、[12]記載の医薬組成物。 [14] GSの阻害物質が、GS発現の阻害物質である、[12]記載の医薬組成物。 [15] GS発現の阻害物質が、以下の(a)または(b)のいずれかに示される核酸配列の発現を阻害する物質である、[14]記載の医薬組成物: (a)配列表の配列番号2に示されるHPRT1の核酸配列、または (b)配列表の配列番号2に示されるHPRT1の核酸配列において1個若しくは数個の塩基が欠失、置換または付加されている塩基配列を含む核酸配列。 [16] GS発現の阻害物質が、配列表の配列番号2に示されるHPRT1の核酸配列と相補的な塩基配列とストリンジェントな条件でハイブリダイズする核酸配列である、[15]記載の医薬組成物。 [17] GS発現の阻害物質が、siRNA、アンチセンスおよびリボザイムからなる群から選ばれる[15]記載の医薬組成物。 [18] 小細胞肺がんが、シスプラチン耐性である、[12]から[17]までのいずれか記載の医薬組成物。 [19] 葉酸合成阻害物質が、メトトレキサート、プララトレキサート、ペメトレキセド、およびラルチトレキセドの中から選ばれる、[12]記載の医薬組成物。 [20] がんが、小細胞肺がん、膵腺がん、または神経膠芽腫である、[19]記載の医薬組成物。 [21] がんが、小細胞肺がんである、[20]記載の医薬組成物。 [22] 小細胞肺がんが、シスプラチン耐性である、[21]記載の医薬組成物。 (【0011】以降は省略されています) この特許をJ-PlatPatで参照する