発明の詳細な説明【技術分野】 【0001】 この発明は、多種の腸内細菌の培養に共通して使用可能な培養技術に関し、特に前培養に用いる培地に工夫を加えることで、多種の腸内細菌を同時に培養可能とする培養技術に関する。 続きを表示(約 2,300 文字)【背景技術】 【0002】 近年、腸内細菌がヒトの健康状態に大きな影響を与えることが明らかになり、その機能を解明するために糞便中の腸内細菌のDNAを直接解読する菌叢解析(培養を介さない解析)が盛んに行われている。しかし、菌叢解析によって得られるDNAの塩基配列の半分が機能未知であるため、菌叢によってすべての腸内細菌の機能を解明することは困難であり、腸内細菌を培養して直接その機能を研究・解明することが求められている。 【0003】 多くの腸内細菌について、等しい条件で表現型を比較するためには、一度に多種の細菌を培養できる培地が必要である。ところが、欧米人の腸内常在菌叢最優勢種56種(表1参照)のうち、現在までにヒトによる培養に成功し、菌株を保存・配布している機関から入手可能な45種、同様に、日本人の腸内常在菌叢最優勢種50種(表2参照)のうち入手可能な41種については、配布機関が種ごとに指定する培養液(表1、表2参照)が推奨されるという問題がある。 【0004】 TIFF 2024044791000002.tif 206 165 【0005】 TIFF 2024044791000003.tif 189 165 【0006】 つまり、マルチウェルプレート等で多種の腸内細菌を同時に培養する場合、菌ごとに異なる推奨培地を用いるとすると、ウェルごとに異なる培地を用意する必要があり、これに多大な時間、労力、費用がかかるという問題が生じる。また、ウェルごとに培地が異なると、沈殿物の有無などにより、各ウェルの培養液が不均一になり、すべてのウェルで同時に菌の増殖を測定し、比較することができなくなるという問題がある。 【0007】 そこで、本発明者らは、沈殿物を生成せず、かつ多数の腸内細菌種を培養できる培地の開発に着手し、前培養と本培養の両方を岐阜大学処方嫌気性培地(以下、「GAM培地」という。)で培養する方法で、欧米人腸内常在細菌叢最優勢56種のうち入手可能な45種を培養し、その32種について培養に成功している。(非特許文献1参照)。 【0008】 また、非特許文献2では、GAM培地に改良を加え、色が薄く透明度の高いmGAM培地を用いて欧米人腸内常在細菌叢最優勢45種を培養し、34種(76%)が増殖したことが報告されている。 【0009】 また、化学的に定義されたGMMなる培地により、非特許文献3では、糞便サンプルから検出される属の70%が、非特許文献4では、その科の71%が分離培養可能であると報告されており、また、非特許文献2では、同培地により、欧米人腸内常在細菌叢最優勢45種のうち33種(73%)が培養可能であるという報告がなされている。 【先行技術文献】 【非特許文献】 【0010】 Gotoh A, Nara M, Sugiyama Y, Sakanaka M, Yachi H, Kitakata A, et al. Use of Gifu Anaerobic Medium for culturing 32 dominant species of human gut microbes and its evaluation based on short-chain fatty acids fermentation profiles. Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry (2017) 81:2009-17. doi: 10.1080/09168451.2017.1359486 Tramontano M, Andrejev S, Pruteanu M, Klunemann M, Kuhn M, Galardini M, et al. Nutritional preferences of human gut bacteria reveal their metabolic idiosyncrasies. Nature Microbiology (2018) 3:514-22. doi: 10.1038/s41564-018-0123-9 Goodman AL, Kallstrom G, Faith JJ, Reyes A, Moore A, Dantas G, et al. Extensive personal human gut microbiota culture collections characterized and manipulated in gnotobiotic mice. Proceedings of the National Academy of Sciences (2011) 108:6252-7. doi: doi:10.1073/pnas.1102938108 Rettedal EA, Gumpert H, Sommer MOA. Cultivation-based multiplex phenotyping of human gut microbiota allows targeted recovery of previously uncultured bacteria. Nature Communications (2014) 5:4714. doi: 10.1038/ncomms5714 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 (【0011】以降は省略されています) この特許をJ-PlatPatで参照する