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公開番号2024031942
公報種別公開特許公報(A)
公開日2024-03-07
出願番号2023135868
出願日2023-08-23
発明の名称鋼部品およびその製造方法
出願人JFEスチール株式会社
代理人個人,個人
主分類C22C 38/00 20060101AFI20240229BHJP(冶金;鉄または非鉄合金;合金の処理または非鉄金属の処理)
要約【課題】熱間鍛造後に調質処理を施さない、ベイナイト組織を有する非調質鋼の部品において、0.60以上の高い降伏比を実現する鋼部品およびその製造方法を提供する。
【解決手段】所定の成分を、以下の(1)式で得られるF1の値が0.65%以上となる範囲にて含み、残部がFeおよび不可避的不純物である成分組成と、ベイナイト組織の面積率が93%以上かつ残留オーステナイトの面積率が5%以下である組織とを有し、前記ベイナイト組織の結晶粒は、平均径が8μm以上25μm以下、平均アスペクト比が0.40以上、および、結晶粒の円周に対する結晶粒界の長さの平均比が60以下とする。
F1=C+Si/24+Mn/6+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14…(1)
【選択図】なし
特許請求の範囲【請求項1】
質量%で
C:0.36~0.45%、
Si:0.11~0.30%、
Mn:0.40~1.10%、
P:0.005~0.025%、
S: 0.035~0.060%、
Cr:0.90~1.80%、
Al:0.010~0.070%、
Ti:0.005~0.020%、
V:0.05~0.15%および
N:0.0080~0.0150%
を、以下の(1)式で得られるF1の値が0.65%以上となる範囲にて含み、残部がFeおよび不可避的不純物である成分組成と、ベイナイト組織の面積率が93%以上かつ残留オーステナイトの面積率が5%以下である組織とを有し、
前記ベイナイト組織の結晶粒は、平均径が8μm以上25μm以下、平均アスペクト比が0.40以上、および、結晶粒の円周に対する結晶粒界の長さの平均比が60以下である、鋼部品。
F1=C+Si/24+Mn/6+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14…(1)
ここで、(1)式中の各元素記号は、当該元素の含有量(質量%)であり、含有されない元素については0としてF1を算出するものとする。
続きを表示(約 1,100 文字)【請求項2】
前記鋼部品の表面下1mmにおけるビッカース硬さの最大値Hv

と最小値Hv

との差の最大値Hv

に対する比((Hv

-Hv

)/Hv

)×100が10%以下である、請求項1に記載の鋼部品。
【請求項3】
前記成分組成の鋼が、さらに質量%で
Cu:0.25%以下、
Ni:0.25%以下、
Mo:0.20%以下および
Nb:0.030%以下
のいずれか1種以上を含有する請求項1または2に記載の鋼部品。
【請求項4】
質量%で
C:0.36~0.45%、
Si:0.11~0.30%、
Mn:0.40~1.10%、
P: 0.005~0.025%、
S: 0.035~0.060%、
Cr:0.90~1.80%、
Al:0.010~0.070%、
Ti:0.005~0.020%、
V:0.05~0.15%および
N:0.0080~0.0150%
を、以下の(1)式で得られるF1の値が0.65%以上となる範囲にて含み、残部がFeおよび不可避的不純物である成分組成を有する鋼素材を、1150℃以上に加熱・保持後に熱間鍛造を施し、次いで、900℃から600℃までを0.8℃/s以上3.0℃/s以下、かつ600℃から300℃までを0.10℃/s以上1.00℃/s以下の冷却速度で冷却する、鋼部品の製造方法。
F1=C+Si/24+Mn/6+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14…(1)
ここで、(1)式中の各元素記号は、当該元素の含有量(質量%)であり、含有されない元素については0としてF1を算出するものとする。
【請求項5】
前記600℃から300℃までの冷却は、前記熱間鍛造材における冷却速度分布の最高値V

と最低値V

との差の最大値V

に対する比((V

-V

)/V

)×100が25%以下にて行う、請求項4に記載の鋼部品の製造方法。
【請求項6】
前記成分組成は、さらに質量%で
Cu:0.25%以下、
Ni:0.25%以下、
Mo:0.20%以下および
Nb:0.030%以下
のいずれか1種以上を含有する請求項4または5に記載の鋼部品の製造方法。

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼部品、例えば自動車やトラックの足回り、より具体的にはナックルやフロントアクスルに用いられる鋼部品およびその製造方法に関する。
続きを表示(約 2,800 文字)【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化に対する懸念から、産業界においてもCO

の排出抑制を求める声が高い。このような要望の下、自動車業界においても、自動車そのものからの排ガスとしてのCO

の排出抑制を進めるだけでなく、部品の製造工程におけるCO

の排出抑制も種々検討されている。こういった自動車部品の製造工程におけるCO

排出抑制の一技術として、部品強度の作り込み過程である熱処理を省略した、すなわち鋼の調質工程を省略した非調質部品の開発が活発である。この熱処理の省略を可能にするのは、例えば、部品の製造工程における、熱間鍛造工程後の部品の冷却中に部品強度の作り込みを可能とする工夫が施されているからである。
【0003】
非調質部品は、その金属組織の種類により2つに大別される。すなわち、主たる金属組織がいわゆるフェライトとパーライトの2相からなるもの、または主たる金属組織がベイナイトからなるものである。前者のフェライトとパーライトからなる非調質鋼では、専らバナジウムによる析出強化が用いられる。すなわち、部品の熱間鍛造後の冷却過程においてバナジウム炭化物が微細に析出し組織を析出強化するため、熱間鍛造後の状態で調質処理を行ったのと同等レベルの部品強度が得られるのである。一方のベイナイト組織の非調質部品の強化機構は変態強化である。すなわち、熱間鍛造後の冷却過程においてベイナイト変態させることで強度と靭性の両方に優れた組織を作り込むのである。どちらの非調質鋼が用いられるかは、部品の要求特性によるが、一般に強度と靭性の両立を求められる部品ではベイナイト組織の非調質鋼が用いられる傾向にある。
【0004】
ベイナイト組織を有する非調質鋼は上記のように強度と靭性のバランスが良いが、一般に降伏応力は低くなり、鋼材の最高強度である引張強さに対する降伏応力の比、いわゆる降伏比が低い傾向にある。また、この降伏応力は引張強度と比して変動(バラツキ)が大きい。機械構造用鋼の設計では、鋼材の最高強度よりも塑性変形が始まる強度である降伏応力の方が重要であることは論を待たない。このような設計の観点からすると、降伏応力が低い鋼は、いくら引張強さや靭性が良好でも使用しづらい。これがベイナイト組織を有する鋼の課題である。
【0005】
このような課題を解決する技術として、特許文献1が提案されている。特許文献1には、熱間加工後の冷却速度を制御して室温まで冷却後に200℃~600℃で焼き戻すことにより降伏応力を高める技術が提案されている。
しかし、この技術は、熱間鍛造後に焼き戻しを必要とする工程は非調質化のメリットを大きく損なうことになる。そこで、焼き戻しを行うことなく要求特性を満足する技術の追求も行われてきた。
【0006】
例えば、特許文献2では、熱間鍛造後の冷却に際し冷却途中の200℃~500℃の間に指定の冷却速度での徐冷を行って降伏応力を向上させる技術が提案されている。しかし、特定の温度域から徐冷を行うためには、既存の冷却設備に改変を加える設備投資が不可欠である。近年、自動車、トラックの組み立て工場自体が日本国以外の東南アジアなどの諸国に建設されるようになり、これに伴い熱間鍛造部品の現地調達化も進んでいる。東南アジアの諸国などに建設されている工場では、熱間鍛造後の鍛造品を鋼製の箱の中に段積みすることが多い。この場合、箱の底面付近の鍛造品と、箱の上部に積まれる鍛造品と、では冷却速度に有意差があることが想定される。また、箱は立方体であることがほとんどであり、箱の四隅付近の鍛造品、箱の側面付近の鍛造品、そして箱の中心部付近の鍛造品の間でも、それぞれ冷却速度が異なってくる。非調質鋼の強度作り込み工程は熱間鍛造後の冷却過程が主であるので、その冷却時の冷却速度の制御は重要である。この冷却速度の制御が十分になされない可能性があるのが現地調達における問題である。
【0007】
この問題に対処するために、上記した特許文献2に従う技術を導入するに当たり、これら諸国の工場で、熱間鍛造後の徐冷のための専用設備まで併せて導入することは極めて難しい。そのために、熱間鍛造後の冷却速度を厳密に制御せずとも所定の強度を達成できる非調質鋼が要求されている。つまり、冷却速度が少々ばらついても機械的特性があまりばらつかない非調質鋼が求められている。
【0008】
また、特許文献3には、降伏比及び耐久比を損なう組織的要因を島状マルテンサイト-残留オーステナイト混合組織と特定し、これを減少させる手法としてSiの添加量を減少させる技術が提案されている。しかし、Siを特許文献3に規定のレベルまで低減させた鋼を実際の製鉄プロセスで実現するためには、製鋼過程においてSiを用いない精練方法により製造しなければならず、製造コストが高価となり、経済的観点から好ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
特開平05-287373号公報
特開平04-285118号公報
特開平10-298703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記の状況を鑑みて発明されたものである。すなわち、本発明の目的は、熱間鍛造後に調質処理を施さない、いわゆる非調質鋼、中でもベイナイト組織を有する非調質鋼の部品において、高い降伏比、具体的には0.60以上の降伏比を実現する方途について提供することにある。なお、降伏比の目標値を0.60以上とするのは、機械的特性のばらつき抑制の観点からである。すなわち、ベイナイト組織を主たる組織として有する鋼の機械的特性において、冷却速度依存性を比較すると、引張応力より降伏応力の方が感受性は大きい。換言すると、引張強度より降伏強度の方が、冷却速度の違いが機械的特性の変化により大きく反映される。ここで、引張応力とは、引張試験において求まる公称応力-公称ひずみ曲線における最高の応力値のことである。さらに、降伏応力とは、同じ曲線における、弾性域からの0.2%オフセット応力のことである。すなわち、引張応力に対する降伏応力の比である、降伏比が、ある一定値以上となる鋼であれば、ベイナイトを主とする組織を有する非調質鋼であっても、降伏応力のばらつきが抑制されている鋼と見做すことができる。そのような観点からみると、ベイナイト組織の非調質鋼において降伏比が0.60以上であれば、その鋼の冷却速度に対する感受性は低いとみなすことができる。
【課題を解決するための手段】
(【0011】以降は省略されています)

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