発明の詳細な説明【技術分野】 【0001】 本発明は、トロコイド式のオイルポンプに関する。 続きを表示(約 2,700 文字)【背景技術】 【0002】 特許文献1及び特許文献2には、内歯を有するアウタロータと、アウタロータの内歯と噛み合う外歯を有するインナロータと、インナロータに固定されてインナロータを回転駆動する入力軸と、インナロータ及びアウタロータを収容するハウジングと、を備えるトロコイド式のオイルポンプが開示されている。特許文献1に開示されたオイルポンプは、アウタロータの軸方向端面に放射状に溝を設けて、溝とハウジング内壁面との間で生じる動圧によって、アウタロータの軸方向端面のハウジング内壁面への接触を抑制して、摩擦抵抗を減少させている。特許文献2に開示されたオイルポンプは、アウタロータの外周面に螺旋溝を設けて、アウタロータがハウジングに押し付けられる側にオイルを移動させることによって、アウタロータの軸方向端面のハウジング内壁面への接近を抑制し、摩擦抵抗を減少させている。 【0003】 非特許文献1には、狭い隙間へ引き込まれた隙間内のオイルが圧力を発生させるくさび作用が記載されている。非特許文献2及び非特許文献3には、修正Reynolds方程式について開示されている。修正Reynolds方程式によって、表面粗さを考慮して摺動面の油膜圧力分布を計算することができる。非特許文献4には、固体接触モデルが開示されている。固体接触モデルを用いてクリアランスが小さい場合の固体接触圧力を計算することができる。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0004】 特開2011-236864号公報 特開2003-176790号公報 【非特許文献】 【0005】 山本雄二,兼田もと宏著,「トライボロジー」,第2版,オーム社,2010年 Patir, N., and Cheng, H. S., An average flow model for determining effects of three-dimensional roughness on partial hydrodynamic lubrication, Transactions of the ASME, Journal of Lubrication Technology, 100, p12-17, 1978年 Patir, N., and Cheng, H. S., Application of average flow model to lubrication between rough sliding surfaces, Transactions of the ASME, Journal of Lubrication Technology, 101, p220-229, 1979年 Tomota, T.,Masuda, R.,Kondoh, Y.,Ohmori, T. and Yagi, K.,Modeling solid contact between rough surfaces with various roughnessparameters,Tribology Transactions,64,p178-192,2021年 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0006】 オイルポンプでは駆動トルクの低減が重要な課題となっている。特に、電気モータで駆動する電動オイルポンプでは、想定される駆動トルクによってモータ諸元に制約が生じるため、低い駆動トルクが望ましい。しかし、トロコイド式のオイルポンプの場合、入力軸を介してハウジングに回転可能に支持されたインナロータとは異なり、アウタロータは入力軸にもハウジングにも固定されていないため、油圧によってハウジング内で傾斜することがある。そのため、トロコイド式のオイルポンプでは、駆動トルクを低減させるために、アウタロータの軸方向端面がハウジング内壁面に接触する摺動面で生じる固体接触による抵抗を減らすことが必要となる。特に、直径が大きいアウタロータを用いる場合、この抵抗が大きくなるものと考えられる。 【0007】 一般的にアウタロータの軸方向端面とハウジング内壁面との間のクリアランス量は、アウタロータの内歯とインナロータの外歯の歯間からのオイル漏れを最小限とするために、十分に小さくなっている。そのため、アウタロータがハウジング内で油圧によって傾斜すると、アウタロータの軸方向端面とハウジング内壁面との固体接触を生じることになる。しかし、アウタロータが傾斜することによってアウタロータとハウジング内壁面が接近した部分では、非特許文献1に記載されているくさび作用によって圧力が発生し、アウタロータがハウジング内壁面から離れる方向に油膜による復元力が働き、固体接触を抑制するものと考えられる。 【0008】 ただし、アウタロータが大きく傾斜し過ぎると、非特許文献1で説明されているように、くさび作用による圧力が小さくなってしまう場合がある。そのため、アウタロータが大きく傾斜して、アウタロータの軸方向端面がハウジング内壁面に当たった状態となると、圧力による復元力が生じ難くなり、強い固体接触が発生して摺動抵抗が大きくなる可能性がある。このようなアウタロータの傾斜は、その大きさや方向がオイルポンプ諸元や運転条件によって変化することがあっても、完全に発生を防ぐことはできないものと考えられる。 【0009】 そこで、本発明は、アウタロータがハウジング内で傾斜しても駆動トルクの増加を抑制できるオイルポンプを提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0010】 本発明に係るオイルポンプは、円環形状のリング部から内歯が径方向内側へ突き出たアウタロータと、前記内歯と噛み合う外歯を有するインナロータと、前記インナロータに接続され、前記インナロータを回転駆動する入力軸と、前記インナロータ及び前記アウタロータを収容するギヤ室を有するハウジングと、を備えるトロコイド式のオイルポンプであって、前記リング部は、軸方向端面と、外周面と、前記軸方向端面と前記外周面との間に形成された面取り面と、を有し、前記リング部の前記軸方向端面に、径方向内側端から径方向外側端まで径方向に内側から外側へ向かうほど前記リング部の軸方向中心からの軸方向距離が単調減少するように傾斜が設けられていることを特徴とする。 (【0011】以降は省略されています) この特許をJ-PlatPat(特許庁公式サイト)で参照する