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公開番号2025130651
公報種別公開特許公報(A)
公開日2025-09-08
出願番号2024092218,2024517011
出願日2024-06-06,2024-02-27
発明の名称エクオールおよび5-ヒドロキシエクオールの製造方法
出願人株式会社ダイセル
代理人弁理士法人秀和特許事務所
主分類C12P 7/18 20060101AFI20250901BHJP(生化学;ビール;酒精;ぶどう酒;酢;微生物学;酵素学;突然変異または遺伝子工学)
要約【課題】本開示は、少なくとも、エクオールおよび5-ヒドロキシエクオールの製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】所定のダイゼイン類からエクオールを産生する能力、および、所定のゲニステイン類から5-ヒドロキシエクオールを産生する能力、を有する微生物を用いた、エクオールおよび5-ヒドロキシエクオールの製造方法であって、前記微生物の培養開始時に、ダイゼイン類およびゲニステイン類が存在し、前記ゲニステイン類から5-ヒドロキシエクオールへのモル転換効率が0.200%/h以上であり、前記培養開始時の前記ゲニステイン類の前記ダイゼイン類に対するモル濃度比が、1.500以上、または、0.500以下である、製造方法。
【選択図】図1
特許請求の範囲【請求項1】
ダイゼイン類からエクオールを産生する能力、および、ゲニステイン類から5-ヒドロキシエクオールを産生する能力、を有する微生物を用いた、エクオールおよび5-ヒドロキシエクオールの製造方法であって、
前記微生物の培養開始時に、ダイゼイン類およびゲニステイン類が存在し、
前記ゲニステイン類から5-ヒドロキシエクオールへのモル転換効率が0.200%/h以上であり、
前記培養開始時の前記ゲニステイン類の前記ダイゼイン類に対するモル濃度比が、1.500以上、または、0.500以下であり、
前記ダイゼイン類が、ダイジン、マロニルダイジン、アセチルダイジン、ダイゼイン、ジハイドロダイゼインまたはそれらの組み合わせであり、
前記ゲニステイン類が、ゲニスチン、マロニルゲニスチン、アセチルゲニスチン、ゲニステイン、ジハイドロゲニステインまたはそれらの組み合わせである、製造方法。

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本開示は、エクオールおよび5-ヒドロキシエクオールの製造方法に関する。
続きを表示(約 4,700 文字)【背景技術】
【0002】
大豆、葛などのマメ科の植物に多く含まれているイソフラボン類はポリフェノールの1種であり、イソフラボンを基本骨格とするフラボノイドである。近年の調査により、イソフラボン類は女性ホルモン作用(エストロゲン)や抗酸化作用を有し、イソフラボン類を摂取することにより、乳癌、前立腺癌、骨粗しょう症、高コレステロール血症、心疾患、更年期障害などに対して予防効果があることが明らかとなっている(非特許文献1~6)。
【0003】
また、大豆に含まれるイソフラボン類には、主に糖と縮合した配糖体が含まれ、その他、糖と縮合していないイソフラボンアグリコン(以下、アグリコンともいう。)も極少量含れる。配糖体形のイソフラボン類として、例えば、ダイジン(daidzin)、グリシチン(glycitin)、ゲニスチン(genistin)が挙げられる。
これらの配糖体は、ヒトや動物の体内に入ると消化酵素または腸内細菌の産生する酵素(β-グルコシダーゼ等)の働きにより、それぞれ、アグリコンであるダイゼイン(daidzein)、グリシテイン(glycitein)、ゲニステイン(genistein)となる。
これらのうちダイゼインは腸内細菌の働きにより、ジヒドロダイゼイン(dihydrodaidzein)(ジハイドロダイゼインとも称する。)を経てエクオール(equol)へと酵素的に変換されることが知られている。同様に、ゲニステインも一部の腸内細菌の働きによりジヒドロゲニステイン(dihydrogenistein)(ジハイドロゲニステインとも称する。)、5-ヒドロキシエクオール(5-hydroxyequol)へと変換されることが知られている(非特許文献7)。
【0004】
エクオールは、これらの代謝産物の中で最もエストロゲン活性が高いことが知られている(非特許文献8および9)が、5-ヒドロキシエクオールも同様にエストロゲン様活性を有し、また、3-β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ阻害活性を有することが報告されており(特許文献1)、アルドステロンおよび糖質コルチコイドの生合成を阻害することにより、これらのホルモンの過剰症に対する予防もしくは治療への利用が期待されている。
【0005】
しかしながら、イソフラボンの代謝には個人差があり、上記のようにダイゼインを発酵させてエクオールを産生する能力を有する腸内細菌を保有する人は少なく、その保有率は日本人で約5割、欧米人で約3割程度であることが明らかとなっている(非特許文献10および11)。なお、5-ヒドロキシエクオールはエクオール産生菌が有する酵素により産生されると考えられている(非特許文献7)。また、エクオール産生菌が有する、ダイゼインからのエクオール生成に関与する酵素は、ダイゼイン還元酵素(DZNR)、ジヒドロダイゼイン還元酵素(DHDR)、テトラヒドロダイゼイン還元酵素(THDR)であり、これらの酵素をコードする遺伝子は、スラッキア属、エガセラ属、ラクトコッカス属といった異なるエクオール産生菌株間でも、同様の配列と遺伝子構成を備えたクラスターとして構成されている(非特許文献12)。そのため、エクオール生成に関与する酵素を有するスラッキア・イソフラボニコンバーテンス(Slackia isoflavoniconvertens DSM 22006)や、エクオール生成に関与する各酵素をコードする遺伝子を導入した腸内乳酸菌は、エクオールと5-ヒドロキシエクオールを同時に産生することができる(非特許文献12)。
【0006】
エクオールや5-ヒドロキシエクオールを産生する腸内細菌を保有しない人は、大豆等のダイゼインやゲニステインを含有する食品を摂取してもエクオールや5-ヒドロキシエクオールを体内で産生することができない。これらの課題を解決するために、近年、エクオールを乳酸菌や腸内細菌等の嫌気性微生物を用いて産生する試みがなされているが(特許文献2~5)、5-ヒドロキシエクオールについてはそのような取り組みは報告されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
特開2003-81875号公報
特開2006-204296号公報
特表2006-504409号公報
特開2008-61584号公報
特開2010-104241号公報
【非特許文献】
【0008】
Adlercreutz, H., The Lancet Oncol., 3, 364-373 (2002)
Duncan, A. M. et al., Best Pract. Res. Clin. Endocrinol. Metab., 17, 253-271 (2003)
Wu, A. H. et al., Carcinogenesis, 23, 1491-1496 (2002)
Yamamoto, S. et al., J. Natl. Cancer Inst., 95,906-913 (2003)
Onozawa, M. et al., Jpn. J. Cancer Res., 90, 393-398 (1999)
Ridges, L. et al., Asia Pac. J. Clin. Nutr., 10, 204-211 (2001)
Matthies, A. et al., Appl. Environ. Microbiol., 74(15), 4847-52(2008)
Schmitt, E. et al., Toxicol. In Vitro, 15, 433-439 (2001)
Sathyamoorthy, N. and Wang, T. T., Eur. J. Cancer, 33, 2384-2389 (1997)
Arai, Y. et al., J. Epidemiol., 10, 127-135 (2000)
Setchell, K. D. et al., J. Nutr., 133, 1027-1035 (2003)
International Journal of Food Microbiology 360 (2021) 109328
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本開示は、少なくとも、エクオールおよび5-ヒドロキシエクオールの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の要旨は以下に関する。
[1] ダイゼイン類からエクオールを産生する能力、および、ゲニステイン類から5-ヒドロキシエクオールを産生する能力、を有する微生物を用いた、エクオールおよび5-ヒドロキシエクオールの製造方法であって、
前記微生物の培養開始時に、ダイゼイン類およびゲニステイン類が存在し、
前記ゲニステイン類から5-ヒドロキシエクオールへのモル転換効率が0.200%/h以上であり、
前記培養開始時の前記ゲニステイン類の前記ダイゼイン類に対するモル濃度比が、1.500以上、または、0.500以下であり、
前記ダイゼイン類が、ダイジン、マロニルダイジン、アセチルダイジン、ダイゼイン、ジハイドロダイゼインまたはそれらの組み合わせであり、
前記ゲニステイン類が、ゲニスチン、マロニルゲニスチン、アセチルゲニスチン、ゲニステイン、ジハイドロゲニステインまたはそれらの組み合わせである、製造方法。
[2] 前記ゲニステイン類から5-ヒドロキシエクオールへのモル転換効率が0.250%/h以上である、[1]に記載の製造方法。
[3] 前記ゲニステイン類の前記ダイゼイン類に対するモル濃度比が、1.800以上、または、0.400以下である、[1]または[2]に記載の製造方法。
[4] 前記微生物が、アドレクラウチア属に属する微生物、アサッカロバクター属に属する微生物、スラッキア属に属する微生物、およびラクトコッカス属に属する微生物からなる群から選択される1以上である、[1]~[3]のいずれかに記載の製造方法。
[5] 前記微生物が、アドレクラウチア・エクオリファシエンスに属する微生物、スラッキア・エクオリファシエンスに属する微生物、およびラクトコッカス・ガルビエに属する微生物からなる群から選択される1以上である、[4]に記載の製造方法。
[6] 前記微生物の培養開始時に、さらにβ-シクロデキストリンが存在する、[1]~[5]のいずれかに記載の製造方法。
[7] 前記微生物の培養開始時に、さらにアルギニンが存在する、[1]~[6]のいずれかに記載の製造方法。
[8] ダイゼイン類からエクオールを産生する能力、および、ゲニステイン類から5-ヒドロキシエクオールを産生する能力、を有する微生物を培養することによって、
エクオールおよび5-ヒドロキシエクオールを含有する発酵物を製造する方法であって、
前記微生物の培養開始時に、ダイゼイン類およびゲニステイン類が存在し、
前記培養開始時の前記ゲニステイン類の前記ダイゼイン類に対するモル濃度比が、1.500以上、または、0.500以下であり、
前記発酵物における、エクオールおよび5-ヒドロキシエクオールの総含有量が、乾燥重量1g当たり0.5mg/g以上、100.0mg/g以下であり、
前記ダイゼイン類が、ダイジン、マロニルダイジン、アセチルダイジン、ダイゼイン、ジハイドロダイゼインまたはそれらの組み合わせであり、
前記ゲニステイン類が、ゲニスチン、マロニルゲニスチン、アセチルゲニスチン、ゲニステイン、ジハイドロゲニステインまたはそれらの組み合わせである、方法。
[9] 前記微生物が、アドレクラウチア属に属する微生物、アサッカロバクター属に属する微生物、スラッキア属に属する微生物、およびラクトコッカス属に属する微生物からなる群から選択される1以上である、[8]に記載の方法。
[10] 前記微生物が、アドレクラウチア・エクオリファシエンスに属する微生物、スラッキア・エクオリファシエンスに属する微生物、およびラクトコッカス・ガルビエに属する微生物からなる群から選択される1以上である、[9]に記載の方法。
[11] 前記微生物の培養開始時に、さらにβ-シクロデキストリンが存在する、[8]~[10]のいずれかに記載の方法。
[12] 前記微生物の培養開始時に、さらにアルギニンが存在する、[8]~[11]のいずれかに記載の方法。
【発明の効果】
(【0011】以降は省略されています)

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