TOP特許意匠商標
特許ウォッチ Twitter
10個以上の画像は省略されています。
公開番号2025105513
公報種別公開特許公報(A)
公開日2025-07-10
出願番号2024219555
出願日2024-12-16
発明の名称Mg基複合材とその製造方法および摺動部材
出願人国立研究開発法人物質・材料研究機構,学校法人同志社
代理人個人
主分類C22C 1/05 20230101AFI20250703BHJP(冶金;鉄または非鉄合金;合金の処理または非鉄金属の処理)
要約【課題】母相への粒子分散による優れた強度特性を有し、かつ高い摩擦摩耗特性を有するMg基複合材とその製造方法および摺動部材を提供する。
【解決手段】本発明のMg基複合材は、粒子分散型のMg基複合材であって、Mg基複合材の金属組織において平均径0.05μm以上の二酸化チタンの粒子と任意的な酸化物または窒化物の粒子がMg母相中に分散し、純マグネシウムの強度特性が維持されるとともに、摩擦摩耗を受ける部分の摩擦係数が純マグネシウムよりも低いことにより、純マグネシウムよりも優れた摩擦摩耗特性を示す。
【選択図】図2
特許請求の範囲【請求項1】
粒子分散型のMg基複合材であって、
前記Mg基複合材の金属組織において平均径0.05μm以上の二酸化チタンの粒子と任意的な酸化物または窒化物の粒子がMg母相中に分散し、
摩擦摩耗を受ける部分の摩擦係数が純マグネシウムよりも低く、
前記摩擦摩耗はボールオンディスク式摩耗試験機による乾式摩擦摩耗試験であって、前記乾式摩擦摩耗試験による試験開始から10秒以内に得られる、摺動面の摩擦摩耗を受けた部分の摩擦係数が0.20未満であり、
前記ボールオンディスク式摩耗試験機による乾式摩擦摩耗試験は、前記Mg基複合材のMg基押出複合材を押出方向に対して垂直方向に切断したディスク面を測定面とし、高炭素クロム軸受鋼(SUJ2)からなる直径4.7mmのボールを用いて、ディスク中心からの回転半径0.3mm、付加加重0.5N、線速度0.1~1.0mm/s、摺動距離1000mm以上の条件にて、乾式摩擦摩耗試験を実施するものであり、
前記Mg母相の結晶粒サイズが200μm以下であるMg基複合材。
続きを表示(約 1,900 文字)【請求項2】
粒子分散型のMg基複合材であって、
前記Mg基複合材の金属組織において平均径0.05μm以上の二酸化チタンの粒子と任意的な酸化物または窒化物の粒子がMg母相中に分散し、
摩擦摩耗を受ける部分の摩擦係数が純マグネシウムよりも低く、
前記摩擦摩耗はボールオンディスク式摩耗試験機による乾式摩擦摩耗試験であって、前記乾式摩擦摩耗試験による試験開始から10秒以内に得られる、摺動面の摩擦摩耗を受けた部分の摩擦係数が0.20未満であり、
前記ボールオンディスク式摩耗試験機による乾式摩擦摩耗試験は、前記Mg基複合材のMg基押出複合材を押出方向に対して垂直方向に切断したディスク面を測定面とし、高炭素クロム軸受鋼(SUJ2)からなる直径4.7mmのボールを用いて、ディスク中心からの回転半径0.3mm、付加加重0.5N、線速度0.1~1.0mm/s、摺動距離1000mm以上の条件にて、乾式摩擦摩耗試験を実施するものであり、
前記二酸化チタンの粒子の平均径と前記Mg母相の結晶粒サイズとの比が1:4~1:10の範囲内であり、前記任意的な酸化物または窒化物の粒子の平均径と前記Mg母相の結晶粒サイズとの比が1:4~1:10の範囲内である、Mg基複合材。
【請求項3】
前記Mg母相の結晶粒サイズが200μm以下である請求項2記載のMg基複合材。
【請求項4】
前記二酸化チタンの粒子と任意的な酸化物または窒化物の粒子の合計含有率が65質量%未満である請求項1~3のいずれか一項に記載のMg基複合材。
【請求項5】
前記任意的な酸化物または窒化物が、Al



、CuO、MnO

、Si



、SiO

またはY



である、請求項1~4のいずれか一項に記載のMg基複合材。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載のMg基複合材を含む摺動部材であって、
前記Mg基複合材からなる摺動面を有し、
前記摺動面は摩擦摩耗を受ける部分の摩擦係数が純マグネシウムよりも低く、
前記摩擦摩耗はボールオンディスク式摩耗試験機による乾式摩擦摩耗試験であって、前記乾式摩擦摩耗試験による試験開始から10秒以内に得られる、前記摺動面の摩擦摩耗を受けた部分の摩擦係数が0.20未満であり、
前記ボールオンディスク式摩耗試験機による乾式摩擦摩耗試験は、前記Mg基複合材のMg基押出複合材を押出方向に対して垂直方向に切断したディスク面を測定面とし、高炭素クロム軸受鋼(SUJ2)からなる直径4.7mmのボールを用いて、ディスク中心からの回転半径0.3mm、付加加重0.5N、線速度0.1~1.0mm/s、摺動距離1000mm以上の条件にて、乾式摩擦摩耗試験を実施するものである摺動部材。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか一項に記載のMg基複合材の製造方法であって、
Mg粉末またはMg合金粉末と、平均径0.05μm以上の二酸化チタンの粉末と、任意的に、平均径0.05μm以上の酸化物または窒化物の粉末を含有する混合粉末をビレット内に充填、封入する工程、および
前記混合粉末を充填、封入した前記ビレットに、50℃以上、550℃以下の温度で断面減少率50%以上の温間または熱間ひずみ付与加工を施す工程を含むMg基複合材の製造方法。
【請求項8】
前記混合粉末における前記二酸化チタンの粉末と任意的な酸化物または窒化物の粉末の合計含有率が、前記Mg粉末またはMg合金粉末と前記二酸化チタンの粉末との合計量に対して65質量%未満である請求項7に記載のMg基複合材の製造方法。
【請求項9】
前記任意的な酸化物または窒化物が、Al



、CuO、MnO

、Si



、SiO

またはY



である、請求項7または8に記載のMg基複合材の製造方法。
【請求項10】
前記温間または熱間ひずみ付与加工が、押出加工、鍛造加工、圧延加工、または引抜加工である請求項7~9のいずれか一項に記載のMg基複合材の製造方法。

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、Mg基複合材とその製造方法および摺動部材に関する。
続きを表示(約 2,900 文字)【背景技術】
【0002】
マグネシウム(Mg)は、地中埋蔵量が豊富で、実用金属材料で最軽量であることから、自動車をはじめとする移動用構造部材への適用が盛んに検討されている。一方で、部材として使用した場合、他部位と接触することは避けられず、強度および摩擦摩耗特性に優れたMgおよびMg合金の開発が必要とされている。一般的に、金属材料の高強度化は、結晶粒サイズの微細化が有効な手段であり、MgおよびMg合金に対しても同様の効果が発揮される。しかし、MgおよびMg合金の結晶粒サイズの微細化は、摩擦摩耗特性を改善させる手段としては有効でないことが知られている(非特許文献1)。Mgの大きな粒界拡散係数に起因し、容易に粒界すべりが起こるため、結晶粒サイズの微細化にともない、粒界体積率が増加し、粒界すべりが促進され、摩擦摩耗時に加工軟化が起こる。そのため、MgおよびMg合金の摩擦摩耗特性を維持し、更に向上するためには、母相の結晶粒サイズの粗大化が好ましいが、これにより強度特性の劣化が問題となる。
【0003】
結晶粒サイズの微細化以外に、素材を高強度化するために、母相への粒子分散がよく用いられている。なかでも、金属材料の場合、母相から析出または晶出した金属間化合物を分散させることが、高強度化に有効である。また、母相への粒子分散は、粒界すべりを抑制する効果もある。本発明者らにより発明された、球状または鋭角な角を持たない金属間化合物がMg母相内に分散した、摩擦特性に優れたMg合金が特許文献1に開示されている。Mg母相に金属間化合物を分散させることは、強度を向上させるためにも有効な手段であるが、特許文献1では、Mg合金を製造する過程で鋳造材から金属間化合物を析出および晶出させているため、Mg母相の結晶粒サイズが粗大であり、更なる高強度化が望まれる。
【0004】
金属材料の場合、析出や晶出した金属間化合物の分散だけではなく、金属に固溶しない物質や素材からなる粒子(例えば、黒鉛やセラミックスなど)を母相に分散させる、すなわち、複合化も、強度改善に有効な手法である。しかし、Mgは、複合化を目的とする添加粒子との濡れ性が極めて乏しいため、鋳造法によって複合化素材を創製することができない。そのため、特許文献2、3に開示されているように、メカニカルアロイング法や、ひずみ付与行程を数十回以上必要とする繰返しせん断ひずみ付与法などを用いて、Mg粉末と添加粉末を固化し、Mg基複合材を創製しているが、いずれの手法も複雑で数多くの作業工程を要するため、素材コストの高騰が避けられない。
【0005】
一方で、素材自身の強度特性を維持し、摩擦摩耗特性を改善するために、Mg合金の表面層の改質が知られている。特許文献4には、Mg合金の表面に陽極酸化処理によって表面改質構造を形成し、この表面改質構造に固体潤滑剤である二硫化モリブデンを含浸させることが、Mgの摩擦摩耗特性の改善に有効な手法として開示されている。この手法は、Mg母相の結晶粒サイズに依存せず、表面層のみの改質であるため、強度特性を維持することが可能である。しかし、素材使用時に、追加工程として陽極酸化処理を実施する必要があるため、コストの高騰が懸念される。
【0006】
本発明者らは、特許文献5に開示するように、より簡便な創製法に着目し、SiC粉末とMg粉末を混合し、温間および熱間加工によりMg基複合材を創製している。これらの複合材では、SiC粒子がMg母相中に分散し、優れた強度特性を維持しながら、摩擦摩耗を受けた際に、この摩擦摩耗を受けた部分にSiC粒子が再凝集して自己被膜形成能を示すことが見いだされている。なお、本明細書では、母相中に特定の粒子が分散した素材を、「粒子分散型」とも称し、当該粒子を「分散粒子」とも称する。
【0007】
Mg基複合材の更なる特性の改質や汎用性を指向する場合、Mg母相に分散させる粒子としてSiCのような炭化物のみに注目するだけなく、他の化合物を用いることについても検討する必要がある。本発明者らは、金属母相に対する添加粉末の表面エネルギーに着目し、マグネシウムに対して表面エネルギー差が大きな粒子を添加粉末とすることで、同様の特性が得られることを特許文献6に開示している。すなわち、Al



、CuO、MnO

、Si



、SiO

、Y



に代表される酸化物や窒化物を使用すると、割れやクラックがなく、自己被膜形成能が付与されたMg基複合材の創製が可能である。
【0008】
一方、特許文献5や6では、摩擦摩耗を受ける部位に自己被膜形成が起こり、良好な摩擦摩耗特性を得るには、一定以上の時間経過(試験条件にも影響するが、例えば、1000秒以上)を必要とする。実用化を鑑みると、より短い時間で摩擦係数が低減することが極めて望ましい。前記の特許文献では、SiCに加えて、Al



、CuO、MnO

、Si



、SiO

、Y



の酸化物や窒化物に関する事例を開示しているが、これに限る必要はなく、酸化物は二酸化チタン(TiO

)であってもよい。
【0009】
二酸化チタンを複合化材として用いたMg基複合材については、特許文献7と特許文献8に開示されている。特許文献7では、強度特性の改善を図っている。しかし、チタン-アルミニウム金属間化合物を合成させることが重要であり、この金属間化合物が摩擦摩耗特性にどのような効果を与えるかは不明である。なぜなら、in situ反応による合成によって形成される金属間化合物は、主に析出によるため、それらの形態が球形であるのかまたは鋭角な角を有するのかは不明であるからである。加えて、析出による金属間化合物の大きさ(直径)は数十nmから数百nm程度であると考えられる。特許文献8では、二酸化チタンとハイドロキシアパタイトからなる複合材が被膜され、腐食溶解を抑制することを特徴としている。特許文献7と同じく、二酸化チタンの粒子が摩擦摩耗特性に及ぼす影響は不明である。
【0010】
本発明者らの知る範囲内では、マグネシウムに対する二酸化チタンの表面エネルギーは不明であり、二酸化チタンの粒子がそれ単独でまたは他の粒子と共に母相中に分散した状態で、Mg基複合材の摩擦摩耗特性に与える影響や効果は全く分からない。
【先行技術文献】
【特許文献】
(【0011】以降は省略されています)

この特許をJ-PlatPatで参照する

関連特許

宏幸株式会社
金属回収方法
3か月前
個人
高強度せん断補強筋用の鋼材
3か月前
株式会社神戸製鋼所
鋼材
2か月前
株式会社クボタ
比重分離装置
3か月前
株式会社クボタ
比重分離装置
3か月前
株式会社クボタ
比重分離装置
3か月前
日本製鉄株式会社
鋼材
3か月前
日本製鉄株式会社
鋼材
3か月前
日本製鉄株式会社
鋼線
22日前
日本製鉄株式会社
線材
22日前
日本製鉄株式会社
鋼材
3か月前
日本製鉄株式会社
鋼材
1か月前
日本製鉄株式会社
鋼材
3か月前
日本製鉄株式会社
鉄道車輪
1か月前
日本製鉄株式会社
鉄道車輪
1か月前
住友金属鉱山株式会社
銅の製造方法
9日前
JFEスチール株式会社
浸炭鋼部品
3か月前
日本精線株式会社
銅合金
3か月前
JFEスチール株式会社
亜鉛回収方法
11日前
日本製鉄株式会社
軸受用鋼管
1か月前
日本製鉄株式会社
熱間圧延鋼材
3か月前
日本製鉄株式会社
焼結鉱の製造方法
1か月前
株式会社村田製作所
スズイオンの分離方法
2か月前
株式会社プロテリアル
合金部材及び合金部材の製造方法
1か月前
中部リサイクル株式会社
銅含有物の製造方法
4か月前
山陽特殊製鋼株式会社
肉盛層
29日前
株式会社小松製作所
耐摩耗部品
2か月前
個人
セラックを用いた成型体及び構造体の製造方法
4か月前
住友金属鉱山株式会社
酸化亜鉛鉱の製造方法
4か月前
大同特殊鋼株式会社
軟磁性材料
4か月前
三菱マテリアル株式会社
銅合金板
1か月前
大電株式会社
アルミニウム素線及びアルミニウム電線
3か月前
三菱マテリアル株式会社
銅合金触媒
16日前
JFEスチール株式会社
鋼板およびその製造方法
4か月前
JFEスチール株式会社
鋼板およびその製造方法
4か月前
日本製鉄株式会社
含炭塊成鉱の製造方法
3か月前
続きを見る