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公開番号2025062599
公報種別公開特許公報(A)
公開日2025-04-14
出願番号2024229689,2023019382
出願日2024-12-26,2018-08-07
発明の名称がんを評価及び治療するための方法及び物質
出願人ザ ジョンズ ホプキンス ユニバーシティ,ボード オブ リージェンツ,ザ ユニバーシティ オブ テキサス システム,BOARD OF REGENTS,THE UNIVERSITY OF TEXAS SYSTEM,ザ・リサーチ・ファウンデーション・フォー・ザ・ステイト・ユニヴァーシティ・オブ・ニューヨーク
代理人個人,個人
主分類C12Q 1/6886 20180101AFI20250403BHJP(生化学;ビール;酒精;ぶどう酒;酢;微生物学;酵素学;突然変異または遺伝子工学)
要約【課題】がんを有する対象(例えば、ヒト)を検出及び/または治療するための方法及び物質を提供する。
【解決手段】いくつかの実施形態では、2クラス以上のバイオマーカーのメンバー(複数可)の存在を検出する、対象ががん(例えば、限局性がん)を有することを同定するための方法及び物質を提供する。いくつかの実施形態では、少なくとも1クラスのバイオマーカーのメンバー(複数可)の存在及び異数性の存在を検出する、対象ががん(例えば、限局性がん)を有することを同定するための方法及び物質を提供する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、対象(例えば、ヒト)のがんの検出における高い感度及び/または特異度を提供する。
【選択図】なし
特許請求の範囲【請求項1】
対象における膵臓癌の存在を同定するための方法であって、
前記対象から採取した第1の生体試料中において、以下の遺伝子、KRAS、TP53、CDKN2A、または、SMAD4のうちの1つまたは複数における1つまたは複数の遺伝子バイオマーカーの存在を検出すること、
前記対象から採取した第2の生体試料中において、以下のタンパク質バイオマーカー、糖鎖抗原19-9(CA19-9)、がん胎児性抗原(CEA)、肝細胞増殖因子(HGF)、または、オステオポンチン(OPN)のうちの1つまたは複数のレベルを検出すること、
前記1つまたは複数のタンパク質バイオマーカーの前記検出レベルと前記タンパク質バイオマーカーの1つまたは複数の基準レベルを比較すること、及び
1つまたは複数の遺伝子バイオマーカーの存在が検出された場合、前記1つまたは複数のタンパク質バイオマーカーの前記検出レベルが前記1つまたは複数のタンパク質バイオマーカーの前記基準レベルよりも高い場合、または、その両方の場合に、前記対象における膵臓癌の存在を同定すること、
を含む、前記方法。
続きを表示(約 1,400 文字)【請求項2】
前記第1の生体試料、前記第2の生体試料、または、その両方は、血漿を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の生体試料と前記第2の生体試料は同一である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
KRAS、TP53、CDKN2A及びSMAD4のそれぞれにおける1つまたは複数の遺伝子バイオマーカーの存在を検出する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
糖鎖抗原19-9(CA19-9)、がん胎児性抗原(CEA)、肝細胞増殖因子(HGF)及びオステオポンチン(OPN)のそれぞれのレベルを検出する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
a.前記試料中に存在する複数の鋳型分子のそれぞれに固有識別子(UID)を割り当てること、
b.それぞれ固有にタグ付けした鋳型分子を増幅してUIDファミリーを作製すること、及び
c.前記増幅産物を重複してシークエンシングすること、
を含む、マルチプレックスPCRベースのシークエンシングアッセイを使用して、KRAS、TP53、CDKN2A、または、SMAD4のうちの1つまたは複数における1つまたは複数の遺伝子バイオマーカーの存在を検出する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記対象ががん細胞を有することが知られていない場合、1つまたは複数の遺伝子バイオマーカーの存在を検出すること、1つまたは複数のタンパク質バイオマーカーの前記レベルを検出すること、または、その両方を実施する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記対象は、以下の治療介入、外科手術、アジュバント化学療法、ネオアジュバント化学療法、放射線療法、免疫療法、標的化療法、または、免疫チェックポイント阻害薬、のうちの1つまたは複数を実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
対象におけるがんの存在を同定するための方法であって、
前記対象から採取した第1の生体試料中において、以下の遺伝子、NRAS、CTNNB1、PIK3CA、FBXW7、APC、EGFR、BRAF、CDKN2A、PTEN、FGFR2、HRAS、KRAS、AKT1、TP53、PPP2R1A、または、GNASのうちの1つまたは複数における1つまたは複数の遺伝子バイオマーカーの存在を検出すること、
前記対象から採取した第2の生体試料中において、以下のタンパク質バイオマーカー、CA19-9、CEA、HGF、OPN、CA125、プロラクチン、TIMP-1、または、MPOのうちの1つまたは複数のレベルを検出すること、
前記1つまたは複数のタンパク質バイオマーカーの前記検出レベルと前記タンパク質バイオマーカーの1つまたは複数の基準レベルを比較すること、及び
1つまたは複数の遺伝子バイオマーカーの存在が検出された場合、前記1つまたは複数のタンパク質バイオマーカーの前記検出レベルが前記1つまたは複数のタンパク質バイオマーカーの前記基準レベルよりも高い場合、または、その両方の場合に、前記対象におけるがんの存在を同定すること、
を含む、前記方法。
【請求項10】
前記第1の生体試料、前記第2の生体試料、または、その両方は、血漿を含む、請求項9に記載の方法。
(【請求項11】以降は省略されています)

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
連邦政府の資金提供に関する声明文
本発明は、国立衛生研究所による助成金番号CA062924及びHG007804のもとで、米国政府による支援を受けて成立した。米国政府は本発明において一定の権利を有する。
続きを表示(約 12,000 文字)【0002】
配列表
本出願は、電子出願制度により米国特許商標庁に提出された電子的形態の配列表を含み、その全体は参照により本明細書に組み込まれる。上記配列表(2018年8月6日に作成)の名称は448070306WO1SL.txtであり、そのサイズは208,305バイトである。
【0003】
電子的に出願された表
本出願は、電子出願制度により米国特許商標庁に提出された電子的形態の表を含む。ASCIIテキストファイル(それぞれの内容全体は参照により本明細書に組み込まれる)としては、Table1.txtという名称のテキストファイル(2018年8月7日に作成され、152,000バイトのサイズを有する)、Table2.txtという名称のテキストファイル(2018年8月7日に作成され、351,000バイトのサイズを有する)、Table3.txtという名称のテキストファイル(2018年8月7日に作成され、438,000バイトのサイズを有する)、Table4.txtという名称のテキストファイル(2018年8月7日に作成され、1,081,000バイトのサイズを有する)、Table5.txtという名称のテキストファイル(2018年8月7日に作成され、31,000バイトのサイズを有する)、Table6.txtという名称のテキストファイル(2018年8月7日に作成され、103,000バイトのサイズを有する)、Table7.txtという名称のテキストファイル(2018年8月7日に作成され、25,000バイトのサイズを有する)、Table8.txtという名称のテキストファイル(2018年8月7日に作成され、59,000バイトのサイズを有する)、Table9.txtという名称のテキストファイル(2018年8月7日に作成され、38,000バイトのサイズを有する)、Table10.txtという名称のテキストファイル(2018年8月7日に作成され、22,000バイトのサイズを有する)、Table11.txtという名称のテキストファイル(2018年8月7日に作成され、17,000バイトのサイズを有する)、Table12.txtという名称のテキストファイル(2018年8月7日に作成され、14,000バイトのサイズを有する)、Table13.txtという名称のテキストファイル(2018年8月7日に作成され、104,000バイトのサイズを有する)、Table14.txtという名称のテキストファイル(2018年8月7日に作成され、106,000バイトのサイズを有する)、Table15.txtという名称のテキストファイル(2018年8月7日に作成され、370,000バイトのサイズを有する)、Table16.txtという名称のテキストファイル(2018年8月7日に作成され、262,000バイトのサイズを有する)、Table17.txtという名称のテキストファイル(2018年8月7日に作成され、8,000バイトのサイズを有する)、Table18.txtという名称のテキストファイル(2018年8月7日に作成され、52,000バイトのサイズを有する)、Table19.txtという名称のテキストファイル(2018年8月7日に作成され、41,000バイトのサイズを有する)、Table20.txtという名称のテキストファイル(2018年8月7日に作成され、14,000バイトのサイズを有する)、Table21.txtという名称のテキストファイル(2018年8月7日に作成され、6,000バイトのサイズを有する)、Table22.txtという名称のテキストファイル(2018年8月7日に作成され、19,000バイトのサイズを有する)、Table23.txtという名称のテキストファイル(2018年8月7日に作成され、6,000バイトのサイズを有する)、Table24.txtという名称のテキストファイル(2018年8月7日に作成され、42,000バイトのサイズを有する)、Table25.txtという名称のテキストファイル(2018年8月7日に作成され、25,000バイトのサイズを有する)、Table26.txtという名称のテキストファイル(2018年8月7日に作成され、14,000バイトのサイズを有する)、Table27.txtという名称のテキストファイル(2018年8月7日に作成され、5,000バイトのサイズを有する)、Table28.txtという名称のテキストファイル(2018年8月7日に作成され、10,000バイトのサイズを有する)、Table29.txtという名称のテキストファイル(2018年8月7日に作成され、9,000バイトのサイズを有する)、Table30.txtという名称のテキストファイル(2018年8月7日に作成され、3,000バイトのサイズを有する)、Table31.txtという名称のテキストファイル(2018年8月7日に作成され、2,000バイトのサイズを有する)、Table32.txtという名称のテキストファイル(2018年8月7日に作成され、9,000バイトのサイズを有する)、Table33.txtという名称のテキストファイル(2018年8月7日に作成され、3,000バイトのサイズを有する)、Table34.txtという名称のテキストファイル(2018年8月7日に作成され、22,000バイトのサイズを有する)、Table35.txtという名称のテキストファイル(2018年8月7日に作成され、1,536,000バイトのサイズを有する)、Table36.txtという名称のテキストファイル(2018年8月7日に作成され、1,591,000バイトのサイズを有する)、Table37.txtという名称のテキストファイル(2018年8月7日に作成され、13,000バイトのサイズを有する)、Table38.txtという名称のテキストファイル(2018年8月7日に作成され、5,000バイトのサイズを有する)、Table39.txtという名称のテキストファイル(2018年8月7日に作成され、30,000バイトのサイズを有する)、Table40.txtという名称のテキストファイル(2018年8月7日に作成され、9,000バイトのサイズを有する)、Table41.txtという名称のテキストファイル(2018年8月7日に作成され、4,000バイトのサイズを有する)、Table42.txtという名称のテキストファイル(2018年8月7日に作成され、8,000バイトのサイズを有する)、Table43.txtという名称のテキストファイル(2018年8月7日に作成され、25,000バイトのサイズを有する)、Table44.txtという名称のテキストファイル(2018年8月7日に作成され、11,000バイトのサイズを有する)、Table45.txtという名称のテキストファイル(2018年8月7日に作成され、11,000バイトのサイズを有する)、Table46.txtという名称のテキストファイル(2018年8月7日に作成され、18,000バイトのサイズを有する)、Table47.txtという名称のテキストファイル(2018年8月7日に作成され、18,000バイトのサイズを有する)、Table48.txtという名称のテキストファイル(2018年8月7日に作成され、8,000バイトのサイズを有する)、Table49.txtという名称のテキストファイル(2018年8月7日に作成され、167,000バイトのサイズを有する)、Table50.txtという名称のテキストファイル(2018年8月7日に作成され、312,000バイトのサイズを有する)、Table51.txtという名称のテキストファイル(2018年8月7日に作成され、20,000バイトのサイズを有する)、Table52.txtという名称のテキストファイル(2018年8月7日に作成され、1,000バイトのサイズを有する)、Table53.txtという名称のテキストファイル(2018年8月7日に作成され、3,000バイトのサイズを有する)、Table54.txtという名称のテキストファイル(2018年8月7日に作成され、3,000バイトのサイズを有する)、Table55.txtという名称のテキストファイル(2018年8月7日に作成され、8,000バイトのサイズを有する)、Table56.txtという名称のテキストファイル(2018年8月7日に作成され、1,000バイトのサイズを有する)、Table57.txtという名称のテキストファイル(2018年8月7日に作成され、14,000バイトのサイズを有する)、Table58.txtという名称のテキストファイル(2018年8月7日に作成され、3,000バイトのサイズを有する)、及び、Table59.txtという名称のテキストファイル(2018年8月7日に作成され、309,000バイトのサイズを有する)、が挙げられる。
【背景技術】
【0004】
1.技術分野
本明細書では、がんを有する対象(例えば、ヒト)を検出及び/または治療するための方法及び物質を提供する。いくつかの実施形態では、2クラス以上のバイオマーカーの2つ以上のメンバーの存在を検出する、対象ががん(例えば、限局性がん)を有することを同定するための方法及び物質を提供する。いくつかの実施形態では、少なくとも1クラスのバイオマーカーの2つ以上のメンバーの存在及び異数性の存在を検出する、対象ががん(例えば、限局性がん)を有することを同定するための方法及び物質を提供する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、対象(例えば、ヒト)のがんを検出する高い感度及び/または特異度を提供する。
【0005】
2.背景情報
アメリカ人のがんによる死亡は今年592,000人にのぼり、疾病管理センターによれば、がんは間もなくこの国における死因の第1位となる。この悲惨な状況をどのようにして回避できるであろうか?今日におけるがんの橋渡し研究の大部分は、進行疾患を有する患者の生存期間を延長することに焦点を置いている。本発明者らの研究展望はそれらとは異なり、長期的には、常に予防が治療よりも望ましいものであると考えている。この展望が重要となる例は感染症から心血管疾患の範囲まで豊富である。心血管疾患においては、この疾患の一次予防法と二次予防法の組み合わせが過去60年間において死亡率を75%低下させていることから、特に重要である。それに対し、全体的ながんの死亡率は同一期間にわたりほとんど変化していない。
【0006】
血液検査の実施によるがんのより早期の検出は二次予防の一形態と捉えることができる。単語「earlier(より早期の)」の最後の3文字が特に重要である。研究が行われている全てのがんにおける治癒の見込みは、進行疾患のものと比較して早期の限局性疾患ではるかに高い。ステージがより早期であるほど、外科手術のみで腫瘍を治療できる可能性がより高くなる。更に、治療するがんが早期ステージにある場合は、そのがんを検出する必要はない。理論的には、治療に対する効果は、治療前におけるがん細胞の総数、及びヒト細胞における変異率によって決まる。がん細胞が多いほど、がん細胞のうちの少なくとも1つが、通常の化学療法であれ、放射線療法であれ、標的化療法であれ、または、免疫療法であれ、任意の形態の治療に対する耐性を付与する変異(複数可)を含有または発生する可能性がより高くなる。臨床的には、薬物がアジュバント療法において治療力を有し得るが進行疾患を有する患者においてはそうとはならないということを多数の研究が示している。例えば、ステージIII結腸直腸癌を有する患者(自身の疾患により死亡することが想定される)のほぼ半数についてはアジュバント療法を用いて治療することができるが、ステージIV結腸直腸癌を有する患者については同一のレジメンを用いて治療することがほとんどできない。
【0007】
多くのがんにおいて、腫瘍ステージと予後の間には強い相関関係がある(Ansari D,et al.(2017)Relationship between tumour size and outcome in pancreatic ductal adenocarcinoma.Br J Surg 104(5):600-607)。肺、結腸、食道または胃のがんを有する患者(診断時に遠隔転移を有している)において、5年超生存する患者は極めて少ない(Howlader N,et al.(2016)SEER Cancer Statistics Review,1975-2013,National Cancer Institute.Bethesda,MD,http://seer.cancer.gov/csr/1975_2013/,2015年11月のSEERデータ提出に基づく、2016年4月にSEERウェブサイトに掲載)。より大きな腫瘍と比較してより小さな腫瘍の方が診断時における転移頻度がより少なく、その結果、外科手術のみで治療できる可能性がより高くなるという点で、がんのサイズもまた一般的な意味において重要である。がんが遠隔部位に転移していたとしても、より少ない負荷量の疾患部は、大きな病変と比較してはるかにより容易に管理される(Bozic I,et al.(2013)Evolutionary dynamics of cancer in response to targeted combination therapy.Elife 2:e00747)。それゆえ、結腸直腸癌に由来する微小転移を有する患者に投与されたアジュバント化学療法剤は、ほぼ50%の症例において治療力を有し得る(Semrad TJ,Fahrni AR,Gong IY,& Khatri VP(2015)Integrating Chemotherapy into the Management of Oligometastatic Colorectal Cancer:Evidence-Based Approach Using Clinical Trial Findings.Ann Surg Oncol 22 Suppl 3:S855-862;Moertel CG,et al.(1995)Fluorouracil plus levamisole as effective adjuvant therapy after resection of stage III colon carcinoma:a final report.Ann Intern Med 122(5):321-326;Andre T,et al.(2009)Improved overall survival with oxaliplatin,fluorouracil,and leucovorin as adjuvant treatment in stage II or III colon cancer in the MOSAIC trial.J Clin Oncol 27(19):3109-3116)。X線で可視化される転移性病変を有する患者へと送達された同一の化学療法剤はほとんど治療をもたらさない(Dy GK,et al.(2009)Long-term survivors of metastatic colorectal cancer treated with systemic chemotherapy alone:a North Central Cancer Treatment Group review of 3811 patients,N0144.Clin Colorectal Cancer 8(2):88-93)。
【0008】
それゆえ、より早期のがんの検出が膵臓癌を含むこれらの疾患による死亡を減少させるための1つの鍵であるということは明らかである。外科的切除の可能性の提供に加え、新たに開発されたアジュバント化学療法レジメン及び新たに出現した免疫療法レジメンが、外科的に治療可能な疾患部を超えた微小疾患部を有する患者においてより効果的であることは疑いようもなく証明されるだろう(Huang AC,et al.(2017)T-cell invigoration to tumour burden ratio associated with anti-PD-1 response. Nature 545(7652):60-65)。循環血液中のバイオマーカーは原則的に、より早期のステージでがんを検出するための最良の方法のうちの1つを提供する。歴史的に見て、がんをモニターするのに使用するバイオマーカーのタイプはタンパク質であり(Liotta LA & Petricoin EF,3rd(2003)The promise of proteomics.Clin Adv Hematol Oncol 1(8):460-462)、それらとしては、がん胎児性抗原(CEA)、糖鎖抗原19-9(CA19-9)、及びがん抗原125(CA125)が挙げられる。これらのバイオマーカーは既知の疾患を有する患者をフォローするのに有用であることが証明されているが、それらの低い感度または特異度が一因となり、そのどれもがスクリーニング用途においては承認されていない(Lennon AM & Goggins M(2010)Diagnostic and Therapeutic Response Markers.Pancreatic Cancer,(Springer New York,New York,NY),pp 675-701;Clarke-Pearson DL(2009)Clinical practice.Screening for ovarian cancer.N Engl J Med 361(2):170-177;Locker GY,et al.(2006)ASCO 2006 update of recommendations for the use of tumor markers in gastrointestinal cancer.J Clin Oncol 24(33):5313-5327)。ごく最近では、バイオマーカーとしての変異DNAについて研究が行われている。このアプローチ(「リキッドバイオプシー」と呼ばれることが多い)の基礎をなすコンセプトは、がん細胞が、正常な自己複製細胞と同様に頻繁にターンオーバーすることである。瀕死の細胞から放出されたDNAは、尿、糞便及び血漿などの体液へと漏出する場合がある(Haber DA & Velculescu VE(2014)Blood-based analyses of cancer:circulating tumor cells and circulating tumor DNA.Cancer Discov 4(6):650-661;Dawson SJ,et al.(2013)Analysis of circulating tumor DNA to monitor metastatic breast cancer.N Engl J Med 368(13):1199-1209;Bettegowda C,et al.(2014)Detection of circulating tumor DNA in early- and late-stage human malignancies.Science translational medicine 6(224):224ra224;Kinde I,et al.(2013)Evaluation of DNA from the Papanicolaou test to detect ovarian and endometrial cancers.Science translational medicine 5(167):167ra164;Wang Y,et al.(2015)Detection of somatic mutations and HPV in the saliva and plasma of patients with head and neck squamous cell carcinomas.Science translational medicine 7(293):293ra104;Wang Y,et al.(2015)Detection of tumor-derived DNA in cerebrospinal fluid of patients with primary tumors of the brain and spinal cord.Proc Natl Acad Sci U S A 112(31):9704-9709;Wang Y,et al.(2016)Diagnostic potential of tumor DNA from ovarian cyst fluid.Elife 5;Springer S,et al.(2015)A Combination of Molecular Markers and Clinical Features Improve the Classification of Pancreatic Cysts.Gastroenterology 149(6):1501-1510;Forshew T,et al.(2012)Noninvasive identification and monitoring of cancer mutations by targeted deep sequencing of plasma DNA.Science translational medicine 4(136):136ra168;Vogelstein B & Kinzler KW(1999)Digital PCR.Proc Natl Acad Sci U S A 96(16):9236-9241;Dressman D,Yan H,Traverso G,Kinzler KW,& Vogelstein B(2003)Transforming single DNA molecules into fluorescent magnetic particles for detection and enumeration of genetic variations.Proc Natl Acad Sci U S A 100(15):8817-8822)。循環血液中の変異DNAをバイオマーカーとして使用することの利点はその正確な特異度である。がん内部の全ての細胞は、それら細胞のクローン増殖に影響を及ぼすドライバー遺伝子内に体細胞変異のコアセットを有している(Vogelstein B,et al.(2013)Cancer genome landscapes.Science 339(6127):1546-1558)。それに対し、正常細胞は成熟期の間にクローン増殖せず、任意の特定の体細胞変異を有する正常細胞の画分は極めて少ない。
【0009】
循環腫瘍DNA(ctDNA)に関する研究の大多数は、スクリーニング環境におけるそれらの使用を評価することではなく、がんを有する患者のフォローに焦点を置いている。入手可能なデータは、多くのがんタイプの進行形態を有する患者の>85%においてctDNAが上昇していることを示している(Bettegowda C,et al.(2014)Detection of circulating tumor DNA in early- and late-stage human malignancies.Science translational medicine 6(224):224ra224;Wang Y,et al.(2015)Detection of somatic mutations and HPV in the saliva and plasma of patients with head and neck squamous cell carcinomas.Science translational medicine 7(293):293ra104)。しかしながら、より早期のステージのがんを有する患者のうちのかなり少ない割合は、検出可能レベルのctDNAを自身の血漿中に有している(Bettegowda C,et al.(2014)Detection of circulating tumor DNA in early- and late-stage human malignancies.Science translational medicine 6(224):224ra224;Wang Y,et al.(2015)Detection of somatic mutations and HPV in the saliva and plasma of patients with head and neck squamous cell carcinomas.Science translational medicine 7(293):293ra104)。
【0010】
限局性がんの大部分は、何ら全身療法を行うことなく外科手術のみで治療することができる(Siegel et al.,2017 CA Cancer J Clin 67:7-30)。しかしながら、一旦遠隔転移が生じてしまうと、外科的切除が治療力を有することは稀である。それゆえ、がん研究における1つの主要な目的は、がんが遠隔部位に転移する前にそれらを検出することである。がんのタイプにもよるが、成人における標準的ながんが初期腫瘍性病変から末期ステージのがんにまで進行するには20~30年間を要するものと思われる(Vogelstein et al.,2013 Science 339:1546-1558;Jones et al.,2008 Proc Natl Acad Sci U S A 105:4283-4288;及びYachida et al.,2012 Clin Cancer Res 18:6339-6347)。実際には、腫瘍性細胞が成功裏に転移性病変を拡散して生じさせるのは、この長い過程における最後の数年間においてのみであるものと思われる(Vogelstein et al.,2013 Science 339:1546-1558;Jones et al.,2008 Proc Natl Acad Sci U S A 105:4283-4288;Yachida et al.,2012 Clin Cancer Res 18:6339-6347;及びVogelstein et al.,2015 N Engl J Med 373:1895-1898)。それゆえ、転移が開始する前には、がんを検出するための幅の広い機会がある。しかしながら、一旦大きな転移性腫瘍が形成されてしまうと現行療法は有効ではなくなる(Bozic et al.,2013 Elife 2:e00747;Semrad et al.,2015 Ann Surg Oncol 22(Suppl 3):S855-862;Moertel et al.,1995 Ann Intern Med 122:321-326;Huang et al.,2017 Nature 545:60-65)。
(【0011】以降は省略されています)

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