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公開番号2025061934
公報種別公開特許公報(A)
公開日2025-04-11
出願番号2025012975,2023148669
出願日2025-01-29,2019-04-19
発明の名称生体試料を含む固化体
出願人イビデン株式会社
代理人弁理士法人朝日奈特許事務所
主分類C12N 1/04 20060101AFI20250403BHJP(生化学;ビール;酒精;ぶどう酒;酢;微生物学;酵素学;突然変異または遺伝子工学)
要約【課題】生体試料を高い細胞生存率で含む固化体、およびその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】水性溶媒と水溶性高分子またはその塩とを含有するマトリクスおよび生体試料を含み、生体試料が、固化する前の培養液中と比べて1より小さく1/3.5以上に縮小された正射影面積を有し、可視光を透過させた場合に光射出側から見て、生体試料が占める領域のマンセル表色系における明度およびマトリクスが占める領域のマンセル表色系における明度の差が3以下であり、DSC曲線の吸熱ピークが確認されないか、または吸熱ピークが確認される温度が-1.4℃を超え、1.1℃以下である固化体。
【選択図】なし
特許請求の範囲【請求項1】
水性溶媒と水溶性高分子またはその塩とを含有するマトリクスおよび生体試料を含む固化体であって、
前記生体試料が、固化する前と比べて1より小さく1/3.5以上に縮小された正射影面積を有し、
可視光を透過させた場合に光射出側から見て、前記生体試料が占める領域のマンセル表色系における明度および前記マトリクスが占める領域のマンセル表色系における明度の差が3以下であり、
前記マトリクスの、示差走査熱量計(DSC)を用いた下記(1)~(2)の測定条件によって得られる昇温過程のDSC曲線において、吸熱ピークが確認されないか、または吸熱ピークが確認される温度が-1.4℃を超え、1.1℃以下であることを特徴とする固化体。
(DSC測定条件)
(1)20℃で1分間保持後、5℃/minの降温速度で-80℃まで降温。
(2)-80℃で1分間保持後、10℃/minの昇温速度で20℃まで昇温。
続きを表示(約 1,200 文字)【請求項2】
固体凍結物である請求項1記載の固化体。
【請求項3】
前記水溶性高分子またはその塩を0.1~20w/v%以下の含有量で含む請求項1または2記載の固化体。
【請求項4】
前記(1)~(2)の測定条件によって得られる昇温過程のDSC曲線において、前記昇温過程における、吸熱ピークの吸熱量が、0J/g、または水からなる基準液の対応する吸熱量の65%以下である請求項1~3のいずれか1項に記載の固化体。
【請求項5】
前記生体試料が細胞であり、前記細胞が、哺乳動物細胞である請求項1~4のいずれか1項に記載の固化体。
【請求項6】
前記生体試料が細胞であり、前記細胞が、哺乳動物間葉系幹細胞、哺乳動物血球細胞、または哺乳動物内皮細胞である請求項5記載の固化体。
【請求項7】
融解されて生体試料投与用溶液として用いられる、請求項1~6のいずれか1項に記載の固化体。
【請求項8】
前記生体試料投与用溶液中に含有される生体試料によるHGFの産生量が、前記水溶性高分子またはその塩の代わりにDMSOを含む固化体中の生体試料が融解後に産生するHGFの産生量と比較して抑制されている、請求項7記載の固化体。
【請求項9】
前記生体試料投与用溶液中に含有される生体試料によるIL-10の産生量が、前記水溶性高分子またはその塩の代わりにDMSOを含む固化体中の生体試料が融解後に産生するIL-10の産生量と比較して増大されている、請求項7記載の固化体。
【請求項10】
生体試料を含んだ固化体を製造する方法であって、
水溶性高分子またはその塩を水性溶媒中に溶解させて
-80℃に凍結させた際、前記生体試料が、固化する前と比べて1より小さく1/3.5以上に縮小された正射影面積を有し、
-80℃に凍結させた際、可視光を透過させた場合に光射出側から見て、前記生体試料が占める領域のマンセル表色系における明度および前記生体試料が占める前記領域以外の領域のマンセル表色系における明度の差が3以下であり、
示差走査熱量計(DSC)を用いた下記(1)~(2)の測定条件によって得られる昇温過程のDSC曲線において、吸熱ピークが確認されないか、または吸熱ピークが確認される温度が-1.4℃を超え、1.1℃以下となる性質をもつように調整された高分子水溶液を準備する工程と、
前記高分子水溶液中に前記生体試料を含ませる工程と、
前記生体試料を含む前記高分子水溶液を冷却および凍結する工程とを備えることを特徴とする固化体を製造する方法。
(DSC測定条件)
(1)20℃で1分間保持後、5℃/minの降温速度で-80℃まで降温。
(2)-80℃で1分間保持後、10℃/minの昇温速度で20℃まで昇温。
(【請求項11】以降は省略されています)

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、マトリクスおよび生体試料を含む固化体または固化体を製造する方法に関する。
続きを表示(約 2,100 文字)【背景技術】
【0002】
近年の再生医療研究の飛躍的な発展に伴い、ヒトにのみならず獣医分野においても細胞治療などの再生医療が積極的に行われている。生体から採取した骨髄由来間葉系幹細胞や脂肪由来間葉系幹細胞は、採取の後に大量に増やし、上記のような再生医療や再生医療研究に用いられる。この際、余剰に増やした細胞を凍結保存し、適宜使用することが一般的である。また、このような細胞の安定供給に対する需要も高まっている。
【0003】
細胞の凍結保存メカニズムにおいて、凍結および/または解凍の過程で細胞内に氷結晶が成長すると、細胞膜や細胞内構造が損傷を受けたり、細胞のタンパク質が変性したりして細胞が致命的なダメージを受けてしまうことが知られている。したがって、細胞を凍結保存する際には、細胞内凍結を防ぐことが重要であり、通常、細胞の凍結保存には、メチルスルホキシド(DMSO)、グリセリン、プロピレングリコールなどの低分子化合物が細胞内浸透型の凍結保護試薬として、培養培地などの緩衝液に加えることにより用いられている(特許文献1)。このうち、DMSOが最もよく用いられており、細胞や細胞小器官を保護する効果は良好である。しかしながら、細胞内浸透型の凍結保存液では、細胞内に凍結保護試薬である低分子化合物が浸透するため、凍結保護試薬の細胞への影響が懸念されている(非特許文献1)。
【0004】
そこで、化学物質の代わりに、凍結保護試薬として天然の凍結保護剤を利用する試みも行われている。例えば、二糖、オリゴ糖、または高分子多糖が非浸透型の凍結保護試薬として、培養培地などの緩衝液に加えることが知られている。
【0005】
また、ハイドロゲルを形成する架橋体内に生体成分を保持させる方法も検討されている。特許文献2には、重量平均分子量が5000~400万である原料のヒアルロン酸に、水酸基と反応して架橋構造を形成する置換基を有する側鎖が導入された修飾ヒアルロン酸を原料とした生体成分用保存剤が記載されている。修飾ヒアルロン酸は、ポリビニルアルコールなどの複数の水酸基を有する化合物の水酸基と反応して修飾ヒアルロン酸を架橋した架橋物となり、この寒天状のハイドロゲル中に生体成分が包埋されることにより保存剤として使用されている。特許文献2に記載のハイドロゲルの実際の保存剤としての分子量は数百万以上であると推測される。特許文献2においては、生体成分の保存は約4℃の冷蔵で実施されており保存期間は数日程度である。
【0006】
また、特許文献3では、ポリアミノ酸のアミノ基が、カルボン酸無水物でカルボキシル化(またはアセチル化)されることによりブロックされているカルボキシル化ポリアミノ酸と有機両性剤とを含む凍結保存組成物が記載されている。さらに、特許文献4では、フルクタンが細胞保存液の有効成分として開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
特開昭63-216476号公報
国際公開第2016/076317号
特表2018-533377号公報
特開2012-235728号公報
【非特許文献】
【0008】
REJUVENATION RESEARCH Volume 18 Number 5,2015 Mary Ann Liebert, Inc.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
細胞内浸透型の凍結保護物質は、細胞の脱水を促進させることにより、細胞内に形成される氷晶の形成速度を遅らせ、氷晶形成を阻害する。特にDMSOは細胞内に浸透しやすく、したがって、哺乳動物細胞などの複雑な構造をもつ細胞の凍結保存に有効であるが、上述の非特許文献1にも記載されているように、DMSOのような化学物質は細胞毒性を有している。凍結保護物質の細胞内への浸透が進み細胞内濃度が上昇すると毒性の影響も高まると考えられる。
【0010】
さらに、DMSOは、HL-60細胞やP19CL6細胞(マウス胎生期癌(embryonal carcinoma)細胞由来)などの分化を誘導すること(PNAS March 27, 2001 98 (7) 3826-3831.およびBiochem Biophys Res Commun. 2004 Sep 24;322(3):759-65.)、また、ES細胞の分化に影響を及ぼすことが報告されている(Cryobiology. 2006 Oct;53(2):194-205.)。したがって、凍結保護試薬としてのDMSOの使用は、幹細胞における未分化性や機能性の維持が必要である場合の細胞保存には適さないことが考えられる。また、DMSOを用いて試料を長期保存する場合、取扱い管理が必要となる液体窒素中または雰囲気下での試料の保存が必要不可欠であり、再生医療や再生医療研究の普及への課題となると考えられる。
(【0011】以降は省略されています)

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