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公開番号
2025037118
公報種別
公開特許公報(A)
公開日
2025-03-17
出願番号
2023143893
出願日
2023-09-05
発明の名称
PCまくらぎの健全度評価装置及びPCまくらぎの健全度評価方法
出願人
公益財団法人鉄道総合技術研究所
代理人
個人
主分類
E01B
3/34 20060101AFI20250310BHJP(道路,鉄道または橋りょうの建設)
要約
【課題】ひび割れが発生したPCまくらぎの交換の必要性又は優先順位付けに関する判断基準を明確に示すことができるPCまくらぎの健全度評価装置を提供する。
【解決手段】PCまくらぎの健全度評価装置は、ひび割れが抽出された第2画像を作成する第1作成部11と、第2画像が二値化された第3画像を作成する第2作成部12と、第3画像に対してノイズが除去された第4画像を作成する第3作成部13と、第4画像に対して第4領域が第5領域に細線化された第5画像を作成する第4作成部14と、第5画像における第5領域に含まれる複数の第2画素の画素数に基づいて、ひび割れの長さを算出する第1算出部15と、ひび割れの長さとPCまくらぎの耐荷力との関係を示す第1データを記録する第1記録部16と、ひび割れの長さの第1算出値、及び、第1データに基づいて、PCまくらぎの健全度を評価する評価部17と、を有する。
【選択図】図3
特許請求の範囲
【請求項1】
上面を含み且つ前記上面にひび割れが発生したPCまくらぎの健全度を評価するPCまくらぎの健全度評価装置において、
前記PCまくらぎの前記上面が撮像された第1画像に対して、セマンティックセグメンテーションを実行することにより、前記ひび割れが抽出された第2画像を作成する第1作成部と、
前記第1作成部により作成された前記第2画像に対して、第1閾値による二値化処理を実行することにより、前記第2画像が二値化された第3画像を作成する第2作成部と、
前記第2作成部により作成された前記第3画像に対して、前記第1閾値以上の輝度値をそれぞれ有する複数の第1画素を含む第1領域を、前記複数の第1画素のうち互いに隣り合う複数の第1画素である複数の第2画素をそれぞれ含む複数の第2領域に分割し、分割された前記複数の第2領域のうち第2閾値以下の面積を有する第2領域である第3領域に含まれる前記複数の第2画素の各々が有する輝度値を0とするノイズ除去処理を実行することにより、ノイズが除去された第4画像を作成する第3作成部と、
前記第3作成部により作成された前記第4画像に対して、前記複数の第2領域のうち前記第2閾値を超える面積を有する第2領域である第4領域に細線化処理を実行することにより、前記第4領域が第5領域に細線化された第5画像を作成する第4作成部と、
前記第4作成部により作成された前記第5画像における前記第5領域に含まれる複数の前記第2画素の画素数に基づいて、前記ひび割れの長さを算出する第1算出部と、
前記ひび割れの長さと前記PCまくらぎの耐荷力との関係を示す第1データを記録する第1記録部と、
前記第1算出部により算出された前記ひび割れの長さの第1算出値、及び、前記第1記録部により記録された前記第1データに基づいて、前記PCまくらぎの健全度を評価する評価部と、
を有する、PCまくらぎの健全度評価装置。
続きを表示(約 3,400 文字)
【請求項2】
請求項1に記載のPCまくらぎの健全度評価装置において、
前記評価部は、前記第1算出値及び前記第1データに基づいて、前記PCまくらぎの健全度を複数の第1ランクのいずれかに分類することにより、前記PCまくらぎの健全度を評価する、PCまくらぎの健全度評価装置。
【請求項3】
請求項2に記載のPCまくらぎの健全度評価装置において、
前記第1データに基づいて、前記PCまくらぎの健全度を前記複数の第1ランクに分類するための前記ひび割れの長さについての複数の第3閾値を取得する第1取得部を有し、
前記評価部は、前記第1算出値、及び、前記第1取得部により取得された前記複数の第3閾値に基づいて、前記PCまくらぎの健全度を前記複数の第1ランクのいずれかである第2ランクに分類することにより、前記第2ランクに基づいて、前記PCまくらぎの健全度を評価する、PCまくらぎの健全度評価装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載のPCまくらぎの健全度評価装置において、
前記PCまくらぎの健全度評価装置は、前記上面である第1上面に第1レール締結装置により第1レールが締結されている前記PCまくらぎである第1PCまくらぎの健全度を評価し、
前記PCまくらぎの健全度評価装置は、更に、
前記第1PCまくらぎの前記第1上面が撮像された第6画像における前記第1レール締結装置の第1位置と、第2上面を含み且つ前記第2上面に第2レール締結装置により第2レールが締結されている第2PCまくらぎの前記第2上面が撮像された第7画像における前記第2レール締結装置の第2位置と、のずれ量を算出し、算出された前記ずれ量だけ前記第6画像をずらし、前記第6画像がずらされた前記第1画像を作成する第5作成部と、
前記第5画像における前記第5領域の第3位置に基づいて、前記第1レールの幅方向における前記ひび割れの前記第1レール締結装置からの第1距離を算出する第2算出部と、
を有し、
前記第1データは、前記ひび割れの長さと前記耐荷力と前記第1距離との関係を示し、
前記評価部は、前記第1算出値、前記第1データ、及び、前記第2算出部により算出された前記第1距離の第2算出値に基づいて、前記第1PCまくらぎの健全度を評価する、PCまくらぎの健全度評価装置。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載のPCまくらぎの健全度評価装置において、
前記PCまくらぎの健全度評価装置は、前記上面である第3上面に第3レール締結装置により第3レールが締結されている前記PCまくらぎである第3PCまくらぎの健全度を評価し、
前記PCまくらぎの健全度評価装置は、更に、
前記第3レールよりも第1高さだけ上方の第4位置から前記第3上面が撮像された前記第1画像を撮像する第1撮像部と、
平面視において互いに間隔を空けて配置された第1部分及び第2部分を含み、前記第1部分と前記第2部分との間の第1実距離が既知であり、且つ、第4レールが締結されている第4PCまくらぎが、前記第4レールよりも前記第1高さと等しい第2高さだけ上方の第5位置から撮像された第8画像を撮像する第2撮像部と、
前記第2撮像部により撮像された前記第8画像に基づいて、前記第1部分と前記第2部分との間の画素単位の距離である第1画素距離を算出し、算出された前記第1画素距離と前記第1実距離とに基づいて、前記第1画素距離と前記第1実距離との第1比率を算出する第3算出部と、
を有し、
前記第1算出部は、前記第5画像における前記第5領域に含まれる前記複数の第2画素の画素数、及び、前記第3算出部により算出された前記第1比率の第3算出値に基づいて、前記ひび割れの長さを算出する、PCまくらぎの健全度評価装置。
【請求項6】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載のPCまくらぎの健全度評価装置において、
前記PCまくらぎの健全度評価装置は、軌道に沿って配置された複数の前記PCまくらぎのうち前記上面にひび割れが発生した前記PCまくらぎである第5PCまくらぎの健全度を評価し、
前記PCまくらぎの健全度評価装置は、更に、
前記軌道上の基準位置から前記第5PCまくらぎまでの前記軌道に沿った第2距離を表す第1情報を示す第2データを記録する第2記録部と、
前記評価部により評価された前記第5PCまくらぎの健全度、及び、前記第2記録部により記録された前記第2データに基づいて、前記第5PCまくらぎを交換するか否かを判定する判定部と、
を有する、PCまくらぎの健全度評価装置。
【請求項7】
請求項3に記載のPCまくらぎの健全度評価装置において、
前記PCまくらぎを設置してからの経過年数又は累積通トン数を表す第1パラメータを示す第3データを記録する第3記録部と、
前記第1パラメータと前記耐荷力との関係を示す第4データを記録する第4記録部と、
前記第4記録部により記録された前記第4データに基づいて、前記PCまくらぎの健全度を複数の第3ランクに分類するための前記第1パラメータについての複数の第4閾値を取得する第2取得部と、
を有し、
前記評価部は、前記第1算出値及び前記複数の第3閾値に基づいて、前記PCまくらぎの健全度を前記第2ランクに分類し、且つ、前記第3記録部に記録された前記第3データ、及び、前記第2取得部により取得された前記複数の第4閾値に基づいて、前記PCまくらぎの健全度を前記複数の第3ランクのいずれかである第4ランクに分類することにより、前記第2ランク及び前記第4ランクに基づいて、前記PCまくらぎの健全度を評価する、PCまくらぎの健全度評価装置。
【請求項8】
上面を含み且つ前記上面にひび割れが発生したPCまくらぎの健全度を評価するPCまくらぎの健全度評価方法において、
(a)前記PCまくらぎの前記上面が撮像された第1画像に対して、セマンティックセグメンテーションを第1作成部により実行することにより、前記ひび割れが抽出された第2画像を前記第1作成部により作成するステップ、
(b)前記(a)ステップにて作成された前記第2画像に対して、第1閾値による二値化処理を第2作成部により実行することにより、前記第2画像が二値化された第3画像を前記第2作成部により作成するステップ、
(c)前記(b)ステップにて作成された前記第3画像に対して、前記第1閾値以上の輝度値をそれぞれ有する複数の第1画素を含む第1領域を、前記複数の第1画素のうち互いに隣り合う複数の第1画素である複数の第2画素をそれぞれ含む複数の第2領域に分割し、分割された前記複数の第2領域のうち第2閾値以下の面積を有する第2領域である第3領域に含まれる前記複数の第2画素の各々が有する輝度値を0とするノイズ除去処理を第3作成部により実行することにより、ノイズが除去された第4画像を前記第3作成部により作成するステップ、
(d)前記(c)ステップにて作成された前記第4画像に対して、前記複数の第2領域のうち前記第2閾値を超える面積を有する第2領域である第4領域に細線化処理を第4作成部により実行することにより、前記第4領域が第5領域に細線化された第5画像を前記第4作成部により作成するステップ、
(e)前記(d)ステップにて作成された前記第5画像における前記第5領域に含まれる複数の前記第2画素の画素数に基づいて、前記ひび割れの長さを第1算出部により算出するステップ、
(f)前記ひび割れの長さと前記PCまくらぎの耐荷力との関係を示す第1データを第1記録部により記録するステップ、
(g)前記(e)ステップにて算出された前記ひび割れの長さの第1算出値、及び、前記(f)ステップにて記録された前記第1データに基づいて、前記PCまくらぎの健全度を評価部により評価するステップ、
を有する、PCまくらぎの健全度評価方法。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、PCまくらぎの健全度を評価するPCまくらぎの健全度評価装置及びPCまくらぎの健全度評価方法に関するものである。
続きを表示(約 2,600 文字)
【背景技術】
【0002】
プレストレストコンクリート(PC)製のまくらぎであるPCまくらぎは、鉄道の高速化及び安全性の向上に欠かせない軌道の重要な構成要素である。PCまくらぎは木まくらぎと比較して、高い耐久性を有している。そのため、維持管理コストの削減又は軌道変位の抑制の観点等からPCまくらぎの導入が進められてきた。既設のPCまくらぎの中には、敷設から50年以上経過したPCまくらぎであっても、設計に対して十分な耐力を有しているものも存在する。
【0003】
一方で、例えば、線路を通過する各車両の重量の総和、即ち通過トン数を意味する通トンが比較的大きな線路環境では、摩耗が進行しているケースも散見され、凍害とみられる損傷により著しく耐荷力が低下しているケースも散見されている。そのため、近年ではPCまくらぎからPCまくらぎへの交換需要も増加しており、既設PCまくらぎの実態調査や交換基準に関する検討が進められている。即ち、PCまくらぎの健全度を効率良く評価することが重要となってきている。
【0004】
特開2022-12627号公報(特許文献1)には、PCまくらぎの健全度を評価するPCまくらぎの健全度評価方法において、PCまくらぎのスケーリング面積に基づいて、このPCまくらぎの健全度を評価する評価工程を含む技術が開示されている。
【0005】
特開2016-89339号公報(特許文献2)には、PCまくらぎ劣化判定システムにおいて、PCまくらぎへの加振により生じる音を取得するマイクと、マイクが取得した音に基づいて、PCまくらぎのたわみ3次モードの固有振動数を検出する固有振動数検出部と、固有振動数検出部が検出したたわみ3次モードの固有振動数が所定条件よりも低周波であると判定すると、PCまくらぎが劣化していると判定する劣化判定部と、を具備する技術が開示されている。
【0006】
特開2021-189124号公報(特許文献3)には、まくらぎ寿命推定方法において、鉄道車両及び当該鉄道車両が走行する軌道のそれぞれをモデル化するモデル化工程と、鉄道車両と軌道の動的相互作用解析によって鉄道車両走行時における軌道のまくらぎが負荷するまくらぎの曲げモーメントの時刻歴波形を計算する時刻歴波形計算工程と、任意のPCまくらぎに対して、静的詳細解析によってPCまくらぎの曲げモーメントとPC鋼材応力関係を計算する静的詳細解析工程とを有する技術が開示されている。上記特許文献3に記載の技術では、まくらぎ寿命推定方法において、時刻歴波形計算工程及び静的詳細解析工程の結果から、鉄道車両走行時のPCまくらぎのPC鋼材応力の時刻歴波形を計算するPC鋼材応力の時刻歴波形算出工程と、PC鋼材応力の時刻歴波形を用いて、将来にわたるPC鋼材の引張疲労強度を算出する引張疲労強度算出工程とを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
特開2022-12627号公報
特開2016-89339号公報
特開2021-189124号公報
【非特許文献】
【0008】
V. Badrinarayanan et al., “Segnet: A deep convolutional encoder-decoder architecture for image segmentation”, IEEE Transactions on Pattern Analysis and Machine Intelligence, Vol. 39, No. 12, pp. 2481-2495, (2017).
OpenCV, “Structural Analysis and Shape Descriptors”、[online]、[令和5年3月15日検索]、インターネット〈URL:https://docs.opencv.org/3.4/d3/dc0/group__imgproc__shape.html〉
OpenCV, “Extended Image Processing”、[online]、[令和5年3月15日検索]、インターネット〈URL:https://docs.opencv.org/4.x/df/d2d/group__ximgproc.html〉
箕浦慎太郎、外3名、「縦ひび割れの発生したPCまくらぎの健全度評価」、コンクリート工学年次論文集、2016年、第38巻、第2号、p.1585-1590
Scikit-image, “Module: registration”、[online]、[令和5年3月15日検索]、インターネット〈URL:https://scikit-image.org/docs/stable/api/skimage.registration.html#r065f4156fcfd-1〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
PCまくらぎの上面には、PCまくらぎの長手方向にひび割れが発生したものが散見されているが、これらのひび割れの発生とPCまくらぎの性能(耐荷力等)との関連は明確になっておらず、交換の必要性又は優先順位付けに関する判断基準が明確になっていなかった。また、交換の判断は各現場での目視による定性的な判断で行われており、現場若しくは検査者による基準の違い、又は、交換作用の平滑化による維持管理の合理化若しくは作業効率等の観点で、課題があった。
【0010】
本発明は、上述のような従来技術の問題点を解決すべくなされたものであって、PCまくらぎの健全度を評価するPCまくらぎの健全度評価装置において、PCまくらぎの長手方向にひび割れが発生した場合に、発生したひび割れの長さを正確に算出し、且つ、PCまくらぎの交換の必要性又は優先順位付けに関する判断基準を明確に示すことができるPCまくらぎの健全度評価装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
(【0011】以降は省略されています)
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