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公開番号2025017424
公報種別公開特許公報(A)
公開日2025-02-06
出願番号2023120440
出願日2023-07-25
発明の名称汎用性の高いCAR発現T細胞集団の作製方法
出願人国立大学法人信州大学
代理人弁理士法人平木国際特許事務所
主分類C12N 5/10 20060101AFI20250130BHJP(生化学;ビール;酒精;ぶどう酒;酢;微生物学;酵素学;突然変異または遺伝子工学)
要約【課題】改良されたCAR-T細胞の作製方法の提供。
【解決手段】本発明は、以下の工程:a)キメラ抗原受容体(chimeric antigen receptor:CAR)タンパク質をコードするポリヌクレオチドが導入された遺伝子改変T細胞を用意するステップ;及びb)前記CARの標的抗原と抗原提示細胞に結合するタンパク質とを含む融合タンパク質をパルスした抗原提示細胞と、遺伝子改変T細胞とを共培養するステップを含む、CAR発現T細胞集団の作製方法を提供する。
【選択図】なし
特許請求の範囲【請求項1】
以下の工程:
a)キメラ抗原受容体(chimeric antigen receptor:CAR)タンパク質をコードするポリヌクレオチドが導入された遺伝子改変T細胞を用意するステップ;及び
b)前記CARの標的抗原と抗原提示細胞に結合するタンパク質とを含む融合タンパク質をパルスした抗原提示細胞と、遺伝子改変T細胞とを共培養するステップ
を含む、CAR発現T細胞集団の作製方法。
続きを表示(約 620 文字)【請求項2】
ステップb)の前に、c)前記CARの標的抗原又はそれを含む融合タンパク質の存在下で遺伝子改変T細胞を培養するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップc)が、前記CARの標的抗原若しくはそれを含む融合タンパク質を固相化した容器において、及び/又は前記CARの標的抗原若しくはそれを含む融合タンパク質を含有する培養液中で、遺伝子改変T細胞を培養するステップである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ステップb)において、抗原提示細胞と遺伝子改変T細胞との共培養を、前記CARの標的抗原若しくはそれを含む融合タンパク質を固相化した容器において、及び/又は前記CARの標的抗原若しくはそれを含む融合タンパク質を含有する培養液中で行う、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
抗原提示細胞に結合するタンパク質が、抗体のFcドメインポリペプチドである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
抗原提示細胞が樹状細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
遺伝子改変T細胞と、抗原提示細胞とが同一の個体に由来する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
CARタンパク質が、HER2タンパク質、EphB4タンパク質、又はEGFRタンパク質に特異的な標的結合ドメインを含む、請求項1に記載の方法。

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、養子免疫療法の分野において有用な、キメラ抗原受容体(CAR)を発現するT細胞集団の作製方法に関する。
続きを表示(約 2,000 文字)【背景技術】
【0002】
腫瘍関連抗原を標的とするキメラ抗原受容体(chimeric antigen receptor : CAR)を発現させたT細胞(CAR-T細胞)を使用した養子免疫療法は抗腫瘍効果が強力であることが報告され、近年開発が急速に進んでいる。特にB細胞腫瘍への治療を目的としたCARの開発が進み、既に臨床応用に至っている(非特許文献1、2)。CAR-T技術の研究開発が進む中で、細胞医薬品であるCAR-T細胞の臨床応用には、クリニカルグレードでCAR-T細胞を製造する工程の重要性が認識されている。
【0003】
従来、CAR-T細胞はウイルスベクターを用いて作製されてきたが、ウイルスベクターを用いた作製方法は安全面や設備面での課題が指摘されている(非特許文献3、4)。ウイルスベクターを利用した従来のCAR療法における問題点を解決するために、非ウイルスベクターを用いた遺伝子改変技術の一つであるトランスポゾン法の利用が検討されている。しかし、トランスポゾン法は、ウイルスベクター法と比較して遺伝子導入効率が低く、臨床応用にはCAR発現細胞を選択する工程や長期の培養期間を要することが多い(非特許文献5)。また、電気穿孔法による遺伝子導入(エレクトロポレーション)に伴い細胞が傷害を受け、細胞生存率や細胞増殖率が低下するといった問題が指摘されている。
【0004】
これらの問題を解決するため、トランスポゾン法を用いたCAR-T細胞の作製工程において、CAR発現細胞の増大を目的とした種々の検討がなされている。例えば、トランスポゾンの一種であるpiggyBacを用いたCD19.CAR-T細胞の作製においては、K562等の腫瘍細胞株にCD19や共刺激因子を強制的に発現させた人工抗原提示細胞(aAPC)を別途調製し、CAR遺伝子を導入した細胞と共培養することでCAR特異的にCAR-T細胞を活性化する手法が開発されている(非特許文献6)。また、照射処理した末梢血単核球(PBMC)を抗CD3抗体や抗CD28抗体を用いて活性化した細胞(ATC法)や、さらにウイルスペプチドパルスを照射した細胞(ACE法)をフィーダー細胞として、CAR遺伝子導入細胞と共培養する方法が開発されており、効果が認められている(特許文献1、非特許文献7)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
WO2017/061615
【非特許文献】
【0006】
N. Engl. J. Med.(2017), 377, 2531-2544
N. Engl. J. Med.(2018), 378, 439-448
J Immunotherapy (2013), 36(1), 1-2
Current Opinion in Biotechnology (2018) 53:164-181
Cytotherapy (2014) 16, 1257-1269
Human Gene Therapy (2010) 21:427-437
Molecular Therapy:Methods & Clinical Development (2018) 3:131-140
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のCAR-T細胞の作製方法では、腫瘍細胞株を用いたaAPCの作製やウイルスペプチドを利用したフィーダー細胞の作製のための複雑な工程が別途発生する。また、抗CD3抗体や抗CD28抗体等を複数利用することによる費用面での課題も存在する。
【0008】
本発明者らは、これらの問題を解決するため、CAR遺伝子導入細胞を、CARに結合するタンパク質を発現する内因性細胞集団と共培養することにより、高効率にCAR-T細胞を作製する方法を開発している(国際公開第2020/085480号)。
【0009】
当該方法は、従来の遺伝子改変を伴うフィーダー細胞を利用した培養法と比較して、簡便かつ低コストで、十分量の細胞数が得られるため、実用化しやすいという利点があるが、更なる改良が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、CARと抗原提示細胞の両方に結合する融合タンパク質でパルスした抗原提示細胞と、CAR遺伝子導入細胞とを共培養することにより、CARの標的抗原に関わらず簡便な工程でCAR-T細胞を増幅できることを見出した。本発明者らはまた、当該共培養の前、及び/又は当該共培養時にCARの標的抗原でCAR遺伝子導入細胞をさらに刺激することにより、CAR-T細胞が安定して増幅することを見出し、本発明を完成するに至った。
(【0011】以降は省略されています)

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