発明の詳細な説明【技術分野】 【0001】 本発明は、建築設計、空調設計、感染制御等の技術分野に適用可能な建築物の形状最適化プログラムに関する。 続きを表示(約 3,100 文字)【背景技術】 【0002】 近年、シミュレーション技術の進歩により、建築物の設計段階において、シミュレーションを多数試行し、目的関数を最大化又は最小化するデザインを得るコンピュテーショナルデザインが用いられるようになった。このコンピュテーショナルデザインにおいて、エアロゾル感染リスクを目的関数として設定することが考えられる。エアロゾル感染は、感染者からの咳、くしゃみ、発話、呼吸等によって発生したエアロゾルを他の人が吸引することによって引き起こされる。室内におけるエアロゾル感染を抑制するためには、エアロゾルを室内から速やかに除去したり、エアロゾルが含まれていない清浄な空気を室内に供給したりすることが重要である。従って、空調装置の制気口の位置やパーティションの設置等のデザインによって室内におけるエアロゾル感染リスクは変化する。 【0003】 ここで、エアロゾル感染リスクを評価するためには、エアロゾルの挙動を把握する必要があり、気流、粒子の蒸発、粒子に働く重力や抗力等を考慮する必要がある。このような背景から、エアロゾルを粒子として取り扱うCFD(Computational Fluid Dynamics)を実行することによりエアロゾル感染リスクを評価する方法が提案されている(特許文献1,2参照)。また、エアロゾルを気体として取り扱うCFDを実行することエアロゾル感染リスクを評価する方法も提案されている(非特許文献1参照)。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0004】 特開2022-100287号公報 特開2023-233号公報 【非特許文献】 【0005】 浅沼宏亮,伊藤一秀,“病院空間を対象とした非定常不均一濃度分布と数理疫学モデルの連成解析による感染伝播予測”,日本建築学会環境系論文集,2013,78.688:481-487. M.Schuit et al.,“Airborne SARS-CoV-2 Is Rapidly Inactivated by Simulated Sunlight”,The Journal of Infectious Diseases,222(4),p.564-571. P.Dabisch et al.,“The influence of temperature,humidity, and simulated sunlight on the infectivity of SARS-CoV-2 in aerosols”,Aerosol Science and Technology,55(2),p.142-153. N.V.Doremalen et al.,“Aerosol and surface stability of SARS-CoV-2 as compared with SARS-CoV-1”,In New England Journal of Medicine(Vol.382,Issue 16,pp.1564-1567),Massachussetts Medical Society. A.C.Fears et al.,“Persistence of Severe Acute Respiratory Syndrome Coronavirus 2 in Aerosol Suspensions”,Volume 26,Number 9,Emerging Infectious Diseases,26(9). H.A.Aboubakr al.,“Stability of SARS-CoV-2 and other coronaviruses in the environment and on common touch surfaces and the influence of climatic conditions:A review”,Transboundary and Emerging Diseases,68(2),p.296-312. 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0006】 特許文献1,2に記載の方法によれば、エアロゾルの沈降、沈着、蒸発、ウイルスの不活性化等の挙動を考慮できるが、多数のエアロゾル粒子の挙動を再現する場合にはコンピュータの計算負荷が大きくなる。このため、特許文献1,2に記載の方法は、多数のシミュレーションを試行する必要があるコンピュテーショナルデザインには不向きである。これに対して、非特許文献1に記載の方法は、コンピュータの計算負荷が小さいが、エアロゾルの沈降、沈着、蒸発、ウイルスの不活性化等の挙動を考慮できない。なお、このような問題を解決するために、非特許文献1に記載の方法においてドリフトフラックスモデルを用いることが考えられるが、ドリフトフラックスモデルはウイルスの不活性化を考慮できない。このような背景から、計算負荷を大きくすることなくウイルスの不活性化を考慮してエアロゾル感染リスクを目的関数とした建築物のコンピュテーショナルデザインを実行可能な技術の提供が期待されていた。 【0007】 本発明は、上記課題を解決すべくなされたものであり、その目的は、計算負荷を大きくすることなくウイルスの不活性化を考慮してエアロゾル感染リスクを目的関数とした建築物のコンピュテーショナルデザインを実行可能な建築物の形状最適化プログラムを提供することにある。 【課題を解決するための手段】 【0008】 本発明に係る建築物の形状最適化プログラムは、形状が異なる建築物のシミュレーションモデルを複数作成するモデル作成処理と、時間経過に伴うウイルスの濃度の減衰を表す項を含むウイルス又はエアロゾルの輸送方程式を解くことによって、前記モデル作成処理において作成されたシミュレーションモデル内におけるウイルスの濃度を算出することにより、前記建築物内におけるエアロゾルの挙動をシミュレーションするシミュレーション処理と、前記シミュレーション処理の結果に基づき前記建築物内におけるエアロゾル感染リスクを算出するリスク算出処理と、前記リスク算出処理の結果に基づいて、エアロゾル感染リスクが所定条件を満足する建築物の形状を最適形状として決定する最適化処理と、をコンピュータに実行させる。 【発明の効果】 【0009】 本発明に係る建築物の形状最適化プログラムによれば、計算負荷を大きくすることなくウイルスの不活性化を考慮してエアロゾル感染リスクを目的関数とした建築物のコンピュテーショナルデザインを実行することができる。 【図面の簡単な説明】 【0010】 図1は、本発明の一実施形態である建築物の形状最適化プログラムがインストールされた形状最適化装置の構成を示すブロック図である。 図2は、本発明の一実施形態である形状最適化処理の流れを示すフローチャートである。 図3は、シミュレーションモデルの一例を示す図である。 図4は、室内空間におけるエアロゾルの挙動のシミュレーション例を示す図である。 【発明を実施するための形態】 (【0011】以降は省略されています) この特許をJ-PlatPatで参照する