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公開番号2025008671
公報種別公開特許公報(A)
公開日2025-01-20
出願番号2023111035
出願日2023-07-05
発明の名称亜鉛硫化物の粒径制御方法
出願人住友金属鉱山株式会社
代理人個人,個人,個人
主分類C22B 23/00 20060101AFI20250109BHJP(冶金;鉄または非鉄合金;合金の処理または非鉄金属の処理)
要約【課題】形成される亜鉛硫化物のろ過性を改善するとともに、ニッケル回収率の低下を抑制することができる亜鉛硫化物の粒径制御方法を提供する。
【解決手段】ニッケル酸化鉱石の湿式製錬において分離する亜鉛硫化物の粒径制御方法であって、ニッケル酸化鉱石の湿式製錬は、少なくとも、上述した浸出工程S2と、固液分離工程S4と、中和工程S5と、脱亜鉛工程S6と、ニッケル回収工程S7を有し、中和工程において、浸出液中に浸出残渣の一部を添加し、かつ中和終液のpHが3.0~3.5になるように調整するとともに、脱亜鉛工程における亜鉛硫化物の澱物の一部を種晶として繰り返し中和終液に添加することによって、亜鉛硫化物のメジアン径D50が5μm以上の粒径の澱物となるように調整し、亜鉛硫化物の粒径の調整は、亜鉛硫化物の下記式1で表されるカルシウム品位比率を計測し、カルシウム品位比率の値に応じて中和終液の亜鉛1モル当たりに対する種晶の添加量を増減させることを特徴とする。
(カルシウム品位比率)=(Ca品位/(Ni品位+Co品位+Cu品位+Fe品位)) ・・・式1
【選択図】なし
特許請求の範囲【請求項1】
ニッケル酸化鉱石の湿式製錬において分離する亜鉛硫化物の粒径制御方法であって、
前記ニッケル酸化鉱石の湿式製錬は、少なくとも、
前記ニッケル酸化鉱石のスラリーに硫酸を添加して高温高圧下で浸出して浸出スラリーとする浸出工程と、
前記浸出スラリーを多段洗浄しながら、浸出残渣を分離して、ニッケル及びコバルトとともに不純物元素を含む浸出液を得る固液分離工程と、
前記浸出液のpHを調整し、不純物元素を含む中和澱物を分離して、ニッケル及びコバルトとともに亜鉛を含む中和終液を得る中和工程と、
前記中和終液に、硫化水素ガスを添加することにより亜鉛硫化物を形成し、該亜鉛硫化物を分離して、ニッケル及びコバルトを含むニッケル回収用母液を得る脱亜鉛工程と、
前記ニッケル回収用母液に、硫化水素ガスを添加することによりニッケル及びコバルトを含む混合硫化物を形成し、該混合硫化物を分離するニッケル回収工程
を有し、
前記中和工程において、前記浸出液中に前記浸出残渣の一部を添加し、かつ前記中和終液のpHが3.0~3.5になるように調整するとともに、前記脱亜鉛工程における前記亜鉛硫化物の澱物の一部を種晶として繰り返し前記中和終液に添加することによって、前記亜鉛硫化物のメジアン径D50が5μm以上の粒径の澱物となるように調整し、
前記亜鉛硫化物の粒径の調整は、該亜鉛硫化物の下記式1で表されるカルシウム品位比率を計測し、該カルシウム品位比率の値に応じて前記中和終液の亜鉛1モル当たりに対する前記種晶の添加量を増減させることを特徴とする、亜鉛硫化物の粒径制御方法。
(カルシウム品位比率)=(Ca品位/(Ni品位+Co品位+Cu品位+Fe品位)) ・・・式1
続きを表示(約 530 文字)【請求項2】
前記亜鉛硫化物の粒径の調整における前記種晶の添加量は、前記カルシウム品位比率の値が相対的に大きくなった時に前記種晶の添加量を増加させ、前記カルシウム品位比率の値が相対的に小さくなった時に前記種晶の添加量を減少させることを特徴とする、請求項1に記載の亜鉛硫化物の粒径制御方法。
【請求項3】
前記亜鉛硫化物の前記カルシウム品位比率と、亜鉛1モル当たりの前記種晶の添加量の関係が、下記(1)乃至(3)の基準に基づくものであることを特徴とする、請求項1に記載の亜鉛硫化物の粒径制御方法。
(1)前記亜鉛硫化物のカルシウム品位比率が0.01以上、0.05未満のとき、亜鉛1モル当たりの前記種晶の添加量を5g/mol-Zn以上、50g/mol-Zn以下とする。
(2)前記亜鉛硫化物のカルシウム品位比率が0.05以上、0.1未満のとき、亜鉛1モル当たりの前記種晶の添加量を15g/mol-Zn以上、50g/mol-Zn以下とする。
(3)前記亜鉛硫化物のカルシウム品位比率が0.1以上、0.5未満のとき、亜鉛1モル当たりの前記種晶の添加量を25g/mol-Zn以上、50g/mol-Zn以下とする。

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、ニッケル酸化鉱石の湿式製錬における脱亜鉛工程での亜鉛硫化物の粒径制御方法に関する。
続きを表示(約 2,200 文字)【背景技術】
【0002】
ニッケル酸化鉱石の湿式製錬法として、硫酸を用いた高圧酸浸出(HPAL:High Pressure Acid Leaching)法がある。この方法は、乾燥及び焙焼工程等の乾式処理工程を含まず、一貫した湿式工程からなるので、エネルギー的及びコスト的に有利であるとともに、ニッケル品位を50質量%程度まで向上させたニッケルコバルト混合硫化物を得ることができるという利点を有している。
【0003】
高圧酸浸出(HPAL)法は、鉱石のスラリーに硫酸を添加し、220~280℃の温度条件で撹拌処理して、浸出スラリーを形成する浸出工程、浸出スラリーを多段洗浄して、ニッケル及びコバルトを含む浸出液と浸出残渣を得る固液分離工程、浸出液のpHを調整すると共に、不純物元素を含む中和澱物を生成した後、これをシックナーで沈降分離して中和澱物を除去するとともにニッケル及びコバルトを含む中和終液を得る中和工程、中和終液に硫化水素等の硫化剤を添加することにより亜鉛を含む混合硫化物を生成した後、これを分離除去して脱亜鉛終液を得る脱亜鉛工程、及び、脱亜鉛終液に硫化水素ガスを吹きこみ、ニッケル及びコバルトを含む硫化物と貧液を形成するニッケル回収工程、などを有する。
【0004】
脱亜鉛工程では、中和終液を硫化反応槽内に導入し、硫化水素ガスや水硫化ソーダ等の硫化剤を添加することによって中和終液中に含有される亜鉛や銅等を硫化し、その後ろ過機で固液分離して亜鉛硫化物とニッケル及びコバルトを含むニッケル回収用母液を得る。脱亜鉛工程にて生成される脱亜鉛澱物を含むスラリーには、硫化水素が含まれることから、ろ過機には、密閉型の加圧ろ過機等が使用される。ろ過機による固液分離では、ろ布の表面に脱亜鉛澱物が付着して抵抗となり、通液時間の増加に伴い流量が徐々に低下する。このため定期的に通液を停止してろ布に付着した脱亜鉛澱物を除去する必要がある。脱亜鉛澱物の粒径が小さい場合、ろ布の目詰まりが起こりやすく、通液流量が著しく低下するとともに、通液を停止して澱物を除去する頻度が増加する。したがって、安定的に操業負荷を維持する面で、粒子の粒径を大きく保つことが望ましい。
【0005】
一方、脱亜鉛工程の前段の中和工程では、脱亜鉛工程での硫化度を上昇させて亜鉛の硫化反応性を向上させ、硫化剤の添加量を低減してニッケルの共沈を防止するために、中和終液のpHを3.0~3.5(本明細書中において「~」は、下限以上、上限以下を意味するものとする。以下同じ)に調整することが望ましいことが知られている(例えば、特許文献3参照)。
【0006】
また、中和工程で添加されるpH調整剤は、石灰石などのカルシウム塩が一般的であり、溶解度を超えない範囲で液中にカルシウムがイオンとして残存し、溶解度を越えた部分は液中の硫酸イオンと結合して石膏を形成する。中和工程では、生成した石膏をシックナーで沈降分離し、中和終液を得ているが、pHが3.0~3.5の場合には、中和剤の添加量の増加に伴い、中和反応槽での未反応中和剤が増加し、微細な粒子状のものはシックナーで除去しきれず次工程に持ち込まれる。この場合、中和終液貯槽および脱亜鉛反応槽内でも石膏が生成し、脱亜鉛澱物とともにろ過機で捕集され、ろ布の目詰まりを引き起こすことが確認されていた。
【0007】
表1は、pH2.9とpH3.2の中和終液を4時間保温静置した場合の濁度成分の変化を示す表である。例えば、中和工程にてシックナーで中和澱物を沈降分離した直後のpHが2.9と3.2の2つの中和終液を、それぞれ脱亜鉛反応槽での滞留時間並みの4時間保温静置した場合には、pH3.2の場合のみ石膏生成により濁度成分が相対比6倍にまで上昇し(表1参照)、脱亜鉛ろ過機にてろ布の目詰まりが発生し、通液流量が低下していた。したがって、中和終液のpHを3.0~3.5に維持しつつ、微細石膏による脱亜鉛ろ過機での目詰まりを防止する方法が求められていた。
【0008】
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36
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【0009】
このような従来の課題に対して、例えば、特許文献1では、脱亜鉛工程での種晶添加量を制御することで、ニッケル回収用母液の亜鉛の濃度を低下させる技術が提案されている。また、特許文献2では、脱亜鉛工程の前工程である中和工程終液の濁度成分を低下させることで、脱亜鉛工程のろ布の寿命延長化を図る技術が提案されている。また、特許文献3では、中和工程終液のpHが3.0~3.5になるように調整するとともに、その中和終液の濁度が100~400NTUになるように懸濁物を残留させ、ろ過性を向上させる技術が提案されている。
【0010】
上記の特許文献1~3に示される技術により、ろ過性は向上したとされているが、その原因についての具体的な言及はなく、石膏によるろ布の目詰まりの問題についての技術的な回避は不十分であって、更なる技術開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
(【0011】以降は省略されています)

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