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公開番号2025066359
公報種別公開特許公報(A)
公開日2025-04-23
出願番号2023175898
出願日2023-10-11
発明の名称部品
出願人日本製鉄株式会社
代理人個人,個人,個人,個人,個人,個人,個人,個人
主分類C22C 38/00 20060101AFI20250416BHJP(冶金;鉄または非鉄合金;合金の処理または非鉄金属の処理)
要約【課題】真空浸炭を経て製造される部品を前提として、切削性に優れ、かつ、異常粒成長が抑制された部品を提供すること。
【解決手段】芯部が所定の化学組成を有し、質量%でのAl含有量を[Al]、N含有量を[N]としたとき、前記[Al]及び前記[N]が下記式(1)及び(2)を満たし、前記芯部でのN濃度に対する、表層部のN濃度の比が、0.50~0.95であり、圧延方向に平行な断面の、前記表面から前記深さ方向に3.1mmの位置を中心とする、半径が3.0mmの円の領域において、面積が1.0~10.0μm2のMnSの個数密度が70.0個/mm2以下であり、面積が10.0μm2を超えるMnSの個数密度が4.0個/mm2以下であり、前記芯部及び前記表層部のそれぞれにおいて、円相当径が200μm以上の旧オーステナイト粒が、総面積率で0.5%以下である、部品。
【選択図】なし
特許請求の範囲【請求項1】
表面から深さ方向に5.0mmの位置である芯部の化学組成が、質量%で、
C:0.10~0.30%、
Si:0.03~1.50%、
Mn:0.35~1.50%、
P:0.002~0.020%、
S:0.002~0.050%、
Cr:0.05~2.30%、
Al:0.020~0.060%、
N:0.011~0.030%、
Ti:0~0.007%、
Nb:0~0.100%、
Mo:0~0.40%、
O:0~0.0050%、
V:0~0.15%、
B:0~0.0050%、
Cu:0~0.40%、
Ni:0~0.30%、
Sn:0~0.100%、
Ca:0~0.0050%、
Mg:0~0.0050%、及び、
残部:Fe及び不純物、
からなり、
質量%でのAl含有量を[Al]、N含有量を[N]としたとき、前記[Al]及び前記[N]が下記式(1)及び(2)を満たし、
前記芯部でのN濃度に対する、前記表面~前記表面から深さ方向に0.1mmの位置までの範囲である表層部のN濃度の比が、0.50~0.95であり、
圧延方向に平行な断面の、前記表面から前記深さ方向に3.1mmの位置を中心とする、半径が3.0mmの円の領域において、
面積が1.0~10.0μm

のMnSの個数密度が70.0個/mm

以下であり、面積が10.0μm

を超えるMnSの個数密度が4.0個/mm

以下であり、
前記芯部及び前記表層部のそれぞれにおいて、円相当径が200μm以上の旧オーステナイト粒が、総面積率で0.5%以下である、
ことを特徴とする部品。
1.50≦[Al]/([N]-(-0.0013×[Al]/[N]+0.007))≦5.00・・・(1)
1.50≦[Al]×([N]-(-0.0013×[Al]/[N]+0.007))×10000≦10.00・・・(2)

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は部品に関する。
続きを表示(約 2,800 文字)【背景技術】
【0002】
近年、自動車、建設車両等の電動化に伴う駆動ユニットの小型化により、歯車等の機械駆動部品の更なる高強度化が求められている。
また、歯車では、歯がかみ合う際に歯に曲げ荷重がかかる。そのため、歯車の歯には曲げ疲労強度が求められる。さらに、歯車では短い周期で歯面同士が摺動する。そのため、歯面では、ピッチングの抑制が求められる。つまり、自動車や建設車両等に用いられる歯車に代表される機械部品では、曲げ疲労強度だけでなく、面疲労強度(ピッチング特性)も求められる。機械部品の面疲労強度の向上には、浸炭処理(浸炭焼入れ)を行うことが非常に有効であることが知られている。
そのため、一般的に、歯車等の機械部品は素材となる棒鋼などの鋼材を鍛造等で加工して素形材とし、素形材を必要に応じて部品形状に切削加工し、その後、浸炭処理(浸炭焼入れ)が施されることによって製造されることが多い。
【0003】
浸炭処理としては、従来多く用いられてきたガス浸炭処理に代わって、CO

排出量が削減される真空浸炭処理が用いられるようになってきている。ガス浸炭処理とは、浸炭性ガス中で対象物を浸炭温度まで加熱することにより実施される表面処理であり、真空浸炭処理とは、対象物を真空下で浸炭温度まで加熱し、次いで、浸炭性ガスを低圧で雰囲気中に導入する浸炭期と、対象物を真空雰囲気で保持して炭素を拡散させる拡散期とを1回以上設けることにより実施される表面処理である。真空浸炭処理では、炭化水素系ガスを炭素の供給源として利用し、処理中の化学反応ではCO

を発生させない。従って真空浸炭処理は、地球環境にやさしい工程で部品を製造することができる。そのため、カーボンニュートラル対応が求められる昨今において、ガス浸炭から真空浸炭への置き換えが進んでいる。
【0004】
一方で、浸炭処理では、対象物を浸炭温度まで加熱することから、鋼材において、異常粒成長が生じ、これが、疲労特性等の低下の原因となることがある。特に、真空浸炭処理では、ガス浸炭に比べて高温で処理がなされるケースが多く、より異常粒成長が生じやすい。そのため、真空浸炭でも異常粒成長の発生を抑えることが重要な課題である。
【0005】
また、近年では、地球環境問題への意識の高まりから、ガソリンエンジン車から、電気自動車(EV)などの電動車への移行が進んでいる。しかしながら、電気自動車では、エンジン音がなくなるため、ギア部品のかみ合いによる異音に、これまで以上に配慮する必要ある。異音の発生はギアの熱処理ひずみによる形状不一致が原因の一つである。そのため、浸炭部品は、所定の形状に加工され、浸炭された後、さらに、部品精度の向上を目的に仕上げ加工が行われる。この仕上げ加工は、砥石を用いた研削により行われるのが一般的であるが、近年、高強度化も両立できる切削技術であるハードターニングが着目される。ハードターニングの課題は工具が高価であることにある。そのため、工具寿命を延長して工具コストを抑えることが重要な課題である。
【0006】
浸炭時の異常粒成長の抑制、との課題に対し、特許文献1には、質量%で、C:0.05~0.25%、Si:0.05~2.0%、Mn:0.01~1.5%、S:0.005~0.2%、Cr:0.4~1.5%、N:0.0085~0.0219%、Al:0.058~0.062%、Nb:0.038~0.100%、Ti:0.008~0.012%、を含み、残部はFeおよび不可避不純物よりなる鋼からなり、鋼中のAl,Nb,Tiから選ばれる少なくとも1種の元素を含む円相当径100nm以上の全ての炭化物、窒化物および炭窒化物、それらの2種以上が付着し、もしくは複合した析出物の数が0.5×10
12
個/m

以下である、高温浸炭時の結晶粒粗大化防止特性に優れた肌焼用圧延棒鋼が開示されている。
【0007】
また、特許文献2には、浸炭処理の際にオーステナイト結晶粒の粗大化や異常成長等の発生を防止することのできる高温浸炭用鋼として、Nb:0.001~0.10%(質量%の意味、以下同じ)、Al:0.01~0.15%、N:0.01~0.03%を夫々含むと共に、Nの含有量[N]は下記(1)式を満足し、且つ下記(2)式で表される熱間加工後の固溶Al量が0.01~0.10%であることを特徴とする高温浸炭用鋼が開示されている。特許文献2では、熱間圧延後にAlを析出させず、固溶Alの状態で適正量含有させることによって、その後の熱処理時に微細なAlNやNbC,或いはNbCNとAlNの複合析出物を得ることができ、これが高温浸炭時にピンニング効果を発揮し、高温まで結晶粒の粗大化を抑制できる、と開示されている。
【0008】
しかしながら、特許文献1の技術では、多量のTiを含有する必要がある。これらの元素は、結晶粒粗大化防止に一定の効果を有するものの、含有させると、圧延時に疵が生じる原因となる、または切削性が低下するという課題があった。
また、特許文献1及び2では、いずれも真空浸炭を行った場合に結晶粒の粗大化が防止できることは示されていない。本発明者らが検討したところ、特許文献1、2では、ガス浸炭の場合には異常粒成長を抑制できるものの、より厳しい条件である真空浸炭の場合には、必ずしも十分に結晶粒の粗大化(異常粒成長)を抑制できないことが分かった。
異常粒成長が発生すると、疲労特性が低下するだけでなく、熱処理ひずみの増大により切削量が増加し切削性も低下する。
【0009】
真空浸炭時の結晶粒の粗大化に関し、例えば、特許文献3には、真空浸炭時の処理表面部等の異常粒成長を抑制可能な真空浸炭用粗形材として、最終の熱間加工を終えており、980℃以上、かつ、下記式(2)により示されるT1(℃)よりも低く、かつ、下記式(3)により示されるT2(℃)よりも低い処理温度で真空浸炭を行うことが予定された真空浸炭用粗形材であって、フェライト・パーライト組織を有し、断面における円相当径100nm以上のAlN析出物が1.5個/100μm

以下である真空浸炭用粗形材が開示されている。
【0010】
しかしながら、本発明者らの検討の結果、特許文献3では、異常粒成長の抑制が十分ではないことが分かった。具体的には、特許文献3では、鍛造時に固溶させたAlNを真空浸炭昇温時に微細に析出させており、このような場合、AlNが真空浸炭時の脱窒により溶解し、十分に異常粒成長を抑制できない場合があることが分かった。
(【0011】以降は省略されています)

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