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公開番号2025004692
公報種別公開特許公報(A)
公開日2025-01-15
出願番号2023104551
出願日2023-06-26
発明の名称水電解用電極とその製造方法
出願人地方独立行政法人山口県産業技術センター
代理人個人
主分類C25B 11/053 20210101AFI20250107BHJP(電気分解または電気泳動方法;そのための装置)
要約【課題】貴金属電極の代替となる材料・製造コストの安い非貴金属電極を採用した水電解反応に関わり、触媒活性度が高く、その高い触媒活性度を長時間に亘って維持可能な高い耐久性を備えた水電解用電極とその製造方法を提供する。
【解決手段】水電解用電極は、水の電気分解による水素等の電解製造に用いる電極であって、導電性基材の表面に、NiがSn及びFeと複合した第一析出物と、その第一析出物の表面に複合酸化物である第二析出物を直接接合して成るものである。
【選択図】図7
特許請求の範囲【請求項1】
導電性基材の表面に、NiがSn及びFeと複合した第一析出物と、その第一析出物の表面に複水酸化物である第二析出物を直接接合して成ることを特徴とする水電解用電極。
続きを表示(約 1,100 文字)【請求項2】
前記第一析出物の組成は、Ni、Sn、及びFeの合計を100at%(原子数%)としたとき、Snが0.8~77at%であり、Fe/Niの割合が0.01~4at%の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の水電解用電極。
【請求項3】
前記第二析出物の組成は、Ni、Sn、Fe及び酸素の合計を100at%(原子数%)としたとき、Snが0.1~33at%、Fe/Niの割合が9.93~49.19at%の範囲であり、酸素が5~49at%の範囲であることを特徴とする請求項2に記載の水電解用電極。
【請求項4】
前記第一析出物は、NiがSnとFeに加えてCoと複合していることを特徴とする請求項1記載の水電解用電極。
【請求項5】
前記第一析出物の組成は、Ni、Sn、Co及びFeの合計を100at%(原子数%)としたとき、Snが0.8~77at%、Coが0~23at%(0を含まず)の範囲であり、Fe/Niの割合が0.01~4at%の範囲であることを特徴とする請求項4に記載の水電解用電極。
【請求項6】
前記第二析出物の組成は、Ni、Sn、Co、Fe及び酸素の合計を100at%(原子数%)としたとき、Snが0.1~33at%、Coが0~70at%(0を含まず)の範囲であり、Fe/Niの割合が9.93~49.19at%の範囲であり、酸素が5~49at%の範囲であることを特徴とする請求項5に記載の水電解用電極。
【請求項7】
前記導電性基材は、Al、Ni、カーボン、Cu、Ti、ステンレスのいずれか1つで構成されることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の水電解用電極。
【請求項8】
前記第一析出物は、主幹となる柱状の一次アームから側枝となる柱状の二次アームが、不規則方向に成長している樹枝状構造又は柱状構造からなることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の水電解用電極。
【請求項9】
導電性基材上に前駆体として、少なくともNiCl

、SnCl

及びFeCl

を含む塩化物塩を湿式成膜法によって配置する工程と、
前記湿式成膜法によってNiが少なくともSn及びFeと複合した第一析出物を析出させる第1の成膜工程と、
前記湿式成膜法によって前記第一析出物の表面に複水酸化物である第二析出物を直接接合させる第2の成膜工程と、
を有し、前記第1及び第2の成膜工程におけるめっき浴の温度を50℃、pHを8、めっき電流密度を40~2000mA/cm

に制御することを特徴とする水電解用電極の製造方法。

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、水の電気分解による水素等の電解製造に用いる電極に関し、特に、非貴金属で高い触媒活性及び高耐久性を有した水電解用電極及びその製造法に関する。
続きを表示(約 4,700 文字)【背景技術】
【0002】
今日、化石燃料の枯渇が問題視される中、クリーンでかつ、持続可能な代替エネルギー源を探すことが急務とされている。この問題の解決策として、水素キャリア社会の実現が挙げられる。水素キャリア社会では、水電解を通してCO

(二酸化炭素)を排出しない水素を生産し、その水素をエネルギーが必要な際に、燃料電池等を用いエネルギーへと変換することができる。すなわち、水素自身が新たなエネルギー媒体となる。炭素社会から脱却できるこの水素キャリア社会を構築するため、現在、世界中で水素燃料の生産コストを削減する努力がなされている。水素生産コスト削減のため、中でも、水電解で使用される電極の性能を上げることがキーテクノロジーとされている。
【0003】
現在、水素キャリア社会実現のために国が示している水素基本戦略では、水素製造コストの単価を20円/[Nm

]以下に抑えることを目標として掲げている。水素製造コストには水電解装置の運転に関する設備費、維持費、人件費等、が考慮されているが、中でも電気代が大きく寄与するとされている。できるだけ、安価で水素を製造するためには、水の電解反応を生じさせるための電気代を如何に節約するかが問われ、本発明のような電極の高機能化が重要視される。国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)では水電解においてセル電流密度600[mA/cm

]にて1.8[V]以下の電解電圧となるようなセルの構築を目標として掲げており、この値を目標に電極開発がなされている。
【0004】
特に、水電解の性能を上げることにおけるボトルネックは、水電解装置の陰極で行われる水素発生反応及び陽極で行われるOER(Oxygen evolution reaction:酸素発生反応)である。両反応は多段階反応であり、本質的に遅い反応速度を有することが知られているが、特にOERは4つのプロトン共役電子移動が含まれているため、陽極の高効率化が求められている。これら問題点から、水電解を商用運転させるとなると、Pt(白金)、 Ru(ルテニウム)及びIr(イリジウム)ベースの酸化物などの貴金属系の電極を使用しているのが現状である。しかしながら、これらの電極はコストが高く、希少性があり、耐久性が低いなどの欠点により、大規模な使用が大幅に制限されている。
そこで、安価な触媒金属としてNi(ニッケル)やCo(コバルト)等の非貴金属が広く用いられてきた。そして、特許文献1では、「溶解性電極触媒」という名称でNiにSn(スズ)を複合させた非貴金属のNi-Sn複合膜に関する発明が開示されている。この発明では、水素発生反応(2H

+2e
-
=H

)を伴う陰極として使用した際、電解中にSnが選択的に溶解し、電解時間が増すごとにつれ、電極表面の表面積が増大し、活性が維持されるという機能を発揮することができる。
また、他にも例えば、Ni、Fe(鉄)、Coの酸化物、水酸化物、LDH(Layered Double Hydroxide:層状複水酸化物)等の構造を有した複水酸化物が挙げられる。
例えば、非特許文献1では、ナフィオンを高分子バインダーとして用い、触媒と混合した後、電極として評価する技術が開示されている。
さらに、高分子バインダーを用いず、基材と複水酸化物あるいは複水酸化物同士を直接接合させる方法としては、電析法が挙げられる。
例えば、非特許文献2~4ではNi、Sn、Feの前駆体を含んだ浴中において電流密度20[mA/cm

]で触媒を合成する技術が開示されている。また、非特許文献5では、Ni、Sn、Coの前駆体を含んだ浴中において電流密度50[mA/cm

]で触媒を合成する技術が開示されている。
更には、非特許文献6では異なる電析電位(-0.70V~0.90V vs. SCE(Saturated Calomel Electrode:飽和カロメル電極))で触媒を合成する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
特開2013-117041号公報
【非特許文献】
【0006】
Facile Synthesis of Nickel-Iron/Nanocarbon Hybrids as Advanced Electrocatalysts for Efficient Water SplittingXing Zhang, Haomin Xu, Xiaoxiao Li, Yanyan Li, Tingbin Yang, and Yongye Liang ACS Catalysis 2016, 6, 580-588.
Electrodeposition of self-supported NieFeeSn film on Ni foam: An efficient electrocatalyst for oxygen evolution reactionYihui Wu, Ying Gao, Hanwei He, Ping Zhang Electrochimica Acta 301 (2019) 39-46.
Electrodeposition of self-supported Ni-Fe-Sn film on Ni foam:An efficient electrocatalyst for oxygen evolution reactionJi-Qiong Lian, Yi-Hui Wu, Hou-An Zhang, Si-Yong Gu, Ying Chen, Ji-Dong Ma, Yan-Ling Hu Materials Letters 227(2018)124-127.
One-step electrodeposition of cauliflower-like Ni-Fe-Sn particles as a highly-efficient electrocatalyst for the hydrogen evolution reactionHua Zhang, Fajun Li, Shuai Ji, Jing Yang, Chengdu Zhang, Fei Yang, Lixu Lei International Journal of Hydrogen Energy 45 (2020) 24615-24625.
Electrodeposited Ni-Co-Sn alloy as a highly efficient electrocatalyst for water splittingYuchan Liu, Hongxia Lu, Xinli Kou International Journal of Hydrogen Energy 44 (2019) 8099-8108.
Potentiostatic electrodeposited of NieFeeSn on Ni foam served as an excellent electrocatalyst for hydrogen evolution reactionYihui Wu, Yuan Zhang, Yuxin Wang, Zhen He, Zhengjian Gu, Shuochao YouInternational Journal of Hydrogen Energy 46 (2021) 29930-26939.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示される発明では、酸素発生反応(4OH
-
=2H

O+O

+4e
-
)に伴う陽極として使用すると、前述の水素発生反応のメカニズムとは異なるため、Ni-Sn複合膜を陽極に使用しても十分な活性及び耐久性は得られないという課題があった。
また、非特許文献1に開示される技術及び関連する技術の多くは、熱分解法や水熱法を用いるため、多段階の工程を経て合成される。また、電極として使用する際、得られた粉末試料と高分子バインダーを混合し、基材に塗布させる必要があるため、触媒間あるいは触媒と基材間の導電性低下による活性低下や、物理的な触媒の剥離等により耐久性が低下するという課題が残った。
さらに、非特許文献2~6に開示される技術においても、従来の防蝕や装飾といった用途で合成する際の低い電流密度範囲内あるいは卑側の低い電析電位で合成すると、その析出物の形態は緻密で平滑であり、また、活性が機能する組成範囲の複水酸化物が形成されないという課題が残った。
本発明では、遷移金属を含んだ浴中において、高い電流密度で電析することで、高分子バインダーを使用することなくかつ、一つの工程のみで複水酸化物を析出させることができる。また、本発明の電極は、基材表面から直接接合する樹枝状あるいは柱状析出物の表面に複水酸化物が直接接合する特異な構造を有する。すなわち、表面積の大きな樹枝状あるいは柱状析出物表面の輪郭に沿って本質的に高い活性を有する複水酸化物が接合されているため、活性と表面積による相乗効果が働く水電解用電極である。
本発明はかかる従来の事情に対処してなされたものであり、貴金属電極の代替となる材料・製造コストの安い非貴金属電極を採用した水電解反応に関わり、触媒活性度が高く、その高い触媒活性度を長時間に亘って維持可能な高い耐久性を備えた水電解用電極とその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、第1の発明である水電解用電極は、導電性基材の表面に、NiがSn及びFeと複合した第一析出物と、その第一析出物の表面に複水酸化物である第二析出物を直接接合して成ることを特徴とするものである。
複水酸化物とは、少なくともFe、Ni、Snを含む酸化物又は水酸化物であり、あるいは、オキシ水酸化鉄(FeOOH)やオキシ水酸化ニッケル(NiOOH)を含み、さらにCoを含む酸化物又は水酸化物を含む場合があるものである。
【0009】
第2の発明である水電解用電極は、第1の発明において、前記第一析出物の組成は、Ni、Sn、及びFeの合計を100at%(原子数%)としたとき、Snが0.8~77at%であり、Fe/Niの割合が0.01~4at%の範囲であることを特徴とするものである。
【0010】
第3の発明である水電解用電極は、第2の発明において、前記第二析出物の組成は、Ni、Sn、Fe及び酸素の合計を100at%としたとき、Snが0.1~33at%、Fe/Niの割合が9.93~49.19at%の範囲であり、酸素が5~49at%の範囲であることを特徴とするものである。
(【0011】以降は省略されています)

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