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公開番号
2024177307
公報種別
公開特許公報(A)
公開日
2024-12-19
出願番号
2024172838,2021505005
出願日
2024-10-01,2020-03-06
発明の名称
オルガネラで機能するプロモーターの選別方法
出願人
国立大学法人神戸大学
代理人
個人
,
個人
,
個人
主分類
C12Q
1/6869 20180101AFI20241212BHJP(生化学;ビール;酒精;ぶどう酒;酢;微生物学;酵素学;突然変異または遺伝子工学)
要約
【課題】次世代シーケンサーを用いて、オルガネラで機能し、所望の活性強度を有するプロモーターを大規模に選別できる方法を提供すること、及び該選別により得られた、オルガネラで機能するプロモーターを提供すること。
【解決手段】以下の工程(1)~(5)を含む、オルガネラで機能するプロモーターの選別方法。(1)RNAシーケンシング解析により得られたシーケンス情報を準備する工程、(2)工程(1)で準備されたシーケンス情報を、オルガネラDNAの配列上にマッピングする工程、(3)工程(2)で得られたマッピング情報に基づき、各領域でのRNA発現の変化量を算定する工程、(4)工程(3)で得られた変化量があらかじめ設定した基準値の範囲内である領域を選別する工程、及び(5)該選別した領域のうち適切な領域をオルガネラで機能するプロモーターとして同定する工程。
【選択図】なし
特許請求の範囲
【請求項1】
以下の工程(1)~(5)を含む、オルガネラで機能するプロモーターの選別方法。
(1)ポリA配列を有さないmRNAを含む試料を用いてRNAシーケンシング解析により得られたシーケンス情報を準備する工程、
(2)工程(1)で準備されたシーケンス情報を、オルガネラDNAの配列上にマッピングする工程、
(3)工程(2)で得られたマッピング情報に基づき、各領域前後でのRNA発現の変化量を算定する工程、
(4)工程(3)で得られた変化量があらかじめ設定した基準値の範囲内である領域を選別する工程、及び
(5)工程(4)で選別した領域の上流領域をオルガネラで機能するプロモーターとして同定する工程
続きを表示(約 610 文字)
【請求項2】
さらに、(6)工程(5)で同定した1つ以上のプロモーターを含むコンストラクトを作製して、該プロモーターがオルガネラで機能することを検証する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記領域前後の発現の変化量がFPKMの変化量である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記オルガネラが色素体またはミトコンドリアである、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
以下の(a)、(b)又は(c)の配列を含む、オルガネラ内でプロモーター活性を有するDNA。
(a) 配列番号1~12のいずれかで示される配列
(b) (a)の配列において1若しくは複数の塩基が欠失、置換若しくは付加された配列
(c) (a)の配列と少なくとも90%の同一性を有する配列
【請求項6】
請求項5に記載の配列を含む、形質転換用ベクター。
【請求項7】
請求項6に記載の形質転換用ベクターで形質転換されたオルガネラを有する、細胞。
【請求項8】
前記オルガネラが色素体またはミトコンドリアである、請求項7に記載の細胞。
【請求項9】
前記細胞が植物細胞である、請求項8に記載の細胞。
【請求項10】
請求項9に記載の植物細胞を有する植物体。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、オルガネラで機能するプロモーターの選別方法、及び該方法により選別された新規な配列を含むプロモーターDNAに関する。
続きを表示(約 3,400 文字)
【背景技術】
【0002】
植物細胞に外来遺伝子を導入することによって、交雑育種では付加できない有用な形質を植物に付与することは、近年の急激な人口増加や気候変動など、農業事情が急変する中で食糧増産や環境改善の推進に寄与するなど、今後の農作物の改良と農業の発展に極めて意義がある。また、化石燃料の供給制限などの観点から、二酸化炭素を原料とした植物による物質生産を実現するためには、植物の遺伝子組換え技術の技術向上が不可欠である。
【0003】
植物細胞の遺伝子組換え技術の1つとして、核ではなく色素体(例:葉緑体)やミトコンドリアなどのオルガネラDNAを標的とした遺伝子組み換え技術が知られている(例えば、非特許文献1)。前記オルガネラは、細胞内に通常数十個~数千個あり(例えば、葉緑体の場合、1細胞当たり約100個存在する)、かつ各オルガネラ当たり通常数十個~数百個のゲノムが存在するため、該オルガネラに導入した遺伝子の高発現が期待される。また、細胞質では有害なタンパク質またはリボ核酸であっても、オルガネラでは各生物で特異的な切断や修飾のないまま蓄積可能であり、またサイレンシングがなく、後代でも遺伝子発現が安定する。さらには、前記オルガネラは母性遺伝または父性遺伝に限られることが多いため、外来遺伝子の拡散リスクも極めて低い。このようなオルガネラ内で安定的に、かつ効率よくタンパク質を発現させるためには、オルガネラで機能するプロモーターの選択が重要となる。
【0004】
ところで、遺伝子発現解析を、次世代シーケンサーを用いて行う、いわゆるRNAシーケンシング法(RNA-Seq法)が急速に普及している(例えば、非特許文献2)。RAN-Seq法を用いることで、コスト面でも作業面でもマイクロアレイに匹敵する効率で遺伝子発現の解析を行うことができる。また、RNA-Seq法を用いて、IncRNA(long noncoding RNA)の発現解析も行われている(例えば、非特許文献3)。しかしながら、本発明者らが知る限りにおいて、オルガネラで機能するプロモーターを、しかも所望の活性強度を有するプロモーターをRNA-Seq法を用いて選別できる方法は知られていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
Day, A. and Goldschmidt-Clermont, M., Plant Biotechnol. J., 9:540 (2011).
Mortazavi A., et al., Nat Methods. 5(7):621-628 (2008)
Di C., et al., Plant J., 80(5):848-861 (2014)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の課題は、次世代シーケンサーを用いて、オルガネラで機能し、所望の活性強度を有するプロモーターを大規模に選別できる方法を提供すること、及び該選別により得られた、オルガネラで機能するプロモーターを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、オルガネラ内において高発現では毒性のある目的タンパク質を、できるだけ安定的に大量に発現できるプロモーターを探索していた。これまで、オルガネラの遺伝子発現の検出には主として逆転写PCR法が用いられてきたため、プロモーターの強度を比較することが出来ておらず、プロモーターのスクリーニング方法は、高発現型プロモーター、または、低発現恒常発現型プロモーターといったような定性的な分類に限られていた。しかし、高発現型プロモーターでは、当該目的タンパク質は毒性を発揮してしまうため、目的タンパク質を発現する遺伝子コンストラクトを安定的に維持することができないとの課題があった。一方、低発現恒常発現型プロモーターでは、当該コンストラクトを安定的には維持できるものの、当該目的タンパク質の大量発現は期待できないとの課題があった。そこで、オルガネラDNAに存在するプロモーターの中から、上記2種類のプロモーターの中間の発現量が達成できるプロモーターを選別できれば、オルガネラ内で安定に維持され、かつ目的タンパク質が十分に発現できるプロモーターが得られるのではないかとの着想を得た。
【0008】
かかるプロモーターの選別において、本発明者らは、RNAシーケンシング法(RNA-Seq法)を用いることで、上記の条件を満たすプロモーターを網羅的にスクリーニングできるのではないかと考えた。遺伝子発現量を解析するRNA-Seq法では、通常、mRNAの中からポリA配列を有するmRNAを単離することで調製した試料を用いるが、オルガネラDNA由来のmRNAは、活性型ではポリA配列が付加されないとの知見があることから、敢えてポリA配列を有さないmRNAを含む試料を用いてRNA-Seqを行って得られたデータを用いることとした。前記データを用いて、FPKM(fragments per kilobase of exon per million reads mapped)の変化量を指標として、該変化量が、高発現プロモーターでの値と低発現プロモーターでの値の間であるものを選別することで、12個のプロモーターを同定することに成功した。しかも、これらの中には、塩基配列のORF情報からは予想できない配列も含まれていることを見出した。本発明者らは、これらの知見に基づいてさらに研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は以下の通りである。
[1] 以下の工程(1)~(5)を含む、オルガネラで機能するプロモーターの選別方法。
(1)RNAシーケンシング解析により得られたシーケンス情報を準備する工程、
(2)工程(1)で準備されたシーケンス情報を、オルガネラDNAの配列上にマッピングする工程、
(3)工程(2)で得られたマッピング情報に基づき、各領域前後でのRNA発現の変化量を算定する工程、
(4)工程(3)で得られた変化量があらかじめ設定した基準値の範囲内である領域を選別する工程、及び
(5)工程(4)で選別した領域の上流領域をオルガネラで機能するプロモーターとして同定する工程
[2] さらに、(6)工程(5)で同定した1つ以上のプロモーターを含むコンストラクトを作製して、該プロモーターがオルガネラで機能することを検証する工程を含む、[1]に記載の方法。
[3] 前記領域前後の発現の変化量がFPKMの変化量である、[1]又は[2]に記載の方法。
[4] 前記オルガネラが色素体またはミトコンドリアである、[1]~[3]のいずれかに記載の方法。
[5] 以下の(a)、(b)又は(c)の配列を含む、オルガネラ内でプロモーター活性を有するDNA。
(a) 配列番号1~12のいずれかで示される配列
(b) (a)の配列において1若しくは複数の塩基が欠失、置換若しくは付加された配列(c) (a)の配列と少なくとも90%の同一性を有する配列
[6] [5]に記載の配列を含む、形質転換用ベクター。
[7] [6]に記載の形質転換用ベクターで形質転換されたオルガネラを有する、細胞。
[8] 前記オルガネラが色素体またはミトコンドリアである、[7]に記載の細胞。
[9] 前記細胞が植物細胞である、[8]に記載の細胞。
[10] [9]に記載の植物細胞を有する植物体。
【発明の効果】
【0010】
本発明の選別方法によれば、オルガネラで機能し、所望の活性強度を有するプロモーターを大規模に選別することができる。このような選別により得られたプロモーターを用いてオルガネラを形質転換することで、目的タンパク質量を発現する細胞を作製することができる。
【図面の簡単な説明】
(【0011】以降は省略されています)
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