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公開番号2024140704
公報種別公開特許公報(A)
公開日2024-10-10
出願番号2023051999
出願日2023-03-28
発明の名称モダクリル繊維の製造方法
出願人株式会社カネカ
代理人個人,個人
主分類D01F 6/40 20060101AFI20241003BHJP(天然または人造の糸または繊維;紡績)
要約【課題】モダクリル繊維製品をリサイクルしつつモダクリル繊維を製造するモダクリル繊維の製造方法であって、モダクリル繊維製品を有機溶媒に溶解した後に、得られた溶液からノズルの閉塞の原因である不溶成分を良好に除去できるモダクリル繊維の製造方法を提供すること。
【解決手段】モダクリル繊維製品が有機溶媒に溶解した粗繊維原液を調製することと、粗繊維原液の質量に対して、0.5~10質量%の水、及び/又はカチオン系凝集剤水溶液を粗繊維原液と混合して、繊維原液中に不溶物を凝集させることと、不溶物と、繊維原液とを分離して、繊維原液を得ることと、繊維原液であるか、又は繊維原液と、モダクリル樹脂が有機溶媒に溶解したモダクリル樹脂溶液との混合液であるドープを得ることと、ドープを用いて湿式紡糸を行うことと、を含む方法において、粗繊維原液中のモダクリル樹脂の濃度を10質量%未満とする。
【選択図】なし
特許請求の範囲【請求項1】
モダクリル繊維製品が有機溶媒に溶解した粗繊維原液を調製することと、
前記粗繊維原液の質量に対して、0.5~10質量%の水、及び/又はカチオン系凝集剤水溶液を前記粗繊維原液と混合して、繊維原液中に不溶物を凝集させることと、
前記不溶物と、前記繊維原液とを分離して、前記繊維原液を得ることと、
前記繊維原液であるか、又は前記繊維原液と、モダクリル樹脂が前記有機溶媒に溶解したモダクリル樹脂溶液との混合液であるドープを得ることと、
前記ドープを用いて湿式紡糸を行うことと、を含み、
前記粗繊維原液中の前記モダクリル樹脂の濃度が10質量%未満であり、
前記有機溶媒が、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミド、及びN,N-ジメチルアセトアミドからなる群より選択される少なくとも1種である、モダクリル繊維の製造方法。
続きを表示(約 840 文字)【請求項2】
前記粗繊維原液中の前記モダクリル樹脂の濃度が、1~9質量%である、請求項1に記載のモダクリル繊維の製造方法。
【請求項3】
前記ドープが、前記繊維原液と、モダクリル樹脂が前記有機溶媒に溶解したモダクリル樹脂溶液との混合液であり、
前記モダクリル樹脂溶液の濃度が20~35質量%である、請求項1、又は2に記載のモダクリル繊維の製造方法。
【請求項4】
前記ドープが、前記繊維原液と、モダクリル樹脂が前記有機溶媒に溶解したモダクリル樹脂溶液との混合液であり、
前記ドープにおける、前記繊維原液に由来する前記モダクリル樹脂の質量M1と、前記モダクリル樹脂溶液に由来する前記モダクリル樹脂の質量M2との比M1:M2が、1:99~25:75である、請求項1、又は2に記載のモダクリル繊維の製造方法。
【請求項5】
前記不溶物の凝集が、50~70℃において行われる、請求項1、又は2に記載のモダクリル繊維の製造方法。
【請求項6】
前記不溶物と、前記繊維原液との分離が、遠心分離により行われる、請求項1、又は2に記載のモダクリル繊維の製造方法。
【請求項7】
前記遠心分離が、1000~2000Gの条件で行われる、請求項6に記載のモダクリル繊維の製造方法。
【請求項8】
前記不溶物を凝集させる際に、前記カチオン系凝集剤水溶液が使用され、
前記カチオン系凝集剤水溶液とともに、凝集助剤が、前記粗繊維原液と混合される、請求項1、又は2に記載のモダクリル繊維の製造方法。
【請求項9】
前記凝集助剤の使用量が、前記粗繊維原液の質量に対して、0.1~0.5質量%である、請求項8に記載のモダクリル繊維の製造方法。
【請求項10】
前記凝集助剤が、アルカリ金属ハロゲン化物である、請求項8に記載のモダクリル繊維の製造方法。

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、モダクリル繊維の製造方法に関する。
続きを表示(約 3,200 文字)【背景技術】
【0002】
アクリル系繊維として知られるモダクリル繊維は、その独特の風合いや優れた発色性、染色堅牢度等の特徴を有することから、衣料、建築、及び産業資材用モダクリル繊維等の種々の用途に用いられている。石油製品であるモダクリル繊維について、人間活動の持続可能性の点で、そのリサイクルについて強い要求がある。アクリル系繊維をリサイクルする方法としては、粉砕されたアクリル系繊維を溶媒に溶解させた後、得られたアクリル系樹脂の溶液を用いて湿式紡糸する方法が提案されている(特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
特開2022-112114
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載される方法でモダクリル繊維製品をリサイクルする場合は、モダクリル繊維製品の種類や、モダクリル繊維製品を構成する樹脂組成物の組成によっては、湿式紡糸を行う際に、ドープ(樹脂溶液)を吐出するノズルでの閉塞が頻発し、良好に紡糸を行えない場合がある。
そこで、本発明者らがノズルの閉塞の原因について検討したところ、本発明者らは、ノズルの閉塞の原因が、ドープに含まれるリサイクルされるモダクリル繊維製品に由来する不溶成分であることを見出した。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、モダクリル繊維製品をリサイクルしつつモダクリル繊維を製造するモダクリル繊維の製造方法であって、モダクリル繊維製品を有機溶媒に溶解した後に、得られた溶液からノズルの閉塞の原因である不溶成分を良好に除去できるモダクリル繊維の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、モダクリル繊維製品が有機溶媒に溶解した粗繊維原液を調製することと、粗繊維原液の質量に対して、0.5~10質量%の水、及び/又はカチオン系凝集剤水溶液を粗繊維原液と混合して、繊維原液中に不溶物を凝集させることと、不溶物と、繊維原液とを分離して、繊維原液を得ることと、繊維原液であるか、又は繊維原液と、モダクリル樹脂が有機溶媒に溶解したモダクリル樹脂溶液との混合液であるドープを得ることと、ドープを用いて湿式紡糸を行うことと、を含む方法において、粗繊維原液中のモダクリル樹脂の濃度が10質量%未満であることにより、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
より具体的には、本発明は、以下の(1)~(10)を提供する。
(1)モダクリル繊維製品が有機溶媒に溶解した粗繊維原液を調製することと、
粗繊維原液の質量に対して、0.5~10質量%の水、及び/又はカチオン系凝集剤水溶液を粗繊維原液と混合して、繊維原液中に不溶物を凝集させることと、
不溶物と、繊維原液とを分離して、繊維原液を得ることと、
繊維原液であるか、又は繊維原液と、モダクリル樹脂が有機溶媒に溶解したモダクリル樹脂溶液との混合液であるドープを得ることと、
ドープを用いて湿式紡糸を行うことと、を含み、
粗繊維原液中のモダクリル樹脂の濃度が10質量%未満であり、
有機溶媒が、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミド、及びN,N-ジメチルアセトアミドからなる群より選択される少なくとも1種である、モダクリル繊維の製造方法。
(2)粗繊維原液中のモダクリル樹脂の濃度が、1~9質量%である、(1)に記載のモダクリル繊維の製造方法。
(3)ドープが、繊維原液と、モダクリル樹脂が有機溶媒に溶解したモダクリル樹脂溶液との混合液であり、
モダクリル樹脂溶液の濃度が20~35質量%である、(1)、又は(2)に記載のモダクリル繊維の製造方法。
(4)ドープが、繊維原液と、モダクリル樹脂が有機溶媒に溶解したモダクリル樹脂溶液との混合液であり、
ドープにおける、繊維原液に由来するモダクリル樹脂の質量M1と、モダクリル樹脂溶液に由来するモダクリル樹脂の質量M2との比M1:M2が、1:99~25:75である、(1)~(3)のいずれか1つに記載のモダクリル繊維の製造方法。
(5)不溶物の凝集が、50~70℃において行われる、(1)~(4)のいずれか1つに記載のモダクリル繊維の製造方法。
(6)不溶物と、繊維原液との分離が、遠心分離により行われる、(1)~(5)のいずれか1つに記載のモダクリル繊維の製造方法。
(7)遠心分離が、1000~2000Gの条件で行われる、(6)に記載のモダクリル繊維の製造方法。
(8)不溶物を凝集させる際に、カチオン系凝集剤水溶液が使用され、
カチオン系凝集剤水溶液とともに、凝集助剤が、粗繊維原液と混合される、(1)~(7)のいずれか1つに記載のモダクリル繊維の製造方法。
(9)凝集助剤の使用量が、粗繊維原液100質量%に対して、0.1~0.5質量%である、(8)に記載のモダクリル繊維の製造方法。
(10)凝集助剤が、アルカリ金属ハロゲン化物である、(8)に記載のモダクリル繊維の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、モダクリル繊維製品をリサイクルしつつモダクリル繊維を製造するモダクリル繊維の製造方法であって、モダクリル繊維製品を有機溶媒に溶解した後に、得られた溶液からノズルの閉塞の原因である不溶成分を良好に除去できるモダクリル繊維の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
≪モダクリル繊維の製造方法≫
モダクリル繊維の製造方法は、
モダクリル繊維製品が有機溶媒に溶解した粗繊維原液を調製することと、
粗繊維原液の質量に対して、0.5~10質量%の水、及び/又はカチオン系凝集剤水溶液を粗繊維原液と混合して、繊維原液中に不溶物を凝集させることと、
不溶物と、繊維原液とを分離して、繊維原液を得ることと、
繊維原液であるか、又は繊維原液と、モダクリル樹脂が有機溶媒に溶解したモダクリル樹脂溶液との混合液であるドープを得ることと、
ドープを用いて湿式紡糸を行うことと、を含む。
粗繊維原液中のモダクリル樹脂の濃度は、10質量%未満であり、
有機溶媒は、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミド、及びN,N-ジメチルアセトアミドからなる群より選択される少なくとも1種である。
上記の製造方法によれば、モダクリル繊維製品の種類や、モダクリル繊維製品を構成する樹脂組成物の組成によらず、良好に湿式紡糸を行うことができる。
【0010】
本出願の明細書において、モダクリル繊維製品が有機溶媒に溶解した粗繊維原液を調製することを、「粗繊維原液調製工程」とも記す。
粗繊維原液の質量に対して、0.5~10質量%の水、及び/又はカチオン系凝集剤水溶液を粗繊維原液と混合して、繊維原液中に不溶物を凝集させることを、「凝集工程」とも記す。
不溶物と、繊維原液とを分離して、繊維原液を得ることを、「繊維原液取得工程」とも記す。
繊維原液であるか、又は繊維原液と、モダクリル樹脂が有機溶媒に溶解したモダクリル樹脂溶液との混合液であるドープを得ることを、「ドープ取得工程」とも記す。
ドープを用いて湿式紡糸を行うことを、「紡糸工程」とも記す。
(【0011】以降は省略されています)

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