発明の詳細な説明【技術分野】 【0001】 本発明は、電気刺激によって筋収縮が誘発されることを利用した指骨等の運動支援装置に関する。 続きを表示(約 3,600 文字)【背景技術】 【0002】 従来、四肢等に麻痺が生じた場合、四肢等の筋に電気刺激を与えて目的とする筋の筋収縮を誘発することで、失われた運動を再建、回復(リハビリテーション)させ得ることが知られている。また、四肢の運動を支援し、またトレーニングする目的で電気刺激を運動学習に適用できることが知られている。 【0003】 近年では、電気刺激により誘発される筋収縮を利用した指骨のリハビリテーションや運動をアシストする運動支援に関する研究が進んでいる(例えば非特許文献1~8)。電気刺激の方法としては双極法や単極法が知られており、いずれの方法も一対の陽極電極と陰極電極とが用いられている。例えば単極法は、図1に示すように、陰極電極を関電極として筋のモータポイントに対応する皮膚面に配置し、陽極電極を不関電極として筋の一端である腱の部位に対向する皮膚面に配置する。そして、筋収縮の誘発は、陽極電極と陰極電極との間にパルス状の電気刺激を加えることで行われる。なお、モータポイントとは、図1に例示する運動神経の末梢が筋肉に進入する部位点のうち、経皮的な電気刺激に対して最も鋭敏に収縮する部位をいい、概ね筋腹部位と対応している。 【0004】 電気刺激による筋収縮に関する研究のうち、例えば非特許文献1には、前腕の手首と肘の中間辺りで、かつ長手方向に隣接する2箇所(一方部位は浅指屈筋の筋腹辺り、他方部位はその近傍)にそれぞれ小形の電極を環状に配列し、隣接する両電極間で単極法による電気刺激を行うことで対応する手指の独立した屈曲を一部達成した実験結果が記載されている。より詳細には、陽極側及び陰極側の電極は、それぞれ腕の周囲に14個を環状に巻き付けた形で配列され、選択的に刺激電流を供給して刺激部位の変化を確認可能にしたものである。 【0005】 非特許文献2には、中手骨のそれぞれに沿って手背側に長尺の陰極電極を配置し、手首に配置した共通の陽極電極との間で、非対称な双極パルス(デューティが50%でないパルス)による電気刺激を行うことで背側骨間筋を刺激して中手指節間関節(MP関節)での選択的な屈曲を達成する実験成果が記載されている。非特許文献3には、対象となる筋の筋電圧を計測し、計測電圧に比例したレベルの刺激電流を対象の筋に単極法で入力する電気刺激装置を用いて電気刺激を行うことで、手指屈曲等のリハビリ成果を示す結果が記載されている。非特許文献4には、母指から小指までの各背側骨間筋に対応する5個の小形の電極片がシート体上に微小ピッチで一体的に配列されたアレイ状電極体を手背側及び手首に配置して、骨間筋への刺激による手指の屈曲を一律に行うようにした、握りのトレーニング装置が記載されている。 【0006】 非特許文献5,6には、示指の外転に寄与する第1背側骨間筋の単極法による電気刺激を示す研究内容が記載されている。より詳細には、人差し指で机を下側から押し上げ、その際に膨らんだ位置を筋肉の位置と定義し、そこに陰極電極を貼りつけることが記載されている。 【0007】 非特許文献7,8には、深部筋の選択的電気刺激の方法が記載されている。非特許文献7では、2系統の中周波数帯を深部で干渉させて100Hz程度の差分周波数の刺激信号を生成する方法が提案され、非特許文献8では、環状に配置した複数の電極から短いパルス刺激を高速で切り替えて出力することで皮膚表面に近い神経は興奮させず、所望の刺激点に刺激を与え続けて深部の局所的な刺激を行う方法が提案されている。 【先行技術文献】 【非特許文献】 【0008】 E. Tamaki et al., “PossessedHand: techniques for controlling human hands using electrical muscles stimuli,” CHI '11: Proceedings of the SIGCHI Conference on Human Factors in Computing Systems, pp. 543-552, 2011. A. Takahashi, H. Kajimoto et al., “Increasing Electrical Muscle Stimulation's Dexterity by means of Back of the Hand Actuation,” CHI '21: Proceedings of the 2021 CHI Conference on Human Factors in Computing Systems, Article No. 216, pp. 1-12, 2021. R. Suzuki et al., “Integrated volitional control electrical stimulation for the paretic hand: a case report,” Journal of Physical Therapy Science, vol. 31, no. 10, pp.844-849, 2019. A. Crema et al., “AWearable Multi-Site System for NMES-Based Hand Function Restoration,” IEEE Transactions on Neural Systems and Rehabilitation Engineering, vol. 26, no. 2, pp.428-440, 2018. 宇戸和樹,梶本裕之ら,「手部筋肉への機能的電気刺激による指先に対する触覚刺激」,第16回日本バーチャルリアリティ学会大会論文集(2011年 9月). 宇戸和樹,梶本裕之ら,「手部への電気刺激を用いたタッチインタフェースのための触力覚提示方法の検討」,情報処理学会シンポジウム論文集,vol. 2012,no.3. 粟野祐介,高橋隆行,「干渉電流を用いた機能的電気刺激による手指動作筋の選択的刺激法の開発―5指の選択刺激と発生力の検討-」,ロボティクス・メカトロニクス講演会講演概要集,2A2-B12,2013. 高橋哲史,梶本裕之,「経皮的神経電気刺激における複数電極対の高速スイッチングによる選択的深部刺激手法の提案」,第24回日本バーチャルリアリティ学会大会論文集(2019年9月) 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0009】 非特許文献1には、各筋を独立に刺激するために構造が複雑で、かつ電極サイズが小さいことからそれぞれの電極の配置位置の調整(キャリブレーション)が容易でないという課題がある。従って選択的に手指屈曲を実現するのは難しく、例えば示指の選択的屈曲は実現しがたいものとなっている。また、手指の屈曲以外の運動を実現する構成は記載されていない。 【0010】 非特許文献2では、背側骨間筋のすぐ表面に重なり合うように掌側骨間筋が配置されるため、背側骨間筋側のみをピンポイント的に電気刺激させるための電極形状の設計、また電極の配置位置の調整は容易でない。非特許文献3には、リハビリ対象の骨間筋に対して一対の電極を配置して各筋を独立に刺激する装置構成が記載されているに過ぎない。非特許文献4には、各骨間筋に対応する電極がシート上にアレイ状に配列された装置が記載されているものの、各骨間筋を独立に屈曲するようにしたものではない。非特許文献5,6は、皮膚表面近くの筋を対象とした刺激に関するもので、陰極の位置が筋駆動に特に寄与すると考えて陽極電極の位置を固定し、専ら陰極側の位置を調整するものである。また、近くに他の掌側骨間筋のない、第1背側骨間筋に対する電気刺激に関するものであり、刺激を選択的に切り替えたり、個別に刺激を行ったりする必要のないものである。さらに、掌側骨間筋を刺激する内転については記載されていない。非特許文献7,8は、刺激装置及び刺激電流を発生させる回路構成が複雑かつ大掛かりである。 (【0011】以降は省略されています) この特許をJ-PlatPatで参照する