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公開番号2024095633
公報種別公開特許公報(A)
公開日2024-07-10
出願番号2023222959
出願日2023-12-28
発明の名称高分子ゲル及びその製造方法、当該高分子ゲルを含むゲル材料
出願人国立大学法人 東京大学,国立大学法人お茶の水女子大学
代理人個人,個人,個人,個人,個人,個人,個人,個人,個人,個人,個人,個人
主分類C08F 265/10 20060101AFI20240703BHJP(有機高分子化合物;その製造または化学的加工;それに基づく組成物)
要約【解決課題】
体表面に強固に貼り付けることが可能であり、必要な際には皮膚に負担をかけることなく容易に脱離することができるゲル材料を提供すること。
【解決手段】
バルク領域と表面領域を有する高分子ゲルであって、前記バルク領域はベースゲルにより構成されており、表面領域において、前記ベースゲルの少なくとも一部にグラフトポリマー鎖が導入されており、表面領域はバルク領域とは異なる化学構造を有する、該高分子ゲル。
【選択図】図1
特許請求の範囲【請求項1】
バルク領域と表面領域を有する高分子ゲルであって、
前記バルク領域はベースゲルにより構成されており、
表面領域において、前記ベースゲルの少なくとも一部にグラフトポリマー鎖が導入されており、
表面領域はバルク領域とは異なる化学構造を有する、該高分子ゲル。
続きを表示(約 990 文字)【請求項2】
前記ベースゲルの少なくとも一部は、アミノ基を含有する親水性モノマーのホモポリマー、及び、親水性モノマーとアミノ基を含有する親水性モノマーのコポリマー(共重合体)からなる群から選択される少なくとも1つの親水性ポリマーであり、ここで、親水性モノマーのホモポリマー、親水性モノマーとアミノ基を含有する親水性モノマーのコポリマーは、架橋剤モノマーをコモノマーとして含有してもよい、請求項1に記載の高分子ゲル。
【請求項3】
前記アミノ基を含有する親水性モノマーが、N-(3-アミノプロピル)メタクリルアミドである、請求項2に記載の高分子ゲル。
【請求項4】
前記ベースゲルが、前記親水性ポリマーが架橋されることにより3次元網目構造を形成した構造を有するハイドロゲルである、請求項1に記載の高分子ゲル。
【請求項5】
表面領域は温度を変化させることによって少なくとも疎水性度を含む物理特性を変化させ、バルク領域は温度の変化による疎水性度を含む物理特性の変化が表面領域よりも小さいことを特徴とする、請求項1に記載の高分子ゲル。
【請求項6】
体温付近では表面領域が高い接着性を示し、体温から十分に離れた低温領域では表面領域の接着性が下がることを特徴とする、請求項5に記載の高分子ゲル。
【請求項7】
表面領域は、ゲルの表面から内部に向かって200μm以下の距離の範囲にある、請求項1に記載の高分子ゲル。
【請求項8】
表面領域は、ゲルの表面から内部に向かって100μm以下の距離の範囲にある、請求項7に記載の高分子ゲル。
【請求項9】
前記グラフトポリマーは、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、N-イソプロピルアクリルアミドと他のコモノマーとの共重合体からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1に記載の高分子ゲル。
【請求項10】
バルク領域を構成するベースゲルに、原子移動ラジカル重合開始剤を導入し、その後溶液中で表面開始重合を行い、表面領域のみにおいて、バルク領域を構成するベースゲルの少なくとも一部にグラフトポリマー鎖を導入する工程を含む、請求項1に記載の高分子ゲルの製造方法。
(【請求項11】以降は省略されています)

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な高分子ゲルに関するものである。
続きを表示(約 3,700 文字)【背景技術】
【0002】
ハイドロゲルは、三次元網目構造の高分子と水から構成される材料であり、それ自体は水と非常に高い親和性を有するがそれ自体は水には不溶である。そのため、高分子の三次元的な構造を保持しながらも自重の数百倍にも及ぶ大量の水を保持するなど、大きな特徴を有している。含水性や柔軟性は生体が持つ機能の大きな因子でもあり、科学的、工学的な研究対象として大きな意義を有している。工学的な応用では、止血材料やウエアラブルデバイスなど、生体と医療機器を媒介する役割が格別な注目をされ、その主要な一方向として接着性ゲルの分子設計にかかわる研究・開発が近年盛んに行われている。
【0003】
医療技術の進展により社会は高齢化しているがその副次的な一側面としては、長期にわたる慢性病の治療が増加している。慢性病の治療現場では褥瘡を伴うことも多く、創傷被覆材、ドレッシング材、止血材などを長期にわたり同じ場所に貼り続けることが必要とされる。この時、これらの材料は皮膚に強力に接着される必要があるが、反面貼り直す際には強力な接着力がそのまま皮膚へのダメージとなってしまう。
【0004】
また、血糖値測定においては、痛みを伴う毎日の採血が患者にとっての大きな苦痛であったが、体表面に貼り付けたセンサで細胞間液を採取することによる非観血かつ連続モニタリングが可能な測定方法が開発され、一気に普及しつつある。
この例に代表されるように、ウエアラブルおよび連続モニタリングは治療から予防へ向かう医療変革の重要な流れである。
【0005】
このような環境でセンサは、同じ場所に長時間、長期間にわたり繰り返し接着させる必要があるため褥瘡や皮膚トラブルが避けられない課題である。すなわち、ウェアラブルセンサ材料には動きへの追従性およびかぶれにくさへの要求から、柔軟かつ開放系の含水材料であるハイドロゲルが好適な材料であるものの、他方、その表面は、体表面に強固に貼り付けることが可能でありながら、必要な際には皮膚に負担をかけることなく容易に脱離できるという相反した特性が要求され、これらを両立することが大きな課題となっている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
Chem. Commun., 2016,52, 11064
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、バルク領域と表面領域という2つの領域を有する新規な高分子ゲルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の論理的に相反した課題を以下の考え方で科学的に解決するに至った。すなわち、ゲルをゲル本体(ベース部分)とゲルの表面部分にわけ、それぞれを好適な材料で構成することとした。具体的には、本体はハイドロゲルを用いることによって柔軟性、高い含水率を保持したまま、表面領域に限定的に、バルク領域を構成するベースゲルの少なくとも一部にグラフトポリマー鎖を導入することにより、上記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
即ち、本発明は以下の構成を有するものである。
[1]バルク領域と表面領域を有する高分子ゲルであって、
前記バルク領域はベースゲルにより構成されており、
表面領域において、前記ベースゲルの少なくとも一部にグラフトポリマー鎖が導入されており、
表面領域はバルク領域とは異なる化学構造を有する、該高分子ゲル。
[2]前記ベースゲルの少なくとも一部は、アミノ基を含有する親水性モノマーのホモポリマー、及び、親水性モノマーとアミノ基を含有する親水性モノマーのコポリマー(共重合体)からなる群から選択される少なくとも1つの親水性ポリマーであり、ここで、親水性モノマーのホモポリマー、親水性モノマーとアミノ基を含有する親水性モノマーのコポリマーは、架橋剤モノマーをコモノマーとして含有してもよい、[1]に記載の高分子ゲル。
[3]前記アミノ基を含有する親水性モノマーが、N-(3-アミノプロピル)メタクリルアミドである、[2]に記載の高分子ゲル。
[4]前記ベースゲルが、前記親水性ポリマーが架橋されることにより3次元網目構造を形成した構造を有するハイドロゲルである、[1]~[3]のいずれか1項に記載の高分子ゲル。
[5]表面領域は温度を変化させることによって少なくとも疎水性度を含む物理特性を変化させ、バルク領域は温度の変化による疎水性度を含む物理特性の変化が表面領域よりも小さいことを特徴とする、[1]~[4]のいずれか1項に記載の高分子ゲル。
[6]体温付近では表面領域が高い接着性を示し、体温から十分に離れた低温領域では表面領域の接着性が下がることを特徴とする、[5]に記載の高分子ゲル。
[7]表面領域は、ゲルの表面から内部に向かって200μm以下の距離の範囲にある、[1]~[6]のいずれか1項に記載の高分子ゲル。
[8]表面領域は、ゲルの表面から内部に向かって100μm以下の距離の範囲にある、[7]に記載の高分子ゲル。
[9]前記グラフトポリマーは、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、N-イソプロピルアクリルアミドと他のコモノマーとの共重合体からなる群から選択される少なくとも1つである、[1]~[8]のいずれか1項に記載の高分子ゲル。
[10]バルク領域を構成するベースゲルに、原子移動ラジカル重合開始剤を導入し、その後溶液中で表面開始重合を行い、表面領域のみにおいて、バルク領域を構成するベースゲルの少なくとも一部にグラフトポリマー鎖を導入する工程を含む、[1]~[9]のいずれか1項に記載の高分子ゲルの製造方法。
[11]バルク領域を構成するベースゲルと、当該ベースゲルと反応することができる反応性基を含むグラフトポリマー鎖とを反応させて、バルク領域を構成するベースゲルの少なくとも一部にグラフトポリマー鎖を導入する工程を含む、[1]~[9]のいずれか1項に記載の高分子ゲルの製造方法。
[12]テープ状の基材の一面に、[1]~[9]のいずれか1項に記載の高分子ゲルを、その表面領域を外側にして固定し貼り付け面としたゲル材料であって、創傷被覆材、ドレッシング材又は止血材として用いられる、当該ゲル材料。
[13]テープ状の基材の一面に、[1]~[9]のいずれか1項に記載の高分子ゲルを、その表面領域を外側にして固定し貼り付け面とし、これを2個、互いの貼り付け面が向かい合う方向で組み合わせ、温度の上下によって張り付き・剥がしを制御できる面ファスナーを構成したことを特徴とする、当該ゲル材料。
[14][1]~[9]のいずれか1項に記載の高分子ゲルに、治療用薬剤、化粧品及び美容成分からなる群から選択される1以上を含有させたゲル材料。
[15][1]~[9]のいずれか1項に記載の高分子ゲルに治療用薬剤を含有させたゲル材料であって、当該ゲル材料は、体表面に貼り付けるように構成され、ゲル材料を介して薬剤を経皮的に投与するために使用される、該ゲル材料。
[16][1]~[9]のいずれか1項に記載の高分子ゲルに皮膚用化粧料を含有させたゲル材料であって、当該ゲル材料は、体表面に貼り付けるように構成され、ゲル材料を介して皮膚用化粧料を経時的に滲出させるために使用される、該ゲル材料である。
[17][1]~[9]のいずれか1項に記載の高分子ゲルに美容成分を含有させたゲル材料であって、当該ゲル材料は、体表面に貼り付けるように構成され、ゲル材料を介して美容成分を経時的に滲出させるために使用される、該ゲル材料。
[18][1]~[9]のいずれか1項に記載の高分子ゲルを含むゲル材料であって、細胞間質液を経皮的に取得して生体情報を取得する検査装置に用いられる、該ゲル材料。
[19][1]~[9]のいずれか1項に記載の高分子ゲルに導電性の高分子を含浸させたゲル材料であって、当該ゲル材料は、ゲル材料を介して体表面に電圧を印加する装置、または、ゲル材料を介して体表面の電位を測定する装置に使用される、該ゲル材料。
【発明の効果】
【0010】
本発明の高分子ゲルは、バルク領域と表面領域という2つの領域を有することで、ゲル全体としてはハイドロゲル本来の性質を保ったまま、表面の疎水性さらには接着性を温度で制御できる新たな材料を提供することができる。
また、本発明の高分子ゲルを用いることで、体表面に強固に貼り付けることが可能であり、必要な際には皮膚に負担をかけることなく容易に脱離することができるゲル材料を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
(【0011】以降は省略されています)

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