発明の詳細な説明【技術分野】 【0001】 本発明は、トリペプチドまたはその医学的に許容可能な塩である骨芽細胞の石灰化促進剤に関する。本発明は、上記石灰化促進剤を有効成分とする、骨形成促進剤または骨形成促進用食品に関する。 続きを表示(約 3,000 文字)【背景技術】 【0002】 コラーゲン成分あるいはゼラチン成分に含まれるI型コラーゲンは(Gly-X-Y)nの繰り返し構造を有する。クロストリジウム属やグリモンティア属、ストレプトマイセス属等に由来するコラゲナーゼは、この繰り返し配列中のYとGlyとの間を特異的に分解するエンドプロテアーゼとして知られる。すなわち、これらの酵素あるいはこれらと類似する活性を有する酵素をコラーゲンまたはゼラチンに作用させることによって、アミノ酸配列がGly-X-Yのトリペプチドを生成することができる。なお、上述の酵素によるコラーゲンの分解では、1種類の特定配列のGly-X-Yのみを生成することはできず、コラーゲンのアミノ酸配列中に存在する複数配列のトリペプチドの混合物となる。 【0003】 Gly-X-Yで示されるトリペプチドを含むコラーゲン加水分解物の作用効果については、例えば歯肉炎の予防・改善(特許文献1)、アトピー性皮膚炎の炎症抑制(非特許文献1)、線虫のコラーゲン産生作用ならびにライフスパンの伸長(非特許文献2)などの報告がある。これらの報告で用いられているのは、Gly-X-Y配列を有するトリペプチドを含む粗生成物である。例えば、特許文献1には、コラーゲン・トリペプチド(HACP-50)にGly-X-Y配列を有するトリペプチドが16種含まれることが記載されている。しかし、粗生成物に含有される個々のトリペプチドに関する効果については明らかになっていない点が多い。 【0004】 さらに、コラーゲン加水分解物の、骨芽細胞におけるコラーゲン産生および石灰化促進作用、ラットにおける骨折治癒の促進作用が報告されている(非特許文献3)。さらに、特許文献2は、試験例3において骨芽細胞に、Gly-X-Y配列を有するトリペプチドを10%以上含むコラーゲン加水分解物を付与して培養することによって、骨芽細胞のコラーゲン合成が促進されたことを報告している。しかし、非特許文献3および特許文献2において、コラーゲン加水分解物に含まれる個々のトリペプチド成分が有する効果については明らかではない。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0005】 特許第6857929号公報 特開2002-2558474号公報 特許第6989842号公報 【非特許文献】 【0006】 Hakuta, Amiko, et al. "Anti-inflammatory effect of collagen tripeptide in atopic dermatitis." Journal of dermatological science 88.3 (2017): 357-364. Morikiri, Yukino, Eri Matsuta, and Hideki Inoue. "The collagen-derived compound collagen tripeptide induces collagen expression and extends lifespan via a conserved p38 mitogen-activated protein kinase cascade." Biochemical and biophysical research communications 505.4 (2018): 1168-1173. Tsuruoka, Naoki, et al. "Promotion by collagen tripeptide of type I collagen gene expression in human osteoblastic cells and fracture healing of rat femur." Bioscience, biotechnology, and biochemistry 71.11 (2007): 2680-2687. Min, Geng. "Collagen hydrolysate Gly-Pro-Hyp on osteoblastic proliferation and differentiation of MC3T3-E1 cells." Journal of Clinical and Nursing Research 1.3 (2017). 渡辺 隆一ら、日腎会誌 2014;56(8):1196-1200 Kimira, Yoshifumi, et al. "Collagen-derived dipeptide prolyl-hydroxyproline promotes differentiation of MC3T3-E1 osteoblastic cells." Biochemical and biophysical research communications 453.3 (2014): 498-501. 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0007】 トリペプチドのような短鎖のペプチドでは、配列中のアミノ酸が一つ置換されただけでも元の配列とは活性が異なる可能性が高いことが知られている。すなわち、特定のトリペプチド成分がある作用効果を有していたとしても、それとは異なる配列のトリペプチド成分が同様の作用効果を有するかいなかは明らかではない。上記のとおり、Gly-X-Y配列を有するトリペプチドを含む粗生成物において報告されている石灰化促進作用や骨折治癒作用が、どのトリペプチド成分のどのような作用によるものかについては明らかでない点が非常に多い。 【0008】 長寿高齢化にともない、加齢とともに骨密度が低下し、骨折などにより生活の質(QOL)が低下することが問題となっている。骨形成を促進し骨密度の低下を予防することがQOLの点から求められている。骨芽細胞の石灰化促進作用や骨折治癒作用における、各トリペプチド成分の作用効果を研究し、石灰化促進について有用な効果を有する成分や高い効果を示す成分を、積極的に摂取することは、効率的な骨形成促進や骨密度低下の予防、ひいてはQOL向上の点から望ましい。 【0009】 よって、本発明の課題は、石灰化促進剤として用いることができるトリペプチドを提供すること、およびこれらを有効成分として含む骨形成促進剤または骨形成促進用食品を提供することである。 【課題を解決するための手段】 【0010】 本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、Gly-X-Y配列を有するトリペプチドの作用効果は一律に同じではなく、特定のトリペプチドが高い石灰化促進活性を有することを見出した。特にトリペプチドGly-Pro-Hyp、Gly-Pro-Ala、Gly-Pro-Ser、Gly-Ala-Hyp、Gly-Ala-Arg、Gly-Pro-Arg、Gly-Pro-Gln、およびGly-Pro-Lysが骨芽細胞において高い石灰化促進活性を示すことを明らかにした。このような知見に基づいて、本発明は完成された。 (【0011】以降は省略されています) この特許をJ-PlatPatで参照する