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公開番号2024003271
公報種別公開特許公報(A)
公開日2024-01-12
出願番号2023039361
出願日2023-03-14
発明の名称放射線粒子遮蔽性複合材料
出願人新日本繊維株式会社
代理人個人
主分類G21F 1/10 20060101AFI20240104BHJP(核物理;核工学)
要約【課題】放射線粒子遮蔽性に優れる複合材料を提供すること。
【解決手段】有機高分子母材と無機繊維よりなる複合材料において、無機繊維を50~90質量%のガラス形成成分と10~50質量%の中性子遮蔽成分とからなるものとし、かつ、ガラス形成成分の総質量に占めるSiO2とAl2O3の合計質量の割合は0.60以上、かつ、中性子遮蔽成分をガドリニウム、サマリウム、又はカドミウムの、単体若しくは酸化物とすることにより、線源50meVにて、中性子遮蔽率が1/2となる厚さが2mm以下の中性子遮蔽性を備える複合材料とすることができた。本複合材料は陽子遮蔽性にも優れる。
【選択図】図3
特許請求の範囲【請求項1】
中性子遮蔽性の複合材料であって、
前記複合材料は、有機高分子の母材と無機繊維とよりなり、
前記無機繊維は、50~90質量%のガラス形成成分と10~50質量%の中性子遮蔽成分とからなり、
前記ガラス形成成分の総質量に占めるSiO
2
とAl
2
O
3
の合計質量の割合は0.60以上であり、
前記中性子遮蔽成分は、ガドリニウム、サマリウム、又はカドミウムの、単体、酸化物、若しくは単体と酸化物の混合物よりなり、
前記複合材料の、線源50meVの中性子線を照射したときの半減厚さは2mm以下である、複合材料。
続きを表示(約 1,000 文字)【請求項2】
前記中性子遮蔽成分は酸化ガドリニウムであり、線源50meVの中性子線を照射したときの半減厚さは1mm以下である、請求項1に記載の複合材料。
【請求項3】
前記無機繊維中の中性子遮蔽成分の含量は40質量%以上である、請求項1に記載の複合材料。
【請求項4】
前記無機繊維のガラス形成成分の原料は、フライアッシュ、クリンカアッシュ、玄武岩、又はそれらの混合物である、請求項1に記載の複合材料。
【請求項5】
母材の前記有機高分子が硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、又はエラストマーである請求項1から4のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項6】
母材の前記有機高分子が硬化性樹脂であり、当該硬化性樹脂は、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、又はビスマレイミド樹脂である、請求項5に記載の複合材料。
【請求項7】
母材の前記有機高分子が熱可塑性樹脂であり、当該熱可塑性樹脂は、ポリプロピレン樹脂又はポリエチレン樹脂である請求項5に記載の複合材料。
【請求項8】
母材の前記有機高分子がエラストマーであり、当該エラストマーは、エチレンプロピレンゴム(EPDM),ポリオレフィン系熱可塑性ゴム, スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン ブロック共重合体(SEBS), スチレン-エチレン-プロピレン-スチレン ブロック共重合体(SEPS)のいずれかである、請求項7に記載の複合材料。
【請求項9】
有機高分子の母材と無機繊維よりなる中性子遮蔽性の複合材料であって、前記複合材料は、
前記有機高分子からなる第一の層と、
前記無機繊維(但し、前記有機高分子で含浸された態様を含む)からなる第二の層とからなり、
前記無機繊維は、10~50質量%の中性子遮蔽成分と50~90質量%のガラス形成成分とからなり、
前記中性子遮蔽成分は、ガドリニウム、サマリウム、又はカドミウムの、単体、酸化物、若しくは単体と酸化物の混合物よりなり、
前記ガラス形成成分の合計に占める、
SiO
2
とAl
2
O
3
の合計は質量比にて0.60以上であり、
CaOは質量比にて0.20以下であり、
B
2
O
3
は質量比にて0.20以下である、
複合材料。

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、複合材料に関する。さらに詳しくは、放射線粒子遮蔽性複合材料に関する。本発明の放射線粒子遮蔽性複合材料は、中性子及び陽子の遮蔽性に優れた複合材料である。
続きを表示(約 4,100 文字)【背景技術】
【0002】
近年の技術進歩に伴い、放射線遮蔽性材料の必要性が以前にも増して高まっている。
電子技術分野では、半導体の高集積化の結果、宇宙線由来の中性子が原因となる通信装置の「ソフトエラー」が増加しつつある。ソフトエラーとは、上記中性子の半導体素子への突入によりビットデーターが反転し、その結果生じる電子機器の誤作動である。宇宙線量は太陽フレアなどにより予期せぬ時期に大幅に変動するため、今後、GPS技術を用いる車両自動運転が本格化すれば、ひとたびソフトエラーが発生すると多大な人的・物的被害が生じることが懸念される。このため、中性子を効果的に遮蔽できる材料が求められている。
他方、宇宙開発の進展が近年目覚ましく、火星有人飛行も視野に入ってきている。このため、ロケットや宇宙ステーション内での長期滞在による宇宙線被爆を極力抑えるための放射線遮蔽材料が望まれている。
この他、原子炉施設や放射線医療施設にて中性子遮蔽材料の必要性が高まっている。例えば、近年注目されている粒子線捕捉療法を行う施設では、医療従事者を放射線粒子被爆から保護するための材料が求められる。
以上を背景に、中性子遮蔽性元素を材料中に取り込んだ中性子遮蔽材料の創出が試みられてきた。
例えば、特開平10-226533号公報(特許文献1)には、B
2
O
3
,La
2
O
3
及びGd
2
O
3
を必須成分とする放射線遮蔽ガラスが開示されている。特許文献1のガラスは、いずれも、鋳型に原料を鋳込み、徐冷した後、板状のガラス材とするものである。
特開平6-180388号公報(特許文献2)には、フェノール樹脂に熱中性子遮蔽性物質として無機ホウ素化合物、酸化ガドリニウム等を配合した耐熱性中性子遮蔽材が提案されている。特開2020-30088号公報(特許文献3)には、硬化性樹脂に特定粒径範囲の炭化ホウ素、ホウ酸、ガドリニウムまたはそれらの混合物を配合した樹脂組成物が提案されている。特許文献2,3に記載の発明は、いずれも樹脂材料に中性子遮蔽性の「粉末」原料を添加するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
特開平10-226533号公報
特開平6-180388号公報
特開2020-30088号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のガラス材は放射線遮蔽窓、観測窓への使用を目的としており、透光性が優れるものの、ガラス材自体は衝撃に弱い。そのため、中性子遮蔽機能を備え、かつ衝撃強度も要求される構造体としての使用には制約があった。上記特許文献2,3の発明は、樹脂に添加される中性子遮蔽性物質が粉末であるため、その添加量が増すに伴い樹脂の強度が低下するため、やはり、強度の要求される構造体への適用には制約が有った。
以上のように、中性子遮蔽性能と強度を併せ持つ構造材の開発が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
ところで、中性子遮蔽性物質を繊維化する試みは、本発明者の知る限り知られていない。中性子遮蔽性物質を繊維化できれば、樹脂と複合させ、繊維強化複合材料とすることができる。
そこで、SiO
2
及びAl
2
O
3
を主成分とするガラス形成成分と、中性子遮蔽性元素の単体又はその酸化物(以下、「中性子遮蔽成分」と略記する)とを含有する無機物の溶融紡糸化(繊維化)を試みたところ、鋳込み成形ガラスの場合と比較して、溶融紡糸が可能な中性子遮蔽成分の含量の範囲は大いに制約を受けることが判明した。
しかしながら、無機物中のi)ガラス形成成分を特定の組成とし、ii) ガラス形成成分と中性子遮蔽成分の割合を特定の範囲に収めることにより、中性子遮蔽性元素を多量に含有する新たな無機繊維が得られることを見出し、本発明の複合材料の開発に成功したものである。
なお、本発明の複合材料は、中性子遮蔽性に加え、陽子遮蔽性にも優れる。
【0006】
本発明の複合材料は、有機高分子の母材と特定の無機繊維より構成される。
<無機繊維>
無機繊維は、10~50質量%の中性子遮蔽成分と50~90質量%のガラス形成成分とからなる。
ガラス形成成分は、本発明に用いる無機繊維の基体成分であり、無機繊維の非晶性(ガラス質)構造の形成に与る。他方、中性子遮蔽成分は無機繊維に中性子遮蔽性能を付与する。後記するように、中性子遮蔽成分は陽子遮蔽機能も付与する。
無機繊維は、上記のガラス形成成分と上記の中性子遮蔽成分を原料として配合し、その原料配合物を溶融加工して得られる。なお、本発明において、原料配合物の成分比と、その溶融固化物(及びその無機繊維)の成分比に実質的な差は見られない。よって、原料配合物の成分比をもって無機繊維の成分比とすることができる。
【0007】
<中性子遮蔽成分>
無機繊維を構成する中性子遮蔽成分は、ガドリニウム、サマリウム、カドミウムの、単体、酸化物、若しくは単体と酸化物の混合物である。前記単体及び酸化物は上記三元素の二つ以上の併用であってもよい。上記の三元素のうち、中性子遮蔽性能の観点から、ガドリニウムが最も好ましく、次いでサマリウムが好ましい。なお、ガドリニウム、サマリウム、カドミウムは、中性子遮蔽性に優れる同位体や同位体濃縮物を用いることができる。そのような同位体として、ガドリニウム157(
157
Gd)、サマリウム149(
149
Sm)、カドミウム113(
113
Cd)がある。
【0008】
中性子遮蔽性能を備えるため、本発明に用いる無機繊維は、中性子遮蔽成分を10質量%以上含むことが必要であり、30質量%以上含むことが好ましく、35質量%以上含むことがより好ましく、40質量%以上含むことがなお一層好ましく、45質量%以上含むことが最も好ましい。
しかし、無機繊維を調製するに際して、原料配合物中の中性子遮蔽成分が50質量%を超えると溶融物の粘度が低くなりすぎ、繊維化が困難となる。同時に、その溶融固化物は、非晶相中に結晶相が混在するようになり、その強度が低下してしまう。したがって、無機繊維中の中性子遮蔽成分の含量は50質量%以下である。
【0009】
<ガラス形成成分>
無機繊維を構成するガラス形成成分は、ガラス形成性に富むSiO
2
及びAl
2
O
3
を主成分とする。より具体的には、ガラス形成成分に占めるSiO
2
とAl
2
O
3
の合計は質量比にて0.60以上であり、好ましくは0.65以上であり、より好ましくは0.70以上であり、さらに好ましくは0.75以上である。先に述べたように、原料配合物中の中性子遮蔽成分が高含量になるに伴い、繊維化が困難となる。したがって、原料配合物中の中性子遮蔽成分が多い組成では、ガラス形成成分に占めるSiO
2
とAl
2
O
3
の合計が高くなるよう原料を配合することが肝要である。例えば、中性子遮蔽成分を40質量%以上とする場合には、ガラス形成成分に占めるSiO
2
とAl
2
O
3
の合計を質量比にて0.70以上とすることが好ましく、0.75以上とすることがさらに好ましい。
また、溶融物の繊維加工性の点から、ガラス形成成分に占めるSiO
2
及びAl
2
O
3
の合計に対するSiO
2
の質量比は0.60~0.90の範囲が好ましく、0.65~0.90の範囲がより好ましくは、0.70~0.90の範囲が最も好ましい。
同様の理由で、ガラス形成成分中には、質量比にて0.20を好ましい上限としてCaOを含むことができる。
同様に、ガラス形成成分中には、質量比にて0.20を好ましい上限としてB
2
O
3
を含むことができる。但し、ホウ素は中性子との核反応により新たな粒子を発生する、つまり二次放射する。そのため、B
2
O
3
は質量比にて0.15以下とするのがより好ましく、0.10以下とするのが最も好ましい。なお、ホウ素はガドリニウム、サマリウム、カドミウムを除く元素の中では相対的に高い中性子遮蔽性能を備えるものの、その中性子遮蔽性能はガドリニウム、サマリウム、カドミウムに比較して格段に低く、他方で、その酸化物はガラス形成性に富む。よって原料配合物にホウ素が含まれる場合、本発明ではホウ素を「中性子遮蔽成分」として算入せず、「ガラス形成成分」に算入する。
【0010】
なお、本発明に用いる無機繊維は、原料中に含まれる不可避的な不純物の混入を排除するものではない。そのような不純物として、Fe
2
O
3
, MgO, K
2
O ,Na
2
O, Li
2
O, TiO
2
, CrO
2
などを例示できる。但し、後記するように、中性子遮蔽成分を高含量とする場合にはFe
2
O
3
の含量に留意せねばならない。
(【0011】以降は省略されています)

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