公開番号2025102800 公報種別公開特許公報(A) 公開日2025-07-08 出願番号2025038864,2023133133 出願日2025-03-12,2012-10-26 発明の名称癌幹細胞特異的分子 出願人中外製薬株式会社 代理人個人,個人,個人,個人,個人,個人,個人,個人,個人,個人,個人,個人,個人,個人 主分類A61K 47/68 20170101AFI20250701BHJP(医学または獣医学;衛生学) 要約【課題】増殖能の高いロイシン-リッチ-リピート含有Gタンパク質共役受容体5(Lgr5)陽性癌幹細胞と増殖能の低いLgr5陰性癌幹細胞に特異的な細胞表面分子、またこれらの細胞表面分子に対する抗体を有効成分として含有する抗癌剤、薬剤抵抗性癌治療剤、癌再発抑制剤、癌転移抑制剤または術後アジュバント療法剤として使用できる医薬組成物の提供。 【解決手段】Lgr5の特定の配列に結合する少なくとも一つの抗体を含有する医薬組成物。 【選択図】なし 特許請求の範囲【請求項1】 TNFSF9分子に対する抗体を有効成分として含有する、Lgr5陰性の癌幹細胞の癌再発抑制剤もしくはLgr5陰性の癌幹細胞の薬剤抵抗性癌治療剤である医薬組成物であって、ここで、該抗体に細胞傷害性物質または増殖抑制剤が連結されている、医薬組成物。 続きを表示(約 590 文字)【請求項2】 癌が固形癌である、請求項1に記載の医薬組成物。 【請求項3】 癌が消化器癌である、請求項1または2に記載の医薬組成物。 【請求項4】 癌が大腸癌である、請求項1から3のいずれかに記載の医薬組成物。 【請求項5】 抗体がモノクローナル抗体である、請求項1から4のいずれかに記載の医薬組成物。 【請求項6】 抗体がキメラ抗体、ヒト化抗体、またはヒト抗体のいずれかである、請求項1から5のいずれかに記載の医薬組成物。 【請求項7】 抗体が抗体断片である、請求項1から6のいずれかに記載の医薬組成物。 【請求項8】 抗体が、中和活性を有する抗体である、請求項1から7のいずれかに記載の医薬組成物。 【請求項9】 化学療法剤と同時期にまたは化学療法剤処置後に使用されることを特徴とする、請求項1から8のいずれかに記載の医薬組成物。 【請求項10】 請求項1から9のいずれかに記載される医薬組成物の有効性を確認する方法であって、当該医薬組成物が投与された被験者から単離された試料におけるTNFSF9分子および/またはTNFSF9分子をコードするポリヌクレオチドの存在を検出することを含む、方法。 (【請求項11】以降は省略されています) 発明の詳細な説明【技術分野】 【0001】 本発明は、増殖能の高いLgr5陽性癌幹細胞と増殖能の低いLgr5陰性癌幹細胞に特異的な細胞表面分子、またこれらの細胞表面分子に対する抗体を有効成分として含有する医薬組成物に関する。さらに本発明は、上記抗体を用いる癌幹細胞検出用試薬および癌患者を選別する方法に関する。 続きを表示(約 7,200 文字)【背景技術】 【0002】 癌幹細胞(Cancer Stem Cell:CSC)は、癌の起源であると考えられている。なぜなら、これらは、自己再生能と、腫瘍階層(非特許文献1)への分化能とを有しているからである。さらに、CSCは移動することができ、抗癌剤治療に耐えることができる(非特許文献1)。腫瘍においてはまれなサブセットと考えられるので、CSCは細胞表面マーカーおよび異種移植における腫瘍開始活性により性質決定する努力がされてきた。CSCは、急性骨髄性白血病(AML)(非特許文献2、3)、乳癌(非特許文献4)、神経膠腫(非特許文献5)、頭頚部癌(非特許文献6)、膵臓癌(非特許文献7、8)、肺癌(非特許文献9)、前立腺癌(非特許文献10、11)、間葉性新生物(非特許文献12)、およびメラノーマ(非特許文献13、14)を含むいくつかの癌において報告されている。大腸癌においては、O'Brienら(非特許文献15)およびRicci-Vitianiら(非特許文献16)による初期の研究においてCD133がCSCマーカーであることが報告された。その後、他の研究グループによってさらなるマーカーとしてCD44、EpCAM、CD166(非特許文献17)、およびALDH(非特許文献18、19)が報告された。近年、Pangらは、CD26が、転移活性を有するCSCの亜集団のマーカーとなることを示した(非特許文献20)。 【0003】 CSCを単離するために、多くの研究では、EpCAM high /CD44 + / CD166 + (非特許文献17)、CD133 + /CD44 + (非特許文献21)、CD44 high /ALDH + (非特許文献18)、およびALDH1 + /CD133 + (非特許文献19)などのCSCマーカーの組み合わせを使用した細胞選別アプローチをとってきた。またCSCの濃縮のために、インビトロでのスフェロイド(細胞塊)培養物および免疫欠損マウスへの癌細胞の直接異種移植も用いられてきた(非特許文献22)。しかしながら、CSCの性質をさらに理解するためには、癌幹細胞を高純度に、かつ大量に入手する必要があった。 【0004】 CSC単離における問題の1つは、CSC表現型の不均一性および/または不安定性に起因するものと考えられる(非特許文献29)。CSCの供給源として、3次元スフェロイド培養物が使用されることが多い。このスフェロイド培養物は、臨床的に切除された標本の腫瘍細胞に直接適応することができ、CSCの不均一集団を維持できることは、異種移植に対して一定の利点を有しうる。しかしその不均一性のために、生化学的解析における結果はCSCの複雑な特徴を示すことが多い。CSCを単離するために、細胞表面マーカータンパク質に対する抗体を用いたCSC選択が広く用いられているが、この方法によって得られる細胞の数および純度は限られている。一方、異種移植片の表現型は多数回継代しても安定に維持されるので、CSCの供給源として異種移植片を使用することもまた、一般的なアプローチである。しかし、マウスにおける異種移植片の継代は、マウス中で生存可能な細胞しか選択できず、これにより、そのような環境に対して影響を受けにくい細胞が排除されているという議論もある。言うまでもなく、異種移植腫瘍内に存在するCSCは、それらが自己複製能および元の腫瘍の分化株の産生能を維持している限り、CSCの元の特徴を反映する。 【0005】 Lgr5(ロイシン-リッチ-リピート含有Gタンパク質共役受容体5)は、当初、糖タンパク質ホルモン受容体ファミリーのオーファンGタンパク質共役受容体として同定され(非特許文献23、24)、クリプト(crypt)において発現が制限されるWnt標的遺伝子であることが示された(非特許文献25)。Lgr5陽性の円柱状の細胞があらゆる上皮系統を再生でき(非特許文献25)、単一のLgr5陽性細胞が間葉ニッチなしにインビトロでクリプト-ウイルスオルガノイドを形成することができる(非特許文献26)という発見は、Lgr5陽性細胞が、正常な大腸で幹細胞であることを明確に証明した。さらにLgr5陽性細胞はApcの欠失下で腺腫が形成され(非特許文献27)、Lgr5が大腸癌細胞株で発現することが報告された(非特許文献25)。総合すれば、これらの結果は、Lgr5陽性細胞が大腸癌の起源であることを示している(非特許文献25)。正常な大腸の幹細胞におけるのと同じく、インビトロおよびインビボでのCSCの増殖にとってWnt活性が必須であること、ならびに外因性HGFがWnt活性を刺激することが実証された(非特許文献28)。 【0006】 Lgr5は正常な大腸の幹細胞マーカーとして同定され、大腸癌の起源に対するマーカーとなることが示されており(特許文献1、非特許文献30)、またLgr5は大腸癌幹細胞において過剰発現されるタンパク質であることが示されている(特許文献2)が、大腸癌発生におけるLgr5の生理学的な役割は未だ不明のままである。 【0007】 これまで、癌治療のための治療方法や抗がん剤が種々開発されているものの、効果が必ずしも十分でない、副作用が生じる、効果を示す患者が限られる、といった問題が依然として解決すべき課題として残っている。近年、癌幹細胞を標的とした治療方法が注目されているが、その効果や副作用に関しては不明な点が多い(非特許文献31)。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0008】 US20100275280 WO09/005809 【非特許文献】 【0009】 Reya T, Morrison SJ, Clarke MF, Weissman IL (2001) Stem cells, cancer, and cancer stem cells. 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