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公開番号2025080323
公報種別公開特許公報(A)
公開日2025-05-26
出願番号2023193403
出願日2023-11-14
発明の名称天然蛋白質原料精製方法及び天然蛋白質原料精製システム
出願人ペンタリンク株式会社,国立大学法人東京農工大学
代理人個人,個人,個人
主分類D01B 7/00 20060101AFI20250519BHJP(天然または人造の糸または繊維;紡績)
要約【課題】虫体から直接化学工学的プロセスだけで手作業なしに天然蛋白質原料を精製することができる、天然蛋白質原料精製方法及び精製システムを提供する。
【解決手段】精製方法は、絹糸虫の虫体を粉砕し、第1取得目的物質及び第2取得目的物質を有する絹糸腺を含む処理液を製造する前処理と、前処理した処理液から比重分離により絹糸腺を主とする沈降物を取得し、絹糸腺以外の虫体各部分を除去する第1分離処理と、第1分離処理で取得した沈降物から第2取得目的物質を溶出させた水溶液を得、第1取得目的物質を主に含む絹糸腺内容物、及び、第2取得目的物質を含む水溶液を別々に取得する第2分離処理と、第2分離処理で取得した第1取得目的物質を主に含む絹糸腺内容物から第1取得目的物質を取得する第1取得目的物質回収処理と、第2分離処理で取得した第2取得目的物質を含む水溶液から第2取得目的物質を取得する第2取得目的物質回収処理と、を有する。
【選択図】図1
特許請求の範囲【請求項1】
絹糸虫の虫体を粉砕し、第1取得目的物質及び第2取得目的物質を有する絹糸腺を含む処理液を製造する前処理と、
前記前処理した前記処理液から比重分離により前記絹糸腺を主とする沈降物を取得し、前記絹糸腺以外の虫体各部分を除去する第1分離処理と、
前記第1分離処理で取得した前記沈降物から前記第2取得目的物質を溶出させた水溶液を得、前記第1取得目的物質を主に含む絹糸腺内容物、及び、前記第2取得目的物質を含む水溶液を別々に取得する第2分離処理と、
前記第2分離処理で取得した前記第1取得目的物質を主に含む絹糸腺内容物から前記第1取得目的物質を取得する第1取得目的物質回収処理と、
前記第2分離処理で取得した前記第2取得目的物質を含む水溶液から前記第2取得目的物質を取得する第2取得目的物質回収処理と、
を有する
ことを特徴とする天然蛋白質原料精製方法。
続きを表示(約 1,600 文字)【請求項2】
前記前処理の前に、前記絹糸虫を保存する処理を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の天然蛋白質原料精製方法。
【請求項3】
前記第1分離処理は、
前記前処理で粉砕された前記絹糸虫の前記虫体各部分を含む前記処理液を比重分離する処理と、
前記比重分離する処理で沈降した前記絹糸腺を主とする沈降物を回収および水流によって洗浄する処理と、
を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の天然蛋白質原料精製方法。
【請求項4】
前記第2分離処理は、
前記第1分離処理で回収した前記絹糸腺を主とする沈降物を水または薬剤水溶液に投入し、撹拌する処理と、
前記撹拌する処理で撹拌した液体を比重分離またはふるい分けする処理と、
前記比重分離で沈降した沈降物またはふるい分けでふるい上に残った前記第1取得目的物質を主に含む絹糸腺内容物を取得する処理と、
を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の天然蛋白質原料精製方法。
【請求項5】
前記第2分離処理は、
前記比重分離で沈降した沈降物以外またはふるい分けでふるい上に残った物質以外をろ過する処理と、
前記ろ過したろ液から前記第2取得目的物質を含む水溶液を取得する処理と、
を有する
ことを特徴とする請求項4に記載の天然蛋白質原料精製方法。
【請求項6】
前記第1取得目的物質回収処理は、
前記第1取得目的物質を主に含む絹糸腺内容物を純水で洗浄し、脱水する処理と、
前記脱水した前記第1取得目的物質を主に含む絹糸腺内容物を溶剤に投入し、流動性を調整し、前記第1取得目的物質を取得する処理と、
を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の天然蛋白質原料精製方法。
【請求項7】
前記第2取得目的物質回収処理は、
前記第2取得目的物質を含む水溶液を撹拌及び晶析する処理と、
続いて遠心分離する処理と、
続いて純水で洗浄する処理と、
続いて乾燥し、前記第2取得目的物質を取得する処理と、
を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の天然蛋白質原料精製方法。
【請求項8】
絹糸虫の虫体を純水と混合する純水混合部、および、前記純水混合部で混合された前記絹糸虫を粉砕し、第1取得目的物質及び第2取得目的物質を有する絹糸腺を含む処理液を製造する水中粉砕部を有する前処理装置と、
前記処理液から比重分離する比重分離部、および、前記比重分離部で取得した前記第1取得目的物質及び前記第2取得目的物質を含む前記絹糸腺を主とする沈降物を取得し、前記絹糸腺以外の虫体各部分を除去する沈降物回収部を有する第1分離装置と、
前記沈降物回収部で取得した前記沈降物から前記第2取得目的物質を溶出させた水溶液を取得し、撹拌する撹拌部、および、前記第1取得目的物質を主に含む前記絹糸腺内容物、及び、前記第2取得目的物質を含む水溶液を別々に取得するろ過部を有する第2分離装置と、
前記第2分離装置で取得した前記第1取得目的物質を主に含む前記絹糸腺内容物から前記第1取得目的物質を取得する第1取得目的物質回収装置と、
前記第2分離装置で取得した前記第2取得目的物質を含む水溶液から前記第2取得目的物質を取得する第2取得目的物質回収装置と、
を備える
ことを特徴とする天然蛋白質原料精製システム。
【請求項9】
前記前処理装置が前処理する前に、前記絹糸虫を保存する保存処理装置をさらに備える
ことを特徴とする請求項8に記載の天然蛋白質原料精製システム。

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、絹糸虫から蛋白原料を工業的に精製する天然蛋白質原料工業的精製方法及び天然蛋白質原料工業的精製システムに関する。
続きを表示(約 2,400 文字)【背景技術】
【0002】
古来、人類は、天然由来の原料から様々な物を作り出し、生活してきた。20世紀中盤以降、天然繊維やセルロイドなど天然由来の原料に代わり、大量生産に適した化石燃料を原料とする化学繊維やプラスチックが金属や窯業材料に加え材料の主流となってきた。しかしながら、化石燃料を原料とする化学繊維やプラスチックは、廃棄後、燃焼によって二酸化炭素等を発生させ地球温暖化を促進させるため、気候変動の要因となっている。また、埋蔵量が有限であるため、将来的に枯渇してしまう問題もある。さらに、化石燃料を原料とするプラスチック及び化学繊維等は、海洋生物の体内から発見されるという報告もあり、海洋環境、生物多様性、及び、食物連鎖を通しての人類の健康への影響が懸念されている。そのため、化石燃料資源からの脱却のため天然由来の原料への転換が課題となっている。
【0003】
次世代の天然由来の原料のなかでも、昆虫は大きな可能性を秘めた資源として注目されている(特許文献1参照)。昆虫は、地球上にいる動物の約7割を占め、既知のもので約100万種、未知のものを含めると2000万種以上と言われており、地球上で最も繁栄した生物とも言われている。例えば、昆虫は、豊富な蛋白資源として期待されている。特許文献1に記載された技術は、昆虫を食材として用いるものである。
【0004】
昆虫の種類の1つに、糸を出す絹糸虫がある。絹糸虫は、既知のもので地球上に約3000種存在すると言われ、未知のものを含めると10万種以上存在すると言われている。代表的な絹糸虫にはカイコガ(その幼虫が蚕)があるが、その他、鱗翅目の各種の蛾、蓑蛾、及びスズメバチなどの幼虫、蜘蛛、カマキリ、ダニ等の蛹の成分や巣糸を出す昆虫も絹糸虫に含まれる。これら絹糸虫が出す材質は、多様であり、化粧品及び医療材料等の幅広い分野において可能性を秘めている。例えば、特許文献2には、蜘蛛の糸から蛋白質を精製する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
特開2022-034920号公報
国際公開2017/094722号
特開2019-163244号公報
特開2017-149674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
絹糸虫の代表である蚕が出す絹糸は、従来からその美しさとしなやかさから高級な衣料品に用いられてきた。絹糸は、蚕が作った繭糸から作られる。蚕を育てるには、餌として新鮮な桑葉を与える。蚕が、糸を吐き出す直前の熟蚕まで育つと、養蚕業者は、蚕が繭を作る前に、蚕を一匹ずつ区切られた木枠の箱に入れる上蔟を行う。蚕は木箱の中で繭を作る。その後、製糸業者が、作られた繭を熱湯の中に沈め、煮繭を行う。煮繭の後、繭を作っている糸を繰枠に巻き取る繰糸を行い、絹糸ができる。養蚕業者及び製糸業者は、この間、桑葉の収穫作業、温度湿度管理、清掃作業等を人手で行い、数時間毎の大変な労力の作業を要するため、絹は高価なものとならざるをえなかった。
【0007】
繭糸は、中心にある繊維質のフィブロイン蛋白質を粘着質のセリシン蛋白質が囲んだ構造である。セリシンは、蛋白質の中でも、人の肌に含まれる成分に極めて近い組成を持ち、近年、化粧品又は医療材料として用いられている。一方、フィブロインは、セリシンを除くことで絹糸として用いられる(特許文献3参照)。これらの利用方法においても、まずは、蚕に繭を作らせ、繭糸から各蛋白質を分離精製しており、高コスト性を免れない状況にあった。
【0008】
そこで、製品の高コスト性の原因となっている繭を作らせるための作業と、繭から糸を得る人手を要するプロセスを省略するため、繭を作る前に熟蚕から絹糸腺を摘出してしまい、絹糸腺から蛋白質合成用の抽出液を直接回収する技術が試みられてきた(特許文献4参照)。しかし、特許文献4に記載の熟蚕からの絹糸腺の摘出方法では、繭工程がないものの、絹糸腺を摘出する工程が、すべて手作業で行われ、人手を要するプロセスからの解放には全く至っていない。
【0009】
本発明は、無人に近い化学コンビナートにおいて化石燃料から量産される従来のプラスチックや化学繊維に対抗することのできるような繊維、膜、その他形状物制作の原料としての天然蛋白質原料の生産を目指し、絹糸虫の体内から目的物質を手作業なしで直接取り出し、必要物質を連続的に得る方法を提供することにより、絹糸虫由来蛋白原料製造技術を革新することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明にかかる天然蛋白質原料精製方法は、
絹糸虫の虫体を粉砕し、第1取得目的物質及び第2取得目的物質を有する絹糸腺を含む処理液を製造する前処理と、
前記前処理した前記処理液から比重分離により前記絹糸腺を主とする沈降物を取得し、前記絹糸腺以外の虫体各部分を除去する第1分離処理と、
前記第1分離処理で取得した前記沈降物から前記第2取得目的物質を溶出させた水溶液を得、前記第1取得目的物質を主に含む絹糸腺内容物、及び、前記第2取得目的物質を含む水溶液を別々に取得する第2分離処理と、
前記第2分離処理で取得した前記第1取得目的物質を主に含む絹糸腺内容物から前記第1取得目的物質を取得する第1取得目的物質回収処理と、
前記第2分離処理で取得した前記第2取得目的物質を含む水溶液から前記第2取得目的物質を取得する第2取得目的物質回収処理と、
を有する
ことを特徴とする。
【発明の効果】
(【0011】以降は省略されています)

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