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公開番号2025026814
公報種別公開特許公報(A)
公開日2025-02-26
出願番号2023131737
出願日2023-08-13
発明の名称車両の故障予兆検知装置の構成方法
出願人トヨタ自動車株式会社
代理人個人,個人
主分類G01M 17/007 20060101AFI20250218BHJP(測定;試験)
要約【課題】車両の走行データに於いて、故障予兆を検出する構成に於いて、その検出精度を向上するべく、故障予兆検出のために参照する走行データの時間幅を適切に調節する。
【解決手段】 予め準備された正常走行データといずれかの部位に故障の生じた車両の故障が発生する前の故障前走行データとを用いた機械学習のアルゴリズムに従って、正常走行データから得られた値とそれと同様にして故障前走行データから得られた値との差の大きさが有意となる特徴量を、即時走行データから取得し、即時走行データの特徴量と正常走行データの特徴量との差の大きさが所定の大きさを超えたときに故障予兆があったものと識別するよう構成され識別器を用いて、車両のいずれかの部位に於ける故障予兆の有無を検出する構成に於いて、識別器の識別精度が所定値を超えるように特徴量の算出に用いられる正常走行データ及び故障前走行データの時間幅を調節する。
【選択図】 図4
特許請求の範囲【請求項1】
車両の状態を表わす走行データである即時走行データの入力を受けて前記車両の各部位に於ける故障予兆の有無を検出する故障予兆検出装置にして、予め準備された正常な状態の車両の走行データである正常走行データといずれかの部位に故障の生じた車両の故障が発生する前の走行データである故障前走行データとを教師データとして用いた機械学習のアルゴリズムに従って構成された識別器にして、前記正常走行データから得られた値とそれと同様にして前記故障前走行データから得られた値との差の大きさが有意となる特徴量を、前記即時走行データから取得し、前記即時走行データの特徴量と前記正常走行データの特徴量との差の大きさが所定の大きさを超えたときに故障予兆があったものと識別する識別器を用いて、前記車両のいずれかの部位に於ける故障予兆の有無を検出するよう構成された装置の構成方法であって、
前記識別器の識別精度が所定値を超えるように前記特徴量の算出に用いられる前記正常走行データ及び前記故障前走行データの時間幅を調節する過程
を含む方法。

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両の故障の予兆を検知する装置に係り、より詳細には、車両の走行中の種々の走行データに於いて故障に繋がる振る舞い(故障予兆)があるときには、そのことを検出する装置の構成方法に係る。
続きを表示(約 3,500 文字)【背景技術】
【0002】
種々の機器の故障の検出のために、機器の監視対象となる部位の、予め準備された正常時のデータと異常時のデータとを用いて故障検知用のモデルを構成し、かかる故障検知用モデルを用いて、機器の運転中又は作動中の監視対象部位のデータに於ける異常を検出する構成が種々提案されている。例えば、特許文献1は、機器の監視対象部位に於ける複数のセンサにて正常時に得られる検出値ベクトルの分布(正常時分布)を求めておき、機器の動作中に得られる複数のセンサの検出値ベクトルの、正常時分布からのずれから、異常の有無と、異常のあったセンサを推定する構成を提案している。特許文献2では、車両等の燃料供給システムに於ける燃料パイプ内の最低燃圧とそれが記憶されたときの状態を示すデータとを用いて、決定木等の機械学習のアルゴリズムに従って、燃料パイプ内の燃料圧力の低下に関する故障の箇所を判別し、システムの異常を診断する構成が開示されている。特許文献3では、機器の作動油の比誘電率、導電率等のセンサ値から全酸価等のパラメータを算出し、それらのパラメータから決定木構造のアルゴリズムにより機器の故障の予兆とその原因のパラメータを推定する構成が提案されている。特許文献4では、自動車の故障診断に必要な症状等の知識情報を記憶した知識ベースと人工知能を使用して故障原因と故障部品を特定する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
特開2020-98373
特開2021-195871
特開2021-167791
特開平3-79445
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両のいずれかの部位で故障が起きる場合には、その故障が生じる或る程度前の段階で、車両の種々の走行データに、故障に繋がる振る舞い、即ち、故障予兆、が現れる。そこで、車両の走行データを監視し、そこで故障予兆が検出されたときには、そのことを運転者等に報知できるようになっていると、その後、運転態様の改善、故障予兆の顕れた部位の点検の実行により、故障の回避が期待される。車両の走行データに於ける故障予兆は、機械学習のアルゴリズムを用いて構成された識別器によって検出可能である。この点に関し、走行データは、一般に細かく変動するので、走行データから精度良く故障予兆を検出するには、或る程度の時間幅を有する走行データを参照することが好ましい。しかしながら、故障が発生する時点から遡るほど、故障に繋がる振る舞いが低減すると予想されるので、参照する走行データの時間幅が長過ぎても、故障予兆の検出の精度が低下する。
【0005】
上記の事情を鑑み、本発明の主な課題は、車両の走行データに於いて、いずれかの部位での故障に繋がる振る舞い(故障予兆)を検出する構成に於いて、故障予兆の検出精度を向上するべく、故障予兆検出のために参照する走行データの時間幅を適切に調節することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、上記の課題は、車両の状態を表わす走行データである即時走行データの入力を受けて前記車両の各部位に於ける故障予兆の有無を検出する故障予兆検出装置にして、予め準備された正常な状態の車両の走行データである正常走行データといずれかの部位に故障の生じた車両の故障が発生する前の走行データである故障前走行データとを教師データとして用いた機械学習のアルゴリズムに従って構成された識別器にして、前記正常走行データから得られた値とそれと同様にして前記故障前走行データから得られた値との差の大きさが有意となる特徴量を、前記即時走行データから取得し、前記即時走行データの特徴量と前記正常走行データの特徴量との差の大きさが所定の大きさを超えたときに故障予兆があったものと識別する識別器を用いて、前記車両のいずれかの部位に於ける故障予兆の有無を検出するよう構成された装置の構成方法であって、
前記識別器の識別精度が所定値を超えるように前記特徴量の算出に用いられる前記正常走行データ及び前記故障前走行データの時間幅を調節する過程
を含む方法によって達成される。
【0007】
上記の構成に於いて、「車両の状態を表わす走行データ」は、車両の各部の状態を表わす任意のデータであってよく、具体的には、例えば、車速、アクセル開度又は要求駆動力、シフトレバー位置、変速機油温、エンジン水温、モータ温度、モード選択スイッチ位置、出力トルク(MG1、MG2)など、車両の各部にて検知される運転と走行に関わる状態量であり、時系列データ(時々刻々の値)であってよい。「即時走行データ」は、車両の運転中に即時に取得される走行データである(或る時間幅に亙る時系列データであってよい。)。「車両の各部位」とは、車両に於ける種々の部位、例えば、エンジン・モータ又はその各部、動力伝達機構若しくは変速機又はその各部、制動装置又はその各部、その他の車載装置の各部であってよく、適宜、一つ又は複数の部位が選択されてよい。「故障予兆」とは、既に触れた如く、走行データに現れる故障に繋がる値の振る舞い(変動、分布)である。「予め準備された正常な状態の車両の走行データである正常走行データといずれかの部位に故障の生じた車両の故障が発生する前の走行データである故障前走行データ」とは、それぞれ、任意の手法にて、例えば、実験、シミュレーション等により事前に収集されたデータであってよい。また、「正常走行データ」と「故障前走行データ」とは、使用期間又は走行距離などの条件が略等しい状態の車両から収集されたものであってよい。「故障予兆検出手段」の「識別器」に用いられる「機械学習のアルゴリズム」は、上記の正常走行データと故障前走行データとから得られる特徴量を説明変数とし、それぞれに対応する正常のラベル又は車両のいずれかの部位の故障のラベルを目的変数とした教師データを用いて、正常走行データと故障前走行データとを入力すると、それぞれに対応する正常又は故障のラベルを出力する識別器を構成できる任意のアルゴリズムであってよい。「特徴量」とは、走行データから種々の態様にて算定又は決定される値であり、その算定又は決定方法は、実験等を通じて適宜構成され或いは選択されてよい。「識別器の識別精度」は、識別器に入力された走行データが故障前走行データである場合に、故障予兆を検出する割合、即ち、入力された走行データが故障前走行データであることを正しく検出する割合である。識別精度に対する「所定値」は、適宜設定されてよい。なお、故障予兆検出装置は、コンピュータ装置によるプログラムに従った作動により実現される。
【0008】
上記の本発明の装置の構成に於いては、上記の如き機械学習のアルゴリズムに従って構成された識別器を用い、車両の時々刻々の走行データに於いて故障に繋がる振る舞い、即ち、故障予兆、の有無が検知される。その際、故障予兆検出のための特徴量の算出に用いられる正常走行データ及び故障前走行データの時間幅が、識別器の識別精度が所定値を超えるように調節される。このことにより、故障予兆を精度良く検出するために過不足のない時間幅の走行データを用いて特徴量が算出されることとなるので、故障予兆の検出精度の向上が期待される。
【0009】
上記の本発明の実施の態様の一つに於いて、走行データの時間幅の調節は、かかる時間幅を徐々に増大しつつ、検証用の正常走行データ及び故障前走行データを用いて識別器による故障予兆の検出の実行と識別精度の算出を、識別精度が適宜設定されてよい所定値を超えるまで反復することにより実行されてよい。或いは、時間幅を徐々に変化させながら、識別器による故障予兆の検出の実行と識別精度の算出を実行して、識別精度が最大となる時間幅が探索されてもよい。
【0010】
上記の故障予兆検出装置に於いて、識別器は、車両に於ける複数の部位のそれぞれの故障予兆の検知のために設けられていてよい。その場合、走行データの時間幅は、各部位の識別器毎に調節されてよい。
【発明の効果】
(【0011】以降は省略されています)

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