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公開番号2025011036
公報種別公開特許公報(A)
公開日2025-01-23
出願番号2024099007
出願日2024-06-19
発明の名称電気塩素化に使用するための触媒アノード及び方法
出願人インフィニューム インターナショナル リミテッド
代理人個人,個人,個人,個人,個人,個人
主分類C25B 11/093 20210101AFI20250116BHJP(電気分解または電気泳動方法;そのための装置)
要約【課題】塩素発生反応を介して水溶液から塩素を生成する電気塩素化システムに使用するための触媒アノード、触媒アノードを調製するための方法、電気塩素化システム及び塩素を発生させるための電解方法を提供する。
【解決手段】触媒アノードは、規定の化学量論のスズ及びアンチモンのマトリックスに結晶性コバルト酸化物粒子を本質的に含む導電性冶金触媒層を含む。この冶金層の所望の特質は、反応物及び工程条件の特定の制御を使用する調製方法により実現することができる。
【選択図】なし
特許請求の範囲【請求項1】
電解質に面する表面上に導電性冶金触媒層が重ねられている導電性固体基板を含む、電気塩素化システムで使用するための触媒アノード構造物であって、この層は、アンチモン及びスズの酸化物の結晶性マトリックス内に、化学式Co
3

4
を有する結晶性コバルト酸化物から本質的になるコバルト酸化物結晶性粒子を含み、
前記コバルト酸化物は、前記冶金触媒層の総金属原子含有量の少なくとも12.5原子%の量で存在し、前記冶金触媒層中のコバルト:アンチモン及びスズの合計の総金属化学量論比は、2:1~9:1の範囲内である、
触媒アノード構造物。
続きを表示(約 1,200 文字)【請求項2】
前記アンチモン及びスズの化合物は、前記冶金触媒層に、1:5~1:200の範囲内の、好ましくは1:5~1:100の範囲内のアンチモン:スズの総金属化学量論比を提供する量で存在する、請求項1に記載のアノード構造物。
【請求項3】
前記冶金触媒層は、1つ又は複数の貴金属又はそれらの化合物、好ましくはルテニウム又はその酸化物を更に含む、請求項1又は請求項2に記載のアノード構造物。
【請求項4】
前記冶金触媒層中の前記コバルト酸化物結晶性粒子は、前記結晶性粒子の総金属原子含有量に基づき最大で5原子%のルテニウムのレベルのルテニウム又はその酸化物から本質的になり、前記ルテニウムの少なくとも一部は、前記結晶性粒子上に表面装飾の形で存在する、請求項3に記載のアノード構造物。
【請求項5】
前記冶金触媒層中の前記コバルト酸化物結晶性粒子は、ルテニウムが前記コバルト酸化物の結晶格子内に組み込まれているか、又はコバルトと混合金属酸化物を形成しているか、又はその両方である結晶性領域を更に含む、請求項4に記載のアノード構造物。
【請求項6】
前記冶金触媒層は、前記冶金触媒層に、前記冶金触媒層の総金属原子含有量の最大で7原子%の、好ましくは最大で3原子%の総パラジウム含有量を提供する量の少なくとも1つのパラジウム化合物を含む、請求項3~5のいずれか1項に記載のアノード構造物。
【請求項7】
前記冶金触媒層は、前記触媒層全体にわたって又は実質的に全体わたって分布しているルテニウム酸化物を更に含む、請求項3~6のいずれか1項に記載のアノード構造物。
【請求項8】
前記冶金触媒層は、イリジウムを、その酸化物又は他の触媒活性種の形で、前記冶金触媒層の総金属原子含有量の最大で15原子%、好ましくは最大で5原子%の総イリジウム含有量を提供する量で更に含む、請求項3~7のいずれか1項に記載のアノード構造物。
【請求項9】
前記導電性固体基板は、バルブ金属、好ましくはチタンから本質的になる、請求項1~8のいずれか1項に記載のアノード構造物。
【請求項10】
前記冶金触媒層は、前記層に、前記冶金層の最大で10原子%、好ましくは最大で2原子%の総銅含有量を提供する量の少なくとも1つの銅化合物;又は前記層に、前記冶金層の最大で30原子%、好ましくは最大で20原子%の総アルミニウム含有量を提供する量の少なくとも1つのアルミニウム化合物;又は前記層に、前記冶金触媒層の総金属原子含有量の最大で15原子%、好ましくは最大で10原子%の総ニッケル含有量を提供する量の少なくとも1つのニッケル化合物;又は上記のものの1つよりも多くを更に含む、請求項1~9のいずれか1項に記載のアノード構造物。
(【請求項11】以降は省略されています)

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、塩素発生反応を介して塩素イオンを含む水溶液から塩素(chlorine)を生成する電気塩素化システムに使用するための触媒アノードに関する。そのような塩素生成システムは、バラスト水処理システム及び工業用水等の廃水の工業処理及び浄化に特に有用である。これらは、特に、塩素アルカリ法における塩素の工業生産にも使用することができる。
続きを表示(約 6,100 文字)【背景技術】
【0002】
塩素発生反応(「CER」)は、工業化学では周知の反応であり、捕捉のための塩素大規模生成及び即時適用のための塩素生成の両方に用途(application)が見出されている。塩素アルカリ法では、塩化ナトリウム水溶液の電気分解により塩素及び水酸化ナトリウムが生成され、生成物が回収され、その後の工業使用に供される。塩素は効果的な殺生物剤であり、従って、電気塩素化システムは、水性塩素のその場(in situ)での生成及びその即時殺生物効果に基づく水浄化に独立して使用される。微生物汚染水は、電気塩素化により効果的に処理することができ、工業廃水及び一般水消毒等、様々な場面で活用されている。加えて、排水前にバラストタンク水を処理するための船上バラスト水処理システムを搭載する船舶が増えている。長距離を航行する船舶は、遠隔地で採取したバラスト水を排水することにより、外来性水生生物を地域生態系に導入する可能性がある。侵入外来種は、地域生態系バランスに多大な影響を及ぼす可能性がある。船舶搭載の発電機で駆動する電気塩素化システムは、排水前にそのような水を処理するための効果的で即時的な解決策を提供する。
電気塩素化システム及び方法の効果的な工業使用は、長期間にわたって効率的に作動することができる電解セルに依存する。アノードでの塩素生成を促進するために、当技術分野では、アノードの電解質に面する表面に触媒コーティングを施して塩素発生反応を触媒することが一般的である。そのような触媒コーティングは、典型的には、著しい量の1つ又は複数の貴金属を含み、その中で最も一般的に使用されるものはイリジウム及びルテニウムであり、そのためアノード製造には著しいコスト及び複雑性が加わる。当技術分野では、工業的又は自治体の電気塩素化環境に関連する種々の技術的考慮事項をより費用効率的に満たすことができる新しい触媒アノードに対する継続的なニーズが依然として存在する。
電気塩素化アノード用の触媒コーティングを選択する際には、様々な技術的考慮事項を考慮に入れなければならない。
【0003】
第一に、選択された触媒は、競合酸素発生反応から生じる効率損失を低減するように、塩素発生反応に対して十分に選択性でなければならず、そうでなければ、水溶液中での水の電気分解によりアノードでも競合酸素発生反応が生じる可能性がある。第二に、触媒コーティングは、長期間作動、及び電気塩素化で生じる可能性のある電解質の酸性化に耐えるのに十分な程度に耐久性でなければならない。第三に、アノードコーティングは、電解セルを駆動するための大きな過電位の必要性を回避することにより電気効率を向上させるために、高度に伝導性であるべきである。実際に、典型的には、電解セルでは効率損失によりある程度の過電圧が生じることは明らかであるが、より低い程度の過電圧は、重要な相対的効率獲得を提供し、長期作動にわたってより低い過電圧を維持することは、電極耐久性及び耐用年数の関連指標を提供する。
アノード上の触媒コーティングの物理的耐久性は、長期試験での性能、及び更に最も好適には走査型電子顕微鏡によるその形態の検査の両方により評価することができる。実際に、当技術分野における触媒アノードコーティングは、典型的には、図1に示されているように、特徴的な「泥亀裂」により広範に中断された微細堆積沈殿物の外観を有する、乾燥湖床に似た外表面形態を示す。こうした亀裂は触媒層に弱点をもたらし、電解質及び反応性種がアノードの基板に向かって浸透することを可能にし、触媒と基板との接着が弱体化され、露出した組成物が腐食する劣化プロセスがもたらされる。典型的には、電気効率の損失(例えば、過電位の増加により明らかになる)及び触媒活性の損失がもたらされ、アノードの耐用年数が低減され、高価な交換に結び付く。
【発明の概要】
【0004】
本発明の第1の態様の触媒アノードは、本発明の第2の態様の方法により得ることができ、高価な貴金属、特にイリジウムの必要性を回避しつつ、そのようなアノードの技術的要求に対処する有利なバランスのとれた特性を提供する。特に、本発明の第1の態様で規定される触媒コーティングアノード構造物は、塩素発生反応に対する高い触媒活性及び選択性を示し、作動寿命の点で優れた耐久性を示し、作動中に形成される酸に対する耐性の向上を示す。また、本発明の第1の態様で規定される触媒コーティングアノード構造物は、高いアノード伝導性を有するため、過度の過電圧を生じることなく効率的な電気的作動がもたらされ、それが長期間の稼動にわたって維持される。
【0005】
本発明の第1の態様のこうした利点は、アノードの電解質に面する表面に導電性冶金触媒層を施すことによりもたらされ、この触媒層は、アンチモン及びスズの酸化物(oxides of antimony and tin)の規定の結晶性マトリックス内に、化学式Co
3

4
を有する結晶性コバルト酸化物から本質的になるコバルト酸化物結晶性粒子を含む。
この冶金触媒層の特徴的な形態(モルフォロジー、morphology)及び化学組成は、本発明の第2の態様で更に規定される反応物及び工程条件の制御を使用する調製法により最も良好に実現される。
従って、本発明は、第1の態様では、電解質に面する表面上に導電性冶金触媒層が重ねられている(オーバーレイされている)導電性固体(solid)基板を含む、電気塩素化システムで使用するための触媒アノード構造物であって、この層は、アンチモン及びスズの酸化物の結晶性マトリックス内に、化学式Co
3

4
を有する結晶性コバルト酸化物から本質的になるコバルト酸化物結晶性粒子を含み、
コバルト酸化物は、冶金触媒層の総金属原子含有量の少なくとも12.5原子%の量で存在し、冶金触媒層中のコバルト:アンチモン及びスズの合計の総金属化学量論比は、2:1~9:1の範囲内である、
触媒アノード構造物を提供する。
【0006】
第1の態様のアノードでは、触媒組成物は、好ましくは、1つ若しくは複数の貴金属又はそれらの酸化物化合物を更に含み、特に好ましくは、ルテニウム又はその酸化物を更に含む。
本明細書内では、組成物中の特定の金属に関する「総金属原子含有量の原子%」という用語は、関連組成物に存在するその金属の原子の数を指し、関連組成物に存在する金属元素の原子の総数のパーセンテージとして表され、そのような金属元素が元素の形で存在するか又は化合物の形で存在するかに関わらない。
本明細書内では、特定の金属元素の「総金属化学量論比」(overall metallic stoichiometric ratio)という用語は、そのような金属元素が元素の形で存在するか又は化合物の形で存在するかに関わらず、複合冶金層(又は該当する場合は他の組成物)内に存在するそうした金属元素の全ての原子の化学量論比を意味する。例えば、15原子%のアンチモン及び15原子%のスズを純粋に元素の形で含む構造物では、Sb:Snの総金属化学量論比は15:15、即ち1:1であり、元素アンチモンの形の15原子%のアンチモン、15原子%の元素スズ、及び更に酸化物の形の配合された15原子%のスズを含む構造物では、Sb:Snの総金属化学量論比は15:(15+15)、即ち1:2である。
第1の態様の好ましい実施形態では、触媒アノード構造物は、電解質に面する表面に上記で規定の導電性冶金触媒層が重ねられている導電性固体基板からなる。この実施形態では、触媒層は基板に直接隣接している。
第1の態様の代替的な好ましい実施形態では、触媒アノード構造物は、電解質に面する表面に、冶金中間層及び上記で規定の導電性冶金触媒層が重ねられている導電性固体基板を含む。この代替的な実施形態では、中間層は基板に直接隣接しており、触媒組成物は中間層上に重なって触媒表面層を提供する。この実施形態における好ましい中間層は、寸法的安定性アノード組成物であり、最も好ましくは、本明細書の下記に記載の中間層組成物である。
上記に規定の組成物による冶金触媒層の外表面は、スズ酸化物及びアンチモン酸化物のマトリックスに埋め込まれた凝集コバルト酸化物粒子の連続コーティングという有利な形態を有する。
【0007】
本明細書内では、「形態」(モルフォロジー、morphology)という用語は、問題の物質の三次元構造及び外観を表すために使用される。形態は、本明細書の以下に記載の走査型電子顕微鏡により最も有用に特定することができ、走査型電子顕微鏡は、その構造及び外観の直接的視覚認識を可能にするように、物質表面の三次元画像を提供する。
また、本明細書内では、「連続コーティング」という用語は、下層電極物質を完全に覆うコーティングを表すために使用される。好ましくは、この連続コーティングは、その完全性を弱める著しい亀裂又は他の貫通不連続性により中断されていない。特に、本発明の冶金触媒層の連続コーティングは、有利には、電気塩素化で使用される従来の触媒コーティングの広範な「泥亀裂」沈殿物形態を呈さず、代わりに、走査型電子顕微鏡下で視認されるように、凝集粒子の三次元マトリックスで構成される連続表面被覆又は層を提供する。
本発明は、部分的には、コバルト酸化物に本質的に基づく触媒組成物により、電気塩素化においてCER反応を得るための優れた特性を有するアノード構造を有利に得ることができるという知見に基づく。アノード上の得られる冶金触媒層は、アノードに、作動寿命の点で優れた耐久性を提供し、塩素発生反応に対する有利な触媒活性及び選択性を提供する。冶金触媒層は、アノードに、酸腐食に対する高い耐性及び高い伝導性も提供し、それは高い電気効率及び長期間にわたる低い過電位での作動性能に結び付く。より多量の貴金属の代わりに主にコバルト酸化物に基づく触媒組成物を使用することにより、主成分としてイリジウム及び/又はルテニウムに基づく従来の触媒アノードよりも大幅に低いコストでこのアノード性能を達成することも可能になる。
【0008】
特に、コバルト酸化物結晶性粒子は、冶金触媒層の必須触媒種としての役割を果たし、イリジウムベース組成物等の貴金属ベース触媒組成物よりも大幅に低いコストで、CER反応に対して高度に選択的な触媒作用を提供する。本発明の必須コバルト酸化物触媒は触媒貴金属酸化物により補完されていてもよいが、コバルトは、冶金触媒層の総金属原子含有量の少なくとも12.5原子%の量で存在するべきであり、従って触媒組成物中の主要触媒種である。主要触媒種としてのコバルト酸化物のこの使用は、触媒層中の規定のアンチモン及びスズ酸化物マトリックスをそれと組合せて使用することにより可能になり、この組合せは、上記に記載の向上された特性のバランスを有する、高度に選択性であり、耐久性であり、及び効率的なCER用コバルト酸化物ベース触媒アノードを提供する役目を果たす。
【0009】
冶金触媒層の外表面の凝集結晶性粒子は、触媒活性に対して高度に有効で利用可能な表面積を提供するためにも必須である。特に、この粒子状形態は、従来の湖床沈殿触媒層の物質移動制限を克服し、本発明の第1の態様の触媒アノードが、塩素発生反応に対してより高い効率で作動することを可能にし、本発明の種々の利点に寄与する。
塩素発生反応における本発明の触媒アノードの効率上の利点は、特に、低い塩レベルを有する塩素イオンの水溶液(例えば、塩水)により示される。低い塩レベルでの効率向上は、廃水の処理及び他の塩素化の用途に加えて、水処理、例えば自治体水の用途又は飲料水処理に幅広く好適な電極を提供する。また、効率の向上は、塩素酸イオン及び過塩素酸イオン等の不要な電気分解副産物のレベル低下をもたらす。
第1の態様の触媒アノードの好ましい形態では、触媒組成物は、チタン又はその化合物を含まない。そのような無チタン触媒組成物は、得られるアノードに、電流反転セルでの使用に高度に好適であるという追加の利点を提供する。電流反転は、特に低い塩レベルのプール等の特に自治体用水又は住宅用水を処理するために、そうでなければ長期電解作動中にカソードに蓄積する可能性のあるカルシウム及びマグネシウム等の金属の堆積物を除去するための、メンテナンスが容易な手段となっている。しかしながら、従来、セル内部の電流反転は、電極の表面で、特に「泥亀裂」触媒の亀裂表面内で大幅なpH変動が生じ、電解質が塩水枯渇する可能性があり、従って競合する水分解反応がより広く起こるため、アノード触媒コーティングのより急速な劣化及び損傷を引き起こす。コーティングに存在するチタンは、この環境で溶解し易く、基板上の触媒コーティングの弱化、並びにコーティング及び性能の急速な劣化に結び付く。本発明は、触媒組成物が高効率であり、コバルト酸化物が含有されているため、触媒組成物中のチタンの存在を不要にすることができ、それによりこの劣化を回避し、特に電流反転環境においてより長期のアノード寿命をもたらすことができるアノードを提供する。
【0010】
そのような無チタン触媒組成物は、得られるアノードに、高塩レベル法である塩素アルカリ法において耐久性(resilience)がより高いという追加の利点も提供する。典型的には、塩素アルカリセルは、カソードとアノードとの間にテフロン又は類似の膜が配置されていることを特徴とする。セル内部の苛性溶液は膜に穿孔の発生を引き起こし、苛性溶液がアノードに到達することを可能にし、チタンの腐食及び枯渇を引き起こす可能性がある。本発明は、触媒組成物が高効率であり、コバルト酸化物が含有されているため、触媒組成物中のチタンの存在を不要にすることができ、それによりこの劣化を回避し、この環境においてより長期のアノード寿命をもたらすことができるアノードを提供する。
本発明の第1の態様の触媒アノード構造物の形成は、アノード表面に適正な組成物の触媒層を形成し、所望の形態の冶金触媒層をもたらすのに理想的に有利な工程条件下で、触媒組成物を追加する方法により最も良好に実現される。
(【0011】以降は省略されています)

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