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公開番号2024137096
公報種別公開特許公報(A)
公開日2024-10-07
出願番号2023048474
出願日2023-03-24
発明の名称摺動部材
出願人大同メタル工業株式会社
代理人弁理士法人サトー
主分類C25D 7/00 20060101AFI20240927BHJP(電気分解または電気泳動方法;そのための装置)
要約【課題】Biを除去するための工数を低減しつつ、ライニング層と被覆層との接着力を向上する摺動部材を提供する。
【解決手段】本実施形態の摺動部材10は、Bi相17を含むライニング層11と、Niを含み、ライニング層11の表面に設けられ、ライニング層11との界面16において一部がライニング層11側へ侵入した侵入部19を形成している被覆層12と、を備える。ライニング層11と被覆層12との界面16を含む任意の観察領域20において、ライニング層11に含まれるBi相17の最大面積S1と、ライニング層11に侵入した侵入部19の最大面積S2との比の値R=S1/S2は、1.00≦R≦9.00である。
【選択図】図2
特許請求の範囲【請求項1】
Bi相を含むライニング層と、
Niを含み、前記ライニング層の表面に設けられ、前記ライニング層との界面において一部が前記ライニング層側へ侵入した侵入部を形成している被覆層と、
を備える摺動部材であって、
前記ライニング層と前記被覆層との界面で前記侵入部を含む任意の観察領域において、前記ライニング層に含まれる前記Bi相の最大面積S1と、前記ライニング層に侵入した前記侵入部の最大面積S2との比の値R=S1/S2は、1.00≦R≦9.00である、
摺動部材。
続きを表示(約 240 文字)【請求項2】
前記Bi相の最大面積S1は、
S1≦810μm

である、
請求項1記載の摺動部材。
【請求項3】
前記侵入部の最大面積S2は、
20μm

≦S2≦90μm

である、
請求項1記載の摺動部材。
【請求項4】
前記ライニング層に含まれるBiの濃度Cは、
0.1mass%≦C≦1.5mass%である、
請求項1記載の摺動部材。

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本実施形態は、摺動部材に関する。
続きを表示(約 2,500 文字)【背景技術】
【0002】
従来、Cu基のライニング層の表面にオーバレイ層が設けられた摺動部材が公知である(特許文献1)。特許文献1では、ライニング層に含まれる第2相成分を、ライニング層の表面から除去することにより、ライニング層とオーバレイ層との接合力の向上を図っている。また、オーバレイ層の安定を図るために、ライニング層の表面にNiの被覆層を設けることも開示されている。
しかしながら、ライニング層に含まれる第2相成分であるBiは、適用される機器の運転時における温度条件によっては、被覆層との界面においてBi-Ni化合物を生成する。このBi-Ni化合物は、ライニング層と被覆層との間の接着力の低下を招く原因となる。そのため、特許文献1のような構成を採用する場合、ライニング層の表面、すなわち被覆層と接する表面に存在するBi相を徹底的に除去する必要がある。このBi相の除去は、例えば酸を用いた洗浄、および超音波を照射する超音波洗浄など、長時間の洗浄を必要とし、大きな工数を必要とするという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
特開2009-203504号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、Biを除去するための工数を低減しつつ、ライニング層と被覆層との接着力を向上する摺動部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために本実施形態の摺動部材は、Bi相を含むライニング層と、Niを含み、前記ライニング層の表面に設けられ、前記ライニング層との界面において一部が前記ライニング層側へ侵入した侵入部を形成している被覆層と、を備える。前記ライニング層と前記被覆層との界面を含む任意の観察領域において、前記ライニング層に含まれる前記Bi相の最大面積S1と、前記ライニング層に侵入した前記侵入部の最大面積S2との比の値R=S1/S2は、1.00≦R≦9.00である。
【0006】
本実施形態の摺動部材は、Bi相の最大面積S1と侵入部の最大面積S2との比の値Rを設定している。洗浄などによってBi相が除去されると、ライニング層は除去されたBi相に対応する凹部が形成される。そのため、この除去されたBi相に相当する凹部は、被覆層を形成するNiまたはNi合金によって置換される。これにより、Bi-Ni化合物の生成は低減される。また、ライニング層にBi相の一部が残存しても、Bi相の除去で形成された凹部にNiまたはNi合金が侵入部として侵入する。そのため、凹部に侵入した侵入部は、ライニング層に食い込んだ状態となる。その結果、被覆層は、所定の形状でライニング層に引っ掛かった状態となり、Bi-Ni化合物が形成されてもライニング層からの剥離が低減される。これらにより、ライニング層に含まれるBi相の洗浄が不十分であっても、ライニング層と被覆層との間の接合力は確保される。したがって、Biを除去するための工数を低減しつつ、ライニング層と被覆層との接着力を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
一実施形態による摺動部材の断面を示す模式図
図1の観察領域を拡大した模式図
図2のIII部分を拡大した模式図
一実施形態による摺動部材の実施例および比較例の評価結果を示す概略図
一実施形態による摺動部材の実施例の評価結果を示す概略図
一実施形態による摺動部材の実施例の評価結果を示す概略図
一実施形態による摺動部材の実施例の評価結果を示す概略図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、一実施形態による摺動部材を図面に基づいて説明する。
図1に示すように摺動部材10は、ライニング層11および被覆層12を備えている。摺動部材10は、例えば円筒状または半割状に形成され、軸受装置などに用いられる。ライニング層11は、裏金層13の一方の端面に設けられている。また、摺動部材10は、被覆層12の裏金層13と反対側に、さらにオーバレイ層14を備えている。つまり、被覆層12は、ライニング層11とオーバレイ層14との間に設けられた中間層である。オーバレイ層14の表面は、図示しない相手材と摺動する摺動面15を形成する。なお、摺動部材10は、2分割した筒状の半割状に限らず、周方向へ3つ以上に分割してもよい。
【0009】
ライニング層11は、Cu基の合金で形成されている。ライニング層11は、Cuを主成分とし、Biを含んでいる。ライニング層11は、0.1~2.0mass%のBiを含んでいる。Biは、例えば形成されたライニング層11の切削や研磨などの機械的な加工時において加工性の向上に寄与する。ライニング層11は、Cu基合金に限らず、Sn基合金やAl基合金であってもよい。オーバレイ層の厚さは、10μm~30μmに設定することが好ましい。ライニング層11の場合は、0.1mm~1.5mmに設定することが好ましい。この場合、被覆層12の厚さは、1μm~5μmに設定することが好ましい。
【0010】
被覆層12は、Niで形成されている。被覆層12は、Ni合金であってもよい。この場合、被覆層12は、Niに30mass%以下のCrなどを含んでいてもよい。被覆層12は、ライニング層11の裏金層13と反対側の面に例えばめっきなどによって形成される。ライニング層11と被覆層12との境界は、界面16である。裏金層13は、例えば鋼などのように、Feを主成分とする合金で形成されている。ライニング層11と裏金層13との間には、図示しない中間層など1つ以上の層を設けてもよい。オーバレイ層14は、例えばSnまたはSnを主成分とする合金で形成されている。なお、オーバレイ層14は、SnまたはSn基の合金ではなく、その他の元素または合金であってもよい。
(【0011】以降は省略されています)

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