TOP
|
特許
|
意匠
|
商標
特許ウォッチ
Twitter
他の特許を見る
公開番号
2025076322
公報種別
公開特許公報(A)
公開日
2025-05-15
出願番号
2024178577
出願日
2024-10-11
発明の名称
アルカリ水電解用隔膜、及びその製造方法
出願人
東レ株式会社
代理人
主分類
C25B
13/02 20060101AFI20250508BHJP(電気分解または電気泳動方法;そのための装置)
要約
【課題】親水性が高くイオン透過性が良好で、気泡の付着によりイオン透過性が阻害されることがなく、ガス遮断性が良好であり、長期の電解においてもその性能が維持でき、更に、取り扱い性に優れ、生産性にも優れたアルカリ水電解用隔膜を提供すること。
【解決手段】多孔性支持体と多孔質層とを有するアルカリ水電解用隔膜であり、前記多孔質層は、前記アルカリ水電解用隔膜の少なくとも一方の表面を構成する層であり、前記多孔質層は有機ポリマーおよび親水性無機粒子を含み、前記有機ポリマーの量が、前記親水性無機粒子の総量に対して8質量%以下であることを特徴とする、アルカリ水電解用隔膜とする。
【選択図】なし
特許請求の範囲
【請求項1】
多孔性支持体と多孔質層とを有するアルカリ水電解用隔膜であり、
前記多孔質層は、前記アルカリ水電解用隔膜の少なくとも一方の表面を構成する層であり、
前記多孔質層は有機ポリマーおよび親水性無機粒子を含み、
前記有機ポリマーの量が、前記親水性無機粒子の総量に対して8質量%以下であることを特徴とする、
アルカリ水電解用隔膜。
続きを表示(約 790 文字)
【請求項2】
前記多孔質層の、前記多孔性支持体に接していない側の表面の水接触角が10°以上110°以下であることを特徴とする、請求項1に記載のアルカリ水電解用隔膜。
【請求項3】
前記親水性無機粒子は、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸鉛、硫酸バリウムから選択される少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1または2に記載のアルカリ水電解用隔膜。
【請求項4】
前記親水性無機粒子のメジアン径(D50)が0.2μm以上5.0μm以下である、請求項1または2に記載のアルカリ水電解用隔膜。
【請求項5】
前記有機ポリマーは、スチレン-ブタジエン系重合体であるか、少なくとも1種の酸変性ポリオレフィン系樹脂であるか、スチレン-ブタジエン系重合体と少なくとも1種の酸変性ポリオレフィン系樹脂との混合物である、請求項1または2に記載のアルカリ水電解用隔膜。
【請求項6】
請求項1に記載のアルカリ水電解用隔膜の製造方法であって、前記製造方法は、スチレン-ブタジエン系重合体であるか、少なくとも1種の酸変性ポリオレフィン系樹脂であるか、スチレン-ブタジエン系重合体と少なくとも1種の酸変性ポリオレフィン系樹脂との混合物である有機ポリマー、無機粒子、及び、水を主成分とする溶媒を含む分散溶液を調製する工程(1)、前記分散溶液を多孔性支持体に塗布し塗膜を形成する工程(2)、前記溶媒を乾燥させて多孔質層を得る工程(3)を含むことを特徴とする、アルカリ水電解用隔膜の製造方法。
【請求項7】
前記工程(1)において、有機ポリマーは水を主分散媒としたエマルジョンであることを特徴とする請求項6に記載のアルカリ水電解用隔膜の製造方法。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルカリ水電解用隔膜、及びアルカリ水電解用隔膜の製造方法に関する。
続きを表示(約 3,900 文字)
【背景技術】
【0002】
水素は、石油精製、化学合成材料、金属精製等、工業的に広く利用されている。また、近年は、家庭用コージェネレーションシステムや燃料電池自動車用としての高純度の水素に注目が集まっており、水素の需要は年々増加している。水素の工業的な製造方法の一つとして、水の電気分解がある。この方法は、化石燃料を改質する水素の製造方法に比べ、高純度の水素が得られるという利点がある。水の電気分解では、導電性を高めるために、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等の電解質を添加した水溶液を、電解液として用いることが一般的である。この電解液に、陰極と陽極によって直流電流を印加することで、水を電気分解する。中でも、アルカリ水電解法は、大規模に実施できて、他の水電解装置に比べると安価であるため、すでに商業プラントとして実績がある。
【0003】
電気分解(以下、単に「電解」という場合がある。)を行うための電解槽は、多孔質の隔膜を介して陽極室と陰極室に仕切られている。水の電気分解において電気(電子)を運ぶ媒体はイオンである。そのため、隔膜には高いイオン透過性(電解液との高い親和性)が求められる。すなわち、隔膜は親水性であることが望まれる。また、陽極室で発生する酸素ガスならびに陰極室で発生する水素ガスが隔膜付近に滞留することなく、速やかに系外に取り出されることが必要である。発生ガスは疎水性の粒子と言えるので、隔膜は疎水性とは反対の特性(すなわち親水性)であることが望まれる。さらに、陽極室で発生する酸素ガスと、陰極室で発生する水素ガスとを遮断し得るガスバリア性が必要とされる。水の電気分解は、30%程度の高濃度のアルカリ水を使用して、80~100℃、場合によっては1MPaの圧力下で行われるので、耐熱性、耐圧性、耐アルカリ性や機械的強度も必要とされる。
【0004】
このような要求に応えるアルカリ水電解用隔膜として、有機材料からなる多孔質構造を有する隔膜が提案されている。例えば特許文献1には、ポリフェニレンサルファイド等からなるポリマー布である多孔性支持体の両側に、ポリスルホンと酸化ジルコニウム等からなる多孔性ポリマー層を設けた隔膜が提案されている。この隔膜は、材料やプロセスを工夫することで多孔性ポリマー層の、多孔性支持体に接していない側の表面の孔径を制御することによりガスバリア性を高めている。また特許文献2には、ポリフェニレンサルファイド等からなる多孔性支持体の両側に、ポリスルホンと水酸化マグネシウム等からなる層を設けた隔膜が提案されている。この隔膜は、材料を適切に選択することで、隔膜表面のモルフォロジーを制御し、気泡の滞留を良好に抑制し高い電解効率を達成できるものである。また特許文献3には、ポリフェニレンサルファイド等からなる多孔性支持体の両側に、ポリスルホンと酸化ジルコニウム等からなる高分子多孔膜を設けた隔膜が提案されている。この隔膜は、材料を適切に選択することで、電解槽運転時の機器運転やガス発生による振動がある場合でも高分子多孔膜の無機粒子脱落を抑制し、長期的な運転を可能にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
国際公開第2019/011844号
特開2022-63055号公報
国際公開第2016/148302号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1~3のアルカリ水電解用隔膜は、多孔性支持体の両側にポリマーと無機粒子とからなる層を設ける方法が非溶媒誘起相分離法である。非溶媒誘起相分離法とは、高分子を良溶媒に溶解することで調製した均一溶液を、貧溶媒を含む凝固液に接触させることにより、貧溶媒が溶液中の良溶媒と置換することで高分子の溶解度が下がり、最終的に高分子が析出するものである。特許文献1~3においては、ポリスルホン等の耐アルカリ性のポリマーを有機溶媒に溶解させ、そこに無機粒子を分散させたものを多孔性支持体に塗布し、それを、水を主成分とする凝固槽に導入することで、ポリマーと無機粒子とからなる層を多孔性支持体上に析出・形成させている。析出に要する時間は非常に短いため、無機粒子の分散状態がそのまま固定化されたような状態となる。すなわち、一般的には親水性の高い無機粒子が、一般的には疎水性の高いポリマーに覆われた状態(面接着)で固定化される傾向にある。また、無機粒子に対するポリマーの量をある一定以上に少なくすることは困難である。かかる事情から、特許文献1~3に記載のものは、親水性が不足する傾向にあり、結果、イオン透過性や、陽極室で発生する酸素ガスと陰極室で発生する水素ガスとを遮断し得るガスバリア性が十分とはいえない。さらに、製造時に貧溶媒を乾燥させてしまうと、再度、湿潤させることが難しいことがあり、製品によっては貧溶媒に浸した状態で製品製造、出荷、輸送する必要があり、取り扱いが困難であるという問題もある。さらに、非溶媒誘起相分離法自体が、高粘度塗剤を塗工するため、あるいは溶液中を搬送するために低速搬送であることから、生産性に劣るプロセスであるという問題もある。
【0007】
本発明は、上記した問題に鑑みなされたものであり、親水性が高くイオン透過性が良好で、気泡の付着によりイオン透過性が阻害されることがなく、ガス遮断性が良好であり、長期の電解においても、当該イオン透過性とガス遮断性が維持でき、さらに、取り扱い性に優れ、生産性にも優れたアルカリ水電解用隔膜を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の課題に鑑み鋭意検討した結果、多孔性支持体と多孔質層とを有し、前記多孔質層は、前記多孔性支持体の少なくとも一方の表面を構成する層であるアルカリ水電解用隔膜において、多孔質層の無機粒子比率を高くすることで、本質的に疎水性であるポリマーの使用量を相対的に低くし、隔膜の親水性を向上することに成功した。
【0009】
すなわち、本発明は以下の構成を満たす。
<1>多孔性支持体と多孔質層とを有するアルカリ水電解用隔膜であり、前記多孔質層は、前記アルカリ水電解用隔膜の少なくとも一方の表面を構成する層であり、前記多孔質層は有機ポリマーおよび親水性無機粒子を含み、前記有機ポリマーの量が、前記親水性無機粒子の総量に対して8質量%以下であることを特徴とする、アルカリ水電解用隔膜。
<2>前記多孔質層の、前記多孔性支持体に接していない側の表面の水接触角が10°以上110°以下であることを特徴とする、<1>に記載のアルカリ水電解用隔膜。
<3>前記親水性無機粒子は、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸鉛、硫酸バリウムから選択される少なくとも1種であることを特徴とする、<1>または<2>に記載のアルカリ水電解用隔膜。
<4>前記親水性無機粒子のメジアン径(D50)が0.2μm以上5.0μm以下である、<1>または<2>に記載のアルカリ水電解用隔膜。
<5>前記有機ポリマーは、スチレン-ブタジエン系重合体であるか、少なくとも1種の酸変性ポリオレフィン系樹脂であるか、スチレン-ブタジエン系重合体と少なくとも1種の酸変性ポリオレフィン系樹脂との混合物である、<1>または<2>に記載のアルカリ水電解用隔膜。
<6><1>に記載のアルカリ水電解用隔膜の製造方法であって、前記製造方法は、スチレン-ブタジエン系重合体であるか、少なくとも1種の酸変性ポリオレフィン系樹脂であるか、スチレン-ブタジエン系重合体と少なくとも1種の酸変性ポリオレフィン系樹脂との混合物である有機ポリマー、無機粒子、及び、水を主成分とする溶媒を含む分散溶液を調製する工程(1)、前記分散溶液を多孔性支持体に塗布し塗膜を形成する工程(2)、前記溶媒を乾燥させて多孔質層を得る工程(3)を含むことを特徴とする、アルカリ水電解用隔膜の製造方法。
<7>前記工程(1)において、有機ポリマーは水を主分散媒としたエマルジョンであることを特徴とする<6>に記載のアルカリ水電解用隔膜の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、多孔質層の親水性無機粒子比率が高い塗膜構成とすることで、親水性無機粒子が露出している箇所が多くなり、隔膜としての親水性が向上する。また、ポリマーとして分散状態においてエマルジョンであるものを用いることで、無機粒子との接着が点接着となり、より前記の効果が向上する。また、製造プロセスにおいて凝固工程を経ないため、より低コストでの製造が可能である。また、得られた隔膜は親水性が高いため、一度乾燥させても再湿潤が容易である。すなわち、本発明によれば、親水性が高くイオン透過性が良好で、気泡の付着によりイオン透過性が阻害されることがなく、ガス遮断性が良好であり、長期の電解においてもその性能が維持でき、さらに、取り扱い性に優れ、生産性にも優れたアルカリ水電解用隔膜を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
(【0011】以降は省略されています)
この特許をJ-PlatPatで参照する
関連特許
東レ株式会社
積層体
11日前
東レ株式会社
織編物
1か月前
東レ株式会社
濾過方法
1か月前
東レ株式会社
吸着材料
2か月前
東レ株式会社
複合半透膜
29日前
東レ株式会社
強化繊維基材
10日前
東レ株式会社
炭素繊維織物
25日前
東レ株式会社
衝撃吸収部材
1日前
東レ株式会社
強化繊維基材
10日前
東レ株式会社
積層フィルム
2か月前
東レ株式会社
多孔質構造体
2か月前
東レ株式会社
CPUソケット
1か月前
東レ株式会社
CPUソケット
1か月前
東レ株式会社
不織布および衣料
2か月前
東レ株式会社
ポリエステル短繊維
4日前
東レ株式会社
太陽電池の製造方法
3日前
東レ株式会社
再生ポリエステル繊維
2か月前
東レ株式会社
多層積層複合断面繊維
2か月前
東レ株式会社
車両用衝撃吸収構造体
29日前
東レ株式会社
浄水器用カートリッジ
22日前
東レ株式会社
シート状物の検査方法
2か月前
東レ株式会社
樹脂フィルムの製造方法
21日前
東レ株式会社
濾過方法および濾過装置
23日前
東レ株式会社
ポリオレフィン微多孔膜
2か月前
東レ株式会社
織物および織物の製造方法
15日前
東レ株式会社
塗膜付きシートの加熱装置
14日前
東レ株式会社
炭素繊維シートの製造方法
1か月前
東レ株式会社
積層体およびその製造方法
2か月前
東レ株式会社
フィルム及びその製造方法
2か月前
東レ株式会社
ポリエステル繊維の製造方法
1か月前
東レ株式会社
強化繊維基材とその製造方法
10日前
東レ株式会社
半導体モールド用離型フィルム
1か月前
東レ株式会社
ポリプロピレン系樹脂フィルム
1か月前
東レ株式会社
不織布およびワイピング用シート
2か月前
東レ株式会社
二軸配向ポリプロピレンフィルム
17日前
東レ株式会社
不織布およびエアフィルター濾材
3日前
続きを見る
他の特許を見る