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公開番号2024173669
公報種別公開特許公報(A)
公開日2024-12-12
出願番号2024053809
出願日2024-03-28
発明の名称水性インクジェットインキ及び印刷物
出願人artience株式会社
代理人
主分類C09D 11/38 20140101AFI20241205BHJP(染料;ペイント;つや出し剤;天然樹脂;接着剤;他に分類されない組成物;他に分類されない材料の応用)
要約【課題】吐出安定性に優れ、非浸透性基材に対しても、ビーディングがなく、耐ブロッキング性にも優れる印刷物を得ることができる、水性インクジェットインキを提供する。
【解決手段】顔料、界面活性剤(A)、及び、水溶性有機溶剤(B)を含有する水性インクジェットインキであって、前記界面活性剤(A)が、エチレンオキサイド構造及びプロピレンオキサイド構造を有し、HLB値が10以下である、アセチレンジオール系界面活性剤(A1)を含み、前記水溶性有機溶剤(B)が、炭素数3~5のアルカンジオール類(B1)、及び、炭素数4~10のグリコールモノエーテル類(B2)を含み、前記炭素数3~5のアルカンジオール類(B1)の含有質量と、前記炭素数4~10のグリコールモノエーテル類(B2)の含有質量との比((B1)/(B2))が、0.8~12である、水性インクジェットインキ。
【選択図】なし
特許請求の範囲【請求項1】
顔料、界面活性剤(A)、及び、水溶性有機溶剤(B)を含有する水性インクジェットインキであって、
前記界面活性剤(A)が、下記一般式(1)で表される構造を有し、HLB値が10以下である、アセチレンジオール系界面活性剤(A1)を含み、
前記水溶性有機溶剤(B)が、炭素数3~5のアルカンジオール類(B1)、及び、炭素数4~10のグリコールモノエーテル類(B2)を含み、
前記炭素数3~5のアルカンジオール類(B1)の含有量と、前記炭素数4~10のグリコールモノエーテル類(B2)の含有量との質量比((B1)/(B2))が、0.8~12である、水性インクジェットインキ。
一般式(1):
TIFF
2024173669000009.tif
77
170
(一般式(1)において、R
1
及びR
2
は、それぞれ、分岐を有していてもよい、炭素数1~5のアルキル基を表し、EOはエチレンオキサイド基を表し、POはプロピレンオキサイド基を表す。また、m1、m2、n1、n2は、それぞれ、1~10の整数を表し、(m1+n1):(m2+n2)=1:9~9:1である。ただし、括弧内のエチレンオキサイド基及びプロピレンオキサイド基の付加様式は、ブロックでもランダムでもよい。)
続きを表示(約 240 文字)【請求項2】
前記界面活性剤(A)が、更に、アセチレンジオール系界面活性剤(A1)以外のノニオン性界面活性剤(A2)を含む、請求項1に記載の水性インクジェットインキ。
【請求項3】
前記アセチレンジオール系界面活性剤(A1)の含有量が、前記水性インクジェットインキの全量中0.1~5.0質量%である、請求項1または2に記載の水性インクジェットインキ。
【請求項4】
請求項1または2に記載の水性インクジェットインキを印刷してなる印刷物。

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、水性インクジェットインキ、及び、当該水性インクジェットインキを用いて形成された印刷物に関する。
続きを表示(約 2,800 文字)【背景技術】
【0002】
印刷の小ロット化及びニーズの多様化に伴い、デジタル印刷方式の普及が急速に進んでいる。デジタル印刷方式では、版を必要としないことから、小ロット対応、コストの削減、印刷装置の小型化が実現可能である。
【0003】
インクジェット印刷方式はデジタル印刷方式の一種であり、インクジェット印刷方式では、印刷基材(本願では、単に「基材」とも称する)に対して、インクジェットヘッドからインキの微小液滴を飛翔及び着弾させて、当該印刷基材上に画像及び/または文字を形成する。以下、印刷基材と、印刷基材上にインキの印刷によって形成された画像及び/または文字とを総称して、「印刷物」という。なお上記「画像」には、べた画像及び市松模様画像等のシームレス画像も含まれる。インクジェット印刷方式は、他のデジタル印刷方式と比べて、印刷装置のサイズ及びコスト、印刷時のランニングコスト、フルカラー化の容易性などの面で優れており、近年では産業印刷用途においても利用が進んでいる。
【0004】
インクジェット印刷方式に使用されるインキは、油系、溶剤系、活性エネルギー線硬化系、水系等多岐に渡る。これまで、産業印刷用途では、溶剤系及び活性エネルギー線硬化系のインキが使用されてきた。しかし近年の、環境や人に対する有害性への配慮及び対応といった点から、水系のインキ(水を主成分として含むインキ)の需要が高まっている。
【0005】
近年では、インクジェット印刷方式に使用される水系のインキ(本願では、「水性インクジェットインキ」とも称する)の用途拡大先として、紙器、ラベル、包装フィルムといった、パッケージ用途を要望する声が高まっている。当該パッケージ用途では、コート紙及びアート紙のような難浸透性の基材だけではなく、非浸透性の基材に対しても、色再現性や印刷画質が高く、更には実使用にも耐えられる特性を有する、印刷物が作製できるインキが求められる。ここで、上記非浸透性の基材は、例えば、ポリプロピレンフィルム(例えば、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム)、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、及び、ナイロンフィルム等である。
【0006】
これまでに実用化された水性インクジェットインキは、その殆どが、普通紙及び専用紙のような浸透性の高い基材に対して印刷するためのものであった。そのような水性インクジェットインキ、特に、後述するような所作を何も施していない水性インクジェットインキを、非浸透性の基材に用いた場合、当該基材に着弾した液滴は、表面張力が高い状態のまま、濡れ広がらない。またその状態で、隣り合った水性インクジェットインキの液滴と接触すると、それぞれの液滴に対して、表面積を小さくする方向に力が働き、ビーディングが発生する。ビーディングとは、印刷基材上で、水性インクジェットインキの液滴同士が引き合い合一することで、色の濃淡が数珠状になって現れる現象である。ビーディングが発生した印刷物は、印刷画質が著しく低下する。
【0007】
また、非浸透性の基材に対する印刷時には、水性インクジェットインキが当該基材内部に浸透吸収されることがないため、着弾した液滴の乾燥が不十分となり、上記基材に対する十分な密着性が得られない。その結果、印刷物を巻き取り状態あるいは積み重ねた状態で保管した際に、印字面に圧力がかかり、ブロッキングが発生してしまう。ブロッキングとは、インキ層に貼り付いた印刷基材をはがす際等に、当該インキ層の一部が当該印刷基材に取られる現象である。
【0008】
印刷画質、及び、耐ブロッキング性を向上させる(ブロッキングの発生を抑制する)方法として、水性インクジェットインキの表面張力を低下させることが一般的である。例えば、界面活性剤又は水溶性有機溶剤を水性インクジェットインキ中に添加することで、表面張力の低下が図られている。しかしながら、一般に、水性インクジェットインキの液滴が印刷基材に着弾したのち、隣り合う位置に別の液滴が着弾するまでの時間は、数百マイクロ秒から数十ミリ秒しかない。そのため、上述した方策を単に採用し、静的な表面張力を低下させただけでは、水性インクジェットインキの液滴を十分に濡れ広がらせることができない。その結果、表面張力が高い状態のまま、液滴同士が接触することになり、ビーディングが発生する。
【0009】
例えば、特許文献1には、ポリオキシエチレンアルキルエーテル系界面活性剤を使用し、動的表面張力を制御した水性インクジェットインキが開示されている。また、この水性インクジェットインキによれば、フェザリング(上質紙等の印刷基材の繊維に沿って、水性インクジェットインキの不規則な滲みが発生する現象)等が抑制され印刷画質に優れる印刷物が得られるとともに、吐出安定性の悪化も抑制できることが開示されている。確かに、上記水性インクジェットインキは、特許文献1の実施例で用いられているような浸透性基材に対する印刷画質の向上には有効である。しかしながら、上記水性インクジェットインキを、上記非浸透性基材に対する印刷に使用すると、十分に濡れ広がらない状態で液滴同士が接触することにより、ビーディングが発生する。
【0010】
特許文献2には、HLB値が3以下であるアセチレンジオール系界面活性剤と、HLB値が8以下である水溶性有機溶剤とを含む水性インクジェットインキが開示されている。また、この水性インクジェットインキを使用することで、難浸透性基材上において、当該水性インクジェットインキの塗れ広がり性不足に起因する白抜け及び凝集ムラが抑制され、印刷画質に優れた印刷物が得られることが開示されている。確かに、上記界面活性剤及び上記水溶性有機溶剤を使用することで、難浸透性基材に対する印刷における、凝集ムラ等の画像欠陥は軽減する。しかしながら、上記水性インクジェットインキを使って非浸透性基材に印刷すると、界面活性剤がインキ層の表面上に残存してしまい、ブロッキングが発生する恐れがある。また、上記界面活性剤はHLB値が小さく水に馴染みにくいため、インクジェットヘッドのノズル上の気液界面に集中的に配向しやすい。その結果、例えば、吐出中に、水性インクジェットインキが上記ノズルから外部に溢れ出てしまい、ノズル抜け(ノズルから水性インクジェットインキが吐出されない現象)及び吐出直進性が低下する恐れがある。これらの詳細は、後述する。
【先行技術文献】
【特許文献】
(【0011】以降は省略されています)

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