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公開番号
2024144074
公報種別
公開特許公報(A)
公開日
2024-10-11
出願番号
2023209631
出願日
2023-12-12
発明の名称
耐遅れ破壊性に優れた高強度鋼板
出願人
JFEスチール株式会社
代理人
個人
主分類
C23C
26/00 20060101AFI20241003BHJP(金属質材料への被覆;金属質材料による材料への被覆;化学的表面処理;金属質材料の拡散処理;真空蒸着,スパッタリング,イオン注入法,または化学蒸着による被覆一般;金属質材料の防食または鉱皮の抑制一般)
要約
【課題】自動車や建材用の強度部材に適した鋼板であって、優れた耐遅れ破壊特性を有するとともに、皮膜密着性にも優れた高強度鋼板を提供する。
【解決手段】所定の引張強度を有する高強度鋼板の表面に、アゾール化合物、ピリジン化合物、チオカルボニル化合物、メルカプト化合物、スルフィド化合物の中から選ばれる少なくとも1種からなる有機化合物(x)と有機樹脂(y)を含む皮膜(A)が形成され、この皮膜(A)は、有機化合物(x)と有機樹脂(y)を所定の付着量及び割合で含むとともに、所定の膜厚を有する。鋼板表面に有機樹脂皮膜である皮膜(A)を形成することで、大気中で付着する塩化物イオンを遮断するとともに、その皮膜(A)中に有機化合物(x)を含有させることで、塗装欠陥部での腐食が抑制されて優れた耐遅れ破壊特性が得られ、さらに皮膜(A)が有機樹脂皮膜であるため皮膜密着性にも優れる。
【選択図】なし
特許請求の範囲
【請求項1】
1180MPa以上の引張強度を有する鋼板の表面に、アゾール化合物、ピリジン化合物、チオカルボニル化合物、メルカプト化合物、スルフィド化合物の中から選ばれる少なくとも1種からなる有機化合物(x)と有機樹脂(y)を含む皮膜(A)を有し、
該皮膜(A)は、有機化合物(x)の付着量[x]が100~2000mg/m
2
、有機樹脂(y)の付着量[y]が200~3800mg/m
2
、有機化合物(x)と有機樹脂(y)の合計付着量[x]+[y]に対する有機化合物(x)の付着量[x]の割合[x]/([x]+[y])が0.05~0.5であり、膜厚が0.3~4.0μmであることを特徴とする高強度鋼板。
続きを表示(約 260 文字)
【請求項2】
有機樹脂(y)が、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、エチレン系樹脂の中から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の高強度鋼板。
【請求項3】
引張強度が1180MPa以上の鋼板の遅れ破壊を抑制するための皮膜を鋼板の表面に形成するための表面処理液であって、
アゾール化合物、ピリジン化合物、チオカルボニル化合物、メルカプト化合物、スルフィド化合物の中から選ばれる少なくとも1種からなる有機化合物(x)と有機樹脂(y)を含むことを特徴とする表面処理液。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車や建材用の強度部材に適した高強度鋼板であって、耐遅れ破壊性に優れた引張強度が1180MPa以上の高強度鋼板に関するものである。
続きを表示(約 2,100 文字)
【背景技術】
【0002】
近年、自動車に用いられる鋼板は、自動車のCO
2
排出量の低減及び安全性確保の観点から、高強度化が図られており、引張強度が1180MPa以上の高強度鋼板の適用も進められている。しかしながら、鋼材の強度を高めていくと、遅れ破壊という現象が生じやすくなることが知られている。遅れ破壊とは、高強度鋼材が静的な負荷応力(引張強度未満の負荷応力)を受けた状態で、一定時間が経過したとき、塑性変形を伴うことなく、突然脆性的な破壊が生じる現象である。遅れ破壊は、鋼材強度の増大とともに生じやすくなり、特に引張強度が1180MPa以上の高強度鋼でより顕著となる。
【0003】
鋼板の遅れ破壊は、プレス加工により所定の形状に成形したときの残留応力と、応力集中部における鋼の水素脆性により生じるものであることが知られている。非特許文献1には、水素脆性感受性は鋼材強度の増大とともに激しくなり、添加合金元素の増減に関わりなく、引張強度1200MPa以上の高強度鋼で顕著となることが報告されている。また、非特許文献2には、引張強度が1180Mpa級の高強度冷延鋼板において、水素割れが発生することが報告されている。この水素脆性の原因となる水素は、ほとんどの場合、外部環境から鋼中に侵入、拡散した水素であると考えられており、代表的には、鋼板の腐食の際に発生した水素が鋼中に侵入、拡散したものである。
【0004】
高強度鋼板におけるこのような遅れ破壊を防止するために、例えば、特許文献1では、鋼板の組織や成分を調整することにより、遅れ破壊感受性を弱める検討がなされている。また、特許文献2では、鋼板にNiまたはNi合金めっきを施すことにより、鋼板内部への水素侵入を低減することで、遅れ破壊を抑制する技術が開示されている。さらに、特許文献3には、鋼板に導電性高分子皮膜を形成することにより、鋼板内部への水素侵入を低減することで、耐遅れ破壊特性を改善する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
特開2004-231992号公報
特開平7-54194号公報
特開2018-44240号公報
【非特許文献】
【0006】
松山晋作著、「遅れ破壊」、日刊工業新聞社、1989年
田路勇樹、外4名、「高強度薄鋼板の耐水素脆化特性評価法」、鉄と鋼、日本鉄鋼協会、2009年、Vol.95、No.12、p.887-894
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1の手法では、外部環境から鋼板内部に侵入する水素量は変化しないため、遅れ破壊の発生を遅らせることは可能であるが、遅れ破壊の抑制効果は十分ではない。また、特許文献2の手法では、鋼板を加工した際にめっきの損傷が生じ、この損傷部からの水素侵入を低減できない可能性が考えられる。さらに特許文献3の手法は、皮膜と鋼板の密着性(以下、「皮膜密着性」という。)に課題があり、皮膜密着性と耐遅れ破壊特性を両立するためには、皮膜付与工程の前に鋼板を酸洗する工程が必要となる。
【0008】
したがって本発明の目的は、以上のような従来技術の課題を解決し、自動車や建材用の強度部材に適した引張強度が1180MPa以上の高強度鋼板であって、優れた耐遅れ破壊特性を有し、しかも皮膜密着性に優れるとともに、皮膜付与工程前に酸洗などの特別な工程を実施することなく製造することができる高強度鋼板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、使用環境中における鋼板の遅れ破壊を防止するために、鋼板内部へ侵入する水素量を低減する手段について鋭意検討および研究を重ねた。その結果、鋼板表面に形成する有機樹脂皮膜中に、アゾール化合物、ピリジン化合物などの特定の有機化合物を含有させることにより、良好な皮膜密着性を担保しつつ鋼板内部への水素侵入と鋼板の遅れ破壊を抑制できることを見出した。
本発明は、以上のような知見に基づきなされたものであり、その要旨は以下のとおりである。
【0010】
[1]1180MPa以上の引張強度を有する鋼板の表面に、アゾール化合物、ピリジン化合物、チオカルボニル化合物、メルカプト化合物、スルフィド化合物の中から選ばれる少なくとも1種からなる有機化合物(x)と有機樹脂(y)を含む皮膜(A)を有し、
該皮膜(A)は、有機化合物(x)の付着量[x]が100~2000mg/m
2
、有機樹脂(y)の付着量[y]が200~3800mg/m
2
、有機化合物(x)と有機樹脂(y)の合計付着量[x]+[y]に対する有機化合物(x)の付着量[x]の割合[x]/([x]+[y])が0.05~0.5であり、膜厚が0.3~4.0μmであることを特徴とする高強度鋼板。
(【0011】以降は省略されています)
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