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公開番号
2024121551
公報種別
公開特許公報(A)
公開日
2024-09-06
出願番号
2023028706
出願日
2023-02-27
発明の名称
認知症又は脳梗塞後遺症軽減剤
出願人
学校法人順天堂
代理人
弁理士法人アルガ特許事務所
主分類
A61K
35/19 20150101AFI20240830BHJP(医学または獣医学;衛生学)
要約
【課題】認知症及び/又は脳梗塞後遺症を軽減できる医薬を提供すること。
【解決手段】血小板を有効成分とする、認知症及び/又は脳梗塞後遺症軽減剤。
【選択図】なし
特許請求の範囲
【請求項1】
血小板を有効成分とする、認知症及び/又は脳梗塞後遺症軽減剤。
続きを表示(約 100 文字)
【請求項2】
脳梗塞後遺症が、麻痺、言語障害、記憶障害・高次脳機能障害、しびれ、めまい、廃用性症候群、拘縮及び痛みから選ばれる症状である請求項1記載の認知症及び/又は脳梗塞後遺症軽減剤。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、認知症又は脳梗塞後遺症を軽減する医薬に関する。
続きを表示(約 3,800 文字)
【背景技術】
【0002】
脳梗塞は徐々に増加の傾向をたどっており、一旦発症してしまうと機能回復を得るのはかなり難しく現行ではリハビリテーションしか治療がない状況である。現状要介護3-5に占める脳卒中の割合は疾患別で第一位であり、脳梗塞の機能回復療法はいまだ喫緊の課題である。
【0003】
脳梗塞の機能回復療法としては、幹細胞移植が試みられているが、まだ実現には至っておらず、倫理面でも課題がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
Miyamoto N.et al;Glia,Vol.68,Issue9,p.1910-1924
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、認知症又は脳梗塞後遺症を軽減できる医薬を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、白質の障害を起こす慢性脳底潅流モデル(両側総頸動脈狭窄モデル;脳血流低下による白質障害から認知症をきたすモデル)を用いて、オリゴアストロサイトの成熟障害やA1アストロサイト数の増加などを起こす機序について検討し、ミトコンドリアが細胞間で移動していること、細胞間を移動するミトコンドリアが細胞保護作用を発揮し、脳機能を再生するというモデル、すなわち白質病変を首座とする脳梗塞や血管性認知症の病態制御にミトコンドリアダイナミクスが関わるメカニズムを提唱した(非特許文献1)。
そしてさらに検討を重ね、慢性脳低潅流負荷前に運動負荷をかけたマウスでは、負荷無しの対照群と比し虚血性白質障害の進行が軽減され、筋肉内においてミトコンドリア数が増加していることを見出した。同時に運動負荷群では血小板中でのミトコンドリア量も対照群と比し増加していることも見出した。そこで、筋肉内のミトコンドリアが放出され、他の臓器である脳やその他の臓器に移行、取り込まれている可能性について検討した。大腿筋注射したラベル化ミトコンドリアにより評価し、注射部の筋肉のみならず、心筋、肺、肝臓、脾臓、さらには疑似虚血負荷により活性が落ちている細胞により多くのミトコンドリアが取り込まれることを観察した。この際、血液中でのラベル化ミトコンドリアの所在を確認すると遠心分離層のうち血小板を含むバフィーコート部に存在し、検鏡にて筋肉から抄出されたミトコンドリアが血小板に取り込まれていることを見出した。
この結果をもとに、慢性脳虚血モデルに血小板を週2回投与したところ、虚血性白質障害の進展抑制、認知機能進展抑制の効果が得られた。また、脳梗塞急性期モデルにおいても血小板投与で梗塞巣の大きさには有意差はなく若干の縮小効果にとどまるが、有意な機能予後の改善が得られた。すなわち、脳梗塞患者に、ミトコンドリアに富む血小板を投与すれば、認知症や脳梗塞後遺症が軽減できることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、次の発明[1]~[8]を提供するものである。
[1]血小板を有効成分とする、認知症及び/又は脳梗塞後遺症軽減剤。
[2]脳梗塞後遺症が、麻痺、言語障害、記憶障害・高次脳機能障害、しびれ、めまい、廃用性症候群、拘縮及び痛みから選ばれる症状である[1]記載の認知症及び/又は脳梗塞後遺症軽減剤。
[3]認知症及び/又は脳梗塞後遺症軽減剤製造のための血小板の使用。
[4]脳梗塞後遺症が、麻痺、言語障害、記憶障害・高次脳機能障害、しびれ、めまい、廃用性症候群、拘縮及び痛みから選ばれる症状である[3]記載の使用。
[5]認知症及び/又は脳梗塞後遺症を軽減するための血小板。
[6]脳梗塞後遺症が、麻痺、言語障害、記憶障害・高次脳機能障害、しびれ、めまい、廃用性症候群、拘縮及び痛みから選ばれる症状である[5]記載の血小板。
[7]血小板を必要な患者に投与することを特徴とする、認知症及び/又は脳梗塞後遺症の軽減方法。
[8]脳梗塞後遺症が、麻痺、言語障害、記憶障害・高次脳機能障害、しびれ、めまい、廃用性症候群、拘縮及び痛みから選ばれる症状である[7]記載の方法。
【発明の効果】
【0008】
認知症及び/又は脳梗塞患者に血小板を投与すれば、血小板中のミトコンドリアが脳内に移動することにより、脳梗塞の後遺症である麻痺、言語障害、記憶障害・高次脳機能障害、しびれ、めまい、廃用性症候群、拘縮及び痛みから選ばれる症状が軽減される。この治療方法は、現行の血小板製剤を用いることができるため、副作用、倫理面の問題もない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
MitoblightLT green (mitoBLT)をマウス大腿筋に筋注する様子を示す概念図である。
筋注後、mitoBLTが血管に移行し、脳をはじめとした各種臓器に移行した。大脳、肝臓、心臓、肺、脾臓でmitoBLTのシグナルを示す。
遠心後の血清、buffy coat、赤血球を検鏡した結果を示す。Buffy coatのみにmitoBLTのシグナルが観察されたことを示す。
全血での検鏡結果を示す。金座染色にて血小板にmitoBLTのシグナルか確認されたことを示す。
大脳でのmitoBLT局在の評価を示す。大脳においては、mitoBLTはCD31(血管内皮細胞)、CD140a(オリゴデンドロサイト前駆細胞)、GFAP(アストロサイト)と共存したことを示す。各図の数値はスケールバー。
筋肉におけるTOM20ウエスタンブロッティング結果を示す。
血小板におけるウエスタンブロッティング結果を示す。筋肉、血小板とも運動負荷群でTOM20(ミトコンドリアのマーカー)の発現量は優位に増加している。Β-actin;インターナルコントロール。
筋肉、血小板におけるATP活性評価(ミトコンドリアの活性化マーカー)を示す。*:p<0.05、n=5。
大腿筋、血小板の電子顕微鏡画像を示す。運動負荷群でミトコンドリアが増加している。数値はスケールバー。
疑似慢性虚血負荷によるミトコンドリア投与の評価を示す。WST-8asseyによる生存率評価であり、ミトコンドリア投与による差を認めないことを示す。
疑似慢性虚血負荷によるミトコンドリア投与の評価を示す。アストロサイトにおける保護効果の評価であり、慢性虚血負荷により細胞障害性アストロサイト(C3d陽性)に変化するが、ミトコンドリア投与により保護的アストロサイト(S100A10陽性)で保てることを示す。
疑似慢性虚血負荷によるミトコンドリア投与の評価を示す。オリゴデンドロサイトにおける保護効果の確認であり、慢性虚血によりオリゴデンドロサイト前駆細胞(PDGFRα陽性)のままとなり成熟が妨げられるが、ミトコンドリア投与により成熟オリゴデンドロサイト(MBP陽性)となる。*;p<0.05 vsCoCl2-,mito-。
WST-8asseyによる生存率評価であり、濃度依存的に神経細胞の生存率は改善することを示す。
成熟神経細胞(NeuN)、軸索マーカー(SMI31)の発現はミトコンドリア投与濃度依存的に改善することを示す。*;p<0.05 vsOGD-,mito-。各群n=5。
IVISによるラベル化ミトコンドリア評価であり、慢性虚血モデルでは手術後14日、急性期モデルでは手術後24時間にて血小板を投与し、その24時間後に評価した結果である。病変部位に一致してシグナルの強い集簇を認めることを示す。
慢性虚血モデルにおける虚血性白質障害の評価であり、Fluoromyelin;髄鞘染色)虚血性白質障害の進行をV群において認めるが、P群では進行は認めていないことを示す。N=8。
Y-maze試験結果であり、活動性(総arm進入数)には差を認めないものの、近似記憶障害の進行をV群で認めることを示す。
急性期モデルにおける手術後14日目での梗塞巣評価であり、V群、P群には差を認めないことを示す。n=10。
mNSS(脳梗塞症状)、ロタロッド試験(運動機能)、コーナーテスト(麻痺の程度、空間認識能力)はP群にて優位に改善していることを示す。n=10。S;偽手術群、V;vehicle投与群、P;血小板投与群、*;p<0.05 vsS群、†;p<0.05 V群vsP群。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一態様は、血小板を有効成分とする認知症及び/又は脳梗塞後遺症軽減剤である。
血小板は、現在、血小板減少症を伴う疾患を適応症として用いられている。血小板中には、ミトコンドリアが存在することは知られているが、血小板がミトコンドリアの運び屋として脳細胞にミトコンドリアを供給することは全く知られていなかった。
(【0011】以降は省略されています)
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