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公開番号2024121311
公報種別公開特許公報(A)
公開日2024-09-06
出願番号2023028343
出願日2023-02-27
発明の名称炭素繊維用メソフェーズピッチ及びメソフェーズピッチ系炭素繊維の製造方法
出願人国立大学法人九州大学
代理人個人
主分類C10C 3/02 20060101AFI20240830BHJP(石油,ガスまたはコークス工業;一酸化炭素を含有する工業ガス;燃料;潤滑剤;でい炭)
要約【課題】 メソフェーズピッチ系炭素繊維の前駆体であるメソフェーズピッチを安価に製造できる方法を提供すること。
【解決手段】 重質残渣油を加圧熱処理した後、不活性ガス吹込み熱処理をして、光学異方性成分であるメソゲン成分及び光学等方性成分である溶媒成分を含むピッチ成分aを調製するA工程と、重質残渣油を加圧熱処理した後、不活性ガス吹込み熱処理をして、光学異方性成分であるメソゲン成分及び光学等方性成分である溶媒成分を含むピッチ成分a’を調製し、該ピッチ成分a’からメソゲン成分を分離して、メソゲン成分を主体とするピッチ成分bを取得するB工程と、前記A工程で取得したメソゲン成分及び溶媒成分を含むピッチ成分a、並びに前記B工程で取得したメソゲン成分を主体とするピッチ成分bを、混合し、熱処理するC工程と、を有するメソフェーズピッチの製造方法である。
【選択図】図1


特許請求の範囲【請求項1】
重質残渣油を加圧熱処理した後、不活性ガス吹込み熱処理をして、光学異方性成分であるメソゲン成分及び光学等方性成分である溶媒成分を含むピッチ成分aを調製するA工程と、
重質残渣油を加圧熱処理した後、不活性ガス吹込み熱処理をして、光学異方性成分であるメソゲン成分及び光学等方性成分である溶媒成分を含むピッチ成分a’を調製し、該ピッチ成分a’からメソゲン成分を分離して、メソゲン成分を主体とするピッチ成分bを取得するB工程と、
前記A工程で取得したメソゲン成分及び溶媒成分を含むピッチ成分a、並びに前記B工程で取得したメソゲン成分を主体とするピッチ成分bを、混合し、熱処理するC工程と、
を有することを特徴とする炭素繊維用メソフェーズピッチの製造方法。
続きを表示(約 900 文字)【請求項2】
前記ピッチ成分a中に、溶媒成分が50wt%以上含まれていることを特徴とする請求項1記載の炭素繊維用メソフェーズピッチの製造方法。
【請求項3】
前記B工程におけるメソゲン成分を分離する方法が、溶媒抽出法であることを特徴とする請求項1記載の炭素繊維用メソフェーズピッチの製造方法。
【請求項4】
前記溶媒抽出法に用いる溶媒が、テトラヒドロフラン、キノリン、ピリジン、及びジメチルホルムアミドから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項3記載の炭素繊維用メソフェーズピッチの製造方法。
【請求項5】
前記A工程において、不活性ガス吹込み熱処理の後に、減圧蒸留処理を行うことを特徴とする請求項1記載の炭素繊維用メソフェーズピッチの製造方法。
【請求項6】
前記A工程及び/又はB工程における加圧熱処理が、密閉容器内で250~450℃で行われることを特徴とする請求項1記載の炭素繊維用メソフェーズピッチの製造方法。
【請求項7】
前記A工程及び/又はB工程における不活性ガス吹込み熱処理が、350~500℃で行われることを特徴とする請求項1記載の炭素繊維用メソフェーズピッチの製造方法。
【請求項8】
前記C工程における熱処理が300~500℃で行われることを特徴とする請求項1記載の炭素繊維用メソフェーズピッチの製造方法。
【請求項9】
前記C工程において、混合成分中の初期のメソゲン成分が50wt%以上となるようピッチ成分a及びピッチ成分bを混合することを特徴とする請求項1記載の炭素繊維用メソフェーズピッチの製造方法。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか記載の製造方法により製造した炭素繊維用メソフェーズピッチを溶融紡糸するD工程と、
溶融紡糸したメソフェーズピッチを不融化するE工程と、
不融化したメソフェーズピッチを炭素化及び黒鉛化するF工程と、
を有することを特徴とするメソフェーズピッチ系炭素繊維の製造方法。

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素繊維用メソフェーズピッチの製造方法、及びかかる製造方法により得られた炭素繊維用メソフェーズピッチを用いたメソフェーズピッチ系炭素繊維の製造方法に関する。
続きを表示(約 1,700 文字)【背景技術】
【0002】
代表的な炭素繊維の一つであるメソフェーズピッチ系炭素繊維は、比強度および比弾性率が高いことで知られている。このメソフェーズピッチは、一般的に、石炭及び石油の蒸留或いは乾留で生じる重質残渣油を原料に、熱処理工程を経て製造される。具体的には、熱処理過程中に、光学等方性であった原料に、徐々に光学異方性である球晶が生じ始め、それらが発生・成長・合体を繰り返すことで、最終的に光学異方性のピッチに変化し、メソフェーズピッチが製造される。
【0003】
例えば、炭素繊維用メソフェーズピッチは、コールタール(CT)や石油分解重油(スラリーオイル、SO)を原料に、水素化による構造の最適化、熱処理による適度な縮重合と分子積層の促進などを行うことで得ることができる(特許文献1参照)。水素化工程では、原料に含まれる芳香族化合物にナフテン構造を導入することで、溶融紡糸におけるピッチの流動性を増加させ、メソフェーズピッチに紡糸性を付与する。その後の熱処理工程では、導入したナフテン構造を確保しながら、適当な縮重合反応を誘起させ、平面性の高い芳香族化合物を形成させる。これら形成した化合物らが、(002)方向に積層することで、光学異方性が生じ、メソフェーズピッチが得られる。
【0004】
このような工程を経て炭素繊維用メソフェーズピッチは製造されるが、この水素化処理を用いる方法には、得られたメソフェーズピッチの原料対比収率が低いという問題がある。例えば、軽度の水素化工程を経て製造されたメソフェーズピッチの原料対比収率は、15wt%程度であり、さらに高い紡糸性(溶融紡糸時に糸切れしない)を有するメソフェーズピッチを製造するとなると、水素化程度を増加させる必要があり、メソフェーズピッチの原料対比収率はより低くなる。
【0005】
この原料対比収率の低下は、水素化処理により、高分子成分であるメソゲン成分の一部が低分子化によって溶媒成分へと変化し、溶媒成分が過度に増加してしまうことが要因と考えられる。他方で、水素化の程度を下げ、水素化処理において低分子化を抑制したとしても、光学異方性のメソフェーズピッチを調製するためには、厳しい条件での熱処理が必要となり、これにより、不融性の固形分が生じ、また、溶媒成分の量や種類が不足することで紡糸性を担保できない。
【0006】
このようなメソフェーズピッチの原料対比収率の低さによって、炭素繊維製造のコストが大幅に上昇しており、炭素繊維の社会的普及の障害となっている。
【0007】
上記の問題を解決するために、水素化処理を用いない製造方法も提案されており、その代表的な一つの手法が、ナフタレンを原料としたHF/BF

触媒の熱処理合成である(非特許文献1参照)。この手法を用いれば、水素化工程を経ずとも炭素繊維用メソフェーズピッチの製造が可能であり、この手法で製造された炭素繊維用メソフェーズピッチは、実際に、商品化・市販されていた。
【0008】
しかしながら、この手法も、石炭・石油由来の重質残渣油よりも高価なナフタレンを原料としていることや、特殊で高価な設備が必要であり、その維持にコストもかかることなどの問題から、炭素繊維製造のコストの低減を十分に図ることはできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
特許5956610号公報
【非特許文献】
【0010】
Mochida I., Shimizu K., Korai Y., Otsuka H., Sakai Y., Fujiyama S., Preparation of mesophase pitch from aromatic hydrocarbons by the aid of HF/BF3, Carbon 1990; 28(2-3):311-319.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
(【0011】以降は省略されています)

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