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公開番号
2024115903
公報種別
公開特許公報(A)
公開日
2024-08-27
出願番号
2023021803
出願日
2023-02-15
発明の名称
圧縮機ユニット
出願人
株式会社神戸製鋼所
代理人
個人
,
個人
主分類
F04B
49/02 20060101AFI20240820BHJP(液体用容積形機械;液体または圧縮性流体用ポンプ)
要約
【課題】水素ガスのボイルオフガスの幅広い温度変化からその構成機器を適切に保護することができるレシプロ式の圧縮機ユニットを提供する。
【解決手段】圧縮機ユニット10において、制御部50は、起動時であって中間温度センサ46によって取得された温度TS1が閾値T1以上である場合に、第1圧縮ステージ12から吐出された水素ガスがクーラ部58に流通するように第1切替手段CV1を第1切替状態とする。検出温度TS1が閾値T1未満である場合には、第1圧縮ステージ12から吐出された水素ガスがクーラ部58を経由しないように第1切替手段CV1を第2切替状態とする。第1切替手段CV1が第2切替状態である場合に、制御部50は、吸込温度TS2が予め定められた温度範囲内になるようにスピルバック弁18bを制御する。前記温度範囲は、空気の液化温度に基づく基準温度よりも高く、かつ、0℃未満の範囲で設定される。
【選択図】図1
特許請求の範囲
【請求項1】
液体水素貯槽からボイルオフガスである水素ガスを回収し、その少なくとも一部をエンジン、発電設備又はボイラの少なくとも一つを含む需要先に供給するレシプロ式の圧縮機ユニットであって、
吸込流路から吸入した水素ガスを圧縮する複数の圧縮ステージと、
前記複数の圧縮ステージを駆動するクランク機構と、
前記複数の圧縮ステージの間の中間流路に設けられるクーラ部と、
前記クーラ部への水素ガスの流入状態を切り替える第1切替手段と、
前記複数の圧縮ステージの吐出側の吐出流路に吐出された後の水素ガスまたは前記中間流路を流通する水素ガスを前記吸込流路に戻すスピルバック流路、および、前記スピルバック流路においてスピルバック量を調整するスピルバック弁を含むスピルバック部と、
前記中間流路に配置される第1温度センサと、
前記吸込流路において、前記スピルバック流路の接続部と前記複数の圧縮ステージの内の最前段の第1圧縮ステージとの間に配置される第2温度センサと、
前記第1切替手段および前記スピルバック弁をそれぞれ制御する制御部と、
を備え、
前記第1圧縮ステージおよび前記複数の圧縮ステージの内の前記第1圧縮ステージを除く後続圧縮ステージのそれぞれは、
シリンダ部と、
ピストンと、
前記ピストンを前記クランク機構に接続するピストンロッドと、
前記ピストンロッドと前記シリンダ部との間をシールするロッドパッキンと、
を備え、
前記第1圧縮ステージは、空冷式かつ無給油式であり、
前記制御部は、
起動時であって前記第1温度センサによって取得された温度TS1が0℃より大きい所定の第1温度閾値T1以上である場合に、前記第1圧縮ステージから吐出された水素ガスを前記クーラ部に流通させて冷却させる第1切替状態となるように前記第1切替手段を制御し、
前記第1温度センサによって取得された温度TS1が前記第1温度閾値T1未満になった場合に、前記クーラ部を経由させずに水素ガスを当該クーラ部が設けられた箇所よりも下流側の圧縮ステージに送る第2切替状態となるように前記第1切替手段を制御し、
前記第1切替手段が前記第2切替状態である場合に、前記第2温度センサによって取得された吸込温度TS2を参照し、前記吸込温度TS2が予め定められた温度範囲内になるように、前記スピルバック弁を制御し、
前記予め定められた温度範囲は、空気の液化温度に基づく基準温度よりも高く、かつ、0℃未満の範囲で設定される、圧縮機ユニット。
続きを表示(約 2,800 文字)
【請求項2】
前記第1圧縮ステージに吸入される前の水素ガスと、前記吐出流路に吐出された後の水素ガス、または、前記中間流路を流通する水素ガスとを熱交換可能なプレヒータと、
前記吐出流路における前記プレヒータの下流に配置される第3温度センサと、
前記プレヒータへの水素ガスの流入状態を調整可能な流量調整手段と、
をさらに備え、
前記制御部は、
前記第1切替手段が前記第2切替状態である場合に、
前記プレヒータによる前記吸込流路の水素ガスの加温を前記スピルバック部による加温に対して優先して行えるように前記プレヒータへの水素ガスの流入量を増加させつつ、前記第3温度センサによって取得された前記プレヒータの下流側の温度TS3が閾値以下とならないように前記流量調整手段を制御し、
前記吸込温度TS2が設定値温度以下になる場合には、当該吸込温度TS2が予め定められた温度範囲内になるように、前記流量調整手段および前記スピルバック弁を制御する、請求項1に記載の圧縮機ユニット。
【請求項3】
前記第1圧縮ステージに吸入される前の水素ガスと、前記中間流路における前記第1圧縮ステージと前記後続圧縮ステージとの間を流通する水素ガスとを熱交換可能なプレヒータと、
前記中間流路における前記プレヒータの下流に配置される第3温度センサと、
をさらに備え、
前記第1切替手段は、前記第1圧縮ステージから吐出された水素ガスを、前記クーラ部への水素ガスの流入状態、前記後続圧縮ステージへの直接的な水素ガスの流入状態、および、前記プレヒータへの水素ガスの流入状態の何れかに切替可能であり、
前記制御部は、
前記第1切替手段が前記第2切替状態である場合に、前記スピルバック部による前記吸込流路の水素ガスの加温および前記プレヒータによる加温の併用により前記吸込流路の水素ガスが前記予め定められた温度範囲内となるように、前記スピルバック弁および前記第1切替手段を制御し、
前記第3温度センサによって取得された前記プレヒータの下流側の温度TS3が閾値未満となった場合に、前記プレヒータへの水素ガスの流入をそれ以上増加させないように前記第1切替手段を制御する、請求項1に記載の圧縮機ユニット。
【請求項4】
前記中間流路に設けられた分岐点から分岐して、前記需要先で要求される水素ガスの圧力よりも低い水素ガスを処理できる中間段需要先に水素ガスを排出可能な低圧ガス排出路と、
前記低圧ガス排出路または前記分岐点に設けられる第3切替手段と、
前記後続圧縮ステージによる水素ガスの処理量を調整する調整手段と、
をさらに備え、
前記制御部は、
前記第1切替手段が前記第2切替状態である場合に、前記スピルバック弁の制御と並行して、前記中間段需要先の要求量または前記需要先の要求量の変動分に応じて前記低圧ガス排出路に水素ガスが排出されるように前記第3切替手段を制御しつつ、前記後続圧縮ステージの処理量が調整されるように前記調整手段を制御する、請求項1に記載の圧縮機ユニット。
【請求項5】
前記後続圧縮ステージが2以上の圧縮ステージで構成され、
前記中間流路に設けられた分岐点から分岐して、前記需要先で要求される水素ガスの圧力よりも低い水素ガスを処理できる中間段需要先に水素ガスを排出可能な低圧ガス排出路と、
前記低圧ガス排出路または前記分岐点に設けられる第3切替手段と、
前記後続圧縮ステージを構成する前記2以上の圧縮ステージの内の前記分岐点よりも下流側の圧縮ステージによる水素ガスの処理量を調整する調整手段と、
をさらに備え、
前記制御部は、
前記第1切替手段が前記第2切替状態である場合に、前記スピルバック弁の制御と並行して、前記中間段需要先の要求量または前記需要先の要求量の変動分に応じて前記低圧ガス排出路に水素ガスが排出されるように前記第3切替手段を制御しつつ、前記後続圧縮ステージにおける前記下流側の圧縮ステージの処理量が調整されるように前記調整手段を制御する、請求項1に記載の圧縮機ユニット。
【請求項6】
前記調整手段が、
前記スピルバック流路よりも上流側において前記後続圧縮ステージの吸込側に水素ガスを戻す第2スピルバック流路、および、前記第2スピルバック流路においてスピルバック量を調整する第2スピルバック弁を含む第2スピルバック部を備え、
前記制御部は、
前記第1切替手段が前記第2切替状態である場合に、前記中間段需要先の前記要求量または前記需要先の要求量の前記変動分に相当する流量が前記第2スピルバック部によって前記後続圧縮ステージの吸込側に戻されるように前記第2スピルバック弁を制御する、請求項4または5に記載の圧縮機ユニット。
【請求項7】
前記調整手段が、
前記後続圧縮ステージのシリンダ部に装着されたオンオフ式の吸込弁アンローダをさらに備え、
前記制御部は、
前記第1切替手段が前記第2切替状態である場合に、前記第2スピルバック弁の開度が、あらかじめ設定されている開度閾値b1より大きくなった場合には、前記吸込弁アンローダが制御されて前記後続圧縮ステージのロード量がダウンされ、前記第2スピルバック弁の開度が開度閾値b2よりも小さくなった場合は、前記吸込弁アンローダが制御されて後続圧縮ステージのロード量がアップされるように制御が実行される、請求項6に記載の圧縮機ユニット。
【請求項8】
前記調整手段が、
前記後続圧縮ステージのシリンダ部に装着された吸込弁アンローダと、
前記吸込弁アンローダを開閉させる油圧式又は電気式の駆動装置と、
クランク軸の回転運動に連動させ前記吸込弁アンローダが動作するタイミングを制御する制御装置からなる無段階の容量調整装置と、
を備え、
前記制御部は、
前記第1切替手段が前記第2切替状態である場合に、前記中間段需要先の前記要求量または前記需要先の要求量の前記変動分に相当する流量に応じて、前記シリンダ部内部から吸込側へと吸入された水素ガスが戻されるように前記容量調整装置を制御することにより、前記後続圧縮ステージの処理量を調整する、請求項4または5に記載の圧縮機ユニット。
【請求項9】
前記後続圧縮ステージの少なくとも一部は、ロッドパッキンから前記吸込流路へとリークガスを戻すリークガス排出部を有する、請求項1に記載の圧縮機ユニット。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、レシプロ式の圧縮機ユニットに関する。
続きを表示(約 1,700 文字)
【背景技術】
【0002】
近年、環境を考慮して、水素を発電や自動車等の燃料として用いることが考えられており、水素の需要が増大している。また、液化天然ガス(LNG)、液体水素(LH2)などの低温のボイルオフガス(BOG)を圧縮機によって回収してエンジン等の需要先に供給することが行われている。特にLH2から発生したボイルオフガスは非常に低温である。このため、圧縮機がそのままボイルオフガスを吸入する構成を採用すると、極低温に適した材料を選択する必要があったり、熱変形量を考慮した設計条件を採用したり、厳重な断熱処理を実施したりする必要がある等の制約がかかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
特開2020-172870 号公報
特許第7085079号公報
特開2001-65795号公報
特開2019-27590号公報
特開平4-12178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1では次のような問題が指摘されている。「近年、新たなエネルギ源として、水素が注目されている。エネルギ源として水素を利用する場合にも、天然ガスのように、貯蔵および輸送時には、液化した状態とすることが想定されている。しかし、水素は、液化温度が空気の液化温度よりも低いという特性を有する。そのため、天然ガス等を対象とした往復動圧縮機といった設備をそのまま水素に適用すると、極低温の液体水素に起因する不具合が生じる可能性がある。例えば、液体水素が供給される装置の周辺に液化空気を生じさせてしまう。」
【0005】
これに対して、特許文献1では「この往復動圧縮機は、ガスを圧縮する圧縮部が容器部に収容されている。そして、この容器部は、圧縮部の周囲に真空領域を形成する。そうすると、圧縮部は、真空領域によって外部領域から熱的に絶縁される。つまり、圧縮部に極低温のガスが提供された場合にも、往復動圧縮機の周辺領域を過度に冷却することがない。従って、液化空気の発生を抑制できる。」と説明されている。
【0006】
しかしながら、一般的に、運転中の振動を伴う動機械や、点検開口部を通して定期的なメンテナンスを必要とする設備(例えば往復動圧縮機など)等では高性能な断熱が非常に難しい。
【0007】
特許文献2、3ではスクリュー圧縮機を対象として、プレヒータを利用して吸込みガスの温度を調整する技術が提案されている。また、特許文献4には、レシプロ式の圧縮機が開示されており、圧縮部に吸入される前のボイルオフガスと圧縮部から吐出された後のボイルオフガスとを熱交換させる熱交換器が示されている。しかし、この熱交換器は圧縮部で圧縮された後のボイルオフガスを再液化するためのものであるため、圧縮部の下流に配置されたクーラによって冷却されたボイルオフガスが熱交換器に導入される。
【0008】
一方、特許文献5では次のような問題も指摘されている。「従来、LNG低温貯蔵タンク内で蒸発したBOG(ボイルオフガス)は低温ガス多段圧縮機で圧縮してプラントに供給する場合、BOGの温度はマイナス百数度から常温と広い範囲で変動しやすく、特に多段圧縮機の起動直後は、吸込側温度が常温近くまで昇温しており、これをそのまま圧縮すると吐出温度が許容温度以上となり運転できない。」
【0009】
液化水素では、LNGよりも沸点が低いことから特許文献5で開示された問題はより深刻となり得る。液化水素のボイルオフガスを扱うレシプロ圧縮機では、極低温の状態から常温までの幅広い温度帯域に対応させる必要がある。
【0010】
そこで、本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、液化水素のボイルオフガスを扱うレシプロ式の圧縮機ユニットについて、ボイルオフガスの幅広い温度変化からその構成機器を適切に保護することである。
【課題を解決するための手段】
(【0011】以降は省略されています)
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