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公開番号
2024114511
公報種別
公開特許公報(A)
公開日
2024-08-23
出願番号
2023020319
出願日
2023-02-13
発明の名称
ステンレス鋼材及びその製造方法
出願人
日鉄ステンレス株式会社
代理人
アクシス国際弁理士法人
主分類
C23C
8/14 20060101AFI20240816BHJP(金属質材料への被覆;金属質材料による材料への被覆;化学的表面処理;金属質材料の拡散処理;真空蒸着,スパッタリング,イオン注入法,または化学蒸着による被覆一般;金属質材料の防食または鉱皮の抑制一般)
要約
【課題】塩分が付着した状態で高温環境に曝されても耐食性に優れ、黒色の意匠性が良好なステンレス鋼材及びその製造方法を提供する。
【解決手段】素材と、素材上に形成された酸化皮膜とを有するステンレス鋼材である。素材は、質量基準で、C:0.100%以下、Si:1.00%以下、Mn:0.05~1.00%、Ni:1.00%以下、P:0.100%以下、S:0.100%以下、Cr:16.00~40.00%、N:0.100%以下、Ti:0.08~0.50%、Cu:1.00%以下及びMo:3.00%以下を含み、残部がFe及び不純物からなる組成を有する。酸化皮膜は、厚みが50nm以上のCr
2
O
3
内層を有し、全体厚みが300~1000nmである。素材と酸化皮膜との間の界面におけるCr濃度は8.0質量%以下である。
【選択図】なし
特許請求の範囲
【請求項1】
素材と、前記素材上に形成された酸化皮膜とを有するステンレス鋼材であって、
前記素材は、質量基準で、C:0.100%以下、Si:1.00%以下、Mn:0.05~1.00%、Ni:1.00%以下、P:0.100%以下、S:0.100%以下、Cr:16.00~40.00%、N:0.100%以下、Ti:0.08~0.50%、Cu:1.00%以下及びMo:3.00%以下を含み、残部がFe及び不純物からなる組成を有し、
前記酸化皮膜は、厚みが50nm以上のCr
2
O
3
内層を有し、全体厚みが300~1000nmであり、
前記素材と前記酸化皮膜との間の界面におけるCr濃度が8.0質量%以下であるステンレス鋼材。
続きを表示(約 930 文字)
【請求項2】
前記素材は、質量基準で、Nb:0.50%以下、Al:1.00%以下、Zr:1.00%以下、Co:1.00%以下、V:1.00%以下、W:1.00%以下、REM:0.100%以下、Ca:0.100%以下、Sn:0.100%以下及びB:0.0100%以下から選択される少なくとも1種を更に含む、請求項1に記載のステンレス鋼材。
【請求項3】
前記酸化皮膜は、L
*
a
*
b
*
表色系における明度指数L
*
が50.0以下、クロマネチックス指数a
*
及びb
*
が±5.00以内である、請求項1又は2に記載のステンレス鋼材。
【請求項4】
塩分が付着した状態の高温腐食試験後に前記酸化皮膜の剥離面積率が5.0%以下である、請求項1又は2に記載のステンレス鋼材。
【請求項5】
質量基準で、C:0.100%以下、Si:1.00%以下、Mn:0.05~1.00%、Ni:1.00%以下、P:0.100%以下、S:0.100%以下、Cr:16.00~40.00%、N:0.100%以下、Ti:0.08~0.50%、Cu:1.00%以下及びMo:3.00%以下を含み、残部がFe及び不純物からなる組成を有し、ビッカース硬さが200HV以上である圧延材に対し、O
2
濃度が2~20体積%、水蒸気濃度が20体積%以下であり、且つ以下の式(1):
O
2
濃度+水蒸気濃度 ・・・(1)
で表される値が12~35である雰囲気下、800℃以上の温度で1分以上の熱処理を行うステンレス鋼材の製造方法。
【請求項6】
前記圧延材は、質量基準で、Nb:0.50%以下、Al:1.00%以下、Zr:1.00%以下、Co:1.00%以下、V:1.00%以下、W:1.00%以下、REM:0.100%以下、Ca:0.100%以下、Sn:0.100%以下及びB:0.0100%以下から選択される少なくとも1種を更に含む、請求項5に記載のステンレス鋼材の製造方法。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステンレス鋼材及びその製造方法に関する。
続きを表示(約 2,300 文字)
【背景技術】
【0002】
ステンレス鋼材は、耐食性に優れた素材であり、光沢のある銀白色の地肌を活かし、内装建材、外装建材、排気系部品などの各種部品に用いられている。また、ステンレス鋼材の意匠性を高める目的で、化学発色法、塗装法、酸化処理法などの方法を用いて、黒色を代表とする色調が付与されることも多い。
【0003】
例えば、特許文献1及び2に記載されているような酸化処理法によってステンレス鋼(素材)表面に酸化皮膜を形成する手法は、ステンレス鋼の汎用的な製造工程である連続焼鈍設備を用いた連続的な処理が可能であり、化学発色法など他の処理に比べて高い生産性を有する。また、この酸化処理法によって形成した酸化皮膜は保護性のあるCr酸化物が主となる層が形成されるため耐食性が良好である。
しかしながら、特許文献1及び2に記載されているような酸化処理法によって形成された酸化皮膜には、部分的な点状の異常酸化部が不可避的に生成する。この異常酸化部は、腐食起点となって耐食性を低下させるとともに、黒色の意匠性を損なう恐れもある。
【0004】
また、特許文献3~6においても、ステンレス鋼素材の組成及び酸化処理時の条件などを制御することにより、耐食性が良好な黒色の酸化皮膜を形成する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
特開2019-178392号公報
特開2018-135591号公報
特開2022-103735号公報
特開2022-103732号公報
特開2022-103733号公報
特開2022-103734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
オーブンなどの家電製品や自動車の排気系部品などの用途においては、塩分が付着した状態で高温環境に曝される。このような環境下では、腐食反応が早く進行するため、異常酸化部などの欠陥部が酸化皮膜に存在すると、欠陥部から塩が浸透する。浸透した塩は、酸化皮膜とステンレス鋼素材との界面で腐食を進行させ、最終的には酸化皮膜が剥離してしまう。
特許文献3及び4の酸化処理は、異常酸化部が少ない酸化皮膜を形成することができるものの、異常酸化部の生成を完全に抑制できるわけではない。そのため、上記のような用途においては耐食性が十分とはいえない。
また、特許文献5及び6は、酸化処理後に電解処理によって異常酸化部を除去することを提案しているが、電解処理によって製造コストが増大する。また、電解処理後は素材が露出するため、黒色の高い意匠性が必要とされる上記のような用途においては耐食性が十分とはいえない。
【0007】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、塩分が付着した状態で高温環境に曝されても耐食性に優れ、黒色の意匠性が良好なステンレス鋼材及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、組成系の圧延材に対し、特定の条件で熱処理を行うことにより、塩分が付着した状態で高温環境に曝されても耐食性に優れ、黒色の意匠性が良好なステンレス鋼材が得られることを見出した。また、本発明者らは、得られたステンレス鋼材について分析を行った結果、所定の組成系の素材(素地)の表面に、所定の特徴を有する酸化皮膜が形成されており、素材と酸化皮膜との間の界面におけるCr濃度に特徴があることを見出した。本発明は、このような背景の下、完成するに至ったものである。
【0009】
すなわち、本発明は、素材と、前記素材上に形成された酸化皮膜とを有するステンレス鋼材であって、
前記素材は、質量基準で、C:0.100%以下、Si:1.00%以下、Mn:0.05~1.00%、Ni:1.00%以下、P:0.100%以下、S:0.100%以下、Cr:16.00~40.00%、N:0.100%以下、Ti:0.08~0.50%、Cu:1.00%以下及びMo:3.00%以下を含み、残部がFe及び不純物からなる組成を有し、
前記酸化皮膜は、厚みが50nm以上のCr
2
O
3
内層を有し、全体厚みが300~1000nmであり、
前記素材と前記酸化皮膜との間の界面におけるCr濃度が8.0質量%以下であるステンレス鋼材である。
【0010】
また、本発明は、質量基準で、C:0.100%以下、Si:1.00%以下、Mn:0.05~1.00%、Ni:1.00%以下、P:0.100%以下、S:0.100%以下、Cr:16.00~40.00%、N:0.100%以下、Ti:0.08~0.50%、Cu:1.00%以下及びMo:3.00%以下を含み、残部がFe及び不純物からなる組成を有し、ビッカース硬さが200HV以上である圧延材に対し、O
2
濃度が2~20体積%、水蒸気濃度が20体積%以下であり、且つ以下の式(1):
O
2
濃度+水蒸気濃度 ・・・(1)
で表される値が12~35である雰囲気下、800℃以上の温度で1分以上の熱処理を行うステンレス鋼材の製造方法である。
【発明の効果】
(【0011】以降は省略されています)
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