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公開番号2024114012
公報種別公開特許公報(A)
公開日2024-08-23
出願番号2023019356
出願日2023-02-10
発明の名称神経芽腫の微小残存病変を評価するために用いられる試薬、およびそれを用いた生体試料の分析方法
出願人国立大学法人神戸大学
代理人個人,個人,個人
主分類C12Q 1/6881 20180101AFI20240816BHJP(生化学;ビール;酒精;ぶどう酒;酢;微生物学;酵素学;突然変異または遺伝子工学)
要約【課題】神経芽腫の微小残存病変の評価における正確性を向上できる、新たな神経芽腫のMRDマーカーの組み合わせを利用する試薬及びそれを用いた生体試料の分析方法を提供する。
【解決手段】本発明の試薬は、B4GALNT1、CHRNA3、CRMP1、DBH、PHOX2B、及びTHからなる神経芽腫の微小残存病変の遺伝子マーカーと、HPRT1及びHMBSからなるレファレンス遺伝子と、を核酸増幅法により増幅しうるプライマーペアを含み、神経芽腫の微小残存病変を評価するために用いられ、神経芽腫の微小残存病変の評価における正確性を向上できる。
【選択図】 なし
特許請求の範囲【請求項1】
B4GALNT1、CHRNA3、CRMP1、DBH、PHOX2B、及びTHからなる神経芽腫の微小残存病変の遺伝子マーカーと、HPRT1及びHMBSからなるレファレンス遺伝子と、を核酸増幅法により増幅しうるプライマーペアを含み、神経芽腫の微小残存病変を評価するために用いられる試薬。
続きを表示(約 880 文字)【請求項2】
地固め療法終了時以降における神経芽腫患者から採取した生体試料に対して用いられる、請求項1に記載の試薬。
【請求項3】
骨髄検体に対して用いられる、請求項1に記載の試薬。
【請求項4】
前記遺伝子マーカー及び前記レファレンス遺伝子それぞれとストリンジェントな条件下でハイブリダイズしうるプローブをさらに含む、請求項1に記載の試薬。
【請求項5】
B4GALNT1、CHRNA3、CRMP1、DBH、PHOX2B、及びTHからなる神経芽腫の微小残存病変の遺伝子マーカー、並びにHPRT1及びHMBSからなるレファレンス遺伝子の、生体試料中における発現量を、請求項1に記載の試薬を用いて核酸増幅法により測定する測定工程と、
前記遺伝子マーカーの発現量A1~A6に基づく評価値が、健常者における定量値を参照して設定されるカットオフ値以上か否かを評価する評価工程とを含み、
前記発現量が神経芽腫の微小残存病変の発生レベルと相関し、
前記評価工程において、前記評価値が前記カットオフ値以上である場合に、前記生体試料の神経芽腫の微小残存病変を陽性と判定する、生体試料の分析方法。
【請求項6】
前記遺伝子マーカーの発現量A1~A6に基づく評価値が、前記遺伝子マーカーの発現量A1~A6の各々に対し、コントロールにおける前記遺伝子マーカー各々の発現量の統計学的数値B1~B6を加味した重み付けを行うことで、重み付き発現量AB1~AB6を取得し、さらに、前記重み付き発現量AB1~AB6の幾何平均又は総和をとることにより導出される、請求項5に記載の分析方法。
【請求項7】
前記測定工程における前記核酸増幅法がデジタルPCRである、請求項5に記載の生体試料の分析方法。
【請求項8】
前記測定工程において、同一の核酸増幅装置を用いて前記遺伝子マーカー及びレファレンス遺伝子を同時に核酸増幅する、請求項5に記載の生体試料の分析方法。

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、神経芽腫の微小残存病変を評価するための遺伝子マーカーおよびその使用に関する。より具体的には、本発明は、神経芽腫の微小残存病変を評価するために用いられる試薬、およびそれを用いた生体試料の分析方法に関する。
続きを表示(約 2,500 文字)【背景技術】
【0002】
神経芽腫は、神経堤細胞由来の難治性小児がんであり、小児がんの約10%を占める。これは、脳腫瘍に次いで高い頻度である。また神経芽腫は、小児がん死亡原因の約15%を占める。神経芽腫は、5つの予後因子(病期、病理、年齢、MYCN増幅、DNAプロイディー)を用いて、低・中間・高リスク群に分類されるが、50%を超える患者が高リスク群に分類される。そして、高リスク群患者の50%超で再発する。
【0003】
したがって、神経芽腫の予後改善、特に高リスク群患者の予後改善には、再発の起源と考えられる微小残存病変(MRD)を正しく評価することが不可欠である。腫瘍細胞にのみに検出される遺伝子が同定されていない神経芽腫では、正常細胞に比して腫瘍細胞で高発現するいくつかの遺伝子をマーカーとすることで、MRDの検出が試みられてきた。
【0004】
本発明者は、単独で神経芽腫の微小残存病変の検出能力が高い遺伝子マーカーとして、CRMP1、DBH、DDC、GAP43、ISL1、PHOX2B及びTHを見出し、これら7種の遺伝子マーカーとレファレンス遺伝子HPRT1とを組み合わせることで、偽陰性の抑制と臨床適用性とを両立した神経芽腫の微小残存病変の評価法を開発した(非特許文献1、特許文献1、特許文献2)。
【0005】
また、神経芽腫のMRDマーカーとしては他にも様々なものが報告されており、例えば、CHGA、DCX、DDC、PHOX2B、およびTHの5種の遺伝子マーカーであって、B2M、GAPDH、HPRT1、及びSDHAのレファレンス遺伝子と組み合わせて用いられるもの(非特許文献2);PHOX2B、TH、及びDCXの3種の遺伝子マーカー(非特許文献3);神経芽腫の治療標的分子GD2の合成酵素B4GALNT1を利用した、B4GALNT1、CCND1、ISL1、PHOX2Bの4種の遺伝子マーカー(非特許文献4)、B4GALNT1、PHOX2B、TH、及びELAV4の4種の遺伝子マーカー(非特許文献5)、B4GALNT1、TH、DDCの3種の遺伝子マーカー(非特許文献6)、並びに、CHRNA3、DDC、GAP43、PHOX2B、およびTHの5種の遺伝子マーカー(非特許文献7);神経芽腫のMES群固有のPOSTN、PRRX1及びFMO3の3種の遺伝子マーカー(非特許文献8);その他遺伝子マーカーCHGB、SNAP91、STMN2(非特許文献7)GABRB3、KIF1A(非特許文献9)ST8SIA2(非特許文献10)、UCHL1(非特許文献11)等が報告されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
J Mol Diagn 22: 236-246, 2020.
Clin Cancer Res 23: 5374-5383, 2017.
J Pathol 216: 245-252, 2008.
J Clin Oncol 33: 755-763, 2015.
Pediatr Blood Cancer 369: e27354, 2018.
Int J Cancer 123: 2849-2855, 2008.
Clin Chem 55: 1316-1326, 2009.
JCO Precision Oncology 3: 1-11, 2019.
Clin Cancer Res 14: 7020-7027, 2008.
Int J Cancer 119: 152-156, 2006.
Clin Cancer Res 6: 551-558, 2000.
【特許文献】
【0007】
国際公開第2018/123764号
国際公開第2021/006345号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者によってすでに見出された7種の遺伝子マーカーは、それら自体単独で神経芽腫の微小残存病変の検出能力が高い遺伝子マーカーが選択されているが、複数の遺伝子マーカーを組合せることによる性能については検討の余地がある。神経芽腫のMRDマーカーとしては様々なものが報告されているため、検査効率を度外視するならば、組み合わせるマーカーの数を単に増やせばよい。しかしながら、実臨床への適用性を考慮した検査効率を確保しつつ、より一層正確性を改善するためには、新たな神経芽腫のMRDマーカーの組み合わせが要される。
【0009】
そこで、本発明は、神経芽腫の微小残存病変の評価における正確性を向上できる、新たな神経芽腫のMRDマーカーの組み合わせを利用する試薬及びそれを用いた生体試料の分析方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、レファレンス遺伝子として特定の2種(つまり、HPRT1及びHMBS)を選択する一方で、独自に絞り込んだ20種の神経芽腫のMRD遺伝子マーカーからなる一次候補を、独自に選択した検体での発現量に応じて14種の遺伝子マーカーからなる二次候補に絞り込み、さらに、独自に定めた4つの条件を満たす3通りの遺伝子マーカーの組み合わせに絞り込み、最後に、これらの中から正確性の高い6種からなる遺伝子マーカーの組み合わせ(つまり、B4GALNT1、CHRNA3、CRMP1、DBH、PHOX2B、及びTH)を選択した。さらに、これら6種の神経芽腫のMRDの遺伝子マーカーと、2種のレファレンス遺伝子とを組み合わせて用いることで、当該技術分野の技術水準からはおおよそ期待し得なかったほどの高い正確性をもって神経芽腫の微小残存病変を評価できることを、予期せず見出した。本発明は、この知見に基づいて、さらに検討を重ねることにより完成したものである。
(【0011】以降は省略されています)

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